キャラクター&ストーリー

モノリウム

  • 迅撃のダイガ

    迅撃のダイガ

    実直なる求道者。
    獰猛で野蛮に見えるが、わりと紳士的。乱暴者扱いされると少し傷つく。
    最近のマイブームはクロエとのかくれんぼ&おいかけっこ。
    子供の遊びと思っていたが、意外にも身体能力の粋を尽くした大勝負になるとか。

     クロエ & ダイガ

    二人の盟約者

    玉姫との通信が途絶えた。
    オルガがスタッフたちと話しているのが聞こえた瞬間、クロエはすでに走り出していた。
    無我夢中で表通りに出ると数キロ先で上がる黒煙が見えた。
    (きっとあそこだ!)
    直感でそう思ったクロエが、黒煙の方向に足を向けたその時だった。
    ドンッ!
    と、突然地面が揺れた。
    「!?」
    驚き立ち止まるクロエ。
    次の瞬間、地面が割れて、中から現れたのは厚い甲羅に覆われた巨大な亀――モノリウムの使者だった。しかも、2体。
    (もう! 今、どんだけの使者が街中で暴れてんのよ!?)
    クロエは街が今、危機的状況に置かれているのを改めて実感し、身が震えた。
    使者はいかにクロエを料理しようかと想像して楽しているのか舌なめずりしている。
    この危機をいかに打開するか――クロエの頭はそれでいっぱいになった。
    だが、妙案は思い浮かばない。
    合体しようにも盟約者は傍にいない。
    (今は自分の力だけで……踏み込んで思いきりキック! イチかバチかやるしかないでしょ!)
    そしてクロエは膝を屈して思いきり敵に飛びかかった。
    その瞬間、クロエの足首に何かが巻きついた。
    使者の長い舌だ。
    「くそッ……」
    抵抗しようにも物凄い力で、クロエは使者のほうへと引きずられていく。
    『グオオオッ!』
    「!」
    突然吠える声が聞こえ、次の瞬間、巨大な影が使者に向かってドシンと体当たりした。衝撃で使者はクロエから離れていく。
    「ダイガ!」
    クロエを救った、白銀の毛皮に黒の縞を持つ大きな虎。
    そう、迅撃のダイガ――故郷の世界へと帰っていたはずのかつての盟約者だ。
    「どうしてここにいるの……?」
    思わず呆然とするクロエ。
    ダイガは『その説明はあとだ』と目で訴えながら、クロエに近づく。
    クロエはダイガの気持ちを察する。
    今、クロエがダイガとできることは一つだけだ。

    「よし合体!!!」

    瞬く間に、クロエの身体は虎柄の毛皮に包まれる。

    『さあ、どれだけ腕を上げたか見せてくれ』

    力強いダイガの声が聞こえる。

    「でもさ、アイツ甲羅ちょ~っと硬そうだよ? アタシたちの力で割れるかな?」
    『信じろ。オレたちの拳に破れんものはない』
    「フフッ……言うと思った!」

    久々に交わすダイガとの会話に、クロエのテンションもMAXに上がった。
    闘志と共に、ふつふつと全身に力がみなぎってくる。
    (アタシたちの力は、前より、もっともっと、凄い!)
    野獣のようにクロエは敵に近づくと、使者に向かって爪を突き立てた。

    『!!』

    敵もクロエたちの力を感じたのか、手足を甲羅に引っ込めて防御に徹する。

    「必殺! スペシャルタイガークラーッシュ!!!!!」

    ギッ! ガガガガッ!!!
    鋭い爪が硬い甲羅を食い込んでくと、次第に亀裂が入り始めた。
    ピッキキキキッ!
    と、亀裂は甲羅全体に広まると同時に、敵の内部から光が漏れだす。

    「うおおおおおおッ!!」

    クロエの拳はついに甲羅を砕き、敵の身体を貫いた。
    やがて敵は内部から爆発したように、砕けて散った。

    「い……痛ぁ~!!!」

    勝ったにもかかわらず、叫んだのはクロエ。

    『す、すまん……捻挫でもしたか?』

    ダイガも少し動揺している。

    「ダイガの嘘つき! めっちゃ硬いじゃん! アイツの甲羅!」
    『いや、確かにそうだが……』

    しどろもどろとなるダイガ。
    軽口を言いつつも、一方クロエは成長した二人の力をはっきり感じていた。
    流す気力をコントロールしてやれば、この爪はもっともっと強く、鋭くなる。

    その間にもう1体の使者はいつの間にか消えていた。

    「あッ! 逃げた!」

    慌てて見回すと運河に逃げ込む残りの1体が目の端に見えた。
    観光スポットにもなる綺麗な運河だが、この運河は港へと通じている。
    今を逃せば、港から海へとどこまで逃げていくだろう。
    (うっ水中……こんな時、あの子がいてくれたら……
    でも、そんな都合よく現れるわけないよね……)

    「とにかく追いかけようダイガ!」

    運河に飛び込もうとするクロエの肩を何者かがそっとつかんだ。

    「え……」

    そこにいたのは流のフィリル。
    彼女もまたクロエのかつての盟約者だった。

    「フィリル! あんたもこの世界にはいないはずでしょ!?
    今日は一体全体どーなってんの!?」
    『その説明はあとにしましょう。それよりも――』

    と、フィリルは水路を見やる。

    『水の中なら、私と合体したほうが戦いやすいでしょ?』

    そう言ってフィリルはいたずらっぽく笑った。

    「そー思ってたとこ!」

    クロエはダイガとの合体を解除。

    「ダイガありがと! フィリルよろしく!!」

    そしてすぐさまフィリルと合体し、水路に飛び込んだ。
    やはり水中ならフィリルは無敵だ。
    あっという間に敵を捉え、クロエは敵にトドメを刺そうと三叉矛を構えた。
    そしてふと思う――
    (戦いながら盟約者をチェンジできるなんてゼータクうううッ!!)
    ――と。

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  • 流のフィリル

    流のフィリル

    おしとやかなシャチ娘。
    モノリウムの戦う人魚一族の少女だが、本来は争うことが好きではない、
    大人しい性格。
    クロエの水中戦闘用臨時パートナー。

     クロエ・マクスウェル & 流のフィリル

    戦下に咲く可憐な乙女心

    ALCAナイエン支局の地下監獄。

    捕獲した使者を収容する場所に、
    身の丈155cmほどの異世界モノリウムのシャチ娘が囚われていた。

    セプトピアのロジックの影響で適応体の姿は普通の少女だったが、
    その正体は戦人魚一族の一番隊長・流のフィリルだ。

    セプトピアに攻め入る四戦王に付き従い、
    支族の一員として戦うことを強いられ、
    フィリルはセプトピアに派遣された。

    そして人間にトランスジャックし、
    ALCAの定理者との戦いに身を投じたのだが、戦闘の末敗北。
    捕虜にされたのだ。

    本来、争いごとを好ましく思っていなかったフィリル。
    その性格も極めておしとやかで大人しい。

    捕虜になった運命を受け入れ、静かに時を過ごしていた。
    そんなある日、監獄に一人の定理者がやってきた──クロエ・マクスウェルだ。

    お喋りが好きだったクロエは休憩時間を利用して、
    話し相手の使者を探しに監獄まで来ていたのだ。

    フィリルはクロエを見た瞬間、一瞬にして心を奪われた。
    クロエ自身にではない──クロエがつけていた可愛らしいリボンに対してだ。

    『それは……なんですか?』
    とフィリルがリボンについてクロエに訊ねると、

    「あー、これはオシャレよ。可愛くない?」
    と笑顔で応えるクロエ。

    それからというもの、クロエとフィリルは毎晩のように、
    セプトピアにおけるファッションについて飽きることなく語り合った。

    フィリルもまた興味深くクロエの話に耳を傾けていた。
    もはやフィリルにとって──支族の命令によって戦うことよりも──
    セプトピアで自由にファッションを楽しみたいという想いが強くなりはじめていたのだ。

    しかし捕虜の身であるフィリルには叶わぬ夢。

    ファッションに恋い焦がれながらも、
    ただクロエとのお喋りのひとときだけを糧に生きる日々だった。

    そんなある日、ナイエン区に新たなモノリウムの船団が襲来。
    ALCAは慌ただしく対応に追われることになった。
    しかしクロエの盟約者は牙獣ダイガ。

    水中戦での活躍は期待できず、待機を言い渡されてしまう。
    するとクロエは思い立ち、監獄へと向かった。

    「フィリル、ここから出してあげる! その代わり、あたしの盟約者になって!」

    フィリルにとって、監獄から解放されて自由を手に入れることは願ってもないことだった。
    自由になれば恋焦がれたファッションというものを思う存分楽しむことができる。

    『でも……なぜわたくしを……?』

    水中戦を苦手としていたクロエにとって、
    フィリルの能力はまさにうってつけだった。

    しかしクロエがフィリルに盟約を申し込んだ本当の真意はそこではない。

    「あたしたち、結構気が合うと思うんだ!
     今度休みの日に一緒にショッピングしたいって思ってさ!」
    『え……本当にいいのですか、わたくしで……?』
    「リルリル、チョー可愛いから、オシャレすればもっともっと可愛くなるよ!」

    フィリルの目から一筋の涙が零れた……。
    一度は敵として戦った自分を、クロエは笑顔で受け入れてくれた……。

    クロエの盟約の申し出を断る理由など、フィリルにあるわけがなかった──。

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  • 稲穂のロッタ

    稲穂のロッタ

    モノリウムで、行方不明となった兄を探しに門をくぐった、兎の獣人少女。
    さみしがりやで、甘えんぼ。
    セプトピアにきた彼女を保護してくれた葵を慕っている。
    最近は葵のボディーガードとの名目でいつも後ろをついて歩いている。

     葵 & ロッタ

    高度33000フィートのわがまま

    学がALCA本部を死守するため孤独な戦いを続けている。
    地上では、クロエが陽動のため激戦に身を投じている。
    一方、高度33000フィートの上空を飛ぶ輸送機。
    そこでは、研究所への潜入のため、定理者たちが空挺作戦の準備を進めていた。
    ――が、トラブルとはいうのは思わぬタイミングで思わぬ人物が起こすものである。

    『どーして私じゃないの!?』

    輸送機の中に、ロッタの声が響き渡る。
    作戦実行に選ばれた葵の合体相手がアルヴだと知り、拗ねて不満を爆発させたのだ。

    「それは――」

    困惑の表情を浮かべる葵。
    間もなく輸送機は研究所上空に到達する。
    作戦決行の時は迫っているのだ。
    まだまだやらねばならない準備は山ほどある……
    のに、ロッタのわがままがこんなタイミングで炸裂してしまうとは……。
    葵はロッタを呼び出すのを作戦終了後にしておけばよかったと少し後悔したが、後の祭り。
    何とかわかってもらおうと説得をはじめた。

    「――この任務は研究所に潜入してそれで終わりじゃないのよ?
    ロッタもわかってると思うけど、研究所の内部には数えきれないほどの敵がいて、
    中にはとんでもなく強いヤツだって」
    『ろっただって強いもん!』

    葵の話を遮るロッタ。

    『弓の技なら、アルヴにだって負けないもん!
    前は1度に1本しか弓を引けなかったけど、今は2本か3本なら引けるよ?』

    確かにロッタの言う通り。
    葵とロッタの合体した姿は以前よりも強くなった。
    同じ弓を「火力」として比べた場合、
    もちろん高出力ビーム弓を主兵装とするアルヴに軍配が上がるのは確かだが、
    センサー以上に敏感に敵を察知する「野生の勘」、
    そしていざ敵を前にした時の身のこなし、俊敏さなど総合して考えれば、
    合理体としての戦闘力は、アルヴにいささかも劣る所ではない。
    しかし、葵はここではその事実を伏せる。

    ―この危険な任務に軍人のアルヴはともかく、
    妹の様に可愛がっているロッタを連れ出したくはなかったのだ―

    「いや、けどね、潜入したあとは戦闘だけじゃないのよ?」

    葵は別の手立てでロッタを説得しようとする。
    「任務の中には、コンピュータのハッキングも含まれているの。
    研究所の中にあるゲートカードの暴走を止めることが第一の目的なんだから。
    ロッタにはコンピュータのハッキングなんてできないでしょ?」

    仕方のないことなのだとロッタも納得できる理に適った説得である。
    そして、この理由であればロッタも傷つかない。
    ロッタはグーの音も出なくなったのように、一瞬黙り込んだ。
    (……よかった。わかってもらえた)
    葵はホッとして胸を撫で下ろす。
    しかし、

    『……できるもん』

    その一言に葵は耳を疑った。

    「できるもんって……ハッキングが?」
    『……できるもん……ハッキング』

    ロッタは目を伏せて、不貞腐れたように、もう一度つぶやいた。
    (……幼稚園児か!)
    葵は心の中でつっこんだ。
    できないことをできると言い出す――幼児のわがままそのものだ。
    (無理……説得できない……)
    と、気が遠くなっていく葵。
    すると、ロッタが感情を爆発させる。

    『だって葵が心配なんだもん! そばにいて葵を助けてあげたいの!
    ねえ、私じゃどうしてもダメなの!?』
    「……」

    葵はしばらく呆気に取られていたが、クスッと笑いが込み上げる。
    ロッタは拗ねて、わがままを炸裂させていたわけではなかった。
    葵が心配で助けてあげたい一心だったのだ。
    すると、ずっと腕を組んで事態を静観していたがアルヴがロッタに近づいて頭を撫でた。

    『大丈夫です、ロッタ。私がロッタの分も葵を守ります。私を信じて任せてください』

    ロッタは涙ぐみながら、アルヴに小指を差し出す。

    『約束だよ?』

    アルヴとロッタは指切りをした。
    葵はその上に、そっと手を重ねた。

    「ロッタ、ありがとう……」

    葵は微笑んで、優しくロッタの思いに感謝する。

    「うん……」

    泣いていたロッタも笑顔を作り、葵に応えるのだった。

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  • 春待のメルチ

    春待のメルチ

    闘牛の獣人女性。
    毎日のんびり楽しく生きていければ良く、
    セプトピアでも楽しく生きていければ良いかな~と、マイペース。
    口癖は「牛乳を飲むと良いわよ?」

     五六八 葵 & 春待のメルチ

    春を待つ2人

    初対面というのは大事だな、と葵は思う。

    葵が彼女に引き合わされる前に聞いていたのは、
    彼女はモノリウムの闘牛の獣人で、
    いくつもの戦いを切り抜けてきた腕利きの戦士だということ。
    人間など太刀打ち出来ない剛力の持ち主で、
    ひとたび怒れば巨大な矛槍を振るい、周囲に嵐を巻き起こす、と。

    だから葵は結構緊張していたのだ。
    心配だからついてくるというロッタを置いて一人で会いに来たのも、
    ロッタが何か失礼をして相手を怒らせてはいけないと思ったからだ。
    無論セプトピアのロジックに適応している以上、本来の剛力とやらは振るえないはずだが、
    それでもモノリウムで戦いに明け暮れていた者達の戦うセンスは侮れない。
    葵は内心、戦々恐々としていたかもしれない。

    そして始めて引き合わされた時に、彼女に言われた言葉を葵は今も覚えている。

    『お姉さんに、甘えていいからね』

    自分より上背のある大柄な女性が、一足で葵の前に滑り込んでくる。
    そのまま、葵をぎゅっと抱きしめた。そしてゆっくり優しく、その頭を撫でた。

    『大丈夫、お姉さんに任せなさい』

    葵は思う。
    そんなに自分は、怯えた顔をしていたのだろうか。
    内心のためらいを瞳に映していたのだろうか。
    あるいは、胸の内にあったあれやこれやを一瞬で見透かされたとでも言うのだろうか。
    今となってはよくわからないし、恥ずかしくて本人に聞くこともできないが、
    とにかくその時葵は、彼女―春待のメルチに、暖かく包まれてしまったのだ。

    こうして、ある意味なし崩しに、メルチとの盟約が進められた。
    幸い葵とメルチの相性は悪くなかった。
    メルチの剛力を借りた葵の合理体は、期待以上の戦闘力を発揮した。
    もう一人の盟約者、ロッタが焼きもちを焼くので、出番は控えめだったが。

    そんなメルチだったが、彼女はいつも緩やかな笑みを絶やさず、のんびりマイペース。
    ALCAのスタッフや周囲の人たち、食って掛かるロッタすらも、柔らかく受け止めている。
    葵自身もあの日からずっと、彼女の腕の中で甘え続けている、そんな気がしていた。

    「・・・だからこそ今日は、聞いてみたい」

    歴戦の戦士であるはずの彼女が、何故そこまで優しく柔らかくあることができるのか。
    ひとたび怒れば嵐を呼ぶ、というのは嘘なのか。
    葵がそう聞くと、何を勘違いしたのか、メルチの答えはこんなものだった。

    『ふふっ、大丈夫。
     大抵のことは、牛乳を飲んで、日向で一眠りすれば、いずれ春は来るわよ?』

    正直、葵ははぐらかされたような気がした。その不満が顔に出たのだろう。
    ふと目をそらすと、メルチはどこか遠くを見ながら、ぽつりとこぼした。

    『・・・本当に怒らなければならないことなんて、滅多にないものよ』

    彼女が怒りのままに剛力をふるい、あの巨大な矛槍で嵐を起こした。
    それはきっと、本当のことなのだろう。
    そしてそれは、彼女にとって恐らく、誇るべきことではないのだろう。

    春待のメルチは今日も、皆を暖かく受け止めながら、ゆっくり春を待っている。

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  • 巌のジェイド

    巌のジェイド

    お酒が大好きな気のいい蜥蜴。
    温かい岩場で寝転がって熟睡していたら、気がついたらセプトピアにいた。
    セプトピアはセプトピアで面白いし、美味しいものもあるので慌てて戻る予定もない。

     アシュリー・ブラッドベリ & 巌のジェイド

    読書好きの夢想少女が出会ったのは、大きなトカゲ! デコボコ合体の二人

    人生の目的を見つけた……そういう事なのかもしれない。
    大柄な男はそう考えていた。
    いや、よくよく見ればそれは男……というか人間とは呼べない代物だった。

    三メートルを超す巨大な体躯、
    そして臀部から伸びる太く長いそれは尻尾だった。
    いわゆるコモドドラゴンと呼ばれる生物に属する姿だが、
    身体の大きさは生物学的にはありえない程だ。

    それはセプトピアの夜の繁華街をゆっくりと歩いていた。

    ほろよいの彼の名は、ジェイドと言う。

    無論使者の彼はモノリウムからやってきたトカゲの戦士だった。

    彼は先程までトックリを片手に考えていた。
    モノリウムにいた頃、
    世界の法則に基づき戦いの日々を送っていたが、
    正直なところ彼にとってそれは生来の習慣であり
    目的意識などまるで無かった。

    周囲がやるように彼も戦い、
    そして戦士としての生き方を矜持と思い込んできたのだ。

    だがセプトピアに来て彼が出会った定理者、
    つまり彼と盟約した相手は戦いとはかけ離れた世界で生きる、
    か弱く小さな少女だった。

    読書に明け暮れ、幻想と恋物語に焦がれる
    年相応の女性アシュリー・ブラッドベリだった。

    彼女は当初合体する相手がジェイドだったことに
    それなりにショックを受けていたようだった。

    たとえ言葉を介すことができなくても、
    さすがのジェイドも彼女の表情を見ていればそれくらいは理解できる。

    彼にとって読書を通じて彼女が読み解き巡らせる空想の世界が、
    どれほどのものかは知るよしもない。
    だが繊細かつ可愛らしい思考の旅なのだと察することくらいはできる。

    そんな彼女にとって、自分のように戦いしか知らず、
    しかも見た目も無骨で滑った皮の異形の者が盟約者となったことは、
    甚だ遺憾に違いないのだろうと察しはついていた。
    会話は交わさずともこちらへの心象は理解しているつもりだった。

    でもそんなアシュリーと言う少女は
    ALCAと呼ばれる戦いに身を置く組織に召集され、
    自らに与えられた任務をこなそうと必死に頑張っている。

    本来このような仕事場は彼女の気質に合わないのは誰もが知るところ。

    それでも必死に皆の役に立とうとする小さな背中に、
    ジェイドの心はこれまでモノリウムで味わったことのない感覚に芽生えていた。

    その背中を少しでも押してあげられたら。

    彼女を見ていてそう感じた。
    これまで無味乾燥に戦いを続け、
    それを自分に与えられた充足感と錯覚していた日々。

    それとは違う誰かのために戦う……柔らかな満足感。
    それをアシュリーとの合体によってジェイドは感じていたのだ。

    少し酔ってしまったのかもしれない、とジェイドはふと思った。
    ちょっとおセンチな気分に浸っていたことに、
    我がことながら自分らしくもないと考えていた。

    事実セプトピアの酒は旨い。

    酒だけではなく料理全般がモノリウムのそれらとは
    比較できないほどに美味だと言わざるを得ない。

    セプトピアの生活から感じる充足感も、
    アシュリーに対するそんな感情を
    湧き立たせたのかもしれない、そう思った。

    その時周囲から警告音が鳴り響く。
    これは近隣で使者による襲撃が始まったという知らせである。
    今頃アシュリーはベッドから飛び起きて、
    パタパタと小走りしている頃だろう。

    この戦いを前にした高揚感、これも忘れられない。
    彼は舌舐めずりをする。
    セプトピアの安穏な生活で
    戦意という名の爪を砥ぐことを忘れたわけではない。

    酔い覚ましにはちょうどいいだろうと、
    ジェイドは飲み屋街を千鳥足で歩く人間達の波を
    掻き分けながら走り出した。

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  • 燕黒のルシア

    燕黒のルシア

    故郷の空を飛んでいるうちに、空に開いた門をくぐってしまい、セプトピアにやってきた。
    セプトピアのロジックの影響で、セプトピアにいるときは単独で空を飛ぶことは出来ない為、
    意気消沈していたが、ジークとトランスすることで再び空を飛べることが分かり立ち直った。

     ジークハルト・クラウス & 燕黒のルシア

    優しき少年と、翼を失った少女

    幼さの残る顔立ちをした少年は、三人の姉に甘やかされ、
    しかも待望の男子と両親にも甘やかされて育ったにもかかわらず、
    むしろ実直さと正義感に溢れた真っすぐな少年に育った。

    そんな少年ジークハルトは、
    才覚を見出され定理者として11歳ながらALCAに召集される。
    そして彼は自らの夢の実現に向けて期待を膨らませることになる。

    彼の夢とは自立し、早く強い大人になって、
    家族を守ってあげられるような強い男になることだ。
    定理者になれるということは強くなれる一つの手段であり、
    自立できたという証拠でもある。

    そんなALCAに所属した彼が最初に出会ったのは、
    モノリウムという異世界からやってきたルシアという少女。

    毎日うつむいていた彼女を、
    ジークが声をかけたのが出会いのきっかけだった。
    徐々に笑顔を取り戻していくルシア。

    しかし、ある日彼はふと目にしてしまった。
    ルシアが一人声を押し殺すように泣いているのを。

    燕の鳥人だった彼女は
    セプトピアのロジックの影響で、翼を失ってしまった。
    嗚咽する彼女の言葉には、望郷の想いが聞き取れた。

    「僕に、なにか出来ることは・・・・・・そうだ!」

    ―――――――……

    「ねえ、ルシア。
     使者はね、合体することで本来の力をセプトピアでも使う事ができるんだって」
    『……へえ。
     でも私には合体する相手なんて…』

    「ルシア、僕と盟約しない?」

    その言葉を聞き、ルシアは泣き出した。
    彼女を泣かせたくなくて言った言葉なのにと焦るジークハルトだったが、
    ルシアは『これは嬉し泣きだよ』と答えた。

    ジークハルトの優しさに触れ、
    思わず感激の涙が零れてしまったのだと言う。
    その言葉を聞き、ジークハルトはホッと胸を撫で下した。

    『「合体!!」』

    翼を失った少女は、合体によって空を取り戻した。

    『もうしばらくは、この世界にいてもいいかな。
     ジークと、一緒にいられるなら…』
    「ん?ルシア、何か言った?」
    『えへへ、なんでもないよ!』

    今日も2人は、空を飛ぶ。

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  • 貴純のリリアナ

    貴純のリリアナ

    モノリウムからやってきた、百合の花の獣人。治癒の力を操る長杖を携えている。
    平和を愛する穏やかな少女だが、
    平和を守るためならどんなこともしでかすような、意志の強さと危うさを秘めている。

     ニーナ & リリアナ

    不屈のニーナ

    『「花園の祝福ッ!」』

    リリアナと合体したニーナが高く杖を掲げると、
    道を覆っていた使者たちは一斉にピタッと立ち止まる。
    やがて使者たちは、「花園の祝福」が放つ多幸感に、戦意を失い、倒れていく……。

    「相変わらず凄まじい威力を持った技ですね……」

    ニーナがつぶやくと、リリアナのおっとりとした笑い声が聞こえた。

    『さあ、道が拓けました。急ぎましょう』

    リリアナの言う通り、今、ニーナを遮る者はない。目的地まで一本道ができていた。
    「アイシャ、ついてきてくださいね」
    合体を解除したニーナが歩を進めながら、背後にいるアイシャに声をかけた。

    『ふーん……まあまあな、技ね』

    アイシャはツンとしながら、ニーナのあとをついていく。
    ニーナとリリアナと一緒に戦う覚悟で来たものの、結局合体するタイミングが無く、
    少し拗ねていたのだ。

    3人が目指した場所は、街の外れにあるALCAの支局。

    「……誰もいないんでしょうか」
    ガランとしていて人の気配を感じない。
    それに壁は傷つき、廊下には物が散乱している。
    それは、この場所もまた使者たちに襲われていたことを意味していた。
    『郊外の支局なら安全かと思ってましたのに……』
    リリアナは悲しげにつぶやいた。
    『それじゃ、ニーナのお目当てのモノもやられてるんじゃ……』

    アイシャが言い終える前に、ニーナは駆け出していた。

    『ニーナ!!』

    ニーナが向かったのは、支局にある指令室だ。
    そこにあるコンピュータから、本部のホストコンピュータにアクセスできる。
    ――この事態を招いたものは何だったのか?
    支局の端末からそれを探るため、ニーナはここにやってきたのだ。
    「……!」
    指令室を見て、ニーナはハッと息を呑む。
    アイシャが懸念していた通り、端末も無残に破壊されていた。
    「……」

    立ち尽くすニーナに、リリアナもアイシャも声をかけづらそうにしている。
    そのうちニーナは諦めがつかないのか、
    破壊された端末に近づき、黙々とイジリはじめた。
    その姿はアイシャには悲痛に見えた。
    いくら修理しようが無駄――
    そうとしか思えないほど端末はズタズタに破壊されていたのだ。

    『ニーナ、あんまり無理しないで。ちょっとさ、息抜きしようよ』
    気遣ってアイシャは言った。
    『それがいいかもしれませんね。ここに来るまで戦い続きでしたし』
    リリアナも同じ気持ちだ。
    『そうそう! 何かして遊ぼうか! 気晴らしにさ!』
    『じゃあ……おままごと?』
    『いや……』
    『かくれんぼ?』
    『ええと……』
    『鬼ごっこ?』
    『もう、子ども扱いはよしてよ!!』
    アイシャはたまらず叫んだ。
    『ごめんなさい。アイシャは子どもじゃないものね……』
    リリアナはクスクスと笑った。
    アイシャは不満そうに「んもお……」と腕を組んで行こうとする。

    『何か面白そうなものがないか、探してくるよ』
    「結構です」
    ニーナは目もくれずピシャリと言った。
    「私は任務をまっとうします」
    『任務ったってそれがそんな状態じゃ――』

    そう言いかけた瞬間、部屋が次々と淡い光りに照らされはじめた。

    『!!』

    部屋のあちこちにあるモニターが息を吹き返したのだ。
    「……これで何とかなりそうですね」

    そして、ニーナは淡々とキーボードを叩き始める。
    ニーナは、不可能としか思えなかった端末の復旧をやり遂げてしまったのだ。
    ――忘れてた。ニーナは天才だった。
    リリアナもアイシャも、その小さく可憐な背中をただただ唖然と見つめていた。
    一方、ニーナは目的だったホストコンピュータへのアクセスに成功し、
    この状況を分析するため、深い思考の海へと沈んでいった。

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  • 輪菌のシータ

    輪菌のシータ

    モノリウムからやってきた、キノコの獣人少女。
    見た目によらず博識で、モノリウムの植物に精通。
    セプトピアには研究目的でやって来たが、
    好奇心旺盛で、気になったことは調べずにはいられない。
    武器は多彩なキノコを詰めたキノコポットと、そこから放たれる様々な胞子。

     縁 & シータ

    危険なディナー

    「さあ、シータさん特製、キノコ砲弾です!」
    キノコポッドからポンポンと胞子が飛び出し、次々敵にまとわりつくと、
    それを吸い込んだ敵が力を失い倒れていく。
    それを見て、縁はホッと一息。敵を倒して安心したわけではなく―
    シータに振り回された疲れからくるものだった。

    モノリウムからやってきたキノコの獣人少女にして、天然のマッドサイエンティスト、
    好奇心旺盛なシータにとって、
    セプトピアの世界はまだまだ興味深い不思議なものであふれているようで、

    『これは興味深い!』

    と、集中モードに入ると、合体のことも忘れ、戦闘そっちのけで調べものを始めてしまう。
    今回の戦闘でも、シータの気持ちを戦いへと向けるのに一苦労だったのだ。
    縁とシータは合体を解除して、支局に戻る。
    するとシータは一目散にどこかへ向かって行った。

    「シータさん、またですか!?」

    慌てて追いかける縁。
    シータがやってきたのは台所だった。

    『戦闘中、美味しそうな料理を思いついたの』
    「……やっぱり」
    『だから、今晩は私が料理を振る舞おうと思って』

    ニッコリと笑うシータ。
    ひきつった笑いを浮かべる縁。
    自分の研究のためにセプトピアにやってきたシータは、
    盟約することになった縁の日常を見ていたと思ったら、突然「料理」に興味を示したのだ。

    『様々な材料を組み合わせ加工し、まったく別の、料理というものにしてのける。
    この技術は大変、興味深い! 私もやりたい!!』

    しかし― 今まで縁が口にしてきたシータの料理は激マズなものばかり。
    縁ひとりであるなら、我慢して口にしてきたが、仲間たちが口にしたら……
    今後のALCAの業務に支障をきたすことは間違いない。
    けれども、目を輝かせて楽しそうに料理をしているシータを見ていると、
    悪い気がして縁には止めることができなかった。

    と、迷っている傍から、シータが割った卵は殻が入ってグチャグチャに。

    「あああ! シータさん慌てず卵は一個一個丁寧に割りましょう!」
    『む?卵の殻は混じってはいけないのか?カルシウムが摂れると思うのだが―』

    息つく間もなくコショウを取り出すシータ。
    その危なっかしい手つきはドバーッとコショウが入りそうな予感がプンプン。

    「ダメですシータさん、コショウは味見しながら少しずついれてください!」
    『ぬ?コショウには薬効があるのだが・・・なるほど、適量は確認するべきだな!』

    『よーし綺麗に切れた!』
    「ダメですシータさん、具はもっと細かく刻んでください!」

    『―隠し味・・・ よかろう、これだな!』
    「ダメですシータさん、隠し味はちょっとだけです!板チョコ1枚丸ごとはダメ!」

    『ナツメグがない! では私特製のこれを代わりに!』
    「ダメですシータさん、その怪しいキノコ粉を入れるのは止めて!」

    その後もファインプレーで、シータのデンジャラス・クッキングを回避していく縁。

    『ありがとう縁。今夜の料理は上手くいきそう。きっと、忘れられない味になる!』

    シータの笑顔にホッとした気持ちにもなるが、縁の苦労の日々はまだまだ続きそうだ。

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  • 鉄牙のライア

    鉄牙のライア

    モノリウムからやってきた、狼の獣人少年。
    父母は群れを率いていた頭目であったが、
    とある使者に殺され、その復讐のため、
    敵を追い求めてセプトピアにやってきた。
    頭に血が上りやすい激情家だが、
    正義を重んじる信念も持つ。

     聖那 & ライア

    咆哮、再び

    「聖那戻れ!! 戻るんだ!!」

    司令部からの声は、聖那には届かなかった。
    気がつくと無我夢中で走っていた。
    数百メートル先――目と鼻の先で、今、仲間が苦しんでいる。
    それを知った途端、聖那は向かわずにはいられなかった。
    現場は、ショッピングモール。
    聖那が息を切らして、辿り着いた頃にはあちこちが破壊され、瓦礫の山が築かれていた。
    聖那は、敵に気づかれないように地下へと降りていく。
    司令部と仲間との連絡が途絶えたのは、地下2階の駐車場だった。
    戦闘不能に陥り、そこに避難しているはずだった。

    「私よ。無事?」

    聖那は声をひそめて、ロジグラフで仲間に呼びかけながら真っ暗な駐車場を進む。

    「聖那!」

    安心しきった声とともに、車の陰に身をひそめていた仲間が聖那の前に現れる。
    と、同時に驚いた顔を見せた。

    「聖那……あんたトランスしてないじゃない!」

    そう。今の聖那は、一般人と変わらない。
    パラドクスゾーンに巻き込まれれば、逆理病に冒される危険もあるのだ。

    「そういうわけだから急ぎましょう。今はあなたの避難が最優先」

    そう言って、仲間の手を引き立ち去ろうとした時だった。
    凄まじい音とともに天井が崩れ、真っ暗な駐車場に光が差し込む。
    やがて聖那に気づいた敵――巨大なワニの獣人が瓦礫の中から現れた。

    『飛んで火にいる夏の虫だな……』

    不敵に笑う敵に、聖那は迷うことなく仲間に告げた。

    「私が囮になる。あなたは逃げて」
    「でも!」
    「大丈夫。逆理病になるようなヘマはしないから」

    聖那は仲間を安心させようと微笑むと、敵に向かって行った。

    『その勇気だけは誉めてやる……勇気だけはな!!』

    敵は、容赦なく向かって来る聖那に拳を突き出す。
    聖那はその拳を間一髪避けた。

    『なに!?』

    何かの間違いだろう、と自分に言い聞かせるように敵は再び聖那に襲い掛かる。
    再び、聖那は紙一重で敵の攻撃を躱す。

    『ちょこまかと!』
    「たいしたことないわね。アイツに比べれば……」
    『アイツ……?』
    「あんたよりももっと強いヤツがいたってことよ。
    アイツに比べれば、たいした攻撃じゃないわね」
    『小癪な!!』

    聖那の計算通り、挑発にのり、敵はムキになって襲い掛かってきた。
    もう敵の目には聖那しか映っていない。
    聖那は、横目で仲間が離れていくのを確認し、ひとまず安心する。
    だが問題は、これから自身のピンチをどう切り抜けるかだ。
    敵の攻撃を必死に避け続けていた聖那だったが、ついに拳がかすめ、聖那は跪いた。

    『手間をかけさせやがって……』

    敵は聖那へと近付いた。そしてパラドクスゾーンも聖那の足元へ広がってきた。
    完全に勝ちの目の無い戦いであったが、それでも聖那の闘志は消えることはなかった。
    聖那は立ち上がると敵に向かってファイティングポーズをとった。

    『そうか……死にたければ死ね!!』

    敵のトドメの一撃が聖那に迫る。
    その時だった。
    物陰から狼のような影が飛び出し、聖那の身体に体当たりした。
    その衝撃で聖那の身体は投げ出され、敵の攻撃は空振りに終わる。
    驚くのも束の間、聖那は見覚えのある狼のようなその姿を見て叫んだ。

    「ライア!」
    『相変わらず無茶しやがって……』

    ライアは少し呆れたような顔を浮かべていた。

    「助けに来てくれたの!?」
    『言っただろ。お前が手こずることがあったら助けに来てやるって……』

    照れくさそうなライアを見て、聖那は思わず微笑む。

    『ボヤボヤしてる場合じゃない。やるぞ』
    「やるって?」
    『合体ってやつだよ。そうじゃないとヤツに勝てないだろ?』
    「あなたと私が合体……!?」

    テストもしていない相手との合体に戸惑う聖那。しかし今は迷っている場合ではない。

    「……わかった。盟約しよう!」

    こうして合体する聖那とライア。
    その瞬間に、聖那は想像以上のものを感じた。
    今、自分の身体に漲る力を。

    『ウオオオオオッ!!!』

    敵は再び襲い来る。

    『「紅月の牙ッ!!!」』
    『!?』

    聖那の鋭い一撃が、敵の身体をはね飛ばした。

    「すごい! すごいよライア!」
    『感心してる場合じゃない。俺のあの技を覚えているか?』
    「……もちろん」

    聖那は力強く頷いた。忘れるわけがない。
    かつて聖那の窮地を救ったライアのとっておきの技だ。

    『「ロジックドライブ! 月光の咆哮!!!」』

    聖那とライアの魂の叫びが重なり合う。その咆哮の衝撃波をうけ、敵はがくりと崩れ落ちた。

    『……やるな』
    「ライアもね」

    かつて拳を交えた敵と手を結ぶ――聖那は最高の高揚感を覚えていた。

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  • 闘舞のアイシャ

    闘舞のアイシャ

    モノリウムからやってきた、山猫の獣人少女。
    母はモノリウムでは知らない者がいないほどのダンサーで、
    その母を超えるため、異文化に興味を持ってセプトピアに渡って来た。
    舞い踊るような体術と気功の力で戦う。

     ニーナ & アイシャ

    ニーナ、お姉さんは私なんだから!

    『そこならここから近い! 私たちが行くわ!』
    司令部に通信で伝えると、アイシャは『行こう!』とニーナの手を引いて走り出した。
    敵が出現したのは、ここから数百メートルの距離。
    アイシャとニーナがその近くにいたのはまったくの偶然なのだが、
    (今日はツイてる!)
    と、アイシャは心を躍らせていた。

    アイシャとニーナのコンビはとにかく強かった。
    今まで7回出撃し失敗はゼロ。しかも相手は瞬殺。
    その戦績に、アイシャは相当な自信をつけ、次の出撃はいつだろうといつもウズウズしていた。
    そんな時に現れた敵の出現。気持ちがはやらずにはいられなかった。

    「ちょっと待ってください!」

    現場が目前に迫った時、ニーナが突然手を離した。

    「もう少し敵の情報を仕入れてから、戦闘に臨みませんか?」
    『はあ?』
    「今まで上手くいきすぎていて、少し不安なんです……」

    真剣なニーナの顔を見て、アイシャは余裕たっぷりに笑った。
    そして妹を励ます姉のように言い放つ。

    『ニーナ、怖がることないよ。大丈夫大丈夫。
    おねーちゃんにまかせなさい!
    私たちは無敵なんだから!』
    「けど!」
    『いいから早く行こう!』

    問答無用で、再び、ニーナの手を引いて走り出すアイシャ。
    こうなってしまったら、やるしかない。
    現場に到着、アイシャと合体したニーナの前に現れた敵。
    それは、トリトミーのロボット型の使者だった。

    『よーし! いつも通り、一瞬で決めちゃうよ!!』

    ノリノリで指示を出すアイシャに従い、
    ニーナは素早い体術で敵に迫ると、
    肉球のついた手のひらから気功を放つ。
    この一撃で、敵の身体は内部から破壊され、戦闘不能に陥るのだ。
    いつも通りの手応えを感じ、

    (フフッ……また勝ってしまった。えっへん)

    と、ほくそ笑むアイシャ。
    しかし――敵は動いた。

    『ええええッ!? なんでええええッ!?』

    一方、ニーナは冷静に敵の反撃をかわし、距離をとる。

    『一体どうして……!?』

    うろたえるアイシャに、ニーナは淡々と答える。

    「相手はロボットなんですから、内部は機械です。
    だから、いつもの気功は通じないんでしょうね……」
    『え!? え!? だったらどうすんの!? 勝てないじゃん!!!』

    アイシャの頭は、完全にパニックだ。

    「大丈夫です」

    さきほどとは逆に、今度はニーナが余裕の笑みを見せた。

    「内部からの破壊は無理なら、外側からコツコツとダメージを加えていけば……」
    『けど……』
    「アイシャ、怖がることはありません。私たちは無敵、なんでしょう?」

    ニーナの気品あふれる優しい笑顔に、アイシャの動揺は徐々におさまっていった。

    『……わかった。ニーナ、ごめんね』
    「?」
    『次は、ちゃんとニーナの言うことも聞くね……』

    すっかり、しおらしくなったアイシャの言葉に、

    (どっちがお姉さんなんだか……)

    と、ニーナは思わずクスッと笑った。

    かくして。
    初出撃から今まで、7連続で相手を瞬殺してきたニーナとアイシャにとって、
    その日の戦闘は初めての長丁場。トランスリミットぎりぎりまで粘る激闘であった。
    支局へ戻るトランスポーターの中、疲れ果てて眠るアイシャと、

    (むにゃむにゃ・・・やっぱり私たち、無敵・・・)

    その傍らに、見守るニーナがいた。

    「これからも、がんばりましょうね、“おねーちゃん”」

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  • 美棘のローダンテ

    美棘のローダンテ

    モノリウムからやってきた、銀狐の女獣戦士。
    冷静に物事を見極めるクールな性格。
    美しい毛並みを乱すことなく敵を討つ華麗なる剣士で、
    武器は茨で出来たレイピア。
    セプトピアには、没落した一族の再興を求め、
    その手がかりをつかむためにやって来た。

     ヴェロニカ & ローダンテ

    「ギムレットには早すぎる」

    繁華街の外れにあるそのバー。カウンターにはヴェロニカただ一人。
    この界隈では酒に酔った使者が一般市民をトランスジャックする事件が多発していると聞いていたが、今宵はその気配は無さそうだ。
    静かだからこそ、人が店に入ってくると、すぐに気がついた。
    そこにいたのはヴェロニカと同じ銀髪の女――ローダンテだった。

    『……隣、空いてるか?』
    「聞くまでもないだろう」

    ガラガラの店内を見回してヴェロニカはクスッと笑う。
    ローダンテは硬い表情のまま無言でスツールに腰かけた。
    突然の再会だったがヴェロニカに驚きはなかった。
    ローダンテは先日の戦闘の際、偶然出会ったモノリウムの使者だ。
    ヴェロニカはその時からローダンテと再び巡り会う運命のようなものを感じていた。

    『……私と盟約しないか? お前は、私が力を貸すべき相手である気がしたんだ』

    ヴェロニカが感じた運命をローダンテも同じように感じていたようだ。
    だが、ヴェロニカはすぐに返事はしなかった。

    「……まぁ、先ずは一杯飲んだらどうだ?」

    答えをはぐらかすヴェロニカに、ローダンテは少し戸惑いながら、仕方なそうに従う。

    『あまり甘くない酒がいい……』
    「ならば、この辺りだな」

    と、ヴェロニカはメニューを指差す。しばし考えた後、ローダンテはバーテンを呼んだ。

    『ブラッディ・マリーをくれ』

    それを聞いて、ヴェロニカがまたクスッと笑った。ローダンテは再び戸惑う。

    『? 何がおかしいんだ?』
    「酒にも言葉があるんだ」
    『言葉?』
    「花言葉のようにな……ブラッディ・マリーには『私の心は燃えている』という意味がある。
    たまたまかもしれないが、そんなお前の強い心情を表しているのかな……」

    それを聞いてローダンテは神妙な顔を浮かべた。

    『妙なものだな……図星だ。私の心は燃えている』

    ローダンテは、セプトピアの世界に来た理由を打ち明けた。それは一族の再興だ。
    今や滅びゆく種族になってしまった自分の一族に再び栄華を取り戻したい――
    その手立てを探るため、ローダンテは別の世界へとやってきたのだ。

    『私には背負わなければならないものがある。
    しかし、この世界では盟約しなければ真の力を出せない。お前に協力してもらいたい』

    力強くヴェロニカに訴えるローダンテ。
    だが、ヴェロニカは黙ったまま。そのまま数分が経過した。
    じれったくなったローダンテがもう一度問いかけようとした時、
    やっとヴェロニカが口を開いた。

    「ギムレット」

    酒の注文か――と肩を落とすローダンテ。

    『ギムレットにも言葉はあるのか?』
    「ある。『長いお別れ』だ」

    それを聞いてローダンテはハッと立ち上がった。

    『それが答えか……私と盟約するつもりないという……』
    「早まるな」

    ヴェロニカは笑いながら言った。

    「私が『長いお別れ』をしたのは、過去の自分とだ。私には長い間背負ってきたものがあった」

    ローダンテの話を聞いて、ヴェロニカは復讐に囚われていた頃の自分と重ねていた。

    「お前は、あの頃の私と似ている」
    『今のお前は背負っているものはないのか?』
    「ああ。お前が今の思いを成就させるのか、それとも別の道を見つけるのか……
    お前がこれからどうなるか見てみたい」
    『そ、それでは……』

    ローダンテが盟約を口にしようとした時、店の外から悲鳴がこだました。
    程なくして司令部からヴェロニカに出撃の命令が通信で入る。

    「このまま静かな夜を期待したが、やはり使者が現れたか……」

    繁華街の裏路地。
    酩酊し、一般市民をトランスジャックした使者が暴れ回っている最中、
    合体したヴェロニカとローダンテが現れた。
    ゴージャスな毛皮を身に纏い、銀髪はネオンに照らされ輝いている。
    その手に握られているのは茨でできたレイピアだ。

    「早速だが、お前の腕を見せてくれ」
    『望むところだ』

    そして次の瞬間、鋭い剣先が目にも止まらぬ速さで敵に襲いかかった。
    その手応えにヴェロニカには満足そうに微笑む。また得難い友を得た――と。

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  • 七輝のサンドラ

    七輝のサンドラ

    モノリウムからやってきた、孔雀鳥人少女。
    本来オスにしかない飾り羽を持って産まれたため、
    凶兆の象徴とみなされ、迫害を受けて育った。
    そのため、いつもオドオドとした気弱な性格。
    セプトピアに来たのも、迫害から逃れるため。

     縁 & サンドラ

    すくわれる時

    「まず卵白だけを泡立ててメレンゲにしておいて、
    それから黄身を入れてかき混ぜると美味しいオムレツができるんです」

    縁がそう言ってやってみせると、サンドラは興味深そうに見つめて、ポツリとつぶやいた。

    『……私も、やって、みたい……』
    「もちろんです! どうぞ!」

    そしてサンドラは縁がやった通りのことをぎこちない手つきで始める。

    サンドラがALCAの保護下におかれると、縁に世話をするよう命令が下った。
    そんな命令がなくとも、縁はそうするつもりだった。
    ALCAにきたばかりのサンドラは、誰とも口を聞かず、
    いつもオドオドと何かに怯えているようだった。
    さらに、身体には至るところに傷痕があった。
    おそらく元いた世界で迫害され、辛い思いをしていたのだろう、と想像された。
    一体どうすれば心を開いてくれるのか――
    サンドラの深い心の傷の前にALCAのスタッフも方法がわからず、縁に託すしかなかった。

    (少し時間はかかるかもしれないけど……)

    そんな不安を感じながら、縁はことあるごとにサンドラに家事の手伝いをお願いした。
    一緒に施設の掃除をし、洗濯をして、ご飯の支度もやった。
    それで心を開いてくれる――
    確信はまるでなかったが、できるだけ一緒にいて一生懸命話しかける。
    縁にはそれしか思いつかなかった。
    その甲斐があってか、最近サンドラはポツポツとやっと言葉を出せるようになり、
    縁はホッとする気持ちだった。

    「ごちそうさま! じゃあサンドラ洗い物を手伝ってください」

    夕飯のオムレツを食べ終えて、皿を片付けようとした時だった。
    サンドラは立ち上がらず、暗い表情でうつむいている。

    気分が悪いんですか? ひょっとして食あたり!?」

    縁が慌てて訊ねると、サンドラは首を横に振って、小さな震える声で言った。

    『……縁……いつも一緒にいる……でも急にいなくなる』
    「え? ああ、急な出撃がありますから……」
    『帰ってくる……怪我してる……かわいそう……』
    「私もまだまだですからね。もっと強くなりたいですけど……」
    『縁の……力に……私、なりたい!!』
    「え……それって……」

    思いがけないサンドラの言葉に、縁は驚いた。

    『私と縁、盟約……私となんか迷惑……?』

    今度、縁が大きく首を振った。

    「そんなことありません! よろんで! 盟約しましょう!」

    こうして心を開きかけたサンドラと縁は盟約を交わし、早速合体のテストをすることになった。

    『大丈夫……かな……、上手くいく、かな……』
    「大丈夫です。私を信じて」

    緊張するサンドラを縁は何度も励まし、最初の合体を開始する。
    眩い光に包まれた後、縁は閉じていた目を開ける。そして、ゆっくりと自分の身体を確認した。

    『やっぱり……』

    自分たちの姿を見て、落胆するサンドラの声。
    それは、縁の身体に「尾羽」がついていたからだ。
    オスにしかついていないその尾羽が、メスのサンドラにあったために、
    サンドラは一族に「凶兆」を呼ぶものだと迫害を受けたのだ。
    あの頃の辛い思い出が脳裏をフラッシュバックしていく。

    (もう、イヤです! こんな姿見たくない!)

    思わず叫び出しそうになったその時だった。

    「すっごーい! キレイ!!!」

    縁の声が弾んだ。

    『え……』

    サンドラの驚きに気づかず、縁は興奮しながら尾羽を広げた。
    「この羽とってもキレイ……嬉しいな、こんな姿になれるなんて……
    サンドラ、あなたと合体できてとっても幸せです!!」

    縁は目を輝かせ言った。
    心の傷の原因であった「尾羽」を生まれて初めて誉められたサンドラ。
    驚くよりも救われた気持ちが広がっていった。

    『うん、私も……』

    胸いっぱいのサンドラはそう答えるのがやっとだった。

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