不屈のニーナ
『「花園の祝福ッ!」』
リリアナと合体したニーナが高く杖を掲げると、
道を覆っていた使者たちは一斉にピタッと立ち止まる。
やがて使者たちは、「花園の祝福」が放つ多幸感に、戦意を失い、倒れていく……。
「相変わらず凄まじい威力を持った技ですね……」
ニーナがつぶやくと、リリアナのおっとりとした笑い声が聞こえた。
『さあ、道が拓けました。急ぎましょう』
リリアナの言う通り、今、ニーナを遮る者はない。目的地まで一本道ができていた。
「アイシャ、ついてきてくださいね」
合体を解除したニーナが歩を進めながら、背後にいるアイシャに声をかけた。
『ふーん……まあまあな、技ね』
アイシャはツンとしながら、ニーナのあとをついていく。
ニーナとリリアナと一緒に戦う覚悟で来たものの、結局合体するタイミングが無く、
少し拗ねていたのだ。
3人が目指した場所は、街の外れにあるALCAの支局。
「……誰もいないんでしょうか」
ガランとしていて人の気配を感じない。
それに壁は傷つき、廊下には物が散乱している。
それは、この場所もまた使者たちに襲われていたことを意味していた。
『郊外の支局なら安全かと思ってましたのに……』
リリアナは悲しげにつぶやいた。
『それじゃ、ニーナのお目当てのモノもやられてるんじゃ……』
アイシャが言い終える前に、ニーナは駆け出していた。
『ニーナ!!』
ニーナが向かったのは、支局にある指令室だ。
そこにあるコンピュータから、本部のホストコンピュータにアクセスできる。
――この事態を招いたものは何だったのか?
支局の端末からそれを探るため、ニーナはここにやってきたのだ。
「……!」
指令室を見て、ニーナはハッと息を呑む。
アイシャが懸念していた通り、端末も無残に破壊されていた。
「……」
立ち尽くすニーナに、リリアナもアイシャも声をかけづらそうにしている。
そのうちニーナは諦めがつかないのか、
破壊された端末に近づき、黙々とイジリはじめた。
その姿はアイシャには悲痛に見えた。
いくら修理しようが無駄――
そうとしか思えないほど端末はズタズタに破壊されていたのだ。
『ニーナ、あんまり無理しないで。ちょっとさ、息抜きしようよ』
気遣ってアイシャは言った。
『それがいいかもしれませんね。ここに来るまで戦い続きでしたし』
リリアナも同じ気持ちだ。
『そうそう! 何かして遊ぼうか! 気晴らしにさ!』
『じゃあ……おままごと?』
『いや……』
『かくれんぼ?』
『ええと……』
『鬼ごっこ?』
『もう、子ども扱いはよしてよ!!』
アイシャはたまらず叫んだ。
『ごめんなさい。アイシャは子どもじゃないものね……』
リリアナはクスクスと笑った。
アイシャは不満そうに「んもお……」と腕を組んで行こうとする。
『何か面白そうなものがないか、探してくるよ』
「結構です」
ニーナは目もくれずピシャリと言った。
「私は任務をまっとうします」
『任務ったってそれがそんな状態じゃ――』
そう言いかけた瞬間、部屋が次々と淡い光りに照らされはじめた。
『!!』
部屋のあちこちにあるモニターが息を吹き返したのだ。
「……これで何とかなりそうですね」
そして、ニーナは淡々とキーボードを叩き始める。
ニーナは、不可能としか思えなかった端末の復旧をやり遂げてしまったのだ。
――忘れてた。ニーナは天才だった。
リリアナもアイシャも、その小さく可憐な背中をただただ唖然と見つめていた。
一方、ニーナは目的だったホストコンピュータへのアクセスに成功し、
この状況を分析するため、深い思考の海へと沈んでいった。































































