わたつよ3 葵勝利編

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五六八葵とアシュリー・ブラッドベリ。
定理者として第一線で活躍しながらも、あえて定理者育成校・ピラリ学園に編入してきた二人は、今その生徒会室に呼び出されていた。

「まあいらっしゃい、葵さん。アシュリーさん」
柔らかな笑みを浮かべながら、慣れた手つきでティーポットから紅茶を注いでいくのは森ヶ谷夕子。
葵と同じ学年で、生徒会長の指名で生徒会副会長に選ばれた少女だ。
彼女たちを呼び出した生徒会長・東 瑞希は、ティーカップを捧げ持つように掲げると、

「今日の紅茶も素晴らしい香りだね、夕子。銘柄は・・・そう、ヌワラエリヤというところかな?
君の焼いてくれたクリームたっぷりのこのケーキによく合う、最高のマリアージュだ。言うなれば、君と私のコンビの様に―」

「―会長。結果を伝えるのでしょう?」
「っうん、そうだったね。待たせたね、二人とも」
「・・・ええ、はい」
「別に、その、はい」
正直、どっちでもいいかなーというのが二人の本心だ。

この投票でより多くの票を獲得した者は、編入組の代表として、今回のキャンペーンのポスターのモデルになると決まっている。
というか勝手に決められた。
本人たちの意思は華麗にスルーされ、主催の瑞希と、葵・アシュリーそれぞれの盟約者たちが猛烈に盛り上がり、
今日まで派手に選挙活動を繰り広げてきたのだ。
「今回の投票は、学内の内部生・編入生問わず全ての生徒、そして教職員。
さらにさらに、学外のALCA関係者の皆さまにまでひろーく参加をお願いした!」
学内の、それも内部生と編入生の融和を図る、とやらのキャンペーンなのに、そこまで話を広げるのはどうなのか、
と思わないではない二人だった。が―

「いやー 激しい選挙戦だったね!
一進一退の攻防ながら、序盤は熱烈なファンを抱えるアシュリー君が1枚上を行く展開!」
と瑞希が選挙戦を振り返ると、
そりゃあ、アシュリーはわたしと一緒にアイドル活動してるから!
そう声を挙げたのは、アシュリーの盟約者、トリトミーからやって来たアイドルアンドロイド、シュガー。
合体した二人は、歌と踊りで様々な問題を解決してきたのだ。
「わ、私は別に、アイドル活動をしたくてしたわけではありませんわ!任務のため、しかたなく、しかたなく!」
でも、結構ノリノリだったでしょ? 楽しかったでしょ?
「いや、その・・・多少は・・・その・・・」
顔を真っ赤にしつつ、声が尻つぼみになっていくアシュリー。

「しかし。葵の序盤の劣勢が伝えられると、主に編入組の実戦経験豊かな定理者から、多くの支持が集まった」
あったりまえじゃん! 葵はね、たくさん、たーくさん活躍して、みんなを守ってきたんだから!
モノリウムから来た兎の獣人・稲穂のロッタは、葵の妹分を自称している。
仲の良い姉妹の様な二人だが、その確かな実力は、ALCAでもよく知られているのだ。
「確かに、与えられた任務をこなすことで多くの人を守れたというのは、今も私の誇りです」
それにそれに、見てこの抜群のぷろぽーしょん!
「うひゃあ」
抱きつかれた葵が思わず声をあげる。
良く食べて、良く戦う。日々のつみかさねで作られた、これがうつくしきやせーのびぼーってやつよ!
「ちょ、やめ、ロッタ、くすぐったい!」

「あらあら、二人とも、ずいぶん人気があるのね」
「そうなんだよ夕子! おかげで集計が大変だった!先日、全ての投票が終了し、先ほどその集計結果が集まった。
―発表しよう」

かたずをのむ一同。
「勝ったのは・・・ 五六八葵くんだ! おめでとう!」
やったー! 葵ばんざーい!
アオイ、カッタノカ?ヤッタナ!
「はい、まあ、ありがとうございます・・・」
「葵さん、その、おめでとうございます。
やはり、私などより、葵さんの方が、背も高いし、凛としてらっしゃるし、学園の皆の目指す代表として相応しいと思いますわ!」
むー やっぱり、ファンへのアピールが足りなかったのかなー
やれやれ、みな、見る目がありまへんわぁ・・・
でもまあ、おなごの魅力は秘するが華。今日の所は、葵はんにお譲りしましょ

口々に騒ぎ出す使者たちを、コホンと軽く咳払いで抑えた瑞希は、
「さて!早速だが!ポスターの印刷と貼り出しに移りたいと思う!」
と、宣言した。
「・・・はい?あのう、私がモデルに、なるんですよね?」
「そうだが?」
「写真、撮るんですよね?」
「撮ったが?」
「え?」
「既に撮影済みだぞ? 安心したまえ。ほら」
覗き込む一同。

そこにあったのは、明らかに隠し撮り?と思われる、葵の着替え中の姿で―
「素晴らしいだろう? ALCAの定理者の制服を脱ぎ、我がピラリ学園の制服に袖を通す。
その一瞬の移り変わりを切り取ったこの姿こそ、編入生の覚悟を内部生に伝える無言かつ雄弁なメッセージであり―」
「こ、こここ、こんなもの、いつ撮ったんですかぁ!」
「君の盟約者にお願いしたのだが。良い構図だろう?」
うむ、学園存続にかかわる重要な秘密任務と言われてはな。私も万全を尽くした
「アルヴ!?」
色白の葵が顔を真っ赤にするのをよそに、生徒会長は手元の端末を広げ、なにやら画面を呼び出す。
「さて早速ポスターのデザインをっと・・・うむ、こんなもんかな。
何枚ぐらい刷ろう? 学内だけじゃないぞ、ALCA各国の支局にも送らねば!」
やめてー!
葵、そしてアシュリーもいっしょに悲鳴を上げる。
だが瑞希の指が決定ボタンを押す前に・・・

「―会長」
夕子の声が彼女を凍り付かせる。
「・・・い、いやだな夕子。ジョーク、ジョークに決まっているじゃないか。
二人に早く生徒会に馴染んでもらおうとね、ハ、ハハハハ」
「冗談なら―」
「わかっているとも、うん、ほら、消した。消したぞ?」
改めて瑞希にきつく視線を送ると、またふっと柔らかな笑みに戻して二人に向きあう。
「葵さん、アシュリーさん、ごめんなさいね。でもこの人の言うことに、あまりまともに付き合ってはだめよ?」
「ひどい!」
「何かされそうになったら、私に言ってね?」
はい、夕子さん!!
「それで会長、二人には生徒会で何をしてもらうのか、もう決めたの?」
「もちろんだ! 細かい物事にもきちんと折り目正しく対応できる葵には、会計をお願いする。
それからいろいろ書き物が得意そうなアシュリーには、書記をお願いしよう。頼めるかな?」
意外に二人の事をちゃんと観ている。それが二人の感想だ。
とはいえ、着替えまで覗かれてはたまったものではないが。

「わかりました。会計の職務、お引き受けしましょう」
「私も書記のお役目、お引き受けいたしますわ」
「早速ですが今回の件。投票の実施とポスターの制作にいくら予算を見積もり、すでにいくら支出しているか、確認させてください」
「えっ? ええと・・・ どうだったかな・・・」
「企画と投票、そして結果を出した過程について、経過をまとめておきたいですわ。
最初の段階から、改めてお話しをうかがわせてください」
「あっと、それは、思い付きだったから・・・」
「会長」
「会長さま」
「お、落ち着きたまえ二人とも!」
「あらあら、葵さんもアシュリーさんも、もう立派な生徒会役員ね。頼もしいわ」

かくして。
ピラリ学園の制服をきちんと着こなしつつ、ちょっと固い笑みを浮かべた葵のポスターが学園のあちこちに飾られることになり。
このポスター欲しさに、一部のALCA局員たちが乙女の園ピラリ学園への侵入を図ろうとしてはあえなく撃退されたと聞くが、
その顛末は定かでない。

そして桜の季節。
学園は新たに、幼いながら豊富な実戦経験を持つ定理者、ニーナ・アレクサンドロヴナを編入。
明日の定理者を目指す雛鳥たちは、新学期を迎えようとしていた―。

————-

「ひなろじ! ~from Luck & Logic~」に、続く!

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