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BT01 ストーリー

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 BT01 ストーリー

新時代を創る力を求めて

──時はL.C.917。
セプトピアで大規模な異世界大戦が勃発しようとしていたことを、
『彼女たち』はまだ知らなかった。

セプトピア各地に点在する異世界特殊機関ALCAの支局には、
異世界の脅威から街を守るために、
年齢も性別も様々な若き定理者たちが常駐していた。
しかし異世界の危機はいつ襲ってくるかは分からなかった。
いくら文明が発達しようとも、異なるロジックで存在している異世界の情勢について、
ALCAは知る術を持たなかったからだ。

定理者たちは自分の存在意義や将来への不安を抱えながらも、
いつ訪れるか分からない戦いに備えて日々訓練を重ねていた。

《こんな平和な日々が一生続けば……》

多くの定理者たちがそう思っていたに違いない。

が、彼女たちの想いが叶うことはなく、その時は突然訪れた。

世界各地で異世界の門が開き、招かざる使者が同時多発的に襲来したのだ。
その異世界とは、文明無き超自然の中、
原獣や獣人たちが支配する『力』の世界・モノリウムだ。

使者たちが襲来した目的は捕食でも破壊でもない──定理者たちとの決闘だった。
セプトピアの民間人にトランスジャックしては、
なぜか定理者だけを狙って戦いを挑んできていた。

彼ら使者には、ある意図があった──。

異世界モノリウムは『力』、つまり個人の武勇こそが全ての世界。
正々堂々とした戦いで勝ったものが地位や名誉、領土を得る。
恋愛や結婚も然り。好みの異性に勝負を挑んで勝つことで、
その想いを成就させることができるのだ。
その為、雄と雌、男と女問わず、モノリウムに生を受けた者は皆、
武勇を究め、誰にも負けない強さを追い求めた。

そんなモノリウムでは一年に一度、モノリウムの頂点に君臨する
獣王竜に挑む権利を与えられる世界的な武術大会『力の祭典』が開催されており、
今年もその日が間近に迫っていたのだ。

名実共に獣王竜の力に最も近いと称されていたのは、
モノリウムの東西南北を統治する四戦王と呼ばれる者達。
彼らは『力の祭典』に備え、己の力を磨くための稽古相手を必要としていたが、
あまりにも強くなりすぎたため、その相手がいなかった。

そんな時、四戦王の一人がセプトピアの定理者に白刃の矢を立てた。
彼女たちの未知の力ならば、己の力を磨く足しになるかもしれないと考え至ったのだ。

そして門を通じて、セプトピアへと降臨した。

その噂を聞きつけた他の四戦王たちも遅れをとってはならぬとセプトピアに降臨。
さらには四戦王たちの座を奪わんとする猛者たちもまた、
その後に追従するようにセプトピアへとやってきたのだ。
海を裂き、山を抉る程の圧倒的な力を秘めた四戦王たちの軍勢は、
セプトピアに未曾有の脅威をもたらそうとしていた。

定理者たちは異世界の使者と合体し、異世界のロジックによって
モノリウムの軍勢に立ち向かわなければならなかった。

幸い、彼女たちには協力してくれる心強い使者の存在があった。
モノリウムの原獣たちの中でも、セプトピアに友好的な者は少なからず存在していた。
人間たちの純朴な心を理解する者や、定理者の無限の可能性に好奇心を抱く者たちだ。
それだけではない。

セプトピアとモノリウムの争いを知り、セプトピアに手助けする
異世界があった──東洋文明の中、妖怪や霊魂が蔓延る『魂』の世界・ジスフィアだ。

ジスフィアは三界(天界、地界、冥界)が調和を保ち、
あらゆる魂がその三界を輪廻することで成り立っていたのだが、
近年になって瘴気と共に現れるサワリガミによって、その調和が乱されようとしていた。
サワリガミに対抗するため、退魔の術を磨き上げる者達が多かった。

そんな情勢の中、ジスフィアの者達がセプトピアに手助けするのには訳があった。
古来より、ジスフィアの者達はセプトピアの人間と友好関係にあった。
セプトピアの人間が霊魂や仏を重んじ、神社仏閣を奉ってくれていたからだ。
その為、ジスフィアの中でも戦闘に優れた有志を募り、セプトピア各地に存在するALCAに派遣。定理者の盟約者に志願し、争いの収束を図ろうとしたのだ。

かくしてセプトピアの定理者たちは世界平和を守るため、
ALCAの全面バックアップを受けながら、
モノリウムとジスフィアの友好的な盟約者の力を授かることで、
力を磨くために決闘を挑んでくるモノリウムの使者を討伐する日々を送ることとなった。

モノリウムの使者たちは、どの異世界の存在をも凌駕する圧倒的な力を有していたため、
純粋な力比べで叶う相手はどの異世界にも存在しない。

が、しかし、セプトピアの若き定理者だけは、その力に対抗し得る無限の可能性を秘めていた。異世界のロジックを行使できる特殊能力を持つのは、
あらゆる異世界の中でも彼女たちだけが持つ特別な力だったからだ。

異世界のロジックは常に我々の常識を超え、予想だにしない試練を突きつけてくる。

勝敗を決するのは、若き定理者の天性の運と、
磨き抜かれた判断力によって編み出される数々の論理にある。

世界の命運はいつの時代も、無限の可能性を秘めた若き感性に託される。
セプトピアの新しい時代を生き抜くため、若き定理者たちは様々な異世界の使者と出会い、
心を通わせ、そして強く逞しく成長していく。
そして彼女たちが手にするものは──新時代を創る力だ。

運命と論理LUCK & LOGIC』を賭けた戦いが今まさに始まる──。

BT01 Growth & Genesis のカード一覧

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ブースターパック第1弾「Growth & Genesis」に登場する其々のメンバー達のストーリーをご覧になりたい方は、バナーを選択してください。

  • 揺音 玉姫 & 竜媛皇珠 小玲

     揺音 玉姫 & 竜媛皇珠 小玲

     揺音 玉姫 & 竜媛皇珠 小玲

    聡明なる才女、その願いを込めて

    揺音玉姫には大いなる夢があった。

    パラドクスシックに苦しむ人々を救うために、
    ロジックカード専門の医師になることだ。

    医師の家系に生まれ、
    幼少期から英才教育を受けていた玉姫は中学の頃、
    キョウトの実家からナイエン区へと一人上京。

    有名私立中学で寮生活を送りながら勉学に励んでいた。

    そんなある日、招かざる運命が彼女の人生を一変させた。

    定理者の能力に目覚めてしまったのだ。
    玉姫は世界統一自衛法第六条の規定によりALCAに強制召集された。

    こうして医師の夢を断たれてしまった彼女だが、
    決して弱音を吐くことはなかった。
    定理者として人々を守ることは、
    医師として人々を救うことと同義だったからだ。

    玉姫は見習い定理者として懸命に鍛錬を重ねる日々を送った。

    そんなある日、
    ALCAに思いがけない来客が現れた──竜媛皇珠 小玲だ。

    10歳程度の少女でありながら、
    大人のALCA職員たちにも物怖じしない小玲。

    『わらわが手を貸してやる。盟約を希望する者は前へ出よ』

    小玲はセプトピアのロジックに倣い、適応体の姿こそ小さな身体ではあったが、
    その正体はジスフィアの由緒ある竜族のお姫様。

    小玲がALCAの門を叩いたのには理由があった。
    幼少期の多感な時期に知識と経験を深める為、
    異世界へ武者修行の旅に出されることがジスフィアの竜族の掟だったのだ。

    ワガママなお姫様だった小玲は嫌々ながらも掟に従った。
    ゆくゆくは竜族の皆を導いていく立派な大人の龍になる為に──。

    ALCAナイエン支局は小さな来賓・小玲の対応に頭を悩ませた。

    なぜなら力を貸すと言っておきながら、定理者を選り好んで盟約を嫌い、
    挙句の果てには寝室が狭いだの食べ物がまずいだのと
    ワガママを言って周囲を困らせていたからだ。

    かといって竜族の血を引く者の力はALCAとしても貴重な戦力。
    無碍にはできない。
    誰もが小玲の扱いに困り果てる中、ただ一人、
    懸命に小玲のワガママに対応する定理者がいた。

    セプトピアのお菓子を献上しては、小玲の話し相手になっている。

    『人族にしてはなかなか気が利くな。そち、名は何と申す?』
    「定理者の揺音玉姫です」

    玉姫は小玲を見ていると、
    実家の妹・聖那のことを思い出すと告げた。

    中学の頃に実家を出て以来、
    聖那とは文通を交わすのみで顔を合わせていなかった。

    小玲もまた、ジスフィアに大勢の竜族の弟や妹たちがいた。
    一番年上だった小玲は竜族の次期後継者として一族を導いていく使命があったのだ。

    「……えらいね。まだ小さいのに家族のことをそこまで考えているなんて」
    『わらわ、よいこだからな!』

     小玲は褒められて悪い気がせず、少しずつ玉姫に心を許し始めていた。

    『たまきの願いならば、叶えてやってもよいぞ。何かないか? 願いごとは?』
    「私、この世界の人々を守りたいんです……よかったら私と……」

    玉姫と小玲が実戦投入されたのは、それから三日後のことだった──。

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  • 揺音 玉姫 & 神曲乙姫

     揺音 玉姫 & 神曲乙姫

     揺音 玉姫 & 神曲乙姫

    寄せる想いが奏でる奇跡の旋律

    その日、ナイエン区セントラルエリアの路上には美しい琵琶の音色が鳴り響いていた。

    道行く者たちがその調べに心洗われ、うっとりと耳を傾けている。
    琵琶の演奏者は気をよくすると、琵琶の演奏に乗せて自慢の歌を披露した。
    ところが歌い始めた途端、路上の聴衆たちは逃げるようにその場を去っていく。
    その演奏者・神曲乙姫は琵琶の演奏においては天才的だったのだが、
    歌声に関しては壊滅的なまでに音痴だったのである。

    『なんとか人並みに歌えるようにならないかしら……?』

    が、そんな神曲乙姫に向かって拍手する若い女の子がいた。
    ALCAのオフの日に買い物に出かけていた揺音玉姫だ。

    「あなた……使者よね? なんでこんなところに……?」
    『……ちょっと、家出を』

    神曲乙姫はジスフィアの竜宮城に住む人魚の乙姫さまだった。
    竜宮城の後継者でありながら他の人魚たちの中で唯一音痴だった神曲乙姫は、
    居心地の悪い日々を過ごしていた。

    そしてセプトピアがモノリウムとの争いを起こしていることを利用し、
    セプトピアの仏閣を守るという大義名分のもと、竜宮城を一時的に飛び出していたのだ。
    竜宮城を継ぐまでには音痴な自分を改善したい……それが彼女の切実な想いだった。

    「……大変だね。竜宮城の乙姫さまも」

    その時、ALCAの警報が鳴り響く。
    セントラルエリアにモノリウムの使者が襲来したのだ。

    「近い……乙姫さん! すぐに安全な場所に避難して!」
    『え……貴方はどちらにっ』
    「任せて……私が守るから!」

    すぐに盟約者と連絡を取って合流した玉姫は、合体して使者との戦いに臨んだ。
    しかし相手も手強く、簡単には決着がつかない。

    神曲乙姫はそんな玉姫と使者の激しい戦いを物陰で見つめていた。
    自分とそれほど変わらない年頃の女の子が、
    傷付きながらも町の治安を守るために戦っている姿から目が離せずにいたのだ。
    やがて仲間の定理者たちが駆けつけ、無事使者を討伐することに成功する玉姫。
    神曲乙姫はそんな玉姫の姿に心打たれた──つらいのは自分だけではない。
    どんな困難な宿命であろうとも逃げずに戦っている女の子たちがいる。

    それ以来、神曲乙姫は路上で琵琶を弾いて歌の練習をしては、
    町中で戦う玉姫の姿を遠くから応援する日々を送り続けた。

    玉姫の一生懸命さとひたむきさはその度に神曲乙姫の心を打ち、
    彼女は玉姫に想いを馳せながら、無意識の内に琵琶で新たな曲を弾き始めていた。

    それから数日後、ALCAナイエン支局に、揺音玉姫との盟約を志願する使者が現れた。

    その時、使者が手土産に弾いた曲は、
    この世のものとは思えないほど美しい旋律だったという──。

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  • 揺音 聖那 & 阿修羅

     揺音 聖那 & 阿修羅

     揺音 聖那 & 阿修羅

    聖那、はじめての戦い

    『おい聖那! 聞いてるか!?』

    地鳴りのような阿修羅の声が、耳元で響く。
    しかし、揺音聖那はその声に応えることができなかった。

    目の前には逆理領域が広がり、
    見慣れたキョウトの街が砂漠のような光景に変わっていく。
    そして砂嵐の中を巨大な人影が迫ってきていた。
    敵――モノリウムの使者だ。

    阿修羅と合体した聖那は戦場に飛び込んだ瞬間、頭の中が真っ白になった。
    足は震え一歩も動けない。
    聖那自身も、敵を前にして臆する自分が信じられなかった。

    定理者の適応を判定され、
    聖那がALCAキョウト支局へ召集されたのは一ヶ月ほど前のことだ。
    突然の召集にも拘わらず、聖那に戸惑いはなかった。

    二年前に姉の揺音玉姫も同じくALCAの召集を受けていた。
    憧れの姉と同じ定理者になれることに、「やっときた!!」と喜びの感情が勝っていたからだ。

    元々身体を動かすことが好きだった聖那は訓練でメキメキと頭角を現し、
    周囲は「さすが揺音玉姫の妹だ」と囃し立てた。

    聖那自身も「定理者としてやっていける!」と手応えを感じていた。
    何度も戦闘シミュレーションを重ね、今日に備えてきたのだ。

    いつ訪れるか分からない初出動に、
    むしろ胸を躍らせワクワクと心待ちにしていた――そのはずだった。

    だが、現実は残酷だ。
    巨大で凶暴な敵を前にしては、聖那はただのちっぽけな少女でしかなかった。
    昂ぶった気持ちは萎えて、高鳴る鼓動で本部から指令も何も聞こえない。

    「助けて……お姉ちゃん……」

    そうつぶやいて聖那は固く目を閉じた。

    姉の玉姫は、ナイエン支局で定理者のリーダーになったと先日手紙で知ったばかりだった。
    (いつかお姉ちゃんみたいなリーダーになりたいと思っていたのに……)

    聖那は恐怖に震える自分の不甲斐なさを嘆き、目には涙がたまり始めた。
    阿修羅の声がふいに耳に入ったのはその時だ。

    『おい、六手拳でいこうぜ!! って!!』

    「……え?」

    聖那は呆気にとられ、ためていた涙を流すのを忘れてしまった。

    『俺たちのロジックドライブ――必殺技だよ! まだ名前考えてなかっただろ?』

    ビビっている聖那のことなどお構いなしに、
    阿修羅はただそれを伝えたいがために耳元でがなり続けていたのだった。

    それが分かった瞬間、聖那は呆れて、金縛りのような緊張が解けていった。
    肩の力が抜け、身体が軽くなっていくのが自分でも分かった。

    ジスフィアの神・阿修羅――初対面の時、聖那は阿修羅を見るなり、盟約者になる運命を感じた。筋肉ムキムキの大男でいかつい見た目なのに、
    昔からの友人といるような不思議な居心地の良さを阿修羅から感じていたのだ。

    (まるでこんなふうに阿修羅に助けられるのが分かっていたみたい……)

    聖那は自分の先見の明にクスッと笑い、「うん、それで行こ!」と明るく声を弾ませる。
    『応!』と阿修羅の地鳴りのような声が耳元でまた響いた。
    敵はすぐ目の前に迫っている。
    聖那はキッと表情を引き締めた。先ほどまで怯えた少女の姿はない。

    『「ロジックドライブ!! 六手拳!!」』

    二人の声が重なると同時に、聖那は敵に向かって大きく跳躍していた。

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  • 剣 美親 & 羅刹

     剣 美親 & 羅刹

     剣 美親 & 羅刹

    交わる求道者の刃、さらなる高みへ

    定理者と盟約者は必ずしもはじめから仲間だとは限らない。
    羅刹が初めてセプトピアに降臨した時、彼は剣美親の敵だった。

    羅刹は数々の伝説を残すジスフィアの鬼族の異端児。
    六本の腕を有した羅刹は二歳の頃から剣術に強い関心を示し、
    五歳の頃には六本の腕それぞれに異なる流派の剣技を体得。
    十歳の頃には六つの剣技を駆使した独自の流派『六鬼流』を以って、
    たった一人で幻龍を討伐したと言われている。

    羅刹は常に渇き続けた。
    さらに自分を高める為、多くの強者狩りを重ね、
    死線をくぐり抜けながら、己の腕を磨いていたのだ。

    彼にとっては『剣術の追求』こそが全て。

    そんな折、セプトピアとモノリウムの抗争が勃発。
    羅刹はこれを好機と捉えた。
    ジスフィア以外の世界ならば、さらに未知の強者が存在しているに違いないと考えたのだ。
    羅刹は狩場を求めて、セプトピアへとやってきた。

    そんな彼には揺るぎない三つのロジックがあった。

    《その一、決して群れない》
    《その二、格上と判断した相手にしか刃を向けない》
    《その三、相手の命を奪うことはしない》

    彼はセプトピアの人間を媒体にトランスジャックしては、
    モノリウムの屈強な獣たちを相手に敗北知らずの戦いを重ね、その腕を磨いていった。

    そんな彼が初めて敗北することになったのが、一人の若き定理者だった。
    額には鉢巻き。
    ジスフィアのサムライの戦闘服を着こなし、刀を肩に担いだ剣美親だ。

    なぜか母世界ジスフィア由来の装具に身を包んだ若者に対し、
    羅刹は一抹の疑念を抱いたものの、
    襲いかかってくる美親をかわし相手にしようとはしなかった。

    「なぜかかってこない……?」
    『……格下の相手に刃を向けるつもりはない』

    しかし羅刹にその気がなくとも、美親には戦う理由があった。
    羅刹にトランスジャックされた人間を救う為だ。

    本気を出さない羅刹に対し、果敢に挑む美親。
    そんな戦いの最中で美親はみるみる成長し、やがては羅刹の剣技を上回って討伐したのだ。
    羅刹は初の敗北に辛酸を舐めた。
    しかし不思議と清々しい気分でもあった。

    『思い残すことはない……斬れ』
    「……それはできない」

    どんな悪しき使者であろうとも尊い命を奪うことはしない
    信念を掲げていた美親は羅刹を捕獲。ALCAの監獄へと移送させた。

    捕虜になった羅刹がその後、美親に盟約を申し入れるまでそれほど時間はかからなかった。
    彼にとってみれば初の敗北相手である美親と共に
    戦場で剣の腕を磨くことは、この上ない悦びでもあったからだ。

    一方の美親がそんな羅刹の申し出を快く受け入れた理由はただ一つ。
    《相手の命を奪うことはしない》
    という羅刹のロジックに共鳴したからだった。

    が、美親と羅刹の出会いが、哀しき運命の序章であったことを知る者はいない──。

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  • 剣 美親 & 緋華

     剣 美親 & 緋華

     剣 美親 & 緋華

    ぶつかる信念、通じ合うロジック

    剣美親は世界各国に存在する定理者の中でも稀有な能力を有する若者だった。

    無限の精神的キャパシティ。
    圧倒的な肉体的忍耐力。
    そして何よりも己の信念を曲げない意志の強さは、
    まさに天が授けた定理者の申し子。

    中学生の頃、定理者の能力が開花し、
    ALCAホンコン支局に所属することになった美親は、驚くほどの速さで戦術論を吸収。
    まさに期待の大型新人だった。

    ホンコン支局長は早速、彼に最も相応しい盟約者を選定。

    白羽の矢が立ったのは、ジスフィアからALCAの加勢に参じていた
    国士無双の女サムライ、緋華。

    緋花は封刀「神楽」を携え、ジスフィア随一の高い剣技と生存力で
    若い頃から死線をくぐり抜けてきた猛者だった。
    その才を買われ、異世界間紛争の火消し役として特級外交官の任を務めていたのだ。

    普段は呑気で柔和な表情を浮かべている緋華だが、
    時折見せる眼光の鋭さは目を合わせた者を畏怖させ、
    戦意を大きく削ぐ力を宿していた。

    ホンコン支局長の采配によって、美親と緋華は盟約を前提とした接見を行うことになった。

    「はじめまして緋華さん。あなたと盟約できるのならとても光栄です」
    『……茶番だな。あなたは私の何を知っているというのだ』

    本来、盟約とは定理者と使者が互いのロジックを信頼し合い、
    その命を預け合う契りを結ぶことである。
    当然その相手の選定は慎重でなければならないのだが、
    美親は支局長の采配に身を委ね、緋華との盟約を安易に受け入れようとしていた。

    緋華は、美親が盟約の重みを侮っていると感じ、彼を試していたのだ。

    『守れない契りは交わさない……それが私の信条でね』

    緋華は眼光鋭く美親を見据え、彼の意志を試した。
    しかし美親は緋華から目を逸らすことなくジッと見つめていた。

    普通の相手ならば即座に畏怖してしまうであろう彼女の眼力が、彼には通じなかったのだ。

    「すみませんが、議論している時間はないんです……
     使者はいつこの街を襲ってくるか分かりません。
     いつこの街を、この街の人々を、壊してしまうか分からないんです……
     俺はこの街を守りたい……子供たちの夢を守りたいんです!」

    美親の言葉が緋華の心に深く刺さった。
    彼女の唯一にして最大の弱点──それは彼女が何よりも子供が好きであり、
    子供を守る為となると冷静さを欠いた無謀な戦い方をしてしまうところがあった点だ。

    「緋華さん。あなたは俺のロジックを受け入れてもらえますか?」

    この時、緋華の美親を見る目は百八十度変わった。

    盟約を侮っていたのは彼の方じゃない。むしろ自分の方である、と──。
    そして美親はこの若さにしてすでに、揺るぎない意志の力を持っている、と──。

    緋華は思わず口元に笑みを浮かべた。

    後に一つの伝説を築き上げることになる
    定理者、剣美親の初めての盟約はその瞬間、成立した──。

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  • 当麻 芽路子 & 煌煌

     当麻 芽路子 & 煌煌

     当麻 芽路子 & 煌煌

    この出会いは必然!? オカルト少女と、明るすぎるキョンシー少女

    当麻芽路子は難しい顔をしていた。
    人生で一番と思えるほどに今頭を悩ませていた。

    その理由。
    それはジスフィアと呼ばれる異世界からやってきた使者の少女、煌煌である。

    彼女曰く
    『自分は異世界で一度死んだ身だったが、芽路子が住む世界セプトピアへ来訪し、
    この世界に適合する事で復活を遂げたのだ』らしい。

    芽路子自身も話には聞いていた。
    異世界とは、自分達がこれまでお伽話で読んできたような不可思議な世界で、
    そこでは世界独自のルールに基づき、
    セプトピアでは考えられないような超常的な力が支配しているのだと。

    そして芽路子に付きまとうこの煌煌という少女は、
    その異世界の一つからやってきたのだと。

    ここで芽路子の事を少しでも知る者なら、「運命の出会い」「良かったじゃない」と
    軽はずみな明るい言葉をかけてくるかもしれない。

    芽路子はオカルトに人生を捧げた少女。
    そんな彼女が異世界のキョンシーと出会ってしまった事は、
    確かに運命と呼べるかもしれない。

    芽路子自身ももし過去に自らのオカルトで予知した未来に
    そういう占い結果が出ていたら、確かに嬉しいと思ったかもしれない。

    彼女のオカルトへの傾倒は趣味の範疇を越えている。

    友人や家族、誰かに認められるためではない。
    それ自体が彼女を構成する要素だったのだ。
    オカルトグッズと称して拾い物やら模造品を部屋に散りばめ、
    まさに呪術の儀式を夜な夜な行っているのが芽路子なのだ。

    だが……煌煌との出会い。
    それは芽路子にとって瞬時の喜びを一気に崩す、予想外のものだった。

    煌煌はキョンシーであるにも関わらず、明るく五月蠅く、
    そして元気はつらつとした少女だったのだ。
    全てのものに興味を持ってしまう物ごころついたばかりの子供のように、
    騒がしく朗らかで、それでいて憎めない屈託のない笑顔の持ち主だったのだ。
    街中を歩けば歓声を上げながらそこら中を駆け回る煌煌。
    偶然出会った芽路子に取り憑き、異世界の日常を楽しんでいた。

    そもそも定理者と使者は、ALCAと呼ばれる組織に参加し共に行動するもの。
    本来はALCAに強制招集されるはずである。

    だが芽路子に対してはスカウトマンが来る様子はなく、
    今のところ何故か見逃されているのだ。

    幸か不幸かALCAに強制連行されることもなく、
    引き続き孤独なオカルト人生を送り続けている芽路子にとって、
    煌煌という存在は……それは望んだもの、近しい存在のはずだった。

    だがそれは一時の勘違い。
    煌煌は芽路子にとって眩しすぎる、真逆のタイプの少女だったのだ。

    そんな彼女と合体してしまったのだから運命とは本当にわかったものではない。
    煌煌は一方的に芽路子のことを好いているようだったが、
    内心芽路子は煌煌が苦手だった。

    オカルトとしても認めたくなかった。
    いわゆる自分が最も苦手とするタイプの人間なのだと。

    だが最近は煌煌との触れ合いの中で、自分の調子が崩されているのがわかる。
    合体して戦う時にも妙な高揚感や達成感が芽生えつつあることにも気づいていた。

    だが芽路子はそれを簡単に肯定することはできない。
    明るすぎるキョンシー、煌煌を認めてしまうことは、
    彼女自身のこれまで歩んできたオカルト道……
    陰湿で妖しくも蠱惑的な世界を否定してしまうことになるからだ。

    「ありえない……でもどこか明るい生き方に憧れる自分がいる」

    芽路子は悩み続ける、今日もALCAのスカウトは来ないなぁ何故だろう?と思いながら。
    信じ続けてきた深遠なる闇を歩むのか、
    目の前に現れた珍妙かつ太陽のような存在と共に歩んでいくのか。

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  • クロエ・マクスウェル & 迅撃のダイガ

     クロエ・マクスウェル & 迅撃のダイガ

     クロエ・マクスウェル & 迅撃のダイガ

    駆けろ! 夢と使命を心に抱いて

    クロエ・マクスウェルは幼少期から定理者という存在に憧れを抱いていた。

    何度もALCAの門を叩いては所属を志願したが、
    定理者の力を持たない為、門前払いされる日々。

    それでも彼女は諦めなかった。

    いつでも明るく前向きに、
    自分の夢に向かって突き進む──それがクロエの信念だったからだ。

    その強い想いが運命を引き寄せたのか、
    念願叶って定理者の能力に目覚めたクロエはとうとうALCAに所属し、
    定理者としてのデビューを果たした。

    クロエとダイガの出会いもまた、運命的であったのは言うまでもない。
    これまでの盟約者と別れ、一人身だったクロエは、
    町中に異世界モノリウムからやってきた牙獣が放たれている一報を聞きつけ、
    危険を承知の上で生身の身体でその捕獲に向かった。

    しかし牙獣はなぜか無駄な殺生を避け、
    捕獲しに現れたクロエのことも相手にせず逃走を図る。

    「追っかけっこなら負けない!」

    クロエは生まれつき身体能力が高く特に足の速さに自信があった。
    どこまでも牙獣を追いかけて離さない。まさに根比べの追走劇だった。

    『か細い身体をした雌のくせに、なかなか見所があるな』と牙獣は思った。

    その牙獣──迅撃のダイガはセプトピアでこそ虎の姿の適応体だったが、
    母世界モノリウムにおいては上半身が虎、下半身が人間の半獣人。

    腕力にものを言わせた暴れん坊として周囲を恐れさせた。

    が、ダイガの横暴振りが、モノリウムの戦士たちの頂点に君臨する
    四戦王の一人の耳に入り、ダイガは四戦王に叩きのめされてしまったのだ。

    自分の傲慢さを恥じ、まだまだ上には上がいると感じたダイガは、
    よりストイックに己の強さを追求。
    モノリウムの獣人としては珍しく拳法を学ぶようになった。

    全ては四戦王に雪辱を果たしたい一心で……。

    やがて四戦王に肉薄する力を手に入れたと確信するダイガ。
    四戦王がセプトピアへ侵攻中との噂を聞きつけ、
    再戦を挑むべくセプトピアへとやってきていたのだ。

    「大人しくALCAに捕まりなってば!」

    とダイガに向かって叫ぶクロエ。

    その時、ダイガは思った──『この雌、使えるかもしれない』

    四戦王の足取りが掴めていなかったダイガにとって、
    ALCAの情報網は利用価値が高い。
    しかし私欲の為に若き定理者を利用するのは義に欠ける行為。
    ならば、四戦王の足取りが掴めるまで共に戦い、
    若く将来性があるクロエを鍛えてやろうと思い至ったのだ。

    ダイガはクロエの前に跪き、咆吼した。

    その声が威嚇を意味するものではないことを感じたクロエは笑みを浮かべ、告げた。

    「よし。じゃあどっちが先にALCAに到着するか競争しよ!」
    その帰り道、クロエとダイガが競うように駆けた時間は、
    お互いの魂を通わせるのに十分な時間だった──。

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  • クロエ・マクスウェル & 流のフィリル

     クロエ・マクスウェル & 流のフィリル

     クロエ・マクスウェル & 流のフィリル

    戦下に咲く可憐な乙女心

    ALCAナイエン支局の地下監獄。

    捕獲した使者を収容する場所に、
    身の丈155cmほどの異世界モノリウムのシャチ娘が囚われていた。

    セプトピアのロジックの影響で適応体の姿は普通の少女だったが、
    その正体は戦人魚一族の一番隊長・流のフィリルだ。

    セプトピアに攻め入る四戦王に付き従い、
    支族の一員として戦うことを強いられ、
    フィリルはセプトピアに派遣された。

    そして人間にトランスジャックし、
    ALCAの定理者との戦いに身を投じたのだが、戦闘の末敗北。
    捕虜にされたのだ。

    本来、争いごとを好ましく思っていなかったフィリル。
    その性格も極めておしとやかで大人しい。

    捕虜になった運命を受け入れ、静かに時を過ごしていた。
    そんなある日、監獄に一人の定理者がやってきた──クロエ・マクスウェルだ。

    お喋りが好きだったクロエは休憩時間を利用して、
    話し相手の使者を探しに監獄まで来ていたのだ。

    フィリルはクロエを見た瞬間、一瞬にして心を奪われた。
    クロエ自身にではない──クロエがつけていた可愛らしいリボンに対してだ。

    『それは……なんですか?』
    とフィリルがリボンについてクロエに訊ねると、

    「あー、これはオシャレよ。可愛くない?」
    と笑顔で応えるクロエ。

    それからというもの、クロエとフィリルは毎晩のように、
    セプトピアにおけるファッションについて飽きることなく語り合った。

    フィリルもまた興味深くクロエの話に耳を傾けていた。
    もはやフィリルにとって──支族の命令によって戦うことよりも──
    セプトピアで自由にファッションを楽しみたいという想いが強くなりはじめていたのだ。

    しかし捕虜の身であるフィリルには叶わぬ夢。

    ファッションに恋い焦がれながらも、
    ただクロエとのお喋りのひとときだけを糧に生きる日々だった。

    そんなある日、ナイエン区に新たなモノリウムの船団が襲来。
    ALCAは慌ただしく対応に追われることになった。
    しかしクロエの盟約者は牙獣ダイガ。

    水中戦での活躍は期待できず、待機を言い渡されてしまう。
    するとクロエは思い立ち、監獄へと向かった。

    「フィリル、ここから出してあげる! その代わり、あたしの盟約者になって!」

    フィリルにとって、監獄から解放されて自由を手に入れることは願ってもないことだった。
    自由になれば恋焦がれたファッションというものを思う存分楽しむことができる。

    『でも……なぜわたくしを……?』

    水中戦を苦手としていたクロエにとって、
    フィリルの能力はまさにうってつけだった。

    しかしクロエがフィリルに盟約を申し込んだ本当の真意はそこではない。

    「あたしたち、結構気が合うと思うんだ!
     今度休みの日に一緒にショッピングしたいって思ってさ!」
    『え……本当にいいのですか、わたくしで……?』
    「リルリル、チョー可愛いから、オシャレすればもっともっと可愛くなるよ!」

    フィリルの目から一筋の涙が零れた……。
    一度は敵として戦った自分を、クロエは笑顔で受け入れてくれた……。

    クロエの盟約の申し出を断る理由など、フィリルにあるわけがなかった──。

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  • アシュリー・ブラッドベリ & 巌のジェイド

     アシュリー・ブラッドベリ & 巌のジェイド

     アシュリー・ブラッドベリ & 巌のジェイド

    読書好きの夢想少女が出会ったのは、大きなトカゲ! デコボコ合体の二人

    人生の目的を見つけた……そういう事なのかもしれない。
    大柄な男はそう考えていた。
    いや、よくよく見ればそれは男……というか人間とは呼べない代物だった。

    三メートルを超す巨大な体躯、
    そして臀部から伸びる太く長いそれは尻尾だった。
    いわゆるコモドドラゴンと呼ばれる生物に属する姿だが、
    身体の大きさは生物学的にはありえない程だ。

    それはセプトピアの夜の繁華街をゆっくりと歩いていた。

    ほろよいの彼の名は、ジェイドと言う。

    無論使者の彼はモノリウムからやってきたトカゲの戦士だった。

    彼は先程までトックリを片手に考えていた。
    モノリウムにいた頃、
    世界の法則に基づき戦いの日々を送っていたが、
    正直なところ彼にとってそれは生来の習慣であり
    目的意識などまるで無かった。

    周囲がやるように彼も戦い、
    そして戦士としての生き方を矜持と思い込んできたのだ。

    だがセプトピアに来て彼が出会った定理者、
    つまり彼と盟約した相手は戦いとはかけ離れた世界で生きる、
    か弱く小さな少女だった。

    読書に明け暮れ、幻想と恋物語に焦がれる
    年相応の女性アシュリー・ブラッドベリだった。

    彼女は当初合体する相手がジェイドだったことに
    それなりにショックを受けていたようだった。

    たとえ言葉を介すことができなくても、
    さすがのジェイドも彼女の表情を見ていればそれくらいは理解できる。

    彼にとって読書を通じて彼女が読み解き巡らせる空想の世界が、
    どれほどのものかは知るよしもない。
    だが繊細かつ可愛らしい思考の旅なのだと察することくらいはできる。

    そんな彼女にとって、自分のように戦いしか知らず、
    しかも見た目も無骨で滑った皮の異形の者が盟約者となったことは、
    甚だ遺憾に違いないのだろうと察しはついていた。
    会話は交わさずともこちらへの心象は理解しているつもりだった。

    でもそんなアシュリーと言う少女は
    ALCAと呼ばれる戦いに身を置く組織に召集され、
    自らに与えられた任務をこなそうと必死に頑張っている。

    本来このような仕事場は彼女の気質に合わないのは誰もが知るところ。

    それでも必死に皆の役に立とうとする小さな背中に、
    ジェイドの心はこれまでモノリウムで味わったことのない感覚に芽生えていた。

    その背中を少しでも押してあげられたら。

    彼女を見ていてそう感じた。
    これまで無味乾燥に戦いを続け、
    それを自分に与えられた充足感と錯覚していた日々。

    それとは違う誰かのために戦う……柔らかな満足感。
    それをアシュリーとの合体によってジェイドは感じていたのだ。

    少し酔ってしまったのかもしれない、とジェイドはふと思った。
    ちょっとおセンチな気分に浸っていたことに、
    我がことながら自分らしくもないと考えていた。

    事実セプトピアの酒は旨い。

    酒だけではなく料理全般がモノリウムのそれらとは
    比較できないほどに美味だと言わざるを得ない。

    セプトピアの生活から感じる充足感も、
    アシュリーに対するそんな感情を
    湧き立たせたのかもしれない、そう思った。

    その時周囲から警告音が鳴り響く。
    これは近隣で使者による襲撃が始まったという知らせである。
    今頃アシュリーはベッドから飛び起きて、
    パタパタと小走りしている頃だろう。

    この戦いを前にした高揚感、これも忘れられない。
    彼は舌舐めずりをする。
    セプトピアの安穏な生活で
    戦意という名の爪を砥ぐことを忘れたわけではない。

    酔い覚ましにはちょうどいいだろうと、
    ジェイドは飲み屋街を千鳥足で歩く人間達の波を
    掻き分けながら走り出した。

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  • 五六八 葵 & 稲穂のロッタ

     五六八 葵 & 稲穂のロッタ

     五六八 葵 & 稲穂のロッタ

    だいじょぶだよ!まっすぐな瞳の少女たち。

    「五六八の家は日ノ本一の弓取りぞ」
    と言われていた、らしい。

    葵は、父や母や祖父や曽祖父からずっと、そう言われて育ってきた。
    一族が武士たちの時代から弛まぬ鍛錬のもと磨いてきた、弓の技。
    これを守り、更に磨き、後の世に伝えていくこと。
    そしていざという時は、人を守るために矢を射ること。
    それが五六八の家に産まれた者の定めだと。

    その定めを守るために。
    弓を正しく引くには、姿勢を正しく保たねばならない。
    弓の道を正しく生きるには、生きる姿勢も正しく保たねばならない。
    父母はいつもそう言い、必然、葵は折り目正しく礼儀を忘れない、
    はたから見れば理想的な少女、に育った。

    「・・・本当に、それで良いのだろうか?」

    葵も学校に通うようになり、同年代の友人たちもできた。
    彼ら彼女らとの日常の会話から、いかに自分が他の子たちと「違う」のかを知らされる。
    教師たちも葵を褒め称え、周囲からも期待される日々。
    それは彼女にとって、自分の「違い」を更に思い知らされる日々でもあった。

    定理者の才能に目覚め、ALCAに属するようになっても、その思いは変わらない。
    父母たちは「弓の技を振るう良き機会」と言い諸手を上げて送り出してくれたが、
    葵は思う。

    「本当に、これで良かったのだろうか?」
    『いいんじゃないの?』

    彼女がふと視線を落とすと、柔らかそうな桃色の髪に飾られた、
    くりくり動く大きな緋色の瞳と目が合った。

    稲穂のロッタ。
    異世界「モノリウム」からやってきた、葵の盟約者である。

    ロッタはこう見えて人間ではない。
    本来の姿は愛らしい耳と尾を生やした兎の獣人で、
    森の中を自在に駆けまわる強靭な脚力と、
    遠くの微かな音も聞き逃さない天性の聴力を備えている。
    モノリウムの住人の例にもれず、彼女もまた、一端の戦士なのだ。
    だが、行方知れずになった兄を追って門をくぐりこのセプトピアに適応した今は、
    特殊な力を失った、ただの少女に過ぎない。
    馴染みのない世界で道に迷い、雨に打たれていた所を偶然葵が助けた。
    その後いろいろあって、今は彼女の盟約者となっている。

    『いいんじゃないの?・・・わかんないけど』

    恐らくロッタには、葵が何を悩んでいるのか、わかってはいない。
    葵自身、良くわかっていないのだから。
    でも彼女は言う。

    『だいじょぶだよ? 葵にはろったがついてるからね! だいじょぶだよ!』

    葵は、思わず顔がほころぶのを自覚する。
    今の自分を、ただ純粋に慕ってくれる存在。
    ちょっとワガママ、ちょっと気まぐれ、ちょっと喧嘩っ早く、でも結構寂しがり屋。
    彼女に甘えられている自分、なら葵は迷わず「良し」といえる。

    「そうだね。ロッタがいるから、大丈夫だね。じゃあ、行こうか」

    今日も任務が始まる。
    ロッタが後ろをついてくる。
    今日の葵の姿勢は、きっと正しくあるだろう。

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  • 五六八 葵 & 春待のメルチ

     五六八 葵 & 春待のメルチ

     五六八 葵 & 春待のメルチ

    春を待つ2人

    初対面というのは大事だな、と葵は思う。

    葵が彼女に引き合わされる前に聞いていたのは、
    彼女はモノリウムの闘牛の獣人で、
    いくつもの戦いを切り抜けてきた腕利きの戦士だということ。
    人間など太刀打ち出来ない剛力の持ち主で、
    ひとたび怒れば巨大な矛槍を振るい、周囲に嵐を巻き起こす、と。

    だから葵は結構緊張していたのだ。
    心配だからついてくるというロッタを置いて一人で会いに来たのも、
    ロッタが何か失礼をして相手を怒らせてはいけないと思ったからだ。
    無論セプトピアのロジックに適応している以上、本来の剛力とやらは振るえないはずだが、
    それでもモノリウムで戦いに明け暮れていた者達の戦うセンスは侮れない。
    葵は内心、戦々恐々としていたかもしれない。

    そして始めて引き合わされた時に、彼女に言われた言葉を葵は今も覚えている。

    『お姉さんに、甘えていいからね』

    自分より上背のある大柄な女性が、一足で葵の前に滑り込んでくる。
    そのまま、葵をぎゅっと抱きしめた。そしてゆっくり優しく、その頭を撫でた。

    『大丈夫、お姉さんに任せなさい』

    葵は思う。
    そんなに自分は、怯えた顔をしていたのだろうか。
    内心のためらいを瞳に映していたのだろうか。
    あるいは、胸の内にあったあれやこれやを一瞬で見透かされたとでも言うのだろうか。
    今となってはよくわからないし、恥ずかしくて本人に聞くこともできないが、
    とにかくその時葵は、彼女―春待のメルチに、暖かく包まれてしまったのだ。

    こうして、ある意味なし崩しに、メルチとの盟約が進められた。
    幸い葵とメルチの相性は悪くなかった。
    メルチの剛力を借りた葵の合理体は、期待以上の戦闘力を発揮した。
    もう一人の盟約者、ロッタが焼きもちを焼くので、出番は控えめだったが。

    そんなメルチだったが、彼女はいつも緩やかな笑みを絶やさず、のんびりマイペース。
    ALCAのスタッフや周囲の人たち、食って掛かるロッタすらも、柔らかく受け止めている。
    葵自身もあの日からずっと、彼女の腕の中で甘え続けている、そんな気がしていた。

    「・・・だからこそ今日は、聞いてみたい」

    歴戦の戦士であるはずの彼女が、何故そこまで優しく柔らかくあることができるのか。
    ひとたび怒れば嵐を呼ぶ、というのは嘘なのか。
    葵がそう聞くと、何を勘違いしたのか、メルチの答えはこんなものだった。

    『ふふっ、大丈夫。
     大抵のことは、牛乳を飲んで、日向で一眠りすれば、いずれ春は来るわよ?』

    正直、葵ははぐらかされたような気がした。その不満が顔に出たのだろう。
    ふと目をそらすと、メルチはどこか遠くを見ながら、ぽつりとこぼした。

    『・・・本当に怒らなければならないことなんて、滅多にないものよ』

    彼女が怒りのままに剛力をふるい、あの巨大な矛槍で嵐を起こした。
    それはきっと、本当のことなのだろう。
    そしてそれは、彼女にとって恐らく、誇るべきことではないのだろう。

    春待のメルチは今日も、皆を暖かく受け止めながら、ゆっくり春を待っている。

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  • ジークハルト・クラウス & 燕黒のルシア

     ジークハルト・クラウス & 燕黒のルシア

     ジークハルト・クラウス & 燕黒のルシア

    優しき少年と、翼を失った少女

    幼さの残る顔立ちをした少年は、三人の姉に甘やかされ、
    しかも待望の男子と両親にも甘やかされて育ったにもかかわらず、
    むしろ実直さと正義感に溢れた真っすぐな少年に育った。

    そんな少年ジークハルトは、
    才覚を見出され定理者として11歳ながらALCAに召集される。
    そして彼は自らの夢の実現に向けて期待を膨らませることになる。

    彼の夢とは自立し、早く強い大人になって、
    家族を守ってあげられるような強い男になることだ。
    定理者になれるということは強くなれる一つの手段であり、
    自立できたという証拠でもある。

    そんなALCAに所属した彼が最初に出会ったのは、
    モノリウムという異世界からやってきたルシアという少女。

    毎日うつむいていた彼女を、
    ジークが声をかけたのが出会いのきっかけだった。
    徐々に笑顔を取り戻していくルシア。

    しかし、ある日彼はふと目にしてしまった。
    ルシアが一人声を押し殺すように泣いているのを。

    燕の鳥人だった彼女は
    セプトピアのロジックの影響で、翼を失ってしまった。
    嗚咽する彼女の言葉には、望郷の想いが聞き取れた。

    「僕に、なにか出来ることは・・・・・・そうだ!」

    ―――――――……

    「ねえ、ルシア。
     使者はね、合体することで本来の力をセプトピアでも使う事ができるんだって」
    『……へえ。
     でも私には合体する相手なんて…』

    「ルシア、僕と盟約しない?」

    その言葉を聞き、ルシアは泣き出した。
    彼女を泣かせたくなくて言った言葉なのにと焦るジークハルトだったが、
    ルシアは『これは嬉し泣きだよ』と答えた。

    ジークハルトの優しさに触れ、
    思わず感激の涙が零れてしまったのだと言う。
    その言葉を聞き、ジークハルトはホッと胸を撫で下した。

    『「合体!!」』

    翼を失った少女は、合体によって空を取り戻した。

    『もうしばらくは、この世界にいてもいいかな。
     ジークと、一緒にいられるなら…』
    「ん?ルシア、何か言った?」
    『えへへ、なんでもないよ!』

    今日も2人は、空を飛ぶ。

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