キャラクター&ストーリー

テトラヘヴン

  • アルテミス

    アルテミス

    テトラヘヴンからやってきた、ミステリアスな「月の女神」。
    長身で細身の美女で、詩をこよなく愛し、詠う。
    盟約者となったパートナーの事を、あたかも月の光が照らすように、優しく見守っている。

     明日葉 学 & アルテミス

    嵐の前

    ニーナたちの分析によって、使者たちが大挙襲来した原因が突き止められた。
    実験段階にあったゲートカードの暴走によって、
    各異世界との間に次々とゲートが開き、
    それを通じて招かれざる客たちが押し寄せたのだ。
    新型ゲートカードを手にした定理者たちの奮闘で、
    市街地での騒動は沈静状態に向かいつつあった。
    しかし、ALCA研究所の暴走しているゲートカードを止めなければ、根本は解決しない。
    ただちにオルガを中心に作戦が立案され、今、実行の時を迎えていた――。

    「よりによってこんな時に……」
    慌ただしく鳴り響く警報に、司令部の一同は苦虫を嚙みつぶしたような顔を浮かべた。
    作戦実行のため、出撃準備をしていた最中に敵が再び大挙して襲来したのだ。
    その目標は、ALCA本部である。
    作戦を続け攻めるべきか、定理者たちを待機させ守るべきか。
    危険を承知のうえで作戦を決行すべきか。
    それとも、中止にして本部を防衛するか。
    現行の作戦では、本部の防衛に当たる定理者は学ひとりだけだったためだ。
    苦悩の表情を浮かべるオルガに歩み寄ったのは学だった。

    「……作戦は続けるべき」
    「しかし!」
    「大丈夫。本部は私一人で守る」

    学の鬼気迫る表情に、オルガも決断する。

    「……わかった。作戦決行だ」

    学の決死の覚悟は、他の定理者たちにも伝わり、士気はいっそう高まった。
    だが、その中で一人、アルテミスが学を心配そうに見つめていた。
    (……あの子、まだ死に場所を求めているのかしら)

    親に捨てられた孤独な出自を抱え、
    今生きる世界に執着を持たず、
    生と死の境界線に憧れのような感情を抱き続けていた学。
    長い間、学を母親のように見つめていたアルテミスは、
    学が抱え続けていた苦悩をよく知っていた。
    仲間たちと歩むことでその闇は消えたように思えたが、
    この危機を前に再びあの感情が蘇ったのか――
    アルテミスの脳裏には、直感的にそんな不安が過ぎった。

    アルテミスと合体した学は、本部の屋上にある狙撃ポイントへ向かう。
    エレベーターの中で、敵の到達予想時間を通信で聞きながら、
    学は無表情のまま静かに目を瞑っていた。
    合体しているアルテミスに伝わるのは、静かな凪の海のような落ち着いた感情。
    学の心の奥底に眠る心理まではわからなかった。

    『……嵐の前の静けさね』

    アルテミスの声が耳元で囁くように聞こえた。

    「え?」
    『あなたの心を表わす言葉……』
    「……嵐」

    学がボソリとつぶやいた。
    その瞬間、学の心がざわめき始めたのをアルテミスは感じた。

    『……あなたの心に炎が見えた。それは自らも焼き尽くす炎かしら?』

    学はクスッと笑うと首を横に振った。

    「……みんなと、約束したんだ」
    『約束?』
    「ぜんぶ終わったら、遊園地にいこうって……」
    『遊園地……』
    「射撃のゲーム。おもちゃのライフルで景品を当てるヤツ。
    私がぜんぶ当てて係の人を困らせてみようって……」

    それを聞いていたのかクロエから通信が入った。

    「そーそー! なんか、楽しそうじゃない?」
    「申し訳ない気もするけど――」

    今度は玉姫からの通信。

    「――キョウトにいる聖那とジゼルちゃんにプレゼントできるもの、
    ゲットできたら嬉しいな……」

    その後、続々と仲間たちから通信が入った。
    いずれも、遊園地で何をしようかという話ばかりだ。
    やがて狙撃ポイントへと到着した学。
    その心は紅蓮の炎に燃えている。
    だが、それは自らを焼き尽くす炎ではない。
    仲間たちとの未来、希望に燃える学の心だ――と、アルテミスに伝わった。
    (杞憂だったわね……)
    今ここにいる学は、もう昔の学ではないと知り、アルテミスは喜びを噛みしめる。

    「敵影、指定距離に到達!」

    司令部からの通信を聞き、学はライフルを構える。
    アルテミスが囁いた。

    『……嵐が来たわ。でも、それが過ぎれば、あとは希望があなたを照らす』
    「―うん」

    一条の光芒。
    先頭の影が音もなく崩れ落ち、押し寄せる使者たちに動揺が走る。
    相手の姿を視認することすら難しい、超・長距離。
    動揺する敵たちに、立て直す隙を与えず次々光の銃弾を当てていく。

    『風よ、嵐よ、しかし我が灯火は消せず』
    「一人も通さない」

    至高の銃撃が、嵐を切り裂いていく。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

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  • ルシフェル

    ルシフェル

    テトラヘヴンからやってきた、謎の魔神。
    その正体は、テトラヘヴンに百年戦争を引き起こした張本人の堕天使。
    セプトピアでの平和な暮らしを楽しんでいる様子だったが・・・

     オルガ・ブレイクチャイルド & ルシフェル

    Fallen Genius

    オルガ・ブレイクチャイルドは定理者として
    人並み外れた潜在能力を持つと分析され、
    ALCA入局当初は大型新人として期待が寄せられていた。

    が、その期待は時とともに諦めへと変わっていた。

    オルガは自尊心が高すぎたあまり、
    使者は自分の栄光のための道具に過ぎないと考え、
    使者とロジックを共鳴し合うという精神が欠如していたのだ。

    その結果、後続の定理者たちが次々と盟約する中、
    自分だけ一度も合体経験がないという独身状態が続いていた。
    次第に焦りを感じ始めたオルガは、
    ALCAの捕虜にされていた使者に手当たり次第交渉するが、
    どの使者もオルガと盟約したがらなかった。

    そんなある日、ALCAに意外な訪問者が現れた。

    強力なロジックを有し、
    セプトピアに害をもたらしかねない
    危険な使者だと目されていた、堕天使ルシフェルだ。

    ルシフェルはALCAとの友好関係を提案。
    定理者との盟約を志願した。

    これを願ってもない好機と捉えたオルガは、
    ルシフェルの盟約者として自ら立候補した。

    ところが、真意が読めないルシフェルを危険視したALCAは
    この申し出を却下し、ルシフェルを追い返してしまう。

    ようやく盟約できると思っていたオルガはぶつけようのない憤りに支配された。

    「なぜ……俺だけがっ……」

    しかし、オルガの運命を一変させる事件が発生した。

    ALCAの捕虜だった使者の一人が脱獄し、オルガにトランスジャックしたのだ。
    美親たちは速やかに暴れる使者を殲滅し、オルガを救出。

    しかしオルガはトランスジャックの代償によって、
    なんと定理者の力を持つロジックカードを失ってしまう。

    さらに使者の脱獄はオルガの手引きによるものだという疑いをかけられ、
    オルガはALCAに居場所を失ってしまう事態に。

    不運な己の運命を呪い、自暴自棄になるオルガ。

    そんな時、オルガのもとに現れたのが──ルシフェルだ。

    ルシフェルは失くしたオルガのロジックカードを差し出すと、
    オルガが無実であることを信じると言った。
    そして、共に人と神が共存する楽園を創造しようと提案した。
    さらに、彼の意志に賛同する大勢のセプトピアの人々がいることを伝えた。

    ルシフェルの意志に賛同する人々は、
    定理者オルガを新たなリーダーとして迎え入れた。
    彼らの称賛の声は、オルガの心の奥底にあった
    自尊心と承認欲求を満たすのに十分だった。

    それは女神ネメシスが指摘した、人間の最も弱くてもろいロジックだ。

    全てはルシフェルの謀略だった。
    定理者オルガをALCA内部で孤立させ、自分の味方に引き入れるためだ。

    オルガはルシフェルの声に誘われ、ルシフェルとの盟約を決意。

    「オルガ・ブレイクチャイルドは、ルシフェルにこのロジックを捧げることを誓う」
    『ルシフェルはオルガ・ブレイクチャイルドにこのロジックを捧げることを誓おう』

    一人の天才が出会いに恵まれなかったのは、
    ルシフェルと出会う運命にあったから。
    ――なのかどうかは、それこそ神々すらも知る由はなかった。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

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  • ヴァルキリー

    ヴァルキリー

    テトラヘヴンからやってきた、「戦の女神」。
    小柄だが剣の達人であり、冗談の通じない真面目な性格。
    奔放なパートナーに振り回され、ちょっと苦労性の面もある。

     クロエ・マクスウェル & ヴァルキリー

    ロンリー・ウォーリアー

    ティーブと合体したクロエが研究所へと続く路上に降り立つと、
    無数の視線が彼女を突き刺した。
    それは研究所の前でたむろしていた使者たちだ。
    その時クロエは、よくある西部劇の一場面のようだと思った。
    町の酒場にふらりとやってくる流れ者。主人公の凄腕のガンマンだ。
    すると、その瞬間、酒場に賑やかに笑っていたならず者たちから笑顔が消えて、鋭い眼光を主人公に向けるのだ。

    「――って映画みたいじゃない?」
    『観たことないが面白そうだな――』

    そう言って、ティーブはイタズラっぽく笑った。

    『――で、その後どうなるんだ?』
    「決まってるじゃない……ド派手な撃ち合いよ!」

    クロエが言い放つと、無数のミサイルが放たれる。

    『!!』

    突然の攻撃に敵たちも面食らった。
    使者たちに炸裂したミサイルは、轟音を上げ爆発していく。
    辺りは爆風が吹き荒び、白煙が舞い上がる。

    「まだまだ」

    クロエはニヤリと笑う。
    これで終わりではないことは百も承知だ。
    白煙の中から雄叫びを上げて、無数の使者たちの影がこちらの向かってくるのが見えた。

    「いっくよ! クレイジーパワードキャノン!!」

    お次は肩部のキャノン砲から放たれるビーム。連射モードで乱れ打ちだ。

    『こりゃ敵に当たってるかどうかわかんねぇな』

    ティーブも思わず笑ってしまう。

    「いいのいいの! 派手にやるほどいいんだから!」

    クロエの言う通り、考えなしに滅茶苦茶やっているわけではない。
    これは立派な作戦の一部だった。
    倒しても倒しても敵は続々と湧いて出てくる。
    クロエのド派手な攻撃が呼び水となって、
    研究所の内部からも続々と使者たちがやってきていたのだ。
    この間に、はるか上空で仲間たちが研究所に突入するタイミングを見計らっているはずだ。
    クロエの役割は、陽動。
    敵の目を引きつけ、仲間たちを無事に潜入させること。
    なので、ド派手に攻撃すればするほど効果バツグンなのである。

    「よーし、ここらへんで……グレートフルブレークバーストッ!!」

    と、ミサイルのビームの一斉放射で、至るところが爆発。爆発。大爆発。

    『……こんな性に合った任務はねぇな』

    ド派手な火柱を眺めながらティーブのつぶやくと、クロエはうなずく。

    「陽動って……サイコーッ!」

    なにせ、思う存分暴れ回っても、誰も怒らない作戦なのだから、クロエもノリノリだ。

    『ギャアアアアオッ!!!』
    『「!?」』

    凄まじい哭き声とともに、炎の中から、巨大なワイバーンが現れた。
    だが、クロエは動揺することなく、むしろ楽しげだ。

    「ティーブ、サンキュー!」
    『ラジャー』

    クロエはティーブとの合体を解除すると、ゲートカードでヴァルキリーを呼び出す。

    「だって、ドラゴンっていったら、やっぱ剣で倒すものじゃない?」
    『なるほど、竜といえば剣で――って、そんな理屈があるか!?』

    などと、真面目に返すヴァルキリーの手を取るクロエ、そして合体。
    対するワイバーンは、クロエが先ほどまでやっていたことを真似をしているのかように、口から炎を乱れ打つ。
    それを躱すクロエの動きは早い。
    炎の間隙を縫い、踊るように敵へと近づくと、高く跳躍。
    あっという間にワイバーンの鼻先に姿を現した。

    「ハロー、ドラゴンちゃん」

    と、相手をおちょくるように笑顔で手を振るクロエ。

    『!!』

    ワイバーンは再び炎を吐き出す。

    「うりゃあああああっ!!!」

    だが、その炎をクロエの大剣が切り裂いた。
    真っ二つに割れた炎の中から、現れたクロエの身に纏う鎧、そして大剣が黄金色に輝き始めた。
    クロエが再び大剣を振り上げる。

    「ゴールデンッ!ファイナルフィニッシュソオオオドッ!!!」

    大剣は黄金色の軌跡を残しながら、ワイバーンを一気に斬り裂いた。
    クロエが着地すると、ワイバーンの断末魔の叫びが聞こえる。
    だが、

    『ギャアアアオッ!!!』

    再び、ワイバーンの叫びが聞こえた。
    別のワイバーンたちの群れが姿を現したのだ。

    『仲間の叫びを聞いてやってきたか……義理堅い種族だ』

    苦笑いを浮かべるヴァルキリー。
    クロエは怯むことなく不敵な笑みを浮かべた。

    「陽動って言ってもさ……私がぜーんぶ倒しちゃってもいいんでしょ?」

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  • ヴィーナス

    ヴィーナス

    テトラヘヴンからやってきた、「愛と美の女神」。
    思わず目を引く魅力的な体の持ち主。
    どんなものにも恋心をいだき、全てを愛する女性。
    隙あらば男女関係なく愛の言葉を語りかけている。

     揺音 玉姫 & ヴィーナス

    癒しの障壁

    星の力によって使者たちを撃退した学。
    避難民たちと一緒に、学は星と冥に肩を担がれて高層ビルから降りてきた。

    「学っ!」

    その声に反応して、学は顔を上げる。
    こちらに駆け寄ってくる玉姫の姿が見えた。

    「怪我してるの?」
    「……怪我だけで済んでよかった」

    学が星に向かって微笑むと、星も微笑み返す。
    それを見て、玉姫も安心して微笑んだ。
    だが、周囲を取り巻く怪我人や疲弊した人々の姿に、すぐにその笑顔を消した。

    「学たちがこの人たちを守ってくれたのね……カードが届いてよかった」
    「あのカードは玉姫が?」

    玉姫は頷くとポケットに入れていた淡く光るカードを取り出した。

    「……詳しくはまだわからないけど、
    このカードで別の世界にいる盟約者を呼び出せるみたい」
    『だから星がこの世界に……』

    冥が感慨深げにつぶやいた。

    『玉姫は一人なの? 盟約者は?』

    星が訊いた。

    「小玲は一旦ジスフィアに帰ってもらったの。状況によってはまた来てもらうわ」
    『状況によって……って?』

    よくわからず戸惑う星。

    「たとえば、今、私たちを助けてくれるのは……」

    玉姫がそう言った瞬間、カードは閃光を放った。
    そして、その光の中から飛び出したのはヴィーナスだ。

    『もう心配したんだからッ!!』

    現れるや否や、玉姫に抱きつくヴィーナス。

    『セプトピアが大変だって聞いて、私ずーっと早く呼んでって念じてたのよ。
    でも良かったわ。玉姫が無事で……』

    そう言いながら頬ずりをするヴィーナスに玉姫は苦笑い。

    「……私もヴィーナスに会えて嬉しいわ。でも喜ぶのは後にしよう?」
    『あッ! いけない私ったら……』

    ヴィーナスは照れてペロリと舌を出す。

    「! 来た……」

    その時、玉姫たちは不穏な気配を感じる。
    再び使者が玉姫たちの周囲を囲むように現れたのだ。
    一難去ってまた一難――学、星、冥、そして避難民たちもその状況に戦慄する。
    だが、ヴィーナスは余裕の表情だ。

    『大丈夫。任せて』

    頷く玉姫。次の瞬間、2人は合体する。
    ヴィーナスと合体した時の玉姫の武器は鞭のように使うリボン。

    『こんなふうな使い方もできるのよ』

    玉姫がリボンを掲げると、リボンはスルスルと伸び続け、
    それは巨大なドームとなって周囲を取り囲んだ。まるでバリアーのように。

    「これなら敵も入ってこられない……」

    驚きながら学がつぶやく。

    『ウフフッ、ただのバリアーじゃないわ』
    「?」

    学が訊こうとした瞬間、リボンの中にいた人々から次々と声が上がった。

    「痛くない!」
    「治ったぞ!」

    リボンから放たれる力によって傷つき疲弊していた人々が続々と回復していったのだ。
    それは学の怪我も例外ではない。

    『すごい……』

    驚く星。学も、冥も、さらにパワーアップしたヴィーナスの癒しの力に目を見張った。

    『どう? 名づけてラブリーバリアーよ』

    得意げなヴィーナスに、玉姫は笑って返した。

    「それ今、適当に考えたでしょ?」
    「玉姫、聞こえるか!?」

    突然聞こえたのはオルガの声だった。途絶えていた司令部との通信が回復したのだ。

    「オルガ? 聞こえるわ! 私は無事よ」
    「よかった……まだ戦えるようなら、至急クロエのところに向かってほしい」
    「クロエのところ……?」
    「現在、港付近の海底で交戦中と確認できた。クロエを狙って続々と敵が集まっている」
    『よし今度は海の中ね!』

    それを聞いたヴィーナスがはりきる。
    だが、玉姫に考えが。

    「ありがとうヴィーナス。でも適材適所があるから。
    水の中か……今度はあの子の力が必要になるわね」

    そう言った途端、バリアーの外でリボンが淡く光り、動き出す。
    一瞬のうちに、敵たちに向かってリボンが巻きつくと、
    敵たちはまるで大きな愛に包まれたかのように敵意を失い、グッタリと弛緩。
    あっという間に、敵の殲滅が完了した。

    一体倒したかと思えば、続々と現れる敵にクロエは手を焼いていた。
    どれほどの時間を戦闘に費やしていたのか。
    クロエの体力もロジックも限界に近づいていた。
    (このままじゃトランスリミットがきちゃうよ……)
    クロエの焦りを嘲笑うかのように敵の数はなおも増え続ける。
    ざっと見ただけで50体はいそうだ。

    「!!」

    その時だった。
    突如現れた魚の群れが、敵とクロエの間を割って入ったのだ。

    「なんなの……!?」

    クロエが驚いてると、群れをなしたサメや巨大なイカが現れ、敵を襲い始めたのだ。
    よく見ると、その中に、人影が混じっている。
    それは乙姫と合体した玉姫だ。

    「乙姫、まだまだ足りないわ! もっと仲間を呼んで!」
    『任せて!』

    (魚を操っているのは、タマヒメ……?)
    唖然としているクロエに向かって、玉姫が叱りつけた。

    「もう、クロエは無茶なんだから! 一人で飛び出すなんて!」
    「え? だってタマヒメが連絡つかなくてピンチだって言うからさ!」
    「え? そうだったの? ありがと……」

    頭ごなしに怒ってしまったのを反省して頬を赤らめる玉姫。
    一方、クロエは気にしていない様子で、玉姫と背中合わせになった。

    「まぁ、ともかくタマヒメがいれば100人力だね。指示だして」
    「うん、わかった……」

    玉姫の表情が再び引き締まる。
    玉姫とクロエのタッグは、海中でも健在だ。

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  • アテナ

    アテナ

    テトラヘヴンからやってきた、「知恵と戦略の女神」。
    テトラヘヴンの魔神たちがセプトピアへのゲートを開いたことを知り、他の女神たちと共にその後を追ってやってきた。
    正義感と、尊い命が失われるのを何よりも嫌う心の優しさを持つ女性。

     剣 美親 & アテナ

    禁断の定理者、再誕

    その日、運命の出会いが待っていることを剣美親はまだ知らなかった。
    美親は、家族想いの妹・しおりと共に、
    父・剣廉太郎の誕生日プレゼントを買うために街へと繰り出した。

    かつての禁断のオーバートランスの代償として、
    彼の身体を形成するロジックカードの一つが欠落。
    定理者の力を失っていた美親は、村人Aとして家族と共に慎ましい生活を送っていた。
    自分の運命を受け入れ、家族を守るために生きる道を進んでいたのだ。
    失った自分のロジックカードさえ見つかれば、
    再び定理者として戦いたいという想いを封印して……。

    そんな時、使者襲来の警報が流れる。
    魔神ベリアルが民間人にトランスジャックし、暴れていたのだ。

    正義感が強かった美親は、しおりや周囲の民間人を逃がすために、
    一人でベリアルに立ち向かった。しかし生身の人間だった美親が敵う相手ではない。
    今の美親には、ベリアルの注意を引き付けながら逃げることが精一杯だった。

    そんな美親の手を取り、逃走を手助けする謎の女性が現れた。
    しかもその女性はなぜか美親の名前を知っていた。

    『私はアテナ。貴方に会いに来ました』

    美親の盟約者として悪しき神々からセプトピアを守りたい。
    アテナはそう告げると、美親に一枚のロジックカードを差し出した。
    それは美親がかつて失った、定理者の力を秘めたロジックカード。
    美親と共に世界を守りたい一心でアテナが探し出したのだ。
    美親は戸惑いを隠せなかった。
    発見が絶望視されていたロジックカードがまさか見つかるなんて……。

    そこへ駆けつけるしおりと廉太郎。
    美親の無事を喜びつつ、美親が再び定理者に戻れることを知ると、
    しおりは必死に止めようとした。もう二度と美親を苦しませたくなかったからだ。

    しかし、封印していた美親の想いが溢れ出す。

    「守りたいんだ! 守れる命が、一つでもあるなら」

    美親の決意の眼差しを目の当たりにして、しおりと廉太郎は悟った──
    もはや彼を止めることはできない。止まっていた美親の時間が動き出したのだ。

    遡ること二年前。美親はジスフィアの盟約者・羅刹と共に、
    ホンコン支局所属の定理者として街の治安に当たり、
    禁断のオーバートランスを実行した。
    その理由は──死にかけていたジスフィアの使者を守るためだった。
    そんな美親の過去を知ったアテナは確信していた。
    たとえ異世界の敵だとしても命を決して見捨てない。
    自分の犠牲すら厭わない。
    そんなロジックを持つ美親の盟約者になりたい、と。

    『貴方と守りたい。この世界を』
    「……アテナ。俺と盟約してほしい」

    こうして禁断の定理者は再び戦場へと降り立った──。

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  • ケツァルコアトル<br>(ケッツー)

    ケツァルコアトル
    (ケッツー)

    テトラヘヴンからやってきた、蛇の魔神。
    マスコットの様な可愛い姿はセプトピアに適応した姿で、本来は翼ある大蛇の姿をしている。
    自分を畏れ敬う相手を求めていた。

     七星 縁 & ケツァルコアトル

    ディナー・オア・ダイ

    ――作戦が始まった。
    ケッツーと合体した縁は、アシュリーと葵を抱え、輸送機から飛び立った。

    「うわあああああッ!!」
    「きゃあああああッ!!」

    高度33000フィートからの急降下に思わず悲鳴を漏らすアシュリーと葵。
    だが、縁の表情は引き締まったままだ。
    縁の使命は、アシュリーと葵の2人を研究所まで無事届けること――。
    雲を突き抜けると、眼下に研究所が見えてきた。
    そして、その周辺に上がる火柱も。
    (あれはクロエ先輩が……)
    地上で陽動作戦をしているクロエの奮闘を想像し、縁はいっそう気持ちを引き締める。
    縁とは対照的に、

    『なア! なア! なア! これが終わったら何を食わせてくれんだ!?』

    ケッツーには緊張感がまるでない。
    ため息混じりで返す縁。

    「……なんでも作りますよ。ケッツーは何が食べたいですか?」
    『そうだなァ、ええと……あ、焼き鳥!』

    その瞬間、バサッと羽音が聞こえたかと思うと、黒影が縁たちを覆った。
    鋭い眼光を放つ鳥型の使者が3体。縁たちの周りを羽ばたいている。

    「ケッツーが焼き鳥を食べたいなんて言うから!」
    『オレのせいじゃねぇ!!』

    だが、縁は落ち着いていた。

    「しっかりつかまっていてください! あと、目が回りますので気をつけて!」

    アシュリーと葵に声をかけると、迎撃態勢に入る。

    「いっきますよぉおおおおおお!!!」

    縁が叫んだ瞬間、竜巻が大蛇のようにうねり彼女の身体に巻きつく。
    そして、敵たちに突進していった。
    その衝撃と竜巻に巻き込まれ、一瞬にして3体の敵は飛行能力を失い、
    空から地面へと真っ逆さまに落ちていく。

    「お見事です……!!」
    「落ち着いてますね、さすがベテランです」

    縁の手際よい攻撃に、感心の声を上げるアシュリーと葵。
    ところが縁は、
    (わ、私がベテラン……??)
    と、照れて頬を赤らめた。

    『当たり前だ! オレの巫女を舐めんじゃねえ!!』

    口は悪いがケッツーも縁が誉められて嬉しいようだ。
    それを聞いて縁は苦笑いを浮かべていると、再び羽音が聞こえた。

    「!!」

    新たな鳥型の使者が縁たちに接近しようとしている。
    しかもその数は数えきれないほどの大群。
    本部を襲っていた使者たちが研究所の異変を察知し引き返してきたのだ。
    (けど、今はこの2人を届けないと――)
    縁は再び気を引き締めると、研究所に向かって急降下を始める。
    使者の大群を振り切るつもりだ。
    それを見て使者たちもスピードを上げる。
    残り300メートル、200メートル、100メートル……。
    研究所が縁の目の前に迫って来た。
    (あと少し……もう少し……)
    だが、その瞬間、縁の身体に激痛が走る。
    敵の鋭い嘴が縁の背中を斬り裂いたのだ。

    「うッ」
    『縁ッ!!』

    ついに縁は追いつかれ、続々と敵たちが襲いかかる。
    縁は痛みに耐えながら必死にアシュリーと葵を庇った。
    (なんとか2人を送り届けなきゃ……でも、どうすれば……? あ、そうだ!!)
    絶体絶命の危機の中で、縁は彼女の存在を思い出した。

    「ケッツー、サンドラと交代です!」
    『わかった! 縁、死ぬんじゃねぇぞ!! 晩飯ちゃんと作ってもらうんだからな!!』

    ケッツーの別れの言葉に、微笑む縁。
    次の瞬間、眩い閃光が彼女を覆った。
    ケッツーとの合体は解除され、ゲートカードから現れたサンドラと新たに合体する。
    一方、 縁の手を離れたアシュリーと葵は、

    「「きゃあああッ!!!」」

    地面に向かって落下していく。

    「サンドラ、風を!!」
    『――っ!!!』

    縁は、手に握った鮮やかな羽でできた扇を2度振るう。
    最初に起こった風は、囲っていた敵たち吹き飛ばし、
    2度目の風は落ちていくアシュリーと葵に向かって吹いていく。

    「!?」
    「風が!」

    アシュリーと葵の身体はその風に乗り、再び上昇。研究所へと運ばれていった。
    それを見て、使命を果たせたとホッと胸を撫で下ろす縁。
    だが、まだ安心はできない。
    相変わらず敵の大群に囲まれたままなのだ。

    『だ……大丈夫……縁、私が守る……』

    サンドラの小鳥のような優しい声が聞こえた。
    縁は嬉しそうに、小さく頷く。

    「ありがとう。この戦いが終わったら、サンドラは何が食べたいですか?」

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  • ネメシス

    ネメシス

    テトラヘヴンからやってきた、毒舌家の「憤りと罰の女神」。
    幼い子供の様に見えるが、読書好きで博学。
    ゾンビ映画が大好物で、グロテスクなものに目がない。

     ヴェロニカ・アナンコ & ネメシス

    暴力と悪戯心の危険な香り

    テトラヘヴンの女神たちは、皆が友好的とは限らなかった。
    ALCAに協力を志願しておきながら、
    定理者との顔合わせをボイコットした女神が一名、存在していた。

    冷徹な精神を持つALCAナイエン支局長ヴェロニカが一抹の疑念を感じつつ
    局長室に戻ってくると、局長席に無断で陣取る小柄な女神がいた──
    顔合わせをボイコットした、憤りと罰の女神・ネメシスだ。

    「……お前は他の女神とは違うようだ。目的はなんだ?」
    『……そういうアンタこそ、他の定理者とは違う』

    ネメシスは、セプトピアの治安維持には興味がないと言い切った。
    博学で知的好奇心が旺盛だったネメシスは、
    異世界セプトピアの未知の文明に関心を抱き、他の女神たちに便乗していた。
    そしてALCAにいる若き定理者たちは皆、
    幼稚なロジックを持つ者たちばかりだと彼女は判断し、
    顔合わせにも意義を見出さなかったのだ。

    唯一、ネメシスが読めなかったのが局長ヴェロニカだ。

    『アンタの目的は何?』
    「……あらゆる使者の抹殺。――だと言ったら?」
    『ふーん……じゃあ今ここでアタシのこと殺しちゃう?』

    答えられずにいるヴェロニカを尻目に、
    ネメシスは悪戯な笑みを浮かべると、局長室を去っていく。

    後日。
    ヴェロニカは人知れずALCA直属の病院へと向かった。
    ベッドには逆理病に冒され、昏睡状態の男性患者がいた。
    ALCA局内では見せたことがない思いつめた眼差しで、
    いつまでも患者を見つめるヴェロニカ。

    その時、病室に現れる──ネメシス。

    『アンタの目的は復讐』

    ネメシスは自分で勝手に調べたヴェロニカの過去について、語り出す。
    ベッドの患者はかつてハコダテ支局に在籍していた頃のヴェロニカの上司であり、
    兄のような存在だった男。
    しかしモノリウムのある使者によって、人格を破壊されていたのだ。
    この事件をきっかけに、ヴェロニカにとって全ての使者が憎しみの対象になった。
    彼女はセプトピアにやってくる全ての使者が、放逐すべき害、だと考えていたのだ。

    そのヴェロニカの思いは、憤りと罰の女神だったネメシスにとって、
    最も共鳴するロジックでもあった。
    悪に対する憤りと、正当なる復讐による罰。これこそは、ネメシスのロジックである。
    それに彼女も、悪しきテトラヘヴンの神々は、摘んでおくべき禍根の芽だと考えていた。

    『アンタの望み、私が叶えてあげてもいいわよ?』

    ただし盟約に当たって、ネメシスは一つだけ条件を提示した。
    セプトピアのあらゆる文明を堪能できるよう、ネメシスの水先案内人になることだ。
    異世界の文化に対する私見や歴史に対する考察など、
    博学な言葉を並べ立ててその条件の正当性を訴えてはいるが――
    平たく言えば

    『私を遊びに連れてって』

    というわけである。
    思いもよらないネメシスの提案に呆れるヴェロニカ。

    「……幼稚なロジックを持っているのはどっちだ」

    ヴェロニカの言葉がグサリと刺さり、ネメシスは戸惑うように顔を赤らめた。

    『な、何よ! 二十歳のアンタとは知恵も経験も段違いなのよ!』

    全ての使者の殲滅のため、あえて使者の力を借りようとするヴェロニカと、
    その復讐のロジックに共鳴したネメシス。
    彼女たちのロジックは、その後、予想もしなかった結末を迎える事になる――

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  • アモル

    アモル

    まだまだ見習いの未熟なキューピッド。
    上位の天使型フォーリナーのお付きとして人間の住む世界の
    ALCAを視察する際、自分と近い年代であり、理想そのもの
    のニーナの姿を見て、一大決心し、彼女へ声をかけた。
    その後、彼女と友人となり盟約する。

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & アモル

    ニーナ&アモル

    命令に従い、ALCAの支局を離れ、ピラリ学園に入学してきたニーナ。
    教室に集まったニーナたち新入生に、副担任の藤崎が早速クラスのカリキュラムについて
    丁寧に説明をしてくれている。
    ―が。
    失礼な事とは思いながら、藤崎の声はニーナの頭の中を上滑りしていく。
    心の中の大半は、ずっとひとつの事に占められたままだ。

    昨日までは、ALCAの第一線で定理者として人々のために働く自分。
    今日からは、ピラリ学園で学ぶ自分。
    でも何を学ぶのか?
    3人の使者と盟約し、彼女たちと深く心を通わせ信頼の絆を保ってきた自負がある。
    それぞれの能力、特性を引き出し、様々な事件を解決してきた実績もある。
    その私が、いまさら何を学ぶというのか。
    何を学べば、力を証明し、戻ることができるのか。
    ずっと考えているが、その答えは出ていなかった。

    「ところで、テトラヘヴンの天使サマが、ニーナにぜひ会いたいそうだ。どうする?」
    担任の神楽の、そんな唐突な声に引き戻される。

    ―異世界、テトラヘヴン。
    テトラヘヴンと言えば、神や女神、魔神たちが実在する神話の様な世界と聞く。
    以前ナイエン区で大事件を起こしたのはそのテトラヘヴンの魔神たちだし、
    その時活躍したナイエン支局の先輩定理者たちも、テトラヘヴンの女神たちの力を借りて事件の解決にあたったのだ。
    そんな世界の使者と盟約できたら、自分がALCAに戻るための糸口がつかめるかもしれない。

    盟約室に入ると、たちまち室内はテトラヘヴンの風景に変わった。
    宙に浮かぶ白亜の神殿。事前の知識では知っていたものの、その荘厳さに思わず息をのむ。
    すると。はるか天空から、光に透ける6枚の翼を広げ、白銀の鎧に身を包んだ女性が降りてきた。
    頭上に輝く大きな光の輪が印象的だ。
    『お前がニーナ・アレクサンドロヴナか』
    「はい、私です」
    相手の名前は聞いていた。テトラヘヴンでも、神々に次ぐ高い地位の大天使だという。
    『我はミカエル。天使騎士団の団長を務めている。
    我が声に応じてくれたこと、感謝しよう』
    「では、貴方が私と盟約したい、と?」
    『うん? ちがうぞ?』
    どうも話が間違って伝わっているらしい。
    『すまん。お前とぜひ盟約したい、というのはこっちだ。ほら、アモルよ、挨拶をせよ』
    『は、はい…』
    ミカエルの陰でわからなかったが、おずおずと羽ばたきながら現れたのは、ニーナよりも背の小さい、幼く可愛らしい天使の少女、だった。

    『わ、わたし、その、あ、アモルと・・いいます・・・』
    おじぎのつもりか、頭を下げたまま、うつむいて動かない。
    ふわふわの髪から覗く可愛らしい耳が真っ赤に染まっていくのが見える。どうも相当に恥ずかしがりやらしい。
    (初めてのタイプだわ・・・)
    超然とした自信家で天才肌のエメラダ、傍若無人で天真爛漫なアイシャ、落ち着いていて高貴なリリアナ。
    かつて盟約した者たちと全く違う目の前の天使の姿に、ちょっと驚いた。
    (いや、というより・・・)
    そう、驚いたというより、心配になってしまう。

    『こら、アモルよ、ちゃんと自己紹介して、思いを自分で伝えぬか!
    それではニーナが困ってしまうだろう』
    『あ! ご、ごめんなさい、ごめんなさい・・・』
    ますます頭を下げ小さくなってしまうアモルに、思わず助け舟を出してしまう。
    「いえ、謝らないでください。緊張しているんですね。
    気を楽にして、貴方の話を聞かせてください」

    そしてニーナは、アモルのたどたどしい話をゆっくりと聞いていった。
    アモルはまだ見習いのキューピッドであること。
    この世界、セプトピアへの視察団に手伝いとして随行してきたとき、ニーナの活躍を目撃したこと。
    彼女から見た自分は、強くて、綺麗で、かっこよくて、りりしくて―
    聞いているこっちも赤くなってしまいそうだが、とにかくそういうこと、らしかった。

    『わ、わたし、こんな、何もできない、ダメな天使、だけど・・・
    か、変わりたい、そう、変わりたいんです!
    わたしも、皆の役に立てるような、
    人と人を結ぶ、立派なキューピッドに、なりたいんです!だから、だから、そのぅ・・・』
    「だから?」
    『う、ううう・・・』
    次の言葉を、ニーナもミカエルも急かしはしなかった。
    ただ待った。
    この言葉ばかりは、アモルが自分で伝えなければならない。
    『私の、盟約者に、なってください!』

    正直なことを言うと、最初にアモルが盟約を希望していると聞いて、落胆とまでいかなくても
    (どうなんだろう?)と思ったのは確かだ。
    ALCAに復帰するために、自分の強さを証明する。
    そのためには、強い使者と盟約した方がいい。
    (―でも。
    もしそうだとするなら、エメラダやアイシャ、リリアナが弱かった、ということ?
    そんなことはない。そんなことは認められない。
    私、ニーナ・アレクサンドロヴナの誇りにかけて)

    アモルはついに顔をあげて、まっすぐニーナと目を合わせた。
    今にも泣きだしそうに目が潤んでいるが、しっかりと、目を合わせた。

    今までの盟約者たちは、いつも自分を引っ張ってくれる存在だった。
    しかし今度は私が、この幼い天使の手を引いて共に歩くことができたなら。
    ―私がちゃんと一人前の定理者であると、証明できるかも?

    後にニーナはちょっと反省してこの時のことを語る。
    少々、打算がありましたね、と。

    「いいわアモルさん。私と盟約しましょう」

    小さなキューピッドの小さな勇気。
    それが大きな力となって、ニーナを助けていくようになるのに、それほど時間はいらなかった。

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  • トール

    トール

    テトラヘヴン屈指の戦闘力を誇り、常に闘いと強さを求める。基本的には真面目な性格であるが、闘いを純粋に求めるあまり、子供っぽい一面も。闘いでは、雷とトールハンマーを操る姿から“雷の戦神”という異名を持つ。

     五六八 葵 & トール

    葵 & トール

    トリトミー襲来の混乱の後、葵はいかなる場合にも備えて、「強さ」が必要であることを実感した。

    単純な戦闘の強さだけではなく、精神の強さも非常に重要になると。
    それは、使者の襲来が激減し、戦闘よりもパトロールや慈善活動に従事するようになった、
    今この時においても。

    『葵、闘いはまだか!?』
    また始まった…と心の中で呆れる葵。
    今日お願いされている活動は、道を塞いでいる倒木の処理。
    確かに、彼女の求めているような闘いではない。
    「言ったでしょ?今の定理者は闘うだけじゃないって。こういう活動だって、とても大切なことなのよ」
    『そうかもしれないが…』

    ここまで彼女が闘いを求める理由、
    それは彼女が、テトラヘヴン屈指の戦闘力を誇る、雷の戦神だからであろう。
    “戦神”ともあろうものが慈善活動にいそしんで、自慢の戦闘力を発揮できないことが、
    腑に落ちないのかもしれない。
    葵も、その気持ちは十分に分かっているつもりだったが、
    「トール、あなたはそれでもいいって言ってたじゃない」
    そう言いながら、彼女と盟約した時のことを思い出していた。

    ALCA盟約室には、葵とトールの姿があった。
    実戦経験を持つ定理者と盟約がしたいというトールからの要望に、葵が呼ばれたのである。
    葵のトールへの第一印象は、力強さ、であり、これまでの盟約者とは毛色が違うかな、
    というものだった。

    「実戦経験を持つ定理者なら私以外にもいるわ。その中からなぜ私が?」
    『キュウドウの名家で育ったという話を聞いた。葵は闘いの為の能力を幼いころから鍛えてきたということだろう。“戦神”の異名を持つ私にぴったりの定理者だと思ったのだ!』
    「弓道は闘いってわけでもないけど・・・」
    『それに、モノリウムの腕利きの戦士、メルチとも盟約しているそうじゃないか!
    あれだけの力を持った者と盟約をしていることが、葵の実力を証明している!』
    トールは、葵以外の盟約者は他にいないと考えているようだった。
    葵の話を聞こうとせずに、とにかく盟約をしようと、葵についての情報を熱弁している様子である。

    「トール、あなたは“戦神”の異名を持つみたいだけど、今のセプトピアはかなり平和なの。
    使者の侵略も減ったし、滅多に闘うことはないのよ?」
    葵は、勢いに押されそうになりながらも、なぜこのタイミングで盟約を、という疑問を投げかけてみた。
    『定理者と盟約をすれば、さらに強くなれると聞いた!
    葵と盟約をすれば、もっと強くなれると感じたのだ!それに、強くなることに理由などいらない!
    闘いが少なくても構わない!』
    答えになっているような、なっていないような返答であったが、葵が何を言ってもこの熱意は変わらないのだろう。葵にとっても、「強さ」を求めることに異論はなかった。
    「そこまで言うなら…」
    『本当か!?ありがとう、恩に着る!』
    これまでとは違った、力強い盟約者であるため、葵は内心ドキドキしながらも、自分の心の強さを鍛えていくために、良い相手なのではないかと考えていた。

    「戦いが少なくても構わないって言ってたわよね?この倒木だって、私たちだから簡単に処理できるのよ」
    そう言いながら、トールハンマーの一閃で倒木を吹き飛ばす。
    『こういう能力の使い方ももちろん必要なことだとは思う……』
    トールと過ごしていく中で、彼女のことを徐々に理解するようになっていた。
    “戦神”という異名を持ちながらも、闘いを求める純粋な子供のよう一面があること。

    なんだかんだ文句を言いながらも、慈善活動にも能力を発揮して、精を出してくれる真面目な性格であること。
    盟約した当初はどうなっていくのか不安もあったが、上手くやっていけそうだな、と感じるようになっていた。
    出来ることであれば、彼女が一番輝ける、闘いの場を用意してあげたい気持ちはあるが、
    「今、私たちにできることをやりましょう。この活動も、しっかりと強さに繋がっていくと思うわ。」
    『葵が、闘いでは得ることのできない強さがあるというのなら信じてみよう。ただし毎日1時間の訓練には付き合ってもらうぞ』
    「はいはい」

    駄々をこねたような言い方に少し呆れながらも、強さを純粋に求める姿勢は見習うべき点だな、
    と微笑みながら返事をした。

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  • ブリュンヒルデ

    ブリュンヒルデ

    テトラヘヴンからやってきた、戦いを好まないおしとやかな使者。どうしても戦わなければならない時には、ニーベルングリングを使う。彼女が葵の元へやってきた理由は、大切な人を“守る”ためである。

     五六八 葵 & ブリュンヒルデ

    五六八 葵 & ブリュンヒルデ

    「ここで仕留めるわ!」

    葵の声が宵闇に響き渡る。
    使者の襲来が激減したとはいえ、それでも完全に途絶えたわけではない。

    『戦うことでしか、分かり合うことが出来ないのですね……』
    ブリュンヒルデが哀しそうに呟く。
    「大切な人を。平和を守るために。戦いましょう。」

    トールと盟約した少し後、ALCAの盟約室に葵は再び呼び出されていた。
    またしても、葵と盟約をしたいという使者が現れたという。
    (なんだか人気者になった気分だわ…)
    そんなことを考えていると、
    「あなたが葵さん・・・ですね。伺っていた印象とぴったりです。
    私と盟約してくださいませんか?」
    いきなり名前を呼ばれてハッとする。
    室内はテトラヘヴンの風景に変わっていた。
    目の前にいたのは、綺麗なでおしとやかな女性であった。
    紫色の髪をなびかせて、憂いを帯びた表情に、思わず見とれてしまう。
    「葵さん…?」
    返答がない葵に、ブリュンヒルデは再度問いかけた。
    見とれていた、と言うわけにもいかず、少し焦る。
    「ごめんなさい…!でもなぜ盟約を?」
    いきなり盟約をしようと持ち掛けられる理由が全く見当たらなかった。
    トールの時と同じ流れだな、と思いながらも問いかける。
    「トールが、葵さんと盟約をしたと聞きました。」
    ちょうど今考えていた名前が、目の前の女性の口から出てきたことに驚く。
    「なぜご存知なんですか?」
    「同じテトラヘヴンにおりますから。“闘い”と“強さ”を求め、強く、凛とした定理者と盟約をしたと聞いて、その定理者の方を探していたのです。」
    葵の目を見つめながら、話を続けるブリュンヒルデ。

    「私は、戦いを好みません。トールにもできるだけ戦いをさせたくないのです。
    それが出来るのは、葵さんのそばにいることだと感じました。」
    戦いをさせたくないから、盟約をしたいとは、今までに聞いたことがない理由であった。
    「私も出来ることなら戦いたくはないわ。
    でも平和のために“強さ”は必要だと思ったからトールと盟約したの。“強さ”を求めているのはトールも私も同じよ?」
    「私とトールは幼馴染なんです。」

    いきなりの告白に動揺する。
    「トールは、小さいころから、戦いから帰るたびに、私に楽しそうに戦いの様子を話してくれていました。戦神として名を知られるようになってからは、もっと目を輝かせて。
    トールが楽しそうにしているのを見るのは私もとっても嬉しかったです。」
    「それなら、戦いをさせたくないなんて…」
    葵の言葉を遮るように、ブリュンヒルデは言葉を続けた。
    「それでも…楽しそうに話す彼女の身体は、いつも傷だらけでした。
    私は、彼女にこれ以上傷ついてほしくないのです!」
    ブリュンヒルデの、強い想いが葵の心を動かす。
    「・・・。あなたの、トールを守りたいという気持ちはよくわかったわ。」
    「それでは・・・!」
    ブリュンヒルデの顔が明るくなる。

    「私は平和を守りたい。必要があれば、戦うこともあるし、
    ブリュンヒルデにも一緒に戦ってもらうわ。それでもいいかしら?」
    「私がトールを守りたいのと同じように、葵さんは平和を守りたいのですね。
    平和のために戦うというのであれば…お手伝い致します。」
    “守りたい”という共通の気持ちが、盟約の決め手となった。

    「なぜブリュンヒルデが!?」
    ブリュンヒルデを見たトールが驚きの声を上げる。
    「私も葵さんと盟約をしたんですよ。」
    微笑みながら答える。
    驚きながら、トールも嬉しそうな表情をしている。
    二人のやり取りを見ていると、本当に仲が良いことが伝わってくる。
    その様子を見ながら、
    (私にも、あんな仲間がたくさんできたらいいな)
    と葵は考えていた。

    ―これは、アシュリーと共にピラリ学園に転入して、大切な仲間がたくさん出来る、
    数か月前の出来事である。

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  • アストライアー

    アストライアー

    星を司り、占いによって人の未来を予知する能力を持つ。ただし、自分自身の未来を占うことはできない。公平さを重んじる「星の女神」。好奇心が強く、面倒見がよい。ふとした理由で人間に興味を持ちセプトピアにやってくる。

     アシュリー・ブラッドベリ & アストライアー

    アシュリー・ブラッドベリ & アストライアー

    アシュリーがピラリ学園に入学して仲間と出会う、素敵な未来がやってくる数か月前のこと。

    読書好きなアシュリーは、随筆や小説、詩歌から純文学まで幅広く読んでいた。
    彼女はもちろん神話も幼いころから親しんでおり、
    後に出会うアストライアーがどんな女神なのかを本でよく知っていた。

    アストライアーは善悪を司る天秤を所持した星の乙女と呼ばれる女神。
    アシュリーはアストライアーと出会うまで特に星が特に好きではなかったし、
    性格についても正義感が強い玉姫に比べると自分はそうでもなく、
    人を傷つけるような人は嫌いだけれどもそこにもなんらか意図があるに違いないと思ってしまうようなタイプだったから、アストライアーに出会うまではまさか盟約するなんて思ってもみなかった。

    そんな、アシュリーとアストライアーが出会う、ほんの少し前のテトラヘヴンのこと。
    「アストライアーは堅いんだから~!ちょっとからかっただけじゃないですか!」
    「タナトス!あなたという人は。人の命をもて遊ぶなんてもってのほかですわ。」
    正義を司る女神は、死を司る女神とは旧知の仲。友人というよりも腐れ縁に近い。
    いつもタナトスの面倒をみているのがアストライアーなのである。

    「だって、すごい暗そうだから面白そうなんですもん!」
    タナトスはセプトピアの様子がわかる鏡を見ながら笑っている。
    「人はみなさんそれぞれの正義があります。それをバカにしたりしてはいけないと思います。
    こっちの人なんて、一生懸命読書をしているからきっと素敵な未来がまっていると思いますわ。
    あなたも少しは見習って!」
    「じゃあ、私、セプトピアにいくことにする!そしたらニンゲンって生き物がもっとわかると思うんです!アストライアーだって星占いでほんとのことがわかると思ったら大間違いですよ。」

    ――タナトスがセプトピアにいくなんて。少し考えただけでも何が起こるかわからない。
    でも、言っていることはよくわかる。私は、ニンゲンというものを本当に知っているのかな。
    「私は占いを通して、人の信じる結果を見守ります。この子だって。」
    そういって、アストライアーが見た未来は衝撃的なものだった。
    「どうしたの?アストライアー?聞いてる?」
    「この子の未来が見えないの。」

    その数か月後、アストライアーはタナトスを探してセプトピアにいた。
    というよりも、タナトスを探すというのは名目で、実は未来を占った少女に興味があったのだが。
    いざ来てみると、テトラヘヴンとあまりにも違いすぎる星空でうまく未来を占えない。
    本来の能力も使えないしどうしたらよいのかわからず、露頭に迷ってうろうろしているところで見知らぬ少女に声をかけられた。

    「何かお困りですか?」
    ――どこかで見たことのあるような顔…。いえ、この子…。占っても未来が見えなかった子だわ!
    「人を探しているんですが、見つからないんです。」
    アストライアーはアシュリーの顔をまじまじと見つめながら、応える。
    「それは、困りましたわね。どんな姿なんですか?どこで見失ったんですか?」

    ――占えば簡単なのに、とても一生懸命ね。この子の未来がなぜ私に見えないのかしら!
    「紺色の髪で、赤い服を着ています。背はふつうくらいです。見失ったのはこの世界ではないんです。」
    とりあえず、アシュリーの会話に合わせつつアシュリーの様子を伺う。
    「この世界ではない?あなたはもしかして……使者?」
    「そうなんです。実は、私、テトラヘヴンから来た、アストライアーと申します。」
    街角で使者に会ったことに驚くアシュリー。しかもその使者は女神アストライアーと名乗る。
    驚きを隠せないアシュリーはあまりにも突然のことで変な事を口走ってしまう。

    「あなたが!?もっと光貴で威厳のある方だと思っておりましたわ。」
    ――とても不躾ね!タナトスみたいな子だわ。でも、面白い子だわ。
    アシュリーは自分で失礼なことを言ったことを自覚する。
    「ごめんなさい!失礼なことを言ってしまって!まさか眼鏡をかけた美少女が女神様だなんて!」
    「いえ、気にしないで。実はね、私、あなたに興味があるの。」
    「私にですか?あなたのような女神様が私に?」
    「そうなの。私、未来を占う力があるんだけど、あなたの未来が見えないの。」
    「私のですか!?もしかして死ぬ日が近いとかでしょうか?」
    無茶苦茶な展開に混乱するアシュリー。

    ――突然声をかけたら女神と名乗り、しかも未来が見えないだって!?
    「それはないわ。死ぬ人の未来は死ぬときが見える。でもあなたはそうじゃない。私にも理由はわからないの。」
    アシュリーはアストライアーの言葉が妙に魅力的に聞こえた。
    星を占う女神なのに私の未来が占えないなんて。

    ――私はほかの人にはない未来が待っているのですね。きっと素敵な未来ですわ。
    アストライアーはアシュリーの未来を見守ることがとても楽しそうな未来に思えた。
    ――タナトスの言っていた、ニンゲンというものを知るというのはこういうことかもしれない。

    その数日後、意気投合した二人は盟約することになる。

    二人はお互いの未来に興味があったし、二人の言葉を理解することで新たな発見があったからだ。

    アストライアーがアシュリーの未来を占えなかった理由。
    それは、アストライアーが自分自身の未来を占えないから。

    二人が盟約することで二人の運命が重なることになっていたから。アストライアー自身がそれに気付くのはずっと先のことなのだが。

    アストライアーはセプトピアの星空を見上げてつぶやく。
    「タナトス。ありがとう。」
    占えない未来は面白い。

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  • ミカエル

    ミカエル

    異世界の秩序を護る大天使。天使騎士団の団長を務める。
    ルシフェルとの戦いのあと、人間の住む世界を訪れたところ、
    そこで出会ったニーナに自分と親しい騎士道を感じ、共に高
    め合う友と認めたことで盟約を交わした。

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & ミカエル

    ニーナ・アレクサンドロウナ & ミカエル

    ニーナが命令に従いこの学園に入学してはや数か月。
    季節は廻り、夏になっていた。
    学園のあるホッカイドウのピラリ町はニホンでも涼しいところだが、それでも夏は暑い。
    ニーナは勉強を兼ねて空調の効いた図書館にこもっていた。

    図書館には彼女の好きな天文関係の蔵書も多く、トリトミーの技術供与によって得られた、最新の観測結果を基にした論文の数々は実に興味深い。
    思わず時を忘れて読みふけっていたところ、副担任の藤崎先生が彼女を呼びに来た時にはもう夕方になっていた。

    「こんなところにいたんですね!ニーナさん、すぐに盟約室に来てください」
    「・・・え?」
    「テトラヘヴンの天使様が、あなたを呼んでいます」

    ニーナが慌てて盟約室に駆け込むと、以前アモルと盟約した時と同じように、世界は白亜の天空神殿に置き換わった。
    光の翼を輝かせて現れたのもやはり、あの時同様、天使の騎士団長にして大天使、ミカエルだった。
    でも今度は、背後にアモルが隠れている様子はない。

    「あの、ミカエル様、今日はどんなご用事でしょう」
    『うむ、我はニーナ、君に礼を言いたくてな』
    「礼、ですか? 別に私は何も―」
    『アモルと盟約してくれただろう。その、礼だ』

    アモルは、ミカエルの頼みでニーナが新たに盟約した見習いキューピッドの天使だ。
    「いえ、アモルから力を借りているのは、私の方ですから」
    確かにアモルはまだ幼い、か弱い少女の様な天使だ。
    恐る恐る弓を構えているより、花畑で花を摘み冠を編んでいる方がずっと似合う。
    しかしニーナとの合体―お互いのロジックを交換し身も心もひとつになることで、ニーナはアモルの潜在能力を大きく引き出している。

    『君と合体するようになってから、アモルには笑顔が増えた。
    いつも瞳をうるませては叱られるのを待っている様だった、あの子が、だ。
    ニーナ、君のおかげだ。
    君と合体することで、あの子は自分でも何かができる、そう知ることが出来た』
    「そう言っていただけると、私も嬉しいです」
    『聞けば、クラスでもトップクラスの成績だそうではないか。アモルも喜んでいたぞ』
    「いえ、そんな、ことは―」

    でも期末の実技試験で1位を取ったのは、リオンだった。

    『やはり、セプトピアの定理者と合体する、というのは素晴らしいことなのだろう。
    聞けば、君も我と同じように、あえて自らを人々の盾とする、気高い心の持ち主だと言うではないか。
    どうだろう、私とも盟約してもらえないだろうか!
    我も盟約することで己自身を鍛えあげ、いずれはそう、あの勝利の女神アテナの様に―』
    「ありがとうございます、大天使ミカエル。その申し出、お受けいたします」

    食い気味の返事にちょっと気負されたミカエルだったが、渡りに船には違いない。
    『―そ、そうか。かたじけない、な』
    「こちらこそ、願ってもないことです」
    ニーナは背の高い大天使の目を見返しながら、強くはっきりと、そう、応えた。

    予想通り、ニーナとミカエルのトランスは、素晴らしい能力を発揮した。
    アモル同様、光の翼はニーナの体を自在に運び、立体的な機動を可能にする。
    弓の様な遠距離攻撃こそできないが、白銀の鎧と盾が大抵の攻撃から身を守るので、勇気さえあれば、敵の懐に飛び込むことは容易い。そこからレイピアの一撃で、敵を貫く。

    『流石、我が見込んだだけのことはある。細剣を使うのも初めてではないな?』
    「ええ、以前、別の使者と合体したときに、少し―」
    『その若さで見事な戦歴だ。これは将来が楽しみだぞ』

    2学期が始まり、他にも複数の盟約者を得てトランスチェンジを可能にした生徒はいたが、
    ニーナほど高度に連携させた合体を行える者はまだ、いない。

    「いいえ! わたくし、橘弥生が、必ずニーナさんの領域に近づき、達し、追い抜いてみせますわ!」
    「おー さすがやっちゃん。気合入ってるっすねー」
    「がんばれ主さまー」
    「私たちも応援しますし!」
    「いえあなた達もがんばるのですよ? ニーナさんを目標として、追いつき追い越せの精神で自らを磨いていってこそ、この学園のSクラスで学ぶ意義があるというものです!」
    「んー 弥生ちゃんの言ってることは、ちょっと難しいね」
    「あー だいじょぶだいじょぶ。つまり、がんばるぞー、がんばれーって言ってるだけっすから」
    「万博さん!」
    「うん!それなら私もわかるよ!」
    「ほら、リオンもわかるって言ってるっす」
    「な、なら良いですわ。では、皆さん。がんばって、ニーナさんを追い抜きましょう!」
    「「「お~!!!」」」

    模擬戦場のバリアの外で、自分をネタに盛り上がるクラスメートたち。
    最初の頃は、それが耳に入っても素知らぬ振りをしていたニーナだったが。

    『良いのか、好きなように言わせておいて』
    合体中のミカエルが、面白がるように語りかけてくる。
    冷静沈着なことが多いミカエルにしては珍しい。
    彼女もまた、合体の手ごたえに少し興奮しているのかもしれない。
    「大丈夫」
    そう胸の内で答えながら、光の翼を振るって弥生たちの前に降り立つ。
    「いつでもどうぞ。私は、負けるつもりはないから」
    「言いましたわねニーナさん! 定理者に二言はありませんですわよ!」
    「私も負けないよっ!」
    「まー あたしはどうでもいいっすけど・・・
    負けっぱなしってのも、つまらないっすよね?」
    「わっちらも~」
    「忘れてもらっては困りますね!」

    かくして、新たなる盟約者を得たニーナはさらなる力を備えた。
    その力は、ALCAに戻るにふさわしいと証明するためのものなのか。
    ―それとも?
     
    その答えを知るには、もう少し時間が必要だった。

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