ネメシス
テトラヘヴンからやってきた、毒舌家の「憤りと罰の女神」。
幼い子供の様に見えるが、読書好きで博学。
ゾンビ映画が大好物で、グロテスクなものに目がない。
| ヴェロニカ・アナンコヴぇろにか・あなんこ | |
|---|---|
| 性別 | 女性 |
| 年齢 | - |
| 身長/cm | 174 |
| 体重/kg | 58 |
| 血液型 | AB型 |
| 生年月日 | 10月25日 |
| 好きなもの | 酒とカラオケ。 |
| 嫌いなもの | 甘い物 |
ALCAナイエン支局の支局長を務める、長身で銀髪の美女。 常に冷静な態度を崩さないが、その胸のうちには異世界の全ての使者に対する激しい復讐心を秘めている。 |
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テトラヘヴンからやってきた、毒舌家の「憤りと罰の女神」。
幼い子供の様に見えるが、読書好きで博学。
ゾンビ映画が大好物で、グロテスクなものに目がない。
ヴェロニカ・アナンコ & ネメシス
「こちらへどうぞ」
『おおきに、ありがとな』
クラウの先導でサロンに入ってきたのは、上品でシャープな印象の、ネイビーのスーツを着こなした女性だった。
ALCAナイエン支局のサロンルーム。
奇しくも、あのルシフェルを迎えた時と同じ場所。
女性は、やはりシャープな印象を与えるブルーメタルフレームの眼鏡に軽く指を当て、視線の先を確かめる様に首を少しかしげる。
『そちらさんが、ALCAのヴェロニカ局長はん?』
「―ああ。ヴェロニカ・アナンコだ」
『なるほど、お姿は拝見しとりましたが、ホンモノはそれ以上にお綺麗ですわ。
そしてそちらが―』
『テトラヘヴンのネメシス』
『こちらもまあ、可愛らしいお嬢さんで。お会いできてホンマ、嬉しいわあ』
だがそう言われたネメシスの方は、口にくわえたロリポップキャンディーをガリっと噛み砕くと目を逸らす。
『おやまあ、嫌われてしまいました?』
「―見え透いた世辞はいい。ペンタクルスの使者」
『さいですか? そりゃあ、話早くて助かりますわ。
うちはペンタクルスの紫車リィス。評価額は2億3千万GD。
以後よろしゅうに』
「あいつもペンタクルスの使者なのか」
サロンを見下ろすフロアに、オルガ、玉姫、クロエ、そして縁が揃っている。
いずれも懐にフォーリナーカードを忍ばせ、事あれば即合体して対応できる構えだ。
それ以外の、警備員を含め一般のスタッフは万一に備え退避させている。
「…ヴェロニカさん、大丈夫でしょうか…」
「大丈夫だ。そのために、俺たちもこうして待機しているんだからな」
ナイエン支局の定理者は、みな様々な試練を乗り越えてきた、言わば歴戦の勇士だ。
彼らが見守る中、会談は表面上、穏やかなムードで進行していた。
『・・・ちゅうわけで、金錆はうちの部下なんやけど、
焦ってしもたんやろなぁ。此度のことは、ほんに申し訳ないことしましたわ』
といって、ついと視線を上に伸ばす。その先には、オルガ。
『特に、そちらの色男さんには、重ねてお詫び申し上げます』
と言って、いったん席を立つと、腰を折って綺麗なお辞儀をして見せる。
「俺のことはいい。
ルシフェルのロジックの件も、解決した話だ。
それより、金錆のギゼはどうしたんだ。
詫びというなら、本人が来て謝るべきじゃないのか」
『暖かいお言葉、ありがとうございます。
おっしゃる通りです、本人に謝らせるべきなんですけど・・・
当人、あれから行方をくらましてもうて。
うちらの呼び出しにも応じんのですわ』
その言葉を受け、ヴェロニカが柳眉をひそめる。
「我々も行方を追っている。
そちらの言う事が本当なら、ヤツを追うための情報は提供してもらえるのか?」
『もちろんです。どれだけお役に立つかわかりませんが、なんでも提供させていただきます』
リィスの説明によれば。
彼女のギルドに所属する「金錆ギゼ」が今回の事件を主導。
オルガの左手に宿る「ルシフェルのロジック」の奪取を企図した彼は、そのためにロジック採取の機能を持つ蒸気人形を制作。さらに、行動をやり易くするため、ジスフィアの玉風・鳴神をそそのかしキョウトで事件を起こさせた。
「貴様の部下の企みのために、キョウトの街は随分被害を受けた」
『申し訳もありませんわ。
ただ、キョウト支局の皆さんも随分優秀なようで。ジスフィアの暴れもんもあっちゅうまに捕まったらしいやんか』
「それは貴様の知ったことではない」
『フフ、そりゃ失礼しましたわ』
日本のALCAの目がキョウトに集中する中、ナイエン支局の定理者たちを調べ上げ、更にオルガを一人で誘い出すことに成功した金錆ギゼ。
その目的まであと一歩のところで、計算外の切り札によって阻止される。
『これは、せめてもの詫びの印ですわ』
そう言って、紫車リィスは手にしたカバンから布袋を取り出すと、机の上にそっと置く。
袋の口から、かしゃりと澄んだ音と共に、白銀に輝く光が漏れる。
「・・・これは?」
『白金― プラチナ製の歯車ですわ』
「プラチナ?」
結構な量だった。
ヴェロニカが手に持ってみると、それなりの重さがある。
『調べてみて構いまへんわ。純度はPt1000。
綺麗に見せるんはパラジウムとか混ぜた方がええねんけどね。
歯車にしたんは、まあ、うちの気まぐれや。
別に、溶かしてくれても構わんよ?
それだけで、こっちの価格で100万円ぐらいにはなるやろ』
「これで、キョウトの被害を弁済できるとでも?」
『とんでもありまへん。
これは、うちから局長はんへの、あくまで個人的な、そう、プレゼントや』
「―なんだと?」
『こんなもん、うちにとっては大したもんやない。
うちの世界では、こっちの石ころ程度のもんやしね?』
「・・・」
『局長はん、うち、局長はんと仲良うしたいねん。
もちろん、そっちの皆さんともな?』
といいつつ視線を軽く上へ投げ、また降ろす。
「何を考えている」
『もうお分かりでっしゃろ?』
「プラチナの歯車のプレゼントねー アクセにはちょーっとゴツイよねぇ」
「でもこれだけの物をあっさり用意できるという証明ね」
「俺のロジックが聞こえる・・・
財貨のロジックで動くお前たちの狙いは―」
「つまり、そのう、お金儲け、ってことですか?」
『ふふっ それ以外に、うちらに生きる意味はあらしまへん』
と言って、今度は扇子を取り出すと、くるりと回して広げる。
青く染めた和紙に白く鳥の絵が描かれている。
『綺麗ですな。これ、扇子言うんですね。
似たもんはうちの世界にもあるんやけど、こないに綺麗なもんは無かった。
というか、わざわざ色付けて、絵を描くなんて発想が無かった!』
あたかも舞う様に、手の中でくるりくるりと扇子を弄ぶ。
『これな、うちの世界で大流行りしましてん。
うち、ようけ儲けさせてもらいましたわ。
流石はセプトピア。
快楽のロジックは、伊達じゃありませんなあ』
「つまり、何が言いたい?」
『うちと組んで、お金儲けしまひょ』
そしてリィスは語り始めた。
ロジックの影響で、世界を超えると物質は変わってしまう。
しかし、元から両方の世界に在る物質なら?
さらに、その価値に大きな差があるなら?
セプトピアでは産出量では金よりも貴重なプラチナが、彼女の世界ペンタクルスでは石ころ並みに手に入るという。
さらに。
『情報。概念。思考。理念。アイデアや発想は、世界を超えても有効ですわ』
手動の涼を得る道具に絵を描くことが、彼女の世界で大ヒットしたように。
お互いの世界での「当たり前」が別の世界では「青天の霹靂」となるのだ。
『儲かりますえ? たーくさん!』
目を輝かせ、乗り出さんばかりに語る彼女に対し。
見た目は愛らしい幼女、しかして人の尺度では追い付かない長さを生きてきたテトラヘヴンの復讐の女神、ネメシスはぼそりと言った。
『―バカじゃん?』
『え?』
リィスの滑らかな口調が止まったのは初めてかもしれなかった。
『そっちの世界のロジックがなんだか知らないけど。
抱えきれないお金持って何するのサ』
『―!!!!!』
「まあ待て」
ヴェロニカはあくまでその姿勢を崩さない。
冷めた目でリィスを射抜く。
「お前の話はそれなりに興味深い」
『せ、せやろ?』
「だから、ALCA本部に行こう。
ヤルノさんが段取ってくれる。
すぐに国際的な異世界間貿易の枠組みを検討し、協定を検討しよう。
素晴らしい事業になるんじゃないか?」
そういう台詞の内容に比べ、その口調の冷たい事。あたかも、異世界の使者の熱を冷やすがごとく。
『わ、わかってまへんな・・・
これはぁ、うちとあんたさんの・・・』
「お前がやりたいのは、開かれた異世界間貿易ではないな。
セプトピアとの窓口を独占し、利益を収奪する。
―つまり密貿易だ」
『・・・』
ひゅうっ と息を飲むような音の後― リィスから出た言葉は・・・
『だってその方が、儲かりますやろ?』
ヴェロニカとかわす視線。
不思議なアイコンタクトだった。
ある意味この瞬間、この二人は誰よりもお互いを分かっていたのかもしれない。
『交渉、決裂ですな』
言うが早いか、身を翻す。その背中に、
「私が、おとなしく貴様を帰すとでも?」
ヴェロニカの目が鋭く光る。伸ばした手は盟約者、ネメシスの手を握り。
『「合体」』
『カミカミボム、出ておいで!』
「動かないでいた方がお前の為だぞ?」
瞬きする間すら与えない。リィスの足元をぐるり囲むように、小さな爆弾たちがニタニタと笑みを浮かべて整列する。
「きょ、局長! 室内で爆弾は!」
「ま、まあ一度爆破したけどな」
「あれは後片付け大変でした!」
言いながら、彼女たちもフォーリナーカードをかざそうとする。
『ご心配には及びませんわ!』
リィスの体のあちこち、スーツを破って白い蒸気があがる。
「ちっ」
起爆。
ためらいなく足元の爆弾を爆発させるが、そもそも足止め程度の威力に設定していたためか、白煙の向こうに人影が飛んで逃げるのが見える。
しかし。
「明日葉!」
「―」
ゆらりと空気がうごめく。
長いライフルの銃身が現ると、そのまま発砲。光の弾丸がその影を射抜く。
「―命中」
学はこの会談の前に合体してスニークウォークを発動。姿を隠しながら、サロンの中でずっと待機していたのだ。
「・・・まあ、こんな事だろうとは思ったがな」
白煙が晴れた時。
そこに横たわるのは、人形。
穿たれた穴から除くのは、歯車。
血は流れていない。
『エろうすいマせんなァ・・・』
壊れた調子で人形のどこからか声が流れる。
『うチもさすがニ、名高イないえん支局さンに、
自分デ来るンはこわいコワい・・・』
つまりそういうことだ。
ここに来たのは紫車リィスの影武者。
本物は別のどこかから、これを観ている。
『まタ、お会イしまひょ・・・ そオの時は、勉強サせてもらいま―』
と言って、音は途切れ、二度と鳴らなかった。
「忙しくなるぞ」
合体を解いたヴェロニカは、定理者たちを見回し、そう、告げた。
―続く
モノリウムからやってきた、銀狐の女獣戦士。
冷静に物事を見極めるクールな性格。
美しい毛並みを乱すことなく敵を討つ華麗なる剣士で、
武器は茨で出来たレイピア。
セプトピアには、没落した一族の再興を求め、
その手がかりをつかむためにやって来た。
「ギムレットには早すぎる」
繁華街の外れにあるそのバー。カウンターにはヴェロニカただ一人。
この界隈では酒に酔った使者が一般市民をトランスジャックする事件が多発していると聞いていたが、今宵はその気配は無さそうだ。
静かだからこそ、人が店に入ってくると、すぐに気がついた。
そこにいたのはヴェロニカと同じ銀髪の女――ローダンテだった。
『……隣、空いてるか?』
「聞くまでもないだろう」
ガラガラの店内を見回してヴェロニカはクスッと笑う。
ローダンテは硬い表情のまま無言でスツールに腰かけた。
突然の再会だったがヴェロニカに驚きはなかった。
ローダンテは先日の戦闘の際、偶然出会ったモノリウムの使者だ。
ヴェロニカはその時からローダンテと再び巡り会う運命のようなものを感じていた。
『……私と盟約しないか? お前は、私が力を貸すべき相手である気がしたんだ』
ヴェロニカが感じた運命をローダンテも同じように感じていたようだ。
だが、ヴェロニカはすぐに返事はしなかった。
「……まぁ、先ずは一杯飲んだらどうだ?」
答えをはぐらかすヴェロニカに、ローダンテは少し戸惑いながら、仕方なそうに従う。
『あまり甘くない酒がいい……』
「ならば、この辺りだな」
と、ヴェロニカはメニューを指差す。しばし考えた後、ローダンテはバーテンを呼んだ。
『ブラッディ・マリーをくれ』
それを聞いて、ヴェロニカがまたクスッと笑った。ローダンテは再び戸惑う。
『? 何がおかしいんだ?』
「酒にも言葉があるんだ」
『言葉?』
「花言葉のようにな……ブラッディ・マリーには『私の心は燃えている』という意味がある。
たまたまかもしれないが、そんなお前の強い心情を表しているのかな……」
それを聞いてローダンテは神妙な顔を浮かべた。
『妙なものだな……図星だ。私の心は燃えている』
ローダンテは、セプトピアの世界に来た理由を打ち明けた。それは一族の再興だ。
今や滅びゆく種族になってしまった自分の一族に再び栄華を取り戻したい――
その手立てを探るため、ローダンテは別の世界へとやってきたのだ。
『私には背負わなければならないものがある。
しかし、この世界では盟約しなければ真の力を出せない。お前に協力してもらいたい』
力強くヴェロニカに訴えるローダンテ。
だが、ヴェロニカは黙ったまま。そのまま数分が経過した。
じれったくなったローダンテがもう一度問いかけようとした時、
やっとヴェロニカが口を開いた。
「ギムレット」
酒の注文か――と肩を落とすローダンテ。
『ギムレットにも言葉はあるのか?』
「ある。『長いお別れ』だ」
それを聞いてローダンテはハッと立ち上がった。
『それが答えか……私と盟約するつもりないという……』
「早まるな」
ヴェロニカは笑いながら言った。
「私が『長いお別れ』をしたのは、過去の自分とだ。私には長い間背負ってきたものがあった」
ローダンテの話を聞いて、ヴェロニカは復讐に囚われていた頃の自分と重ねていた。
「お前は、あの頃の私と似ている」
『今のお前は背負っているものはないのか?』
「ああ。お前が今の思いを成就させるのか、それとも別の道を見つけるのか……
お前がこれからどうなるか見てみたい」
『そ、それでは……』
ローダンテが盟約を口にしようとした時、店の外から悲鳴がこだました。
程なくして司令部からヴェロニカに出撃の命令が通信で入る。
「このまま静かな夜を期待したが、やはり使者が現れたか……」
繁華街の裏路地。
酩酊し、一般市民をトランスジャックした使者が暴れ回っている最中、
合体したヴェロニカとローダンテが現れた。
ゴージャスな毛皮を身に纏い、銀髪はネオンに照らされ輝いている。
その手に握られているのは茨でできたレイピアだ。
「早速だが、お前の腕を見せてくれ」
『望むところだ』
そして次の瞬間、鋭い剣先が目にも止まらぬ速さで敵に襲いかかった。
その手応えにヴェロニカには満足そうに微笑む。また得難い友を得た――と。