キャラクター&ストーリー

  •  剣 美親
  •  揺音 玉姫
  •  クロエ・マクスウェル
  •  五六八 葵
  •  揺音 聖那
  •  アシュリー・ブラッドベリ
  •  ジークハルト・クラウス
  •  当麻芽路子
  •  明日葉 学
  •  オルガ・ブレイクチャイルド
  •  七星 縁
  •  ヴェロニカ・アナンコ
  •  ジゼル・サンダース
  •  ニーナ・アレクサンドロヴナ
  •  リオネス・エリストラートヴァ
  •  京橋万博
  •  橘 弥生
  •  森ヶ谷 夕子
  •  小湊くらら
ニーナ・アレクサンドロヴナ
ニーナ・アレクサンドロヴナにーな あれくさんどろうな
性別 女性
年齢 -
身長/cm 145
体重/kg 32
血液型 AB型
生年月日 10月11日
好きなもの ボルシチ、プリャーニキ
嫌いなもの 理路整然としていないこと

ノブレス・オブリージュを体現する貴族の少女。
人々の暮らしとこの世界を守るために、
幼いながらも自ら戦うことに誇りを持っている。
10歳にして大学卒業なみの学力を持つ天才。

盟約者フォーリナー

  • ミカエル

    ミカエル

    異世界の秩序を護る大天使。天使騎士団の団長を務める。
    ルシフェルとの戦いのあと、人間の住む世界を訪れたところ、
    そこで出会ったニーナに自分と親しい騎士道を感じ、共に高
    め合う友と認めたことで盟約を交わした。

    トランス!

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & ミカエル

    ニーナ・アレクサンドロヴナ & ミカエル

    「さーあ盛り上がってまいりました!
    ピラリ学園体育祭! 午前中最後の競技は、各学年のSクラス選手によるエキシビション・マッチです!」

    ピラリ学園体育祭は、最初の競技から観客を含めて大盛り上がりだった。
    予想通り、紅組・白組それぞれの中心には各学年のSクラスの生徒がおり、縦横無尽の活躍をしていた。
    例えば普通の女子競技とは思えないアスレチックな障害物の数々を並べた「スーパー障害物競走」では、紅組の2年Sクラス、桐谷華凛が次々と障害を突破しコースレコードを記録。
    「フフフ、主様、今日ばかりは私が勝利させていただきます!」
    一方ちょっと乙女にはどうか?と思うサイズの焼きたてパンをブドウのごとく鈴なりに吊るした「エクストリームパン食い競走」では、
    白組の同じく2年Sクラス、桐谷華恋が
    「おねえちゃんばかりに、いいかっこさせないよ~
    もぐもぐぱくぱく おいし~~!」
    全てのパンを食らい尽くし、他の生徒をゴールさせない荒業で観客を唖然とさせていた。
    ちなみに観客たちは、生徒たちの父兄とその関係者など招待客。一部、ALCAの職員やOBも混じっている。
    とある国の国王が巨大な映像機器を持ち込み、あらゆる角度からその娘の活躍を記録収録しようとしたが、規則ということで家庭用ビデオ端末一台を残して全て没収されたらしい。

    この日のために、鍛えてきた少女たち。
    みな、個人競技に、あるいは団体競技に、輝かしい汗をきらめかせている。
    もちろん中には、運動の苦手な子たちもいただろう。
    彼女たちにも、できる範囲で参加できる競技が用意されたり、あるいは運営の方で活躍させたり。
    生徒会の面々が細かいフォローをしていたことがわかるのは、また後日のことである。

    「・・・ごめんニーナちゃん、負けちゃった・・・」
    いつも太陽の様なリオンが、落ち込むとこれまた分かり易い。しおれた花の様だ。
    しかし。
    「そう、リオンに勝ったのね-」
    視線の先には、リオンを倒し、決勝に上がってきた選手が見えていた。
    「-じゃあ、仇取らなくちゃね?」
    自分なりに少し冗談めかして言うと、
    「うん!頑張って!応援してる!」
    これまた花が咲くように笑顔を向けてくれた。

    「Sクラスエキシビション・マッチ、低学年の部・決勝戦を開始します!
    1年から3年までのSクラス選手の中で、まず決勝に名乗り出ましたのは、優勝候補No.1、白組2年Sクラス、ニーナ・アレクサンドロヴナ選手!」
    拍手と応援の声に背中を押されて、中央に進み出る。
    そして。
    「対しますは、これまた白組2年Sクラス! 有言実行の努力の天才!、橘弥生選手!」
    そう。
    リオンを倒し、今目の前に立つのは、弥生だった。
    ちなみにトーナメントの結果、どっちに転んでも優勝は白組の選手なので、白組にボーナスポイントが入る事が確定している。
    「ニーナさん、いい試合をしましょう、なんて申しませんわ。
    私、今日こそは全力を尽くし、あなたに勝ちます!」
    「そう。難しいと思うけど」
    「だからこそ、挑戦する価値があるのですわ!
    -それに。ひとつ、賭けを受けて欲しいのです」
    「何?」
    「もしこの勝負で私が勝ったら・・・」
    「・・・」
    「その時は、私の事は橘さん、ではなく、弥生、と呼んでもらいますわ」
    「-」
    ニーナの目が一瞬大きく見開いて、直ぐに閉じ-
    軽く右手を胸の上に置くと、何かを確かめるようにして、また目を開く。
    「-分かったわ、橘さん」

    残念ながらニーナの両親は国を離れられず、彼女を個人的に応援してくれるのはALCAの元同僚のスタッフ。あるいは、結局来ているかどうかわからない文通相手。そして。
    「ニーナちゃん、がんばれ!!!!」
    大切な友達。うん、充分。いや、充分以上だ。

    「やっちゃ~~~~ん! 今日こそ目にもの見せてやるっす!!!!!」
    「万博ちゃん、万博ちゃんは弥生ちゃんの応援するんだね!」
    「主様!!」「主さま~~~!」
    「もちろん私たちも」「主さまを応援するよ~」
    「ってわけっす。だからこの一戦だけはリオンとも敵っすね!」
    「いいよ!ニーナちゃんは負けないから!」

    弥生と正対するニーナ。
    アモルとミカエルのフォーリナーカードを手に取る。
    「アモル、ミカエル、最初から全力で」
    『うん、ニーナちゃん、わたしがんばるね!』
    『ああ、手加減はしない』
    「-でないと、勝てない」

    「ゲートアクセス、テトラヘヴン!」
    「ゲートアクセス、ジスフィア!」

    最初の交錯は空中戦で始まった。
    優雅で柔らかな天使の白い羽を翻し、アモルと合体したニーナは弧を描きながら飛翔、素早く弓を連射する。
    一方の弥生は凪と合体。黒い烏天狗の翼を広げて飛ぶ。と同時に高下駄で空を蹴る。ジグザグの機動で動きを読ませない。更に。
    「凪、やりますわよ!」
    『おう、俺の力を見せる時だ!』
    人型の符をばらまくと、符は次々鴉天狗の式神と化し、ニーナに襲い掛かる。
    だがそれらは彼女の傍までたどり着くことなく、アモルの矢に撃ち落されていく。
    「まだまだ!出し惜しみは無しですわ!」
    「いくらでも来なさい!」
    ニーナの機動は小回りに優れ、前後左右自由自在。勢いを増す凪の符術もくるりくるり舞うようにかわす。
    一方の弥生は、一瞬の直線加速ならニーナに勝る。そこを使う。
    「凪!今ですわ!」
    『おおう!』
    さんざんばら撒いた全ての式神。それら全部、全部を囮に。
    式神たちの姿が一瞬ぶわっと膨れ上がったかと思うと、黒い霧を吐いて形を解き、ニーナの視界を奪う。
    そして-

    『わわっ、わわっ』
    「アモル、落ち着いて。こう来るなら、きっと!」
    振り仰いだ空。
    体育祭にぴったりの、雲ひとつない青空。それが黒い霧に覆われて、太陽の光もさえぎっている。
    だからこそ。
    「-来る」

    黒い霧がかすんでいく刹那。
    弥生はニーナの真上、太陽を背に飛んでいた。
    広げた黒翼が太陽をさえぎり、
    「トランスチェンジ! 七宝、出番ですわよ!」
    『ふふっ、腕が鳴るわねぇ~!』
    七宝とトランスチェンジ。
    その姿が変わった時、背にした太陽をさえぎっていた黒翼はなくなり―
    「しまった!」
    弥生が上を取ってくることも、太陽を背にしてくることも、読めていた。
    しかし。頭上でトランスチェンジすることで、太陽の光すら武器にするとは!
    さえぎるもののない日光が、振り仰いだニーナの目を灼いた。
    『「如意棒!!!」』
    脳天逆落とし。
    如意棒を手に、天空からニーナを急襲する。
    だが黙ってやられる彼女ではない。
    「トランスチェンジ! ミカエル!!」
    『任せろ!』
    ごきん、と鈍い音と共に、ミカエルの大盾が如意棒を受け止める。
    そのままもつれ合うように落下、地面へ。

    「ニーナちゃん!」
    「やっちゃん!」
    「主様!」「主さま!!」

    観客の悲鳴、それが鳴り止まぬうちに。
    地面の土煙の中から、鋭く鈍く、金属音が鳴り響いた!
    鋭く突き出される棒を盾ではじき、返すレイピアを更に棒を回してそらす。
    「やはりこの程度では、倒せませんわね!」
    「でも少し驚いた」
    「なら、もっと驚いていただきますわ!!」
    更に弥生が肉薄してくる。
    如意棒はやや短めの長さに抑え、更に突くよりは打撃で。体に巻き付けるような動きで振るいつつ、さらに接近。
    「っ!」
    「いかがです!」
    ニーナの表情が少しゆがむ。
    額から汗が滴り目の端をかすめる。
    『流石だな』
    「ええ」
    合体しているミカエルも、弥生の動きを思わず称えていた。
    ミカエルの主な攻撃は、もちろんレイピアによる鋭い刺撃。
    従って攻撃範囲は彼女の前方に限定される。もちろん彼女自身が鋭く動くことで、そもそも相手を近づけず縫い留める様に攻撃してしまうのが本来のスタイルだ。
    だが今回は弥生の作戦により、レイピアの間合いよりやや短い肉薄戦になっている。
    間合いを突き放したいところだが、弥生の巧みな足運びがそれを許さない。
    さらに武器の相性も問題だ。
    レイピアは相手の武器をそらしていなし、カウンター気味に突き込むこともできるが、如意棒の打撃は極めて重く、まともに受ければレイピアがゆがむ。
    勢い、弥生の攻撃を盾で受け止める事が多くなるが-
    『くっ 重い』
    そう、重いのだ。
    身体を軸に、その重さを十分乗せたうえ、回転の勢いをつけてぶつけてくる打撃。
    盾で受け止めてはいるが、受け止めた身体ごと沈んでしまいそうだ。

    「-」
    ALCA支局で最前線に立ち、実戦を切り抜けてきたニーナ。
    己の才能を、気高い意志と努力で磨き上げてきた数年間。
    その蓄積に、橘弥生はわずか1年と半年で、追い付こうとしている。
    それも、日々の勉強や生徒会の庶務としての仕事をこなしながら、だ。
    そのことを思い、ニーナは決めた。
    「ミカエル、ごめんなさい」
    『わかっている。悔しいが、今日は譲ろう』
    そう心中で会話を交わす。
    気高いミカエルだからこそ、万言を費やすよりも、この一言で通じると信じた。

    「もらった!ですわ!!」
    必勝を期したひと振り。
    それはもしかしたら、ほんの少し踏み込みが深すぎ、ほんの少し振りが大きすぎたかも、しれない。
    そのわずかなブレに、ニーナは柔らかく体を折って飛び込む。
    「-トランスチェンジ。いくわよ、アイシャ」
    『おっけ~ みんなを釘付け。みんな見惚れるがいい、にゃあ』

    光を放ち、ニーナは再びトランスチェンジ。その姿は。

    「かわいいいいい~~~!!!!!」

    思わず絶叫するリオンの視線の先には、モノリウムの使者、山猫の獣人である闘舞のアイシャと合体。
    薄く肌もあらわな踊り子の衣装に身を包み、頭の上から可愛らしい猫の耳を生やしたニーナがいた。

    「!」
    万博も華凛も華恋も、そしてもちろん弥生も見たことのないニーナの姿。
    だが思考を止めることこそ愚策。弥生はためらわずそのまま、如意棒を振るった。
    が。
    「!!」
    棒は当たっている。
    ニーナの身体に当たっている。
    しかし、限りなく当たった手ごたえがない。
    『これは・・・まずいわねぇ』
    あたかも、空に浮かぶ木の葉を打ったかの様に。
    ふわり。
    棒がそのまま回っていくのを、ニーナの体が、まとわりつくように絡めとる。
    「そんな・・・!」
    恐るべき体術。
    いかなる技か、如意棒の勢いを見事殺し、柔らかく受け流したかと思うと、
    「はっ!」
    カウンターで突き出されたニーナの掌底-なんと大きな猫の肉球-が弥生の腹に吸い込まれる。
    その可愛らしいビジュアルに反し、想像以上の重い一撃。
    おなかの中をかき回されるような衝撃が、弥生を襲う。
    『浸透剄。やるねぇ・・・』
    「か、かんしんしてるばあいじゃ、ありませんわっ」
    そして弥生は気づいた。
    今度はニーナが自分の間合いの内側にいるのだ、と!
    本来、如意棒の威力はいかなニーナといえど、そうそう殺しきれるものではないはず。
    しかし、棒を振るう半径の、さらに奥に位置することで、十分な回転を乗せられず威力は半減する。
    そう、接近戦を仕掛けた弥生が、さらに肉薄された超接近戦を仕掛けられているのだ。
    「ならば!」
    棒を引き戻し、今度はこちらが突きで縫いとめようとするが。
    じゃらん。
    弥生の視界を、ニーナの両腕に繋がった金色の鎖が舞った。
    (ちなみに鎖の先には、猫の顔をかわいく形どった分銅がついている)
    鎖は棒にきゅっと絡むと、その動きを一瞬制止する。
    そのまま手前に引きこむと同時に、ニーナは弥生の足元を軽くなでるように蹴る。
    それだけで、弥生のバランスは大きく前に崩れた。
    ぐるぅり。
    身体が半回転、背中から地面に転がされる。
    その弥生のお腹をニーナは軽く踏みつけながら、掌底を今度は顔に打ち下ろし-
    「-参りましたわ」
    次の瞬間、弥生の顔は大きく柔らかく不思議な弾力のあるあたたかなものにむぎゅっ とされていた。

    「決着ー! 勝者は2年Sクラス、ニーナ・アレクサンドロヴナ選手!」

    大歓声と拍手の中、ニーナは肉球のついた手を弥生に差し出し、助け起こした。
    「ニーナさん、そんな奥の手がありましたのね!」
    「ええ」
    「今回も負けましたけど、次こそは勝ちます! 七宝の技をもっと私が使えれば、きっと!」
    「いつでもどうぞ。
    -橘さん」

    『今回はアイシャ殿に譲ったが、次こそは必ず、私のレイピアで!』
    『にゃ、がんばれがんばれ』
    『う、うぬぬぬー!』
    『ミ、ミカエル様、ごめんなさい、私のせいで・・・』
    『ばか、泣くんじゃない!お前のせいではないだろう!』
    フォーリナーカードを介して彼女の盟約者たちが騒いでいるのを放置しながら、軽く空を見上げる。
    この学園に来てから盟約した、アモルとミカエルの力だけでは勝てなかった。
    ・・・
    何故だろう、なのにニーナの顔には、少し笑みが浮かんでいた。

    「ニーナさん。今日の最後に、最後の出し物として、高学年の部の優勝者とのエキジビション・マッチを検討しているのだけど、どうされます?
    他の競技もありますし、疲れもあるでしょうし、それに相手は高学年ですから、辞退しても問題ないですわよ?」
    対戦の後、今度は体育祭の運営委員としてそう尋ねてきた弥生に、
    「やります」
    即答だった。
    強い意志の光が瞳に宿る。
    「相手は誰?」
    その時、訓練場の方から歓声、そして高らかに勝者を称えるアナウンスが聞こえてきた。
    「決まったー!!
    勝者、紅組5年Sクラス、生徒会副会長、アシュリー・ブラッドベリ!!!」

    ―続く!

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  • 貴純のリリアナ

    貴純のリリアナ

    モノリウムからやってきた、百合の花の獣人。治癒の力を操る長杖を携えている。
    平和を愛する穏やかな少女だが、
    平和を守るためならどんなこともしでかすような、意志の強さと危うさを秘めている。

    トランス!

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & 貴純のリリアナ

    不屈のニーナ

    『「花園の祝福ッ!」』

    リリアナと合体したニーナが高く杖を掲げると、
    道を覆っていた使者たちは一斉にピタッと立ち止まる。
    やがて使者たちは、「花園の祝福」が放つ多幸感に、戦意を失い、倒れていく……。

    「相変わらず凄まじい威力を持った技ですね……」

    ニーナがつぶやくと、リリアナのおっとりとした笑い声が聞こえた。

    『さあ、道が拓けました。急ぎましょう』

    リリアナの言う通り、今、ニーナを遮る者はない。目的地まで一本道ができていた。
    「アイシャ、ついてきてくださいね」
    合体を解除したニーナが歩を進めながら、背後にいるアイシャに声をかけた。

    『ふーん……まあまあな、技ね』

    アイシャはツンとしながら、ニーナのあとをついていく。
    ニーナとリリアナと一緒に戦う覚悟で来たものの、結局合体するタイミングが無く、
    少し拗ねていたのだ。

    3人が目指した場所は、街の外れにあるALCAの支局。

    「……誰もいないんでしょうか」
    ガランとしていて人の気配を感じない。
    それに壁は傷つき、廊下には物が散乱している。
    それは、この場所もまた使者たちに襲われていたことを意味していた。
    『郊外の支局なら安全かと思ってましたのに……』
    リリアナは悲しげにつぶやいた。
    『それじゃ、ニーナのお目当てのモノもやられてるんじゃ……』

    アイシャが言い終える前に、ニーナは駆け出していた。

    『ニーナ!!』

    ニーナが向かったのは、支局にある指令室だ。
    そこにあるコンピュータから、本部のホストコンピュータにアクセスできる。
    ――この事態を招いたものは何だったのか?
    支局の端末からそれを探るため、ニーナはここにやってきたのだ。
    「……!」
    指令室を見て、ニーナはハッと息を呑む。
    アイシャが懸念していた通り、端末も無残に破壊されていた。
    「……」

    立ち尽くすニーナに、リリアナもアイシャも声をかけづらそうにしている。
    そのうちニーナは諦めがつかないのか、
    破壊された端末に近づき、黙々とイジリはじめた。
    その姿はアイシャには悲痛に見えた。
    いくら修理しようが無駄――
    そうとしか思えないほど端末はズタズタに破壊されていたのだ。

    『ニーナ、あんまり無理しないで。ちょっとさ、息抜きしようよ』
    気遣ってアイシャは言った。
    『それがいいかもしれませんね。ここに来るまで戦い続きでしたし』
    リリアナも同じ気持ちだ。
    『そうそう! 何かして遊ぼうか! 気晴らしにさ!』
    『じゃあ……おままごと?』
    『いや……』
    『かくれんぼ?』
    『ええと……』
    『鬼ごっこ?』
    『もう、子ども扱いはよしてよ!!』
    アイシャはたまらず叫んだ。
    『ごめんなさい。アイシャは子どもじゃないものね……』
    リリアナはクスクスと笑った。
    アイシャは不満そうに「んもお……」と腕を組んで行こうとする。

    『何か面白そうなものがないか、探してくるよ』
    「結構です」
    ニーナは目もくれずピシャリと言った。
    「私は任務をまっとうします」
    『任務ったってそれがそんな状態じゃ――』

    そう言いかけた瞬間、部屋が次々と淡い光りに照らされはじめた。

    『!!』

    部屋のあちこちにあるモニターが息を吹き返したのだ。
    「……これで何とかなりそうですね」

    そして、ニーナは淡々とキーボードを叩き始める。
    ニーナは、不可能としか思えなかった端末の復旧をやり遂げてしまったのだ。
    ――忘れてた。ニーナは天才だった。
    リリアナもアイシャも、その小さく可憐な背中をただただ唖然と見つめていた。
    一方、ニーナは目的だったホストコンピュータへのアクセスに成功し、
    この状況を分析するため、深い思考の海へと沈んでいった。

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  • エメラダ・シンフォニー076

    エメラダ・シンフォニー076

    トリトミーからやってきた、人格を持った電子楽器。
    楽器の部分が本体で、女性の形をしている部分も、
    あくまで「ボーカルを担当する楽器」に過ぎない。
    合理主義の世界にありながら、天才肌の芸術家で
    自分の音楽をひたすら追求している。

    トランス!

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & エメラダ・シンフォニー076

    ピアノ・レッスン

    ALCA支局内に響くピアノの旋律。

    ニーナ・アレクサンドロヴナがサロンに持ち込んだグランドピアノの音色だ。

    休日の午前、ニーナはピアノに向かうのを日課にしている。

    真っ白な肌に銀髪のツインテールに品の良いワンピース。

    まるで西洋のアンティーク人形のような少女がピアノに向かう姿に、

    サロンを通りかかった者は誰もがうっとりと溜息を吐いた。

    『美しい曲ね』

    ニーナは手を止めて、振り向いた。

    そこに立っていたのは、彼女の盟約者エメラダ・シンフォニー076だった。

    「エメラダも、弾いてみますか?」

    ニーナはそう言ってイタズラっぽく笑った。

    『ありがとう』

    エメラダは嬉々としてピアノに向い、細長い白い指で鍵盤を弾き始めた。

    エメラダはもともとトリトミーで作られた電子楽器だ。

    セプトピアに適応した今でも、あらゆる楽器を弾きこなすことができる。

    初めて聴いた曲であっても、楽譜を見ただけで弾くことができた。

    超絶な技巧で、ミスのない完璧な旋律が室内に響き渡った。

    やがて弾き終えると、エメラダは満足げにニーナに向かって微笑んだ。

    ニーナも微笑み返し、パチパチと小さな手で拍手する。

    「素敵な演奏……」

    ニーナは大きな目を輝かせ、エメラダの演奏にすっかり魅了されていた。

    「きっと先生は、エメラダみたいに弾いてほしかったのね……。」

    『先生?』

    エメラダが訊いた。

    「ピアノの先生。

    私、気持ちが高まると、楽譜を無視して作曲してしまう癖があって…。」

    ニーナは苦笑いを浮かべる。

    それを聞いて、エメラダは不思議そうに首を傾げた。

    ニーナが言う「気持ちが高まると楽譜を無視してしまう」という感覚がよく理解できなかったのだ。

    『ねぇ、もう一度、ニーナのピアノを弾かせて』

    エメラダはその不思議な感覚が何なのか確かめたくなり、ニーナに催促した。

    「えっ……。エメラダの後に弾くなんて……」

    ニーナは顔を真っ赤にして恥ずかしがったが、エメラダが何度も催促するので、とうとう折れてピアノ前へと向かった。

    『気持ちが高まるって、どんな時になるの?』

    エメラダの質問に、ニーナは小首を傾げて考え込む。

    「たとえば、この曲。とっても美しい情景を表現したものです」

    『美しい情景?』

    「その風景の中が目の前に広がって、自分が溶け込んでいくような気がした時、

    何だか気持ちが高まっているような気がします……」

    ニーナが再びピアノを奏でだすと、エメラダが静かに聴き入った。

    楽譜通りの旋律が流れていたはずが、徐々に楽譜を離れアレンジされていく。

    しかし、決して悪いアレンジではない。エメラダは、高揚するニーナの感情がそのまま音で表現されているような気がした。

    「ほら、深い森を通り過ぎるそよ風、小鳥たちのさえずり、湖で踊る水鳥……

    そんな情景が目に浮かんできませんか?」

    トリトミーの世界にそんな風景はなく、エメラダは見たことがなかった。

    だが、ニーナが奏でる旋律はいつの間にかエメラダにそんな世界を想像させていた。

    それはエメラダが初めて味わう感覚だった。

    ニーナの演奏が終わると、エメラダは力強い拍手を送った。

    『音楽とはその場かぎりで楽しむもの、そんなふうにしか考えていなかったわ……

    音楽で、世界を作り出すことができるのね……』

    エメラダの目には涙も溜まっていた。

    エメラダが他者の演奏を聞いて、こんな気持ちで涙するのは初めてのことだった。

    それを見て、ニーナは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐにほほえんだ。

    「エメラダ……。

    今度は一緒に、弾いてみませんか?」

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  • 闘舞のアイシャ

    闘舞のアイシャ

    モノリウムからやってきた、山猫の獣人少女。
    母はモノリウムでは知らない者がいないほどのダンサーで、
    その母を超えるため、異文化に興味を持ってセプトピアに渡って来た。
    舞い踊るような体術と気功の力で戦う。

    トランス!

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & 闘舞のアイシャ

    ニーナ、お姉さんは私なんだから!

    『そこならここから近い! 私たちが行くわ!』
    司令部に通信で伝えると、アイシャは『行こう!』とニーナの手を引いて走り出した。
    敵が出現したのは、ここから数百メートルの距離。
    アイシャとニーナがその近くにいたのはまったくの偶然なのだが、
    (今日はツイてる!)
    と、アイシャは心を躍らせていた。

    アイシャとニーナのコンビはとにかく強かった。
    今まで7回出撃し失敗はゼロ。しかも相手は瞬殺。
    その戦績に、アイシャは相当な自信をつけ、次の出撃はいつだろうといつもウズウズしていた。
    そんな時に現れた敵の出現。気持ちがはやらずにはいられなかった。

    「ちょっと待ってください!」

    現場が目前に迫った時、ニーナが突然手を離した。

    「もう少し敵の情報を仕入れてから、戦闘に臨みませんか?」
    『はあ?』
    「今まで上手くいきすぎていて、少し不安なんです……」

    真剣なニーナの顔を見て、アイシャは余裕たっぷりに笑った。
    そして妹を励ます姉のように言い放つ。

    『ニーナ、怖がることないよ。大丈夫大丈夫。
    おねーちゃんにまかせなさい!
    私たちは無敵なんだから!』
    「けど!」
    『いいから早く行こう!』

    問答無用で、再び、ニーナの手を引いて走り出すアイシャ。
    こうなってしまったら、やるしかない。
    現場に到着、アイシャと合体したニーナの前に現れた敵。
    それは、トリトミーのロボット型の使者だった。

    『よーし! いつも通り、一瞬で決めちゃうよ!!』

    ノリノリで指示を出すアイシャに従い、
    ニーナは素早い体術で敵に迫ると、
    肉球のついた手のひらから気功を放つ。
    この一撃で、敵の身体は内部から破壊され、戦闘不能に陥るのだ。
    いつも通りの手応えを感じ、

    (フフッ……また勝ってしまった。えっへん)

    と、ほくそ笑むアイシャ。
    しかし――敵は動いた。

    『ええええッ!? なんでええええッ!?』

    一方、ニーナは冷静に敵の反撃をかわし、距離をとる。

    『一体どうして……!?』

    うろたえるアイシャに、ニーナは淡々と答える。

    「相手はロボットなんですから、内部は機械です。
    だから、いつもの気功は通じないんでしょうね……」
    『え!? え!? だったらどうすんの!? 勝てないじゃん!!!』

    アイシャの頭は、完全にパニックだ。

    「大丈夫です」

    さきほどとは逆に、今度はニーナが余裕の笑みを見せた。

    「内部からの破壊は無理なら、外側からコツコツとダメージを加えていけば……」
    『けど……』
    「アイシャ、怖がることはありません。私たちは無敵、なんでしょう?」

    ニーナの気品あふれる優しい笑顔に、アイシャの動揺は徐々におさまっていった。

    『……わかった。ニーナ、ごめんね』
    「?」
    『次は、ちゃんとニーナの言うことも聞くね……』

    すっかり、しおらしくなったアイシャの言葉に、

    (どっちがお姉さんなんだか……)

    と、ニーナは思わずクスッと笑った。

    かくして。
    初出撃から今まで、7連続で相手を瞬殺してきたニーナとアイシャにとって、
    その日の戦闘は初めての長丁場。トランスリミットぎりぎりまで粘る激闘であった。
    支局へ戻るトランスポーターの中、疲れ果てて眠るアイシャと、

    (むにゃむにゃ・・・やっぱり私たち、無敵・・・)

    その傍らに、見守るニーナがいた。

    「これからも、がんばりましょうね、“おねーちゃん”」

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  • アモル

    アモル

    まだまだ見習いの未熟なキューピッド。
    上位の天使型フォーリナーのお付きとして人間の住む世界の
    ALCAを視察する際、自分と近い年代であり、理想そのもの
    のニーナの姿を見て、一大決心し、彼女へ声をかけた。
    その後、彼女と友人となり盟約する。

    トランス!

     ニーナ・アレクサンドロヴナ & アモル

    ニーナ&アモル

    命令に従い、ALCAの支局を離れ、ピラリ学園に入学してきたニーナ。
    教室に集まったニーナたち新入生に、副担任の藤崎が早速クラスのカリキュラムについて
    丁寧に説明をしてくれている。
    ―が。
    失礼な事とは思いながら、藤崎の声はニーナの頭の中を上滑りしていく。
    心の中の大半は、ずっとひとつの事に占められたままだ。

    昨日までは、ALCAの第一線で定理者として人々のために働く自分。
    今日からは、ピラリ学園で学ぶ自分。
    でも何を学ぶのか?
    3人の使者と盟約し、彼女たちと深く心を通わせ信頼の絆を保ってきた自負がある。
    それぞれの能力、特性を引き出し、様々な事件を解決してきた実績もある。
    その私が、いまさら何を学ぶというのか。
    何を学べば、力を証明し、戻ることができるのか。
    ずっと考えているが、その答えは出ていなかった。

    「ところで、テトラヘヴンの天使サマが、ニーナにぜひ会いたいそうだ。どうする?」
    担任の神楽の、そんな唐突な声に引き戻される。

    ―異世界、テトラヘヴン。
    テトラヘヴンと言えば、神や女神、魔神たちが実在する神話の様な世界と聞く。
    以前ナイエン区で大事件を起こしたのはそのテトラヘヴンの魔神たちだし、
    その時活躍したナイエン支局の先輩定理者たちも、テトラヘヴンの女神たちの力を借りて事件の解決にあたったのだ。
    そんな世界の使者と盟約できたら、自分がALCAに戻るための糸口がつかめるかもしれない。

    盟約室に入ると、たちまち室内はテトラヘヴンの風景に変わった。
    宙に浮かぶ白亜の神殿。事前の知識では知っていたものの、その荘厳さに思わず息をのむ。
    すると。はるか天空から、光に透ける6枚の翼を広げ、白銀の鎧に身を包んだ女性が降りてきた。
    頭上に輝く大きな光の輪が印象的だ。
    『お前がニーナ・アレクサンドロヴナか』
    「はい、私です」
    相手の名前は聞いていた。テトラヘヴンでも、神々に次ぐ高い地位の大天使だという。
    『我はミカエル。天使騎士団の団長を務めている。
    我が声に応じてくれたこと、感謝しよう』
    「では、貴方が私と盟約したい、と?」
    『うん? ちがうぞ?』
    どうも話が間違って伝わっているらしい。
    『すまん。お前とぜひ盟約したい、というのはこっちだ。ほら、アモルよ、挨拶をせよ』
    『は、はい…』
    ミカエルの陰でわからなかったが、おずおずと羽ばたきながら現れたのは、ニーナよりも背の小さい、幼く可愛らしい天使の少女、だった。

    『わ、わたし、その、あ、アモルと・・いいます・・・』
    おじぎのつもりか、頭を下げたまま、うつむいて動かない。
    ふわふわの髪から覗く可愛らしい耳が真っ赤に染まっていくのが見える。どうも相当に恥ずかしがりやらしい。
    (初めてのタイプだわ・・・)
    超然とした自信家で天才肌のエメラダ、傍若無人で天真爛漫なアイシャ、落ち着いていて高貴なリリアナ。
    かつて盟約した者たちと全く違う目の前の天使の姿に、ちょっと驚いた。
    (いや、というより・・・)
    そう、驚いたというより、心配になってしまう。

    『こら、アモルよ、ちゃんと自己紹介して、思いを自分で伝えぬか!
    それではニーナが困ってしまうだろう』
    『あ! ご、ごめんなさい、ごめんなさい・・・』
    ますます頭を下げ小さくなってしまうアモルに、思わず助け舟を出してしまう。
    「いえ、謝らないでください。緊張しているんですね。
    気を楽にして、貴方の話を聞かせてください」

    そしてニーナは、アモルのたどたどしい話をゆっくりと聞いていった。
    アモルはまだ見習いのキューピッドであること。
    この世界、セプトピアへの視察団に手伝いとして随行してきたとき、ニーナの活躍を目撃したこと。
    彼女から見た自分は、強くて、綺麗で、かっこよくて、りりしくて―
    聞いているこっちも赤くなってしまいそうだが、とにかくそういうこと、らしかった。

    『わ、わたし、こんな、何もできない、ダメな天使、だけど・・・
    か、変わりたい、そう、変わりたいんです!
    わたしも、皆の役に立てるような、
    人と人を結ぶ、立派なキューピッドに、なりたいんです!だから、だから、そのぅ・・・』
    「だから?」
    『う、ううう・・・』
    次の言葉を、ニーナもミカエルも急かしはしなかった。
    ただ待った。
    この言葉ばかりは、アモルが自分で伝えなければならない。
    『私の、盟約者に、なってください!』

    正直なことを言うと、最初にアモルが盟約を希望していると聞いて、落胆とまでいかなくても
    (どうなんだろう?)と思ったのは確かだ。
    ALCAに復帰するために、自分の強さを証明する。
    そのためには、強い使者と盟約した方がいい。
    (―でも。
    もしそうだとするなら、エメラダやアイシャ、リリアナが弱かった、ということ?
    そんなことはない。そんなことは認められない。
    私、ニーナ・アレクサンドロヴナの誇りにかけて)

    アモルはついに顔をあげて、まっすぐニーナと目を合わせた。
    今にも泣きだしそうに目が潤んでいるが、しっかりと、目を合わせた。

    今までの盟約者たちは、いつも自分を引っ張ってくれる存在だった。
    しかし今度は私が、この幼い天使の手を引いて共に歩くことができたなら。
    ―私がちゃんと一人前の定理者であると、証明できるかも?

    後にニーナはちょっと反省してこの時のことを語る。
    少々、打算がありましたね、と。

    「いいわアモルさん。私と盟約しましょう」

    小さなキューピッドの小さな勇気。
    それが大きな力となって、ニーナを助けていくようになるのに、それほど時間はいらなかった。

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