禁断の定理者、再誕
その日、運命の出会いが待っていることを剣美親はまだ知らなかった。
美親は、家族想いの妹・しおりと共に、
父・剣廉太郎の誕生日プレゼントを買うために街へと繰り出した。
かつての禁断のオーバートランスの代償として、
彼の身体を形成するロジックカードの一つが欠落。
定理者の力を失っていた美親は、村人Aとして家族と共に慎ましい生活を送っていた。
自分の運命を受け入れ、家族を守るために生きる道を進んでいたのだ。
失った自分のロジックカードさえ見つかれば、
再び定理者として戦いたいという想いを封印して……。
そんな時、使者襲来の警報が流れる。
魔神ベリアルが民間人にトランスジャックし、暴れていたのだ。
正義感が強かった美親は、しおりや周囲の民間人を逃がすために、
一人でベリアルに立ち向かった。しかし生身の人間だった美親が敵う相手ではない。
今の美親には、ベリアルの注意を引き付けながら逃げることが精一杯だった。
そんな美親の手を取り、逃走を手助けする謎の女性が現れた。
しかもその女性はなぜか美親の名前を知っていた。
『私はアテナ。貴方に会いに来ました』
美親の盟約者として悪しき神々からセプトピアを守りたい。
アテナはそう告げると、美親に一枚のロジックカードを差し出した。
それは美親がかつて失った、定理者の力を秘めたロジックカード。
美親と共に世界を守りたい一心でアテナが探し出したのだ。
美親は戸惑いを隠せなかった。
発見が絶望視されていたロジックカードがまさか見つかるなんて……。
そこへ駆けつけるしおりと廉太郎。
美親の無事を喜びつつ、美親が再び定理者に戻れることを知ると、
しおりは必死に止めようとした。もう二度と美親を苦しませたくなかったからだ。
しかし、封印していた美親の想いが溢れ出す。
「守りたいんだ! 守れる命が、一つでもあるなら」
美親の決意の眼差しを目の当たりにして、しおりと廉太郎は悟った──
もはや彼を止めることはできない。止まっていた美親の時間が動き出したのだ。
遡ること二年前。美親はジスフィアの盟約者・羅刹と共に、
ホンコン支局所属の定理者として街の治安に当たり、
禁断のオーバートランスを実行した。
その理由は──死にかけていたジスフィアの使者を守るためだった。
そんな美親の過去を知ったアテナは確信していた。
たとえ異世界の敵だとしても命を決して見捨てない。
自分の犠牲すら厭わない。
そんなロジックを持つ美親の盟約者になりたい、と。
『貴方と守りたい。この世界を』
「……アテナ。俺と盟約してほしい」
こうして禁断の定理者は再び戦場へと降り立った──。
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