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BT04 ストーリー

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 BT04 ストーリー

ドーンオブザワールド

――混沌。
時代が変わる時、それは必然のようにやってくる。

新たなる秩序が生まれるその日まで、未知の文明がもたらす享楽と苦痛のはざまで人々は翻弄されていくのだ。
まさにそれは夜が明ける前の世界。
光と闇が同居する混沌――。

新たな異世界・トリトミーの使者の出現により、セプトピアはそんな過渡期を迎えていた。

人間が持つ『ココロ』に興味を抱いたトリトミーからの使者がセプトピアに来訪するようになり、しばらくの時が過ぎた。

セプトピアの日常に、トリトミーの使者がいることが当たり前のように人々は感じ始めていた。
それはまるで異国人を街中で見かける感覚とさほど変わらない。
たとえば街角で歌いアイドル活動をしている少女を見かけるとする。
姿はセプトピアの世界に適応しているが、
実は彼女はトリトミーからやってきたアンドロイドなのだ。

そして足を止め彼女を見つめる者の中にも、無関心に通り過ぎる者の中にも、
トリトミーの使者はいる。
彼等の大半は、セプトピアの人々には無害であり、使者と気づかないことも多い。
人々はトリトミーの使者の目的が侵略や悪辣なものではないと理解し、
トリトミーからもたらされるテクノロジーを楽しむ者も多かった。

しかし、相変わらず使者によるトラブルは絶えなかった。

誤って世界を超えてやってきてしまった使者による偶発的な「事故」もあれば、
『ココロ』へ行き過ぎた興味を持った者が人々をトランスジャックする「事件」など、
大小さまざまなトラブルが毎日のようにセプトピアの世界を騒がせていた。

ALCAでは、定理者とジスフィアの神々に加え、
協力的なトリトミーの使者とともにトラブルの解決や都市防衛に当たっていたが、
トリトミーの使者の人口が増えるにつれ、
事故・事件の件数も対応しきれないほど増大していった。

一部の使者が起こすトラブルによって、友好的な使者までもがイメージダウンし、
迷惑を被ることはトリトミーにとってもALCAにとっても不本意なことだ。

そこでALCAの要請に応える形で、トリトミーより様々な使者が派遣された。

戦闘用機体のアルヴ・レイザード000。

子供の遊び相手となる愛玩用ロボット・ピノ・プレート964。

治安を守るための警備用アンドロイド・メガル・ポリスロイド461。

また、ルカ・キャンドル237のようにトリトミーによる
混乱を収めるため自主的にやってきた使者もいた。

新たな盟約者を得たALCAの定理者たちは混沌とした世界に、
新たなる秩序をもたらそうとしていた。
だが、そんな統治者側の思いとは裏腹に世界はさらに混沌としていく。

先の四戦王の後継を狙う戦いが終焉し、
途絶えていたはずのモノリウムの使者が再びセプトピアへ訪れるようになっていた。

彼らもまた侵略や戦いが目的ではない。
その目的は様々だ。

セプトピアでトリトミーの使者が起こした混乱がモノリウムの世界でも影響を与え始め、

その原因を探るためにやってきた者。

異世界の文化に興味を覚えてやってきた者。

モノリウムの世界で迫害を受け、逃れてきた者。

一族再興の夢を求めてやってきた者。

こうしてセプトピアは、
人間とジスフィア、トリトミー、モノリウムという異世界の住人たちが
混在する世界と化し、混乱と狂乱の時代に拍車がかかっていった。

その一方で、トリトミーとの協力で「門」の研究は進められていた。
今まで謎とされていた異世界同士を繋ぐ「門」の存在――。

そのメカニズムを解明し、自らの力でコントロールすることは、
一方的に異世界から使者の来訪・襲来を受けてきたセプトピアにとって長年の悲願だった。

そして遂に、小規模な「門」を生み出すことに成功し、
セプトピアの側から「門」の向こうにいる異世界の住人に語り掛けることに、成功する。

その成功は、定理者にとっても思いがけない嬉しい出来事だった。
ある定理者は、もう二度と会えないと思っていたかつて盟約者との再会に胸を膨らませた。

いつか自由に異なった世界を行き来したい――。

盟約者と心を通わせた定理者の誰もが抱くその夢が実現するまで、あと一歩まで迫っていた。

BT04 Aid & Arms のカード一覧

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  • ニーナ・アレクサンドロヴナ & 貴純のリリアナ

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & 貴純のリリアナ

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & 貴純のリリアナ

    戦闘はティー・タイムのあとで

    午後のティー・タイム。
    その時間は必ず、ニーナの部屋から優雅なクラシックが漏れ聴こえてくる。
    お気に入りのスコーンやケーキをティー・スタンドに載せ、
    その日の気分で茶葉を選び紅茶を淹れて飲むのがニーナは好きだ。

    お茶の相手は、盟約者のリリアナ。
    この日、リリアナは『申し訳ありません』とはにかみながら少し遅れてやってきた。
    ニーナはリリアナの遅刻をまったく気にする素振りもなく、

    「ちょうど蒸らし終わったところです」

    と微笑み返した。

    ところが、リリアナが抱えていた鞄から次々と小瓶を取り出して、
    テーブルの上に置き始めると、さすがにニーナも少し驚いて目を丸くした。

    「これは?」
    『ハチミツです』

    リリアナが町を散策していたところ、ハチミツの専門店を見つけて購入したというのだ。

    『お店の人が紅茶にもとても合うというので、試してみたくなったんです』
    「……けど、少し多すぎません?どうしてこんなに沢山……」

    テーブルに置かれたハチミツ入りの小瓶はなんと16個。ニーナが戸惑うのも頷ける。

    『ハチミツはお花の種類によって味が違うんですよ』
    「お花?」

    レンゲ、アカシア、トチ、みかん花、コーヒー花、マヌカ、タイム、ローズマリー、
    ラベンダー、リンゴ花、クリ、ソバ、菩提樹、ナタネ、クローバー……
    よく見ると、リリアナが置いた小瓶は、花の種類ごとにラベルされていた。

    『私のお気に入りは、みかん花のハチミツです』

    そう言って、リリアナは淹れ立ての紅茶にたっぷりとハチミツを入れた。

    「……少し入れすぎではないでしょうか?」

    紅茶の味そのものを愛するニーナは、不安そうに眉をひそめる。

    『一口どうぞ』

    リリアナに勧められるまま、ニーナは恐る恐るハチミツ入りの紅茶に口をつける。

    「……美味しい!」

    ニーナは、驚いて頬を紅く染めた。

    「では、このお花の味はどうかしら?」

    それからのニーナは、紅茶を淹れては別の種類のハチミツを試すを繰り返した。
    ニーナが気に入ってくれてリリアナは満足そうだ。

    『この時間がずっと続いてほしいですね……』

    リリアナはそうつぶやいた。
    彼女が愛する平和が、この午後のティー・タイムに詰まっているようなそんな気がした。
    だが、リリアナの思いとは裏腹に、警報が鳴り、平和な時間は終わりを告げる。

    緊急出撃し、現場へと向かうニーナとリリアナ。

    『何故、争いが絶えないのでしょう……』

    リリアナは悲しそうにポツリとつぶやいた。

    「だからこそ、私たちが止めなければならないんです」

    ニーナはリリアナの悲しみを察しながらも、背中を押すように力強く話しかけた。
    リリアナも悲しみを押し殺し力強く頷く。
    現場の公園では、護送車が襲われ凶悪犯たちが3体の使者にトランスジャックされていた。

    「ALCAの者です。これ以上の傍若無人は許しません」

    リリアナとトランスしたニーナは、百合の花の長杖を振るい、使者たちの前に立ちはだかる。
    公園の花壇のあった場所は、使者たちによってすでに破壊されていた。
    それを見たリリアナは、悲しみをいっそう駆り立てる。

    『……まずは、言葉で』

    振り絞って出したリリアナの言葉に、ニーナは頷く。

    「無駄な抵抗はやめてください。私たちは、できれば争いたくはありません。
    速やかにトランスジャックを解除し、出頭していただけませんか?」
    だが、ニーナたちの耳に入ったのは、あざけ笑う使者たちの声だった。
    凶悪犯の邪悪なココロを知った使者たちには、ニーナの声は届かなかった。

    『無駄な抵抗をやめる? つまらん』
    『こいつらのココロ…面白い……』
    『俺たちはもっと暴れたいんだ』

    かつてトリトミーで軍事用の機械だった使者たちは、ニーナの数倍はあろうかという巨体揃いだ。
    ニーナを見下ろしながら、にじり寄ってくる。
    そんな使者たちが相手でも、ニーナは怯むことなく続けた。

    「……できれば、あなたたちと戦いたくはないんです。どうでしょう?
    こんな争いはやめて、ご一緒に午後のお茶でもいかがです?」

    使者たちの嘲笑がこだました。

    『バカか!? やれるものならやってみろ!!』

    使者たちは聞く耳を持たず、一気に襲い掛かってきた。

    『……仕方ありません』

    リリアナは溜息を吐いた。

    「……そうですね」

    そう言ってニーナは百合の長杖を高く掲げた。

    「ロジックドライブ、花園の祝福」

    その瞬間、いくつもの花びらが宙を舞い、甘い花の香りが辺りを包み込んだ。
    使者たちは立ち止まり、邪悪に歪んでいた顔が弛緩していった。
    その手から武器の類がするりと離れ、崩れるように跪いていく。
    そして一人、また一人と倒れていった。

    『これが……こいつの力なのか……!』

    ニーナたちの恐るべき実力に気づいた時にはもう遅かった。
    使者たちは戦闘意欲を失い、平和で心地よい気分を感じながら、眠りについていったのだ。
    すべてが終わり、ニーナとリリアナはトランスを解除する。
    2人は、幸福そうに眠る使者たちを見つめ、憐れみながらつぶやいた。

    「これで、心を入れ替えてくれると良いのですが……」
    『ええ……きっと大丈夫ですよ』

    ニーナとリリアナはギュッと手を握り合い、そう願うのだった。

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  • 揺音 聖那 & 鉄牙のライア

     揺音 聖那 & 鉄牙のライア

     揺音 聖那 & 鉄牙のライア

    咆哮、再び

    「聖那戻れ!! 戻るんだ!!」

    司令部からの声は、聖那には届かなかった。
    気がつくと無我夢中で走っていた。
    数百メートル先――目と鼻の先で、今、仲間が苦しんでいる。
    それを知った途端、聖那は向かわずにはいられなかった。
    現場は、ショッピングモール。
    聖那が息を切らして、辿り着いた頃にはあちこちが破壊され、瓦礫の山が築かれていた。
    聖那は、敵に気づかれないように地下へと降りていく。
    司令部と仲間との連絡が途絶えたのは、地下2階の駐車場だった。
    戦闘不能に陥り、そこに避難しているはずだった。

    「私よ。無事?」

    聖那は声をひそめて、ロジグラフで仲間に呼びかけながら真っ暗な駐車場を進む。

    「聖那!」

    安心しきった声とともに、車の陰に身をひそめていた仲間が聖那の前に現れる。
    と、同時に驚いた顔を見せた。

    「聖那……あんたトランスしてないじゃない!」

    そう。今の聖那は、一般人と変わらない。
    パラドクスゾーンに巻き込まれれば、逆理病に冒される危険もあるのだ。

    「そういうわけだから急ぎましょう。今はあなたの避難が最優先」

    そう言って、仲間の手を引き立ち去ろうとした時だった。
    凄まじい音とともに天井が崩れ、真っ暗な駐車場に光が差し込む。
    やがて聖那に気づいた敵――巨大なワニの獣人が瓦礫の中から現れた。

    『飛んで火にいる夏の虫だな……』

    不敵に笑う敵に、聖那は迷うことなく仲間に告げた。

    「私が囮になる。あなたは逃げて」
    「でも!」
    「大丈夫。逆理病になるようなヘマはしないから」

    聖那は仲間を安心させようと微笑むと、敵に向かって行った。

    『その勇気だけは誉めてやる……勇気だけはな!!』

    敵は、容赦なく向かって来る聖那に拳を突き出す。
    聖那はその拳を間一髪避けた。

    『なに!?』

    何かの間違いだろう、と自分に言い聞かせるように敵は再び聖那に襲い掛かる。
    再び、聖那は紙一重で敵の攻撃を躱す。

    『ちょこまかと!』
    「たいしたことないわね。アイツに比べれば……」
    『アイツ……?』
    「あんたよりももっと強いヤツがいたってことよ。
    アイツに比べれば、たいした攻撃じゃないわね」
    『小癪な!!』

    聖那の計算通り、挑発にのり、敵はムキになって襲い掛かってきた。
    もう敵の目には聖那しか映っていない。
    聖那は、横目で仲間が離れていくのを確認し、ひとまず安心する。
    だが問題は、これから自身のピンチをどう切り抜けるかだ。
    敵の攻撃を必死に避け続けていた聖那だったが、ついに拳がかすめ、聖那は跪いた。

    『手間をかけさせやがって……』

    敵は聖那へと近付いた。そしてパラドクスゾーンも聖那の足元へ広がってきた。
    完全に勝ちの目の無い戦いであったが、それでも聖那の闘志は消えることはなかった。
    聖那は立ち上がると敵に向かってファイティングポーズをとった。

    『そうか……死にたければ死ね!!』

    敵のトドメの一撃が聖那に迫る。
    その時だった。
    物陰から狼のような影が飛び出し、聖那の身体に体当たりした。
    その衝撃で聖那の身体は投げ出され、敵の攻撃は空振りに終わる。
    驚くのも束の間、聖那は見覚えのある狼のようなその姿を見て叫んだ。

    「ライア!」
    『相変わらず無茶しやがって……』

    ライアは少し呆れたような顔を浮かべていた。

    「助けに来てくれたの!?」
    『言っただろ。お前が手こずることがあったら助けに来てやるって……』

    照れくさそうなライアを見て、聖那は思わず微笑む。

    『ボヤボヤしてる場合じゃない。やるぞ』
    「やるって?」
    『合体ってやつだよ。そうじゃないとヤツに勝てないだろ?』
    「あなたと私が合体……!?」

    テストもしていない相手との合体に戸惑う聖那。しかし今は迷っている場合ではない。

    「……わかった。盟約しよう!」

    こうして合体する聖那とライア。
    その瞬間に、聖那は想像以上のものを感じた。
    今、自分の身体に漲る力を。

    『ウオオオオオッ!!!』

    敵は再び襲い来る。

    『「紅月の牙ッ!!!」』
    『!?』

    聖那の鋭い一撃が、敵の身体をはね飛ばした。

    「すごい! すごいよライア!」
    『感心してる場合じゃない。俺のあの技を覚えているか?』
    「……もちろん」

    聖那は力強く頷いた。忘れるわけがない。
    かつて聖那の窮地を救ったライアのとっておきの技だ。

    『「ロジックドライブ! 月光の咆哮!!!」』

    聖那とライアの魂の叫びが重なり合う。その咆哮の衝撃波をうけ、敵はがくりと崩れ落ちた。

    『……やるな』
    「ライアもね」

    かつて拳を交えた敵と手を結ぶ――聖那は最高の高揚感を覚えていた。

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  • ニーナ・アレクサンドロヴナ & 闘舞のアイシャ

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & 闘舞のアイシャ

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & 闘舞のアイシャ

    ニーナ、お姉さんは私なんだから!

    『そこならここから近い! 私たちが行くわ!』
    司令部に通信で伝えると、アイシャは『行こう!』とニーナの手を引いて走り出した。
    敵が出現したのは、ここから数百メートルの距離。
    アイシャとニーナがその近くにいたのはまったくの偶然なのだが、
    (今日はツイてる!)
    と、アイシャは心を躍らせていた。

    アイシャとニーナのコンビはとにかく強かった。
    今まで7回出撃し失敗はゼロ。しかも相手は瞬殺。
    その戦績に、アイシャは相当な自信をつけ、次の出撃はいつだろうといつもウズウズしていた。
    そんな時に現れた敵の出現。気持ちがはやらずにはいられなかった。

    「ちょっと待ってください!」

    現場が目前に迫った時、ニーナが突然手を離した。

    「もう少し敵の情報を仕入れてから、戦闘に臨みませんか?」
    『はあ?』
    「今まで上手くいきすぎていて、少し不安なんです……」

    真剣なニーナの顔を見て、アイシャは余裕たっぷりに笑った。
    そして妹を励ます姉のように言い放つ。

    『ニーナ、怖がることないよ。大丈夫大丈夫。
    おねーちゃんにまかせなさい!
    私たちは無敵なんだから!』
    「けど!」
    『いいから早く行こう!』

    問答無用で、再び、ニーナの手を引いて走り出すアイシャ。
    こうなってしまったら、やるしかない。
    現場に到着、アイシャと合体したニーナの前に現れた敵。
    それは、トリトミーのロボット型の使者だった。

    『よーし! いつも通り、一瞬で決めちゃうよ!!』

    ノリノリで指示を出すアイシャに従い、
    ニーナは素早い体術で敵に迫ると、
    肉球のついた手のひらから気功を放つ。
    この一撃で、敵の身体は内部から破壊され、戦闘不能に陥るのだ。
    いつも通りの手応えを感じ、

    (フフッ……また勝ってしまった。えっへん)

    と、ほくそ笑むアイシャ。
    しかし――敵は動いた。

    『ええええッ!? なんでええええッ!?』

    一方、ニーナは冷静に敵の反撃をかわし、距離をとる。

    『一体どうして……!?』

    うろたえるアイシャに、ニーナは淡々と答える。

    「相手はロボットなんですから、内部は機械です。
    だから、いつもの気功は通じないんでしょうね……」
    『え!? え!? だったらどうすんの!? 勝てないじゃん!!!』

    アイシャの頭は、完全にパニックだ。

    「大丈夫です」

    さきほどとは逆に、今度はニーナが余裕の笑みを見せた。

    「内部からの破壊は無理なら、外側からコツコツとダメージを加えていけば……」
    『けど……』
    「アイシャ、怖がることはありません。私たちは無敵、なんでしょう?」

    ニーナの気品あふれる優しい笑顔に、アイシャの動揺は徐々におさまっていった。

    『……わかった。ニーナ、ごめんね』
    「?」
    『次は、ちゃんとニーナの言うことも聞くね……』

    すっかり、しおらしくなったアイシャの言葉に、

    (どっちがお姉さんなんだか……)

    と、ニーナは思わずクスッと笑った。

    かくして。
    初出撃から今まで、7連続で相手を瞬殺してきたニーナとアイシャにとって、
    その日の戦闘は初めての長丁場。トランスリミットぎりぎりまで粘る激闘であった。
    支局へ戻るトランスポーターの中、疲れ果てて眠るアイシャと、

    (むにゃむにゃ・・・やっぱり私たち、無敵・・・)

    その傍らに、見守るニーナがいた。

    「これからも、がんばりましょうね、“おねーちゃん”」

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  • ヴェロニカ・アナンコ & 美棘のローダンテ

     ヴェロニカ・アナンコ & 美棘のローダンテ

     ヴェロニカ・アナンコ & 美棘のローダンテ

    「ギムレットには早すぎる」

    繁華街の外れにあるそのバー。カウンターにはヴェロニカただ一人。
    この界隈では酒に酔った使者が一般市民をトランスジャックする事件が多発していると聞いていたが、今宵はその気配は無さそうだ。
    静かだからこそ、人が店に入ってくると、すぐに気がついた。
    そこにいたのはヴェロニカと同じ銀髪の女――ローダンテだった。

    『……隣、空いてるか?』
    「聞くまでもないだろう」

    ガラガラの店内を見回してヴェロニカはクスッと笑う。
    ローダンテは硬い表情のまま無言でスツールに腰かけた。
    突然の再会だったがヴェロニカに驚きはなかった。
    ローダンテは先日の戦闘の際、偶然出会ったモノリウムの使者だ。
    ヴェロニカはその時からローダンテと再び巡り会う運命のようなものを感じていた。

    『……私と盟約しないか? お前は、私が力を貸すべき相手である気がしたんだ』

    ヴェロニカが感じた運命をローダンテも同じように感じていたようだ。
    だが、ヴェロニカはすぐに返事はしなかった。

    「……まぁ、先ずは一杯飲んだらどうだ?」

    答えをはぐらかすヴェロニカに、ローダンテは少し戸惑いながら、仕方なそうに従う。

    『あまり甘くない酒がいい……』
    「ならば、この辺りだな」

    と、ヴェロニカはメニューを指差す。しばし考えた後、ローダンテはバーテンを呼んだ。

    『ブラッディ・マリーをくれ』

    それを聞いて、ヴェロニカがまたクスッと笑った。ローダンテは再び戸惑う。

    『? 何がおかしいんだ?』
    「酒にも言葉があるんだ」
    『言葉?』
    「花言葉のようにな……ブラッディ・マリーには『私の心は燃えている』という意味がある。
    たまたまかもしれないが、そんなお前の強い心情を表しているのかな……」

    それを聞いてローダンテは神妙な顔を浮かべた。

    『妙なものだな……図星だ。私の心は燃えている』

    ローダンテは、セプトピアの世界に来た理由を打ち明けた。それは一族の再興だ。
    今や滅びゆく種族になってしまった自分の一族に再び栄華を取り戻したい――
    その手立てを探るため、ローダンテは別の世界へとやってきたのだ。

    『私には背負わなければならないものがある。
    しかし、この世界では盟約しなければ真の力を出せない。お前に協力してもらいたい』

    力強くヴェロニカに訴えるローダンテ。
    だが、ヴェロニカは黙ったまま。そのまま数分が経過した。
    じれったくなったローダンテがもう一度問いかけようとした時、
    やっとヴェロニカが口を開いた。

    「ギムレット」

    酒の注文か――と肩を落とすローダンテ。

    『ギムレットにも言葉はあるのか?』
    「ある。『長いお別れ』だ」

    それを聞いてローダンテはハッと立ち上がった。

    『それが答えか……私と盟約するつもりないという……』
    「早まるな」

    ヴェロニカは笑いながら言った。

    「私が『長いお別れ』をしたのは、過去の自分とだ。私には長い間背負ってきたものがあった」

    ローダンテの話を聞いて、ヴェロニカは復讐に囚われていた頃の自分と重ねていた。

    「お前は、あの頃の私と似ている」
    『今のお前は背負っているものはないのか?』
    「ああ。お前が今の思いを成就させるのか、それとも別の道を見つけるのか……
    お前がこれからどうなるか見てみたい」
    『そ、それでは……』

    ローダンテが盟約を口にしようとした時、店の外から悲鳴がこだました。
    程なくして司令部からヴェロニカに出撃の命令が通信で入る。

    「このまま静かな夜を期待したが、やはり使者が現れたか……」

    繁華街の裏路地。
    酩酊し、一般市民をトランスジャックした使者が暴れ回っている最中、
    合体したヴェロニカとローダンテが現れた。
    ゴージャスな毛皮を身に纏い、銀髪はネオンに照らされ輝いている。
    その手に握られているのは茨でできたレイピアだ。

    「早速だが、お前の腕を見せてくれ」
    『望むところだ』

    そして次の瞬間、鋭い剣先が目にも止まらぬ速さで敵に襲いかかった。
    その手応えにヴェロニカには満足そうに微笑む。また得難い友を得た――と。

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  • 七星 縁 & 七輝のサンドラ

     七星 縁 & 七輝のサンドラ

     七星 縁 & 七輝のサンドラ

    すくわれる時

    「まず卵白だけを泡立ててメレンゲにしておいて、
    それから黄身を入れてかき混ぜると美味しいオムレツができるんです」

    縁がそう言ってやってみせると、サンドラは興味深そうに見つめて、ポツリとつぶやいた。

    『……私も、やって、みたい……』
    「もちろんです! どうぞ!」

    そしてサンドラは縁がやった通りのことをぎこちない手つきで始める。

    サンドラがALCAの保護下におかれると、縁に世話をするよう命令が下った。
    そんな命令がなくとも、縁はそうするつもりだった。
    ALCAにきたばかりのサンドラは、誰とも口を聞かず、
    いつもオドオドと何かに怯えているようだった。
    さらに、身体には至るところに傷痕があった。
    おそらく元いた世界で迫害され、辛い思いをしていたのだろう、と想像された。
    一体どうすれば心を開いてくれるのか――
    サンドラの深い心の傷の前にALCAのスタッフも方法がわからず、縁に託すしかなかった。

    (少し時間はかかるかもしれないけど……)

    そんな不安を感じながら、縁はことあるごとにサンドラに家事の手伝いをお願いした。
    一緒に施設の掃除をし、洗濯をして、ご飯の支度もやった。
    それで心を開いてくれる――
    確信はまるでなかったが、できるだけ一緒にいて一生懸命話しかける。
    縁にはそれしか思いつかなかった。
    その甲斐があってか、最近サンドラはポツポツとやっと言葉を出せるようになり、
    縁はホッとする気持ちだった。

    「ごちそうさま! じゃあサンドラ洗い物を手伝ってください」

    夕飯のオムレツを食べ終えて、皿を片付けようとした時だった。
    サンドラは立ち上がらず、暗い表情でうつむいている。

    気分が悪いんですか? ひょっとして食あたり!?」

    縁が慌てて訊ねると、サンドラは首を横に振って、小さな震える声で言った。

    『……縁……いつも一緒にいる……でも急にいなくなる』
    「え? ああ、急な出撃がありますから……」
    『帰ってくる……怪我してる……かわいそう……』
    「私もまだまだですからね。もっと強くなりたいですけど……」
    『縁の……力に……私、なりたい!!』
    「え……それって……」

    思いがけないサンドラの言葉に、縁は驚いた。

    『私と縁、盟約……私となんか迷惑……?』

    今度、縁が大きく首を振った。

    「そんなことありません! よろんで! 盟約しましょう!」

    こうして心を開きかけたサンドラと縁は盟約を交わし、早速合体のテストをすることになった。

    『大丈夫……かな……、上手くいく、かな……』
    「大丈夫です。私を信じて」

    緊張するサンドラを縁は何度も励まし、最初の合体を開始する。
    眩い光に包まれた後、縁は閉じていた目を開ける。そして、ゆっくりと自分の身体を確認した。

    『やっぱり……』

    自分たちの姿を見て、落胆するサンドラの声。
    それは、縁の身体に「尾羽」がついていたからだ。
    オスにしかついていないその尾羽が、メスのサンドラにあったために、
    サンドラは一族に「凶兆」を呼ぶものだと迫害を受けたのだ。
    あの頃の辛い思い出が脳裏をフラッシュバックしていく。

    (もう、イヤです! こんな姿見たくない!)

    思わず叫び出しそうになったその時だった。

    「すっごーい! キレイ!!!」

    縁の声が弾んだ。

    『え……』

    サンドラの驚きに気づかず、縁は興奮しながら尾羽を広げた。
    「この羽とってもキレイ……嬉しいな、こんな姿になれるなんて……
    サンドラ、あなたと合体できてとっても幸せです!!」

    縁は目を輝かせ言った。
    心の傷の原因であった「尾羽」を生まれて初めて誉められたサンドラ。
    驚くよりも救われた気持ちが広がっていった。

    『うん、私も……』

    胸いっぱいのサンドラはそう答えるのがやっとだった。

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  • 七星 縁 & 輪菌のシータ

     七星 縁 & 輪菌のシータ

     七星 縁 & 輪菌のシータ

    危険なディナー

    「さあ、シータさん特製、キノコ砲弾です!」
    キノコポッドからポンポンと胞子が飛び出し、次々敵にまとわりつくと、
    それを吸い込んだ敵が力を失い倒れていく。
    それを見て、縁はホッと一息。敵を倒して安心したわけではなく―
    シータに振り回された疲れからくるものだった。

    モノリウムからやってきたキノコの獣人少女にして、天然のマッドサイエンティスト、
    好奇心旺盛なシータにとって、
    セプトピアの世界はまだまだ興味深い不思議なものであふれているようで、

    『これは興味深い!』

    と、集中モードに入ると、合体のことも忘れ、戦闘そっちのけで調べものを始めてしまう。
    今回の戦闘でも、シータの気持ちを戦いへと向けるのに一苦労だったのだ。
    縁とシータは合体を解除して、支局に戻る。
    するとシータは一目散にどこかへ向かって行った。

    「シータさん、またですか!?」

    慌てて追いかける縁。
    シータがやってきたのは台所だった。

    『戦闘中、美味しそうな料理を思いついたの』
    「……やっぱり」
    『だから、今晩は私が料理を振る舞おうと思って』

    ニッコリと笑うシータ。
    ひきつった笑いを浮かべる縁。
    自分の研究のためにセプトピアにやってきたシータは、
    盟約することになった縁の日常を見ていたと思ったら、突然「料理」に興味を示したのだ。

    『様々な材料を組み合わせ加工し、まったく別の、料理というものにしてのける。
    この技術は大変、興味深い! 私もやりたい!!』

    しかし― 今まで縁が口にしてきたシータの料理は激マズなものばかり。
    縁ひとりであるなら、我慢して口にしてきたが、仲間たちが口にしたら……
    今後のALCAの業務に支障をきたすことは間違いない。
    けれども、目を輝かせて楽しそうに料理をしているシータを見ていると、
    悪い気がして縁には止めることができなかった。

    と、迷っている傍から、シータが割った卵は殻が入ってグチャグチャに。

    「あああ! シータさん慌てず卵は一個一個丁寧に割りましょう!」
    『む?卵の殻は混じってはいけないのか?カルシウムが摂れると思うのだが―』

    息つく間もなくコショウを取り出すシータ。
    その危なっかしい手つきはドバーッとコショウが入りそうな予感がプンプン。

    「ダメですシータさん、コショウは味見しながら少しずついれてください!」
    『ぬ?コショウには薬効があるのだが・・・なるほど、適量は確認するべきだな!』

    『よーし綺麗に切れた!』
    「ダメですシータさん、具はもっと細かく刻んでください!」

    『―隠し味・・・ よかろう、これだな!』
    「ダメですシータさん、隠し味はちょっとだけです!板チョコ1枚丸ごとはダメ!」

    『ナツメグがない! では私特製のこれを代わりに!』
    「ダメですシータさん、その怪しいキノコ粉を入れるのは止めて!」

    その後もファインプレーで、シータのデンジャラス・クッキングを回避していく縁。

    『ありがとう縁。今夜の料理は上手くいきそう。きっと、忘れられない味になる!』

    シータの笑顔にホッとした気持ちにもなるが、縁の苦労の日々はまだまだ続きそうだ。

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  • アシュリー・ブラッドベリ & シュガ-・ディーバロイド741

     アシュリー・ブラッドベリ & シュガ-・ディーバロイド741

     アシュリー・ブラッドベリ & シュガ-・ディーバロイド741

    ライヴ≒戦場

    『とっても夢があると思わない?』
    シュガーにそう言われて、アシュリーはきょとんとした。
    どうしてアイドル活動なんかしているのか――
    それを聞いたところ、返って来た答えがこれだった。

    「夢……」
    『そう! とってもキラキラしてて毎日が超ラブリー!』

    目を輝かせて語るシュガー。しかしアシュリーにはピンとこなかった。
    シュガーと出会った時、彼女がやっていたアイドル活動は道端でフライヤーを配ることだった。
    道行く人に見向きもされず、ハッキリ言ってかわいそうな姿にしか、
    アシュリーの目には映らなかった。

    『私ね、これからアシュリーと一緒に夢の世界を築いていけると思うの。
    だからライヴがんばろうね!』
    「いや、ライヴじゃなくて……
    これから私たちがやるのはアイドル活動じゃなくて、街の平和を守ることなんですけど……」

    アシュリーは恐る恐るつっこんだが、シュガーは気にしていない。

    『みんなの注目が集まるんだから。私にとって、現場もライヴと同じ』

    アシュリーが反論しようとした矢先、早速出撃の機会がやってくる。
    不安を抱えたまま戦場へと到着するアシュリー。一方のシュガーはノリノリだ。

    『さあ、早速に一曲いってみよー! ハーモニーボイス!』

    シュガーの武器は、歌だ。
    ハートマークのスピーカーで歌声を飛ばし、音の力で相手を攻撃する。

    「あ、ええと……」

    しかし引っ込み思案のアシュリーにとっては、人前で歌うのも、
    ピンクのハートをあしらったかわいらしい蝶のような合理体の姿も、
    正直恥ずかしくてボソボソとしか歌えない。

    『アシュリー! 元気だして!』
    「うー……えー……」
    『もっとかわいく! アシュリーならきっとできるよ!』

    シュガーに促され声を張るアシュリー。
    恥ずかしさで顔は真っ赤だが、歌わなければ敵にやられてしまうのだから仕方ない。

    『まだまだーいっくよー! ハートフルレジスタンス!』

    戦場に響くアイドルポップ。ハートマークが付いたスピーカーが更に躍動する。

    「♪わったしのハートはレジスターンス!

    やけくそで歌い踊るアシュリーに、シュガーは明るい声をかける。

    『いいよ! アシュリーとってもカワイイ! 超ラブリー!』

    その声にのせられ、アシュリーから次第に恥ずかしさが消えていった。

    (なんだろうこれ・・・ 大声出して、無理やり踊って・・・
    でも、なんだか楽しい?気持ちいい!?)

    「♪ハートに撃ち込めバレットショット!
    あなたが白旗あげるまでー私は、私は……レジスターンス!」

    アシュリーがノリノリで歌い踊っていくと、次々と敵が倒れていく

    「いえーい!」

    アシュリーは勝利の声を上げ、戦いが終わる。
    すると同時に、野次馬から「ひゅー!」と歓声が。

    『みんな、ありがとう!!!』

    歓声に応えようとするシュガー。

    『ほら、アシュリー、みんな見てるよ!手を振ってあげて!』
    「え・・・? 見てる?みんなが?わたしを!? ――無理!!!!」

    しかし、一気に現実に引き戻ったアシュリーは恥ずかしさに悶えるのだった。

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  • クロエ・マクスウェル & ティーブ・ゴラン45

     クロエ・マクスウェル & ティーブ・ゴラン45

     クロエ・マクスウェル & ティーブ・ゴラン45

    最凶のふたり

    「敵は4体。いずれも強固な装甲と銃火器を装備したアンドロイド型の使者の模様。
    相当な戦闘能力が予想される。苦戦になると思われ、慎重な対応が求められる。
    さらに現場は――」

    ALCAの分析官からの通信を聞きながら現場へと向かうクロエ。
    すでに相棒のティーブとは合体済み。
    クロエは、ジェットブースターで空を滑空するのが心地よく、
    ALCAからのそんな声も話半分でしか聞いてなかった。

    「きゃっほー! あ、ヤバい。全然聞いてなかった。ティーブ聞いてた? 手強そう?」
    『細かいことをゴチャゴチャ言っていたが、まあ、オレたちの敵じゃねぇよ』
    「だよねー。よーし、現場が見えてきたッ!!」

    現場はどうやら工場らしい。
    敵がいる位置は捕捉済みだ。

    「やっちゃう?」
    『当然! 先手必勝だからな!』
    「ティーブ、わかってるー!! ってことで、ウルトラミラクルクラッシャーミサイル!!」

    ド、ド、ドーン! と、クロエから放たれたミサイルは工場を直撃!
    ド派手な爆炎が上がる中、クロエは現場へと降り立った。

    『な、なんだ!?』
    『敵襲か!?』

    奇襲に混乱する敵たち。まさに、クロエとティーブにとって理想的な状況である。

    『一気に畳みかけるぞ!!』
    「オーケイ! エクストラハイパーパワードキャノン!!」

    最強のコンビネーション。
    互いのイケイケな性格がバッチリ噛み合い、息つく間もなく攻撃を仕掛けるクロエとティーブ。
    再び凄まじい爆炎と爆音がこだまする中、あっという間に3体の敵をなぎ倒し、
    残るはリーダー格の1体。
    なんの迷いもなく、一心同体で攻めてくるクロエとティーブに、敵も動揺を隠せない。

    『ちょ、ちょっと、待て! よく考えろ。ここは――』

    敵の言い訳など聞く耳持たず――クロエはその言葉を遮った。
    「もんどーむよおおおッ!!」
    『言い訳なら地獄でやりやがれッ!!』
    「バーニングサンダーフルブレイクバーストッ!!!」

    ミサイル、ビームが一斉に発射される最強の必殺技が炸裂。
    作戦担当の予想を覆し瞬殺で勝利を決めた。
    そして戦闘終了後、司令部へと向かったクロエとティーブ。
    意気揚々と戦果を報告するクロエたちに、
    ヴェロニカは背を向け窓の外を眺めている。

    「ティーブ最高! ミサイルがバーンで当たると気持ちイイね!」
    『オレも、クロエ、お前と組めて良かったぜ!』

    互いに最高のパートナーと認め合い、気分も最高だった。

    「これからもティーブと私に任せてよ。どんな敵だってお茶の子さいさいなんだから」

    と、ヴェロニカに鼻高々と告げるクロエ。

    「……ほう。ALCAに財政破綻しろと言いたいわけか?」
    「……は?」

    視線を外したまま声を震わせるヴェロニカ。
    現場の工場は貴重な薬品を製造するプラントだったのだ。
    それを敵と一緒に破壊しまくったのだから、
    計り知れない賠償額がALCAに突きつけられると予想される。

    「通信でも、くれぐれも工場は傷つけるなと言ったはずだが……お前ら聞いていたのか!?」

    怒りを爆発させ、視線を向けるとクロエとティーブの姿はすでに消えていた。
    クロエとティーブ――
    逃げるタイミングも、あうんの呼吸である。

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  • アシュリー・ブラッドベリ & ルカ・キャンドル237

     アシュリー・ブラッドベリ & ルカ・キャンドル237

     アシュリー・ブラッドベリ & ルカ・キャンドル237

    炸裂トライコンセントレート!!

    その日、アシュリーはよく鼻歌を歌っていた。
    それにスキップしてしまいたいほど軽やかな足取り。
    定理者に目覚めてからこれほど楽しい気分になったのは初めてではないだろうか――
    と、アシュリーは思っていた。

    その理由はすべて、アシュリーの少し後ろを歩くルカの存在だ。
    金髪でしとやかなその姿――
    まるで名作文学の世界から抜け出してきたかのような、ルカの適応体。
    しかして元の世界での姿は、同型機の多いトリトミーの使者たちの中でも1体しかいないワンオフの高級機。
    黄金に輝く優美なドレスを思わせる姿に、
    アシュリーは遂に自分の理想たる「異世界の使者さま」が訪れた!と舞い上がってしまった。
    ルカと盟約を結ぶのは自分しかいないと、すぐさま盟約者に立候補したのである。

    一方のルカはアシュリーとは対照的に、足取りが重そうに見える。
    機嫌が悪いわけではなく―そもそもトリトミーの使者である彼女にそんな『ココロ』はない―、
    来たばかりのセプトピアの世界、まだ情報が不足しているので、周囲を探りながら歩いているためだ。

    「もう遅いですわよ」

    そんなわけだから油断するとすぐにアシュリーはルカを置いて行ってしまう。

    『私のことは気にせず。先に行っても構いませんよ』

    本来であればルカは一人で街を散策するつもりだった。
    まだ見知らぬものが多いセプトピアの世界を勉強するためだった。
    しかし、それを知ったアシュリーが「私がご案内しますわ!」と言ってついてきたのだ。

    「やっぱり、ご迷惑でしたか……」

    声のトーンを落とすアシュリー。ルカの言い方が冷たく突き放すように聞こえたためだ。

    『いや、そうではないのですが……』

    言葉を濁すルカ。
    (……この世界の者への対応は難しい)
    ココロというものが、まだ理解できないルカ。
    浮き沈みの激しいアシュリーのココロに戸惑うばかりだった。
    その時、「あああ!」と子供の悲鳴が聞こえた。
    手に持っていた風船をうっかり離してしまい、舞い上がった風船は高い木の枝にひっかかっている。

    「かわいそうに……ルカ、助けてあげることはできませんか?」
    『? 木に登るんですか?』

    問い返すルカ。風船がひっかかった木に登るのは、大人でもかなり苦労しそうだからだ。

    「その・・・例えば合体、してみるとか、どう、でしょう・・・?」
    『合体……?』
    「そうすれば、あの風船をとることも簡単にできると思います!」

    再びアシュリーのココロは浮かれ上がり、ルカに向かってニッコリと笑う。
    アシュリーは、ルカと合体した自分の姿をとても気に入っていて、何かにつけてすぐに合体したがる傾向があった。

    『ですが……』

    (今後の行動結果が悪化されると予測される……)
    つまりルカは、人間で言うならだんだんと「不安を感じ」始めていた。
    混乱を収拾するためこの世界にやってきたのに、アシュリーが盟約者で目的が果たせるのだろうか――と。
    そんなルカの迷いを試すように、使者の出現を告げる警報が鳴り響いた。
    司令部からの通信によれば、現場はルカとアシュリーがいる場所に近い。

    『行きましょうアシュリー』
    「はい!」

    子供と傍の親にすぐに避難するよう伝えると、二人は直ちに現場へと直行した。
    (この戦いによっては盟約相手を再検討しよう……)
    今やルカはそんな判断に至っていた。
    現場で暴れ回っていたのは、モノリウムの使者。
    象の獣人で、アシュリーの数倍の巨大さだ。
    それを見て、すぐさま合体したアシュリーとルカ。

    「いきます!」

    ルカは勢いよく相手との距離を詰める。

    『アシュリー、いけません。不用意に相手に近づいては――』

    注意を促そうとした矢先、敵が目の前から消えた。

    「!」

    敵は見かけとは裏腹に軽快なスピードで、あっという間にアシュリーの背後へ回っていた。
    そして、不意を突いて先制攻撃を仕掛ける。

    『危ない!』

    敵の拳がアシュリーに迫る。ルカは避けきれないと計算した。が―

    「バリアビット!」

    アシュリーが叫ぶと、ファンネルが宙を舞いフォースフィールドを発生。
    敵の攻撃を間一髪防ぐ。
    そして、息つく間もなく再びアシュリーが叫んだ。

    「ノクターンビット!」

    いつ間にか、敵の背後に不可視化されたファンネルが配置されていた。
    見事に敵の裏を書き、奇襲を浴びせる。
    のたうち回る敵を見て、ルカの「再検討」が中断する。

    『見事です……』

    バリアビットは、先日の出撃でルカが操り敵の攻撃を防いでみせた装備だ。
    一度使った装備だから、アシュリーでも使いこなせるのはまだわかる。
    しかしノクターンビットは、まだアシュリーには詳しく教えていない装備だ。
    合体していると、お互いの知識や記憶はある程度共有される。
    そうだとしても彼女がノクターンビットを、しかも完璧なタイミングで使いこなすとは、正直ルカの「計算外」だった。

    「そんな……お褒めいただき光栄ですが、
    私はただルカの盟約者になれたのですから、一生懸命やってるだけですわ……」
    『一生懸命……?』
    「つまり……好きな方にはがんばって尽くしたいってこと……でしょうか」

    アシュリーはそう言ってはにかんだ。

    「合体させていただいたとき、ルカには様々な能力があることが、わかりましたわ。
    私が至らないせいで、その素晴らしい力を発揮できないなんて、とても辛いこと・・・悲しいことですわ・・・
    なので、合体するたびに知ったこと、教えていただいたことをメモにまとめて、
    昨日よりも今日、今日よりも明日、もっともっとルカの本当の力を使いこなせるよう、自分なりに復習しているのです」

    視線を上げると、アシュリーは胸を張って答えた。

    「―これが私の、一生懸命、ですわ!」

    その瞬間、ルカは自分の判断が間違っていた、と結論する。
    今もココロは理解できないが、アシュリーをここまで突き動かすものならば、
    ココロとはきっと自分の計算を超えた何か、に違いない――と。
    敵はまだ倒れたわけではない。
    力を振り絞り、殺気立った目で再攻撃を仕掛けようとしていた。

    『貴方なら、私の本当の能力も使いこなせるでしょう』

    アシュリーの持っていた武器が、ナイフからタクトにモードチェンジする。

    「これって……」
    『全てのファンネルたちを指揮するのです。思うままに、このタクトで。
    貴方ならきっと計算以上の威力を発揮できると確信しています。
    アシュリーは「一生懸命」、なのですから……』

    アシュリーに、それ以上に嬉しい言葉はない。
    最高潮に盛り上がった気持ちで声を弾ませた。

    「その期待、裏切りません!!!」
    アシュリーがタクトをふるうと、数多のファンネルたちは規則正しい配列で敵の周囲を取り囲む。

    『「ロジックドライブ! トライコンセントレート!!!」』

    その叫び声とともに、一斉にファンネルから放たれる光。
    あらゆる角度から、正確に、敵に向かって一直線に光の粒子が伸びる。
    それはやがて、一点を射抜く集中砲火となった。

    『グアアアアアッ!!! ウオオオオオッ!!!』

    それまでアシュリーの攻撃に耐えていた敵も、その凄まじい攻撃を防ぎようがなかった。断末魔の声ととも、ついに敵は倒れた。
    トライコンセントレートはまさに祝砲
    ――アシュリーの歓喜を祝うド派手な花火のようだった。

    そして戦いが終わったとき。
    1機のファンネルが木の上の風船を優しく捉えると、何処かへと運んでいくのが見えたという―

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  • 五六八 葵 & アルヴ・レイザード000

     五六八 葵 & アルヴ・レイザード000

     五六八 葵 & アルヴ・レイザード000

    真面目×真面目

    任務のため、葵とアルヴがやってきたその街は、他とは違う雰囲気が漂っていた。

    『この街に漂う白いモヤのようなものは一体……?』

    戸惑うアルヴに、葵は落ち着いたまま答えた。

    「……湯けむりよ」

    二人がやってきたのは、とある温泉街。
    あちこちに湯けむりが漂い、硫黄の匂いが鼻につく。
    石畳の道に売店が軒を連ね、浴衣姿の老若男女が幸せそうな笑顔で行き交っている。
    この平和な温泉街にトランスジャックの常習者が潜んでいる、らしい――。
    その通報は単なる噂話の域を出ず、いたずらか見間違いの可能性が高い。
    だが支局は渡りに船とばかりに、葵とアルヴのコンビに温泉地での「潜入調査任務」を命じた。
    ・・・そうでもしないとこのコンビ、有休も消化せず働きづめで、
    自分たちから休もうとしないのだ・・・

    『……とりあえず、あれに着替えましょう』

    葵とアルヴは、空振りに終わる可能性が高いとはいえ、
    一応カムフラージュのため浴衣に着替え、湯治客を装うことにした。
    そして足湯、打たせ湯、砂風呂、大浴場に卓球……と、温泉街をめぐり、
    怪しい者はいないかと目を光らせる葵とアルヴ。

    「……それらしき者はいないわね。やはり何かの間違いなのかしら?」
    『恐らくは。しかし万一本当なら、そう簡単に尻尾は見せないでしょう。楽観は禁物です』

    葵とアルヴは真面目そのものだ。
    温泉地にいようが、その雰囲気に流され楽しんでしまおうなどと微塵も思うことなく、
    ただ実直に任務遂行のために動いていた。
    だがある時、葵はふと自分たちを周囲の人々が不思議そうな目で見ていると気づき、
    ハッとする。

    『どうかしました?』
    「アルヴ……私たちもっと楽しんだほうがいいかも。なんだか周りから浮いているみたい」
    『確かに私たちが怪しまれては、使者にも気づかれてしまいますね……』
    「うん、た、楽しみましょう。周囲に溶け込むよう、がんばって」
    『命令、了解です。可能な限り善処、します』

    楽しんだふりをしようと試行錯誤をしてみるが、やはりどこかぎこちない。
    途方に暮れかかったその時、
    葵とアルヴの目に楽しそうに温泉街を闊歩する男女二人が目に飛び込む。

    「あの、すみません!」

    葵とアルヴは声をかけ、「一緒に遊んでくれませんか」と頼み込んだ。
    この男女に紛れていれば、自分たちも自然と楽しんでいるかのように見えると考えたのだ。
    だが、いきなりそう言われても驚き戸惑うばかりの男女。
    それを見て、葵は正直に事情を打ち明けようとした。

    「実は私たちはALCAの――」

    その途端、男の態度が一変する。

    『ちっ、勘づかれたか!』
    「?? はい???」

    偶然声をかけた男の正体はなんと使者だった。
    男はすぐさま女をトランスジャックし、
    葵とアルヴの目の前には巨大で邪悪そうなロボットが現れた。

    「アルヴ、私たちも!」
    『了解!』

    すさかさず葵とアルヴも合体。
    葵の身体は蒼色の装甲に包まれ、使者の攻撃を素早く躱しながら立ち向かっていく。

    「エクシードブラスター!!」

    叫び声ととともに、ビーム弓が敵に炸裂。見事に打ち倒したのだった。
    こうして事件も無事解決。温泉街を後にして、葵とアルヴは司令部に戻った。
    ところがそこにいたのは、浮かない顔をした上司だ。

    「命令は遂行できたと思ったのですが……」
    「・・・私は君たちに、無理やりにでも休んで欲しかったのだが・・・
    任務と言えども、温泉地にいれば自ずと楽しんで休んでくれると思ったんだが、
    まさか本当に使者がいるとは……」
    「とんでもない。偶然とはいえ、街の平和を守ることができて良かったです……」

    葵はホッとしたような笑顔を見せると、アルヴも同じように笑顔で頷いた。
    真面目すぎる二人に、上司も頼もしく思えるような呆れたようなそんな気持ちで苦笑いを浮かべるのだった。

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  • ジークハルト・クラウス & メガル・ポリスロイド461

     ジークハルト・クラウス & メガル・ポリスロイド461

     ジークハルト・クラウス & メガル・ポリスロイド461

    いい子じゃなくて……

    ある日、司令部に呼び出されたジークハルト。

    「ほかでもない。最近の君の活躍を評価していると伝えたくてね」

    そう言って上司は笑顔でジークハルトを迎えた。
    個性的なロジカリストや盟約者が揃うALCAの中で、
    ジークハルトの功績はまさに優等生、と言えるべきものだった。
    市民をパラドクスゾーンの被害に巻き込むことなく、
    戦闘で建造物や街の公共物を破壊することもほとんどない。
    そのスマートな解決に、ALCA上層部の評価も絶大。
    市民から感謝の声も多く寄せられていた。
    ところが、ジークハルトはそれに喜ぶことなく、淡々と受け入れている様子だった。

    「嬉しくないのか?」

    と上司。

    「嬉しくないことはないですが……」

    ジークハルトの理想は高かった。
    いくら評価をされても満足することはない。
    一人でどんな敵でも立ち向かえるようなカッコいいロジカリストにならなきゃ
    ――常に、そんな思いを秘めていた。
    やがて司令部を後にして、自由時間に街を散策するジークハルト。
    その時、目に飛び込んできたのが、盟約者のメガル・ポリスロイド461だった。

    「メガル! 何をしてるの?」
    『交通安全ヲ呼ビカケテマス』

    トリトミーの治安を守る警備用アンドロイドだったメガルは、
    セプトピアの世界に来ても自主的にパトロールやちょっとした治安維持活動をしていた。

    『ココハ事故ガ多イ場所ナノデ……』
    「そうか。確かにここは車が通る量も、歩行者の数も多いからね。」

    ジークハルトは周囲を見渡すと、ふつふつと正義の気持ちがわき立った。

    (街の人を交通事故から守らなきゃ!)
    「僕も手伝うよ」

    そう言ってジークハルトは、横断歩道を挟んで、メガルと反対側の歩道に立った。
    ジークハルトなりに鋭い眼光で、道行く人が危険な目に遭わないか監視する。
    危うく車に轢かれそうな子供を身を呈して救う
    ――いつでもそんなヒーローのような行動がとれる心の準備をしていたが、

    「信号は青になってから渡ってね」
    「車が飛び出してくるからも知れないので、よく注意してくださいね」

    優しく気が利く性格のため、人々が危険な目に遭う前に、ジークハルトは声をかけ事故を未然に防いでいく。
    なので、ヒーロー的な行動をとる場面はいつまでも訪れなかった。
    一生懸命になればなるほど、ジークハルトの行動は「ヒーロー」というよりますます「優等生」になっていく。
    お年寄りがやってくると手を引いたり、背負って横断歩道を渡るのを手伝った。

    「そんな悪いわよ」

    遠慮するお婆ちゃんに、ジークハルトは首を振って笑顔で答える。
    「横断歩道を渡っている途中に信号が変わって事故になることもあるんです。
    遠慮なさらないでください」

    そんなかいがいしいジークハルトの姿をメガルは熱い視線で見つめていた。
    やがて日も暮れた頃、ジークハルトはメガルに、

    「そろそろ帰ろうよ」

    と、呼びかける。
    ジークハルトに近づいてくるメガル。
    ところが、メガルは無言のままジークハルトを見つめている。
    その視線はなんだか熱っぽい。

    「? ど……どうしたの……?」

    もしやと思って訊ねると、メガルは優しくジークハルトの頭を撫でてきた。

    「あ! ちょっと!」
    『ジーク、トテモイイコ、トテモカワイイ……』
    「う、うん、わかったから……」

    と、言っても頭を撫でるのをやめてくれないメガル。

    (僕なりに街の人を守ろうとがんばったのに……なんでこうなるんだろ)

    けれども、ついやってしまう行動はお行儀のよい優等生。
    ジークハルトは溜息をついた。
    いつになったら、「カワイイ」じゃなくて「カッコいい」と言われるようになるんだろうか――と。

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  • 五六八 葵 & ピノ・プレート964

     五六八 葵 & ピノ・プレート964

     五六八 葵 & ピノ・プレート964

    ピノのお仕事

    公園に響く子供たちの明るい声。
    都会の公園のわりには遊ぶスペースが広く、子供たちは所狭しとはしゃぎ回っている。
    それを尻目に葵は一人、ポツンと所在なさげにベンチで座っていた。
    かれこれ二時間。
    ピノが子供たちと夢中になって遊び始めてからずっとそんな感じだ。
    子供の遊び相手のために作られた愛玩ロボットだとは言え、
    たくさんの子供を見ると一緒に遊ばずにはいられない性分は困ったものだ、
    と葵はやや途方に暮れていた。

    「ねえ、ピノ。そろそろ行きましょう」

    葵は子供たちの中心にいるピノに声をかけた。

    『モウチョットダケ、イイダロウ?』

    まるで母親に逆らう子供のように答えるピノに、葵は溜息。

    「遊びたい気持ちはわかるけど、私たち任務の途中なのよ」

    この近辺で、トランスジャックを繰り返す使者がいるとの情報があり
    二人はパトロールに来たのだ。
    いつまでも同じ場所に留まっているわけにはいかない。
    けれども、ピノにはそんな事件よりも子供と遊ぶほうが大事。
    それがピノの仕事であるからだ。
    なんとか遊び続けようと知恵を絞る。

    『ナラバ、葵モイッショニ、アソンデクレタラ、シゴトニモドル!』
    「……どうしてそういう話になるんです?」
    『イイカライイカラ!』

    このままじゃ埒が明かない――と、葵は仕方なさそうに頷く。
    葵の心中も知らず、子供たちは仲間が増えて楽しそうだ。

    「こんなに人がいっぱいいるなら『ケイドロ』やろうよ!!」
    「いいねいいね!!」

    と、大盛り上がりだ。

    「……『ケイドロ』とは何でしょうか?」

    ところが、葵はその遊びを知らずキョトンである。
    名家に生まれ、幼い頃から厳しく躾けられた葵は
    同年代の子供と遊んだことがまるでなかったためだ。

    『オシエテヤロウ!』

    ピノはクスッと笑いながら葵に耳打ちする。
    セプトピアに来て間もないのに、すでにこの世界の子供の遊びに精通してるのはさすがだ。
    ピノから説明を受け、警察と泥棒に分かれてやる鬼ごっこの一種らしいと
    葵はすぐに理解すると、すぐさまゲーム開始だ。
    一斉に駆け出す子供たちとピノ。葵は警官だ。
    必死に追いかけ子供たちを捕まえていく。

    「よし捕まえましたよ! あれ???」

    葵の想像を超えてすばしっこい子供たち。
    葵が捕まえようとしてもするりと逃げていく。

    (これなら使者を相手にしているほうが楽です……)
    ようやく全員捕まえた頃には、葵はもうヘトヘトだ。

    『ヨシ! コンドハ ボクガ 警官ヲヤル!』

    ところがピノはまだまだ元気。

    「え……一回やったら仕事に戻るんじゃなかったんですか??」

    葵が異を唱えると子供たちからブーイング。
    まだまだ葵とピノと一緒に遊びたいようだ。
    子供たちの熱意の前に、葵も強く言えず、どうしようかと迷い始めた。

    その突然、公園に緊急警報が鳴り響いた。
    同時に、司令部から通信。
    どうやら近くに出現した使者がこの公園まで逃げ込んだらしい。

    「ピノ、早く子供たちを避難させなきゃ!」
    『……モウ、オソイ』

    葵たちの目の前に、その使者が現れた。
    怯えて泣き出す子供たちをピノは励ました。

    『ダイジョウブダ コンナヤツ、ボクト、アオイデ、ブッツブス!』
    「ほんと?」

    ピノの言葉に子供たちは泣き止んだ。

    『デキルヨナ、アオイ?』

    そこにはさっきまで遊びたいと駄々をこねていたピノはいない。
    大切な子供たちを守るためなら何だってやる、子供たちのヒーローそのものだった。
    葵は力強く頷いた。

    「……もちろんです。やっつけちゃいましょう」

    そして合体する二人。
    その姿を見て、子供たちから歓声が上がる。

    「がんばれお姉さーん!!!」

    その声を背に葵はいっそう思いを強くする――
    任せてください、私とピノが君たちを絶対に守るから、と。

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