キャラクター&ストーリー

  •  剣 美親
  •  揺音 玉姫
  •  クロエ・マクスウェル
  •  五六八 葵
  •  揺音 聖那
  •  アシュリー・ブラッドベリ
  •  ジークハルト・クラウス
  •  当麻芽路子
  •  明日葉 学
  •  オルガ・ブレイクチャイルド
  •  七星 縁
  •  ヴェロニカ・アナンコ
  •  ジゼル・サンダース
  •  ニーナ・アレクサンドロヴナ
  •  リオネス・エリストラートヴァ
  •  京橋万博
  •  橘 弥生
  •  森ヶ谷 夕子
  •  小湊くらら
五六八 葵
五六八 葵いろは あおい
性別 女性
年齢 -
身長/cm 163
体重/kg 45
血液型 A型
生年月日 9月7日
好きなもの クリームパン
嫌いなもの 苦いもの

凛とした少女。

弓道の名家に生まれ、厳しい両親に育てられた。
「人に感謝を忘れない事」という両親の教えをけなげに守り、
厳しく自分を律して生きなければならないと思っている。

一方、周囲の押しに弱く、
頼られたり、甘えられたりすると、断れない。

盟約者フォーリナー

  • トール

    トール

    テトラヘヴン屈指の戦闘力を誇り、常に闘いと強さを求める。基本的には真面目な性格であるが、闘いを純粋に求めるあまり、子供っぽい一面も。闘いでは、雷とトールハンマーを操る姿から“雷の戦神”という異名を持つ。

    トランス!

     五六八 葵 & トール

    五六八 葵 & トール

    射場に入る。
    足踏みにて射位に着くとき。以前ならこの段階で周囲の音や空気、あるいは内なる雑念などといったものが消え失せたものだ。
    だが今は。
    感覚の違いを悟る。
    意識のほんの片隅が、周囲の気配を常に探っている。他の競技者たち、審判団、応援の部員たち、観客。皆の視線を、常に肌の上で感じ取っている。
    呼吸と共に、丹田に気を溜めていく。
    弓に矢をつがえつつ、的を見定める。
    頭上に弓を持ち上げ、大きく伸びる。
    そのまま、胸を開くように、ゆっくり弓を降ろしながら引いていく。
    全身の筋肉と気力、心の力を会わせる。

    ―会。そして離れに至る。

    残身の中、ひんっと矢道を裂いて飛んだ矢は、狙いあやまたず的を射抜いた。
    皆中―。
    周囲の拍手の中、葵は礼を返すと、射場を降りた。

    話は半年前にさかのぼる。
    ピラリ学園を卒業した葵は、元のALCA支局に戻り、そのまま以前の仕事に戻ろうと思っていた。
    しかし戻った彼女を迎えた支局長は、
    「なぜ戻ってきた。お前の席は、もう無いぞ」
    と、冷たく彼女をあしらった。
    あまりの言い草に悲しくなったし、怒りもしたが、葵自身がその怒りをぶつける前に彼女の盟約者にしてボディガードを自認する兎の獣人・稲穂のロッタが
    『なんだとこらーーー!!』
    と怒声を上げながらコンバットナイフを手に踊りかかろうとしたので、かえって葵の怒りは行き先をなくし冷静になってしまった。
    騒ぎを聞きつけて、教官や以前の同僚たちが集まってきた。支局長の口の悪さを責めつつも、しかし皆の気持ちはいっしょ、だという。 
    若くして、真面目過ぎるほど任務に打ち込んできた葵を、いかに皆が心配していたか。
    戦闘が日常である日々を、どれだけ酷いものと考えていたか。
    もちろん、ここにいる皆は同じ様にその日々を送っていたわけだが―
    「選べる道があるなら、選んでいいんだぜ」
    しかし葵は選ばなかったわけではない。
    「いいえ皆さん、私は別に、惰性で流されてここに戻ってきたのではありません。
    皆さんにピラリ学園に送り出していただいて、得難い経験をし、友人も得て―
    その上でなお、世界を守るこの仕事に、戻りたいと思ったのです」
    結局、支局長とひざ詰め談判で押し問答した挙句、元の仕事―ALCAの定理者チームの一員として復帰することはできたものの、
    「その代わり、大学に通え」
    と条件を付けられた。
    「どうせ事件か災害でも起きない限り、以前とは違ってヒマなんだ。
    お前も少しは、その武張ったアタマをなんとかしろ」
    編入試験を受け法学部の1年生となった葵は、ALCAの勤務の無い平日は大学に通うようになった。さらにクラブ活動として弓道部を選び、放課後は他の学生に混じって弓を引く。
    しばらく、ALCA職員と大学生の二足のわらじを履く、平和な日々が続いた。
    この間はキョウトで大規模な使者襲来事件が発生したものの、これもキョウト支局の定理者と応援のナイエン支局の定理者たちの活躍によって、すぐに解決してしまったと聞く。葵の出番は、無かった。

    そして現在。
    葵は弓道部の選手として今日の競技会に参加、見事な成績を修めつつある。
    「葵さん、さすがです!」
    「一人だけ皆中ですよ!すごい!」
    女子弓道部の子たちが葵を取り巻き、口々にほめそやすが、葵の表情は少し曇っている。
    「五六八さん」
    「―先生」
    声をかけてくれたのは、彼女の大学で長く弓道を指導している壮年の女性だ。本来は古文を教える講師だが、彼女も昔から弓道を修めており高い段位を持つ。指導は厳しいながらも丁寧で、理不尽な精神主義もなく、弓道部の皆に人気があった。
    少し離れて二人だけになると、講師は葵の様子を
    「まだ、迷いがありますね」
    と断じた。
    「はい。お恥ずかしい限りです」

    定理者の才能を見出され、ALCAの強制招集を受ける前。
    葵の射形―弓を打つ姿勢、そして心の動きに至るそれは、美しく定まったものだった。若くして射法八節を体現したかの様だとまで言われ、流石は五六八の家の娘としばしば称えられた。
    もし当時の葵が今この競技会に参加すれば、相当良いところまで勝ち進むとすら思える。
    一方、ALCAで葵を待っていたのは、戦場さながらの戦いの日々であった。
    そこは整えられた射場ではなく。競技の場ではなく。
    射形の美しさよりも、先に弓を射る事を。
    的に中る事よりも、敵に当てる事を。いや倒す事を求められる世界。
    自然、葵の射形は変わり、ひとつの「戦闘術」として練磨されていった。
    この会場で「的に素早く命中させる事」いやいっそ、「弓を武器に、いち早く敵を倒す事」を競わせたとしたら、葵に敵う者はいない。
     ―しかし。

    「やはり私は、弓道とは遠ざかってしまったようです」
    今、弓道部の活動の中、葵はあえて基礎に立ち返り、時間をかけてゆっくりと、射法八節をなぞって学びなおしている。
    だが一度戦いの場で身についた戦闘術としての射形は、そう簡単に抜けるものではない。体の運びは騙せても、心はそうはいかない。
    心の有り様が、違ってしまっている。
    「まだ、『敵』を探してしまっている?」
    「はい、いえ、今はそんな時ではない、ってことは、頭ではわかっているのですが・・・」
    「そうねえ。貴女の弓はずっと『敵を射る術』だったものねぇ
    でも弓道は違う。そんなこと、言われなくても五六八さんにはわかっていますね」
    「―はい」
    すると、葵の胸当ての裏―こればかりは、いつも肌身離せず持ち歩いている―ひとそろいのフォーリナーカードのうち1枚が光を放ち―
    『まてまてまて。それはわからぬ』
    オレンジに輝く髪を豊かに結わえた、大柄の女性が現れた。
    葵は慣れたものだが、流石に講師は驚き目を丸くする。
    「すいません先生、この子は」
    『うむ! オレはテトラヘヴンのトール。この葵と盟約を結ばせてもらっている。よろしくな!』
    「は、はあ、トールさんね、始めまして」
    講師の手を握って握手の真似事をするトールだったが、そのまま手を離さず、
    『で、さっきの話だが! 師範殿。
    弓は戦う術、『敵を射る術』なのは当然ではないか?』
    「・・・」
    『しかし師範殿は今、弓道は違う、と申された。
    ―敵を射るのではない・・・
    ま、まさかニホンの弓道を修めた者は、敵を射る事すらなく倒してしまうということか?
    それほどに優れた戦士になるということなのか!?』
    「ああ、トール、違う、違うの」
    葵がなだめようとするが、トールの耳には入らず。講師がまるでその「優れた戦士」に映るのか、キラキラ光るときめきの目で見つめている。
    さあ!さあ!と講師を問い詰めんとするが、何を問われているのかわかった講師は、一息ついて押し着きを取り戻すと、言った。
    「トールさん。そもそも、『弓道』に『倒すべき敵』はいないのです」
    『!?』
    そして講師は、ゆっくりとトールに説明を始めた。
    「弓は、もちろん貴女の言うように、敵を射殺すための、武器です。
    そして『弓術』は、弓を上手く扱うための術。敵を殺すための術でした。
    でもねトールさん。
    この世界、セプトピア。特にこのニホンエリアでは、ずいぶん昔から、人と人が武器を持って殺し合うことは、止めてしまったの」
    暖かな日の差す午後。
    競技会の続く道場周囲はあくまで静かに、人々の営みが続いている。
    「ふふっ それに今の世の中、人を殺めたければ、銃やらミサイルやら、もっと便利で威力が高くて、扱いの簡単な武器はいくらでもあるわ。
    なのになぜ、私たちはこの弓を、捨てなかったのか。
    当てるべき敵はおらず、敵を倒すには時代遅れの、この弓を。
    何故だかわかる?」
    『わからん。何故だ?』
    「それはね、この弓を引くことを通じて、より良く生きるための、より高みへ至るための、心と身体を手に入れられると、信じたからよ」
    『む、むむむむ・・・』
    眉にシワのよるトールに、講師はゆっくり、丁寧に、彼女たちが積んできたものを説く。
    弓道において、矢を的に充てるのは目的の様でいて目的そのものではない。
    弓を引く技術の研鑽を通じ、心と身体を磨いていく。
    そうすることで、正しい心の有り様と正しい身体の使い方を知る。
    それを得ること、あるいは鍛え磨き続けることそのものこそが真の目的であり、的に矢が中るのはその結果。一種の答え合わせに過ぎない、と。
    『・・・なるほど、だから「弓術」ではなく「弓道」なのだな』
    「ええ、道ですから。歩み続けるのです」
    合点がいったのか、大きくうなづくトール。
    『なるほど、わかった気がする。
    だから葵の魂は美しいのだな!』
    「え?」
    急に話が振られ、しかもいきなりの大仰な褒め言葉で頬が赤くなる葵。
    『オレもヒルデも、ピノやアルヴ、メルチ殿や、それにロッタのやつも、葵と合体することで、その魂に触れた。
    だからわかる。
    お前の魂の美しさは、オレが、オレたちが保証する。
    なるほど、お前の魂は、まさしくこの弓道、によって磨かれたのだな!』
    「ああら、そうなの? 良かったわねえ」
    「い、いえそんな、恥ずかしい、です・・・」
    思わず縮こまる勢いの葵を見つめながら、講師は改めて言った。
    「だからね、五六八さん。
    悩みなさい。悩んでいいの」
    「え?」
    顔を上げた葵に
    「もう一度、原点に返った射法を学ぶのもいい。
    あるいは、あなただけの体験を元に、あなたの射法を追求するのもいい。
    ふふ、我流の射法は、まあ競技会では評価されないから不利になるでしょうけど・・・別にあなたは、人から褒められるために弓を引いているわけではないでしょう?」
    柔らかく微笑んだ。
    「迷いなさい。悩みなさい。
    そして、あなたなりの答えを、あなた自身が歩む道を、見つけなさい。
    あなたの弓は、それをちょっとばかり、手助けしてくれるはず」

    競技会場を後にすると、そばを歩くトールはすっかり弓道に興味を持ったようで、
    『今度、オレも弓を試してみてもいいか?
    あ、でもな、戦闘訓練の方も、忘れないでくれ? 振ってやらねばオレのハンマーも泣いてしまう』
    そこへ、道の向こうからピンクの髪の少女が跳ねるように駆けてくる。
    『あー! ちょっとトール、何勝手に出てきてんのよー! 葵のボディガードはわたし、ろったがするんだからー!』
    どうしてもロッタは騒ぎだしてしまうと思ったので、会場の外で待ち合わせにしていたのだが、
    『はっはっは、その様に騒がしくては、弓の道は理解出来ないな。
    つまり葵の心に寄り添うにはまだまだ未熟ということだ!』
    『え? 何? またろったに難しい事言って! なんかバカにされた気がする!
    やるかこのー!!!』
    『いいだろう、今日の戦闘訓練の代わりにしてやる!』
    適応して、物理的にはセプトピアの人間と変わらないはずのロッタとトールだが、この二人の戦闘力は危険だ。じゃれ合いを放置すると周囲が破壊されかねない。慌てて間に入りつつ、
    『なあ葵、早速山に入って、野兎を的に弓の修行でもするか』
    「それはもう弓道じゃないわよ!」
    『ろった知ってるよ。セプトピアにもぼーぱるばにーっていう首刈りウサギがいるんだよね。ろった仲良くなれる気がする。さっそくこのデカブツの首刈りたい』
    「それはお話の中ね!」
     
    この平和になった世界で、向ける相手のいない武器を持ち。いざという時のため、その技を磨く。
    恐らく私は、その事を止めないし、辞められない。
    五六八葵はそれを選んだ定理者だ。
    一方今は、そうでない定理者もいるし、それが許される世界でもある。
    それは、葵たち定理者が、戦って、戦い抜いて、勝ち取った世界だ。
    「だからこそ私たち定理者は-」

    第七世界、セプトピア。
    快楽のロジックに支配されたこの世界は、今も他の異世界から注目を集め続けている。

    第一世界、力のロジックに支配されし世界モノリウム。
    第二世界、魂のロジックに支配されし世界ジスフィア。
    第三世界、合理性のロジックに支配されし世界トリトミー。
    第四世界、信仰のロジックに支配されし世界、テトラヘヴン。
    第五世界、財貨のロジックに支配されし世界、ペンタクルス。
    あるいはまだ見ぬ第六世界、未知のロジックに支配されし世界、ヘキサリア。
    それらの世界に住む者たちの中で、また誰かが、このセプトピアに渡り、その欲望を、快楽のロジックを、叶えようと試みるかもしれない。
    今は平和なセプトピアも、その時再び、揺れることだろう。
    歴史を考えれば、それは必然ともいえる。
    その時、いかなる動乱がセプトピアを、あるいは周囲すべての世界を巻き込んでいくのか、それは今はわからない。
    だが一つだけ、はっきりここで断言できることがある。

    「―だからこそ私達定理者は、この世界を守る」

    例えいかなる事があっても。
    この世界には、定理者がいる。盟約の縁で結ばれた使者がいる。
    人々が理不尽にその身を焼かれようとするなら、必ず彼ら・彼女らは立ち上がり、その手を天高く差し上げ叫ぶだろう。

    「ゲートアクセス!!!」

    定理者たちの物語は、まだ、終わらない。

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  • 稲穂のロッタ

    稲穂のロッタ

    モノリウムで、行方不明となった兄を探しに門をくぐった、兎の獣人少女。
    さみしがりやで、甘えんぼ。
    セプトピアにきた彼女を保護してくれた葵を慕っている。
    最近は葵のボディーガードとの名目でいつも後ろをついて歩いている。

    トランス!

     五六八 葵 & 稲穂のロッタ

    高度33000フィートのわがまま

    学がALCA本部を死守するため孤独な戦いを続けている。
    地上では、クロエが陽動のため激戦に身を投じている。
    一方、高度33000フィートの上空を飛ぶ輸送機。
    そこでは、研究所への潜入のため、定理者たちが空挺作戦の準備を進めていた。
    ――が、トラブルとはいうのは思わぬタイミングで思わぬ人物が起こすものである。

    『どーして私じゃないの!?』

    輸送機の中に、ロッタの声が響き渡る。
    作戦実行に選ばれた葵の合体相手がアルヴだと知り、拗ねて不満を爆発させたのだ。

    「それは――」

    困惑の表情を浮かべる葵。
    間もなく輸送機は研究所上空に到達する。
    作戦決行の時は迫っているのだ。
    まだまだやらねばならない準備は山ほどある……
    のに、ロッタのわがままがこんなタイミングで炸裂してしまうとは……。
    葵はロッタを呼び出すのを作戦終了後にしておけばよかったと少し後悔したが、後の祭り。
    何とかわかってもらおうと説得をはじめた。

    「――この任務は研究所に潜入してそれで終わりじゃないのよ?
    ロッタもわかってると思うけど、研究所の内部には数えきれないほどの敵がいて、
    中にはとんでもなく強いヤツだって」
    『ろっただって強いもん!』

    葵の話を遮るロッタ。

    『弓の技なら、アルヴにだって負けないもん!
    前は1度に1本しか弓を引けなかったけど、今は2本か3本なら引けるよ?』

    確かにロッタの言う通り。
    葵とロッタの合体した姿は以前よりも強くなった。
    同じ弓を「火力」として比べた場合、
    もちろん高出力ビーム弓を主兵装とするアルヴに軍配が上がるのは確かだが、
    センサー以上に敏感に敵を察知する「野生の勘」、
    そしていざ敵を前にした時の身のこなし、俊敏さなど総合して考えれば、
    合理体としての戦闘力は、アルヴにいささかも劣る所ではない。
    しかし、葵はここではその事実を伏せる。

    ―この危険な任務に軍人のアルヴはともかく、
    妹の様に可愛がっているロッタを連れ出したくはなかったのだ―

    「いや、けどね、潜入したあとは戦闘だけじゃないのよ?」

    葵は別の手立てでロッタを説得しようとする。
    「任務の中には、コンピュータのハッキングも含まれているの。
    研究所の中にあるゲートカードの暴走を止めることが第一の目的なんだから。
    ロッタにはコンピュータのハッキングなんてできないでしょ?」

    仕方のないことなのだとロッタも納得できる理に適った説得である。
    そして、この理由であればロッタも傷つかない。
    ロッタはグーの音も出なくなったのように、一瞬黙り込んだ。
    (……よかった。わかってもらえた)
    葵はホッとして胸を撫で下ろす。
    しかし、

    『……できるもん』

    その一言に葵は耳を疑った。

    「できるもんって……ハッキングが?」
    『……できるもん……ハッキング』

    ロッタは目を伏せて、不貞腐れたように、もう一度つぶやいた。
    (……幼稚園児か!)
    葵は心の中でつっこんだ。
    できないことをできると言い出す――幼児のわがままそのものだ。
    (無理……説得できない……)
    と、気が遠くなっていく葵。
    すると、ロッタが感情を爆発させる。

    『だって葵が心配なんだもん! そばにいて葵を助けてあげたいの!
    ねえ、私じゃどうしてもダメなの!?』
    「……」

    葵はしばらく呆気に取られていたが、クスッと笑いが込み上げる。
    ロッタは拗ねて、わがままを炸裂させていたわけではなかった。
    葵が心配で助けてあげたい一心だったのだ。
    すると、ずっと腕を組んで事態を静観していたがアルヴがロッタに近づいて頭を撫でた。

    『大丈夫です、ロッタ。私がロッタの分も葵を守ります。私を信じて任せてください』

    ロッタは涙ぐみながら、アルヴに小指を差し出す。

    『約束だよ?』

    アルヴとロッタは指切りをした。
    葵はその上に、そっと手を重ねた。

    「ロッタ、ありがとう……」

    葵は微笑んで、優しくロッタの思いに感謝する。

    「うん……」

    泣いていたロッタも笑顔を作り、葵に応えるのだった。

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  • 春待のメルチ

    春待のメルチ

    闘牛の獣人女性。
    毎日のんびり楽しく生きていければ良く、
    セプトピアでも楽しく生きていければ良いかな~と、マイペース。
    口癖は「牛乳を飲むと良いわよ?」

    トランス!

     五六八 葵 & 春待のメルチ

    春を待つ2人

    初対面というのは大事だな、と葵は思う。

    葵が彼女に引き合わされる前に聞いていたのは、
    彼女はモノリウムの闘牛の獣人で、
    いくつもの戦いを切り抜けてきた腕利きの戦士だということ。
    人間など太刀打ち出来ない剛力の持ち主で、
    ひとたび怒れば巨大な矛槍を振るい、周囲に嵐を巻き起こす、と。

    だから葵は結構緊張していたのだ。
    心配だからついてくるというロッタを置いて一人で会いに来たのも、
    ロッタが何か失礼をして相手を怒らせてはいけないと思ったからだ。
    無論セプトピアのロジックに適応している以上、本来の剛力とやらは振るえないはずだが、
    それでもモノリウムで戦いに明け暮れていた者達の戦うセンスは侮れない。
    葵は内心、戦々恐々としていたかもしれない。

    そして始めて引き合わされた時に、彼女に言われた言葉を葵は今も覚えている。

    『お姉さんに、甘えていいからね』

    自分より上背のある大柄な女性が、一足で葵の前に滑り込んでくる。
    そのまま、葵をぎゅっと抱きしめた。そしてゆっくり優しく、その頭を撫でた。

    『大丈夫、お姉さんに任せなさい』

    葵は思う。
    そんなに自分は、怯えた顔をしていたのだろうか。
    内心のためらいを瞳に映していたのだろうか。
    あるいは、胸の内にあったあれやこれやを一瞬で見透かされたとでも言うのだろうか。
    今となってはよくわからないし、恥ずかしくて本人に聞くこともできないが、
    とにかくその時葵は、彼女―春待のメルチに、暖かく包まれてしまったのだ。

    こうして、ある意味なし崩しに、メルチとの盟約が進められた。
    幸い葵とメルチの相性は悪くなかった。
    メルチの剛力を借りた葵の合理体は、期待以上の戦闘力を発揮した。
    もう一人の盟約者、ロッタが焼きもちを焼くので、出番は控えめだったが。

    そんなメルチだったが、彼女はいつも緩やかな笑みを絶やさず、のんびりマイペース。
    ALCAのスタッフや周囲の人たち、食って掛かるロッタすらも、柔らかく受け止めている。
    葵自身もあの日からずっと、彼女の腕の中で甘え続けている、そんな気がしていた。

    「・・・だからこそ今日は、聞いてみたい」

    歴戦の戦士であるはずの彼女が、何故そこまで優しく柔らかくあることができるのか。
    ひとたび怒れば嵐を呼ぶ、というのは嘘なのか。
    葵がそう聞くと、何を勘違いしたのか、メルチの答えはこんなものだった。

    『ふふっ、大丈夫。
     大抵のことは、牛乳を飲んで、日向で一眠りすれば、いずれ春は来るわよ?』

    正直、葵ははぐらかされたような気がした。その不満が顔に出たのだろう。
    ふと目をそらすと、メルチはどこか遠くを見ながら、ぽつりとこぼした。

    『・・・本当に怒らなければならないことなんて、滅多にないものよ』

    彼女が怒りのままに剛力をふるい、あの巨大な矛槍で嵐を起こした。
    それはきっと、本当のことなのだろう。
    そしてそれは、彼女にとって恐らく、誇るべきことではないのだろう。

    春待のメルチは今日も、皆を暖かく受け止めながら、ゆっくり春を待っている。

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  • アルヴ・レイザード000

    アルヴ・レイザード000

    トリトミーからやってきた、エリート軍人機体。
    ALCAの要請で派遣されてきたうちの一人で、
    軍人として任務をこなすことを第一に考える、真面目な性格。
    主兵装は大型のビーム弓で、自ら高速で移動しながら
    中距離からの正確な射撃で相手を制圧する戦術を得意とする。

    トランス!

     五六八 葵 & アルヴ・レイザード000

    真面目×真面目

    任務のため、葵とアルヴがやってきたその街は、他とは違う雰囲気が漂っていた。

    『この街に漂う白いモヤのようなものは一体……?』

    戸惑うアルヴに、葵は落ち着いたまま答えた。

    「……湯けむりよ」

    二人がやってきたのは、とある温泉街。
    あちこちに湯けむりが漂い、硫黄の匂いが鼻につく。
    石畳の道に売店が軒を連ね、浴衣姿の老若男女が幸せそうな笑顔で行き交っている。
    この平和な温泉街にトランスジャックの常習者が潜んでいる、らしい――。
    その通報は単なる噂話の域を出ず、いたずらか見間違いの可能性が高い。
    だが支局は渡りに船とばかりに、葵とアルヴのコンビに温泉地での「潜入調査任務」を命じた。
    ・・・そうでもしないとこのコンビ、有休も消化せず働きづめで、
    自分たちから休もうとしないのだ・・・

    『……とりあえず、あれに着替えましょう』

    葵とアルヴは、空振りに終わる可能性が高いとはいえ、
    一応カムフラージュのため浴衣に着替え、湯治客を装うことにした。
    そして足湯、打たせ湯、砂風呂、大浴場に卓球……と、温泉街をめぐり、
    怪しい者はいないかと目を光らせる葵とアルヴ。

    「……それらしき者はいないわね。やはり何かの間違いなのかしら?」
    『恐らくは。しかし万一本当なら、そう簡単に尻尾は見せないでしょう。楽観は禁物です』

    葵とアルヴは真面目そのものだ。
    温泉地にいようが、その雰囲気に流され楽しんでしまおうなどと微塵も思うことなく、
    ただ実直に任務遂行のために動いていた。
    だがある時、葵はふと自分たちを周囲の人々が不思議そうな目で見ていると気づき、
    ハッとする。

    『どうかしました?』
    「アルヴ……私たちもっと楽しんだほうがいいかも。なんだか周りから浮いているみたい」
    『確かに私たちが怪しまれては、使者にも気づかれてしまいますね……』
    「うん、た、楽しみましょう。周囲に溶け込むよう、がんばって」
    『命令、了解です。可能な限り善処、します』

    楽しんだふりをしようと試行錯誤をしてみるが、やはりどこかぎこちない。
    途方に暮れかかったその時、
    葵とアルヴの目に楽しそうに温泉街を闊歩する男女二人が目に飛び込む。

    「あの、すみません!」

    葵とアルヴは声をかけ、「一緒に遊んでくれませんか」と頼み込んだ。
    この男女に紛れていれば、自分たちも自然と楽しんでいるかのように見えると考えたのだ。
    だが、いきなりそう言われても驚き戸惑うばかりの男女。
    それを見て、葵は正直に事情を打ち明けようとした。

    「実は私たちはALCAの――」

    その途端、男の態度が一変する。

    『ちっ、勘づかれたか!』
    「?? はい???」

    偶然声をかけた男の正体はなんと使者だった。
    男はすぐさま女をトランスジャックし、
    葵とアルヴの目の前には巨大で邪悪そうなロボットが現れた。

    「アルヴ、私たちも!」
    『了解!』

    すさかさず葵とアルヴも合体。
    葵の身体は蒼色の装甲に包まれ、使者の攻撃を素早く躱しながら立ち向かっていく。

    「エクシードブラスター!!」

    叫び声ととともに、ビーム弓が敵に炸裂。見事に打ち倒したのだった。
    こうして事件も無事解決。温泉街を後にして、葵とアルヴは司令部に戻った。
    ところがそこにいたのは、浮かない顔をした上司だ。

    「命令は遂行できたと思ったのですが……」
    「・・・私は君たちに、無理やりにでも休んで欲しかったのだが・・・
    任務と言えども、温泉地にいれば自ずと楽しんで休んでくれると思ったんだが、
    まさか本当に使者がいるとは……」
    「とんでもない。偶然とはいえ、街の平和を守ることができて良かったです……」

    葵はホッとしたような笑顔を見せると、アルヴも同じように笑顔で頷いた。
    真面目すぎる二人に、上司も頼もしく思えるような呆れたようなそんな気持ちで苦笑いを浮かべるのだった。

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  • ピノ・プレート964

    ピノ・プレート964

    トリトミーから派遣された、愛玩用ロボット。
    子供の遊び相手になることが第1の任務であり、
    子供に付き従い、常に子供を守るようプログラムされている。
    いざという時のため装備している2丁のビームガンは、
    状況に応じ様々な効果の光線を発射できる。

    トランス!

     五六八 葵 & ピノ・プレート964

    ピノのお仕事

    公園に響く子供たちの明るい声。
    都会の公園のわりには遊ぶスペースが広く、子供たちは所狭しとはしゃぎ回っている。
    それを尻目に葵は一人、ポツンと所在なさげにベンチで座っていた。
    かれこれ二時間。
    ピノが子供たちと夢中になって遊び始めてからずっとそんな感じだ。
    子供の遊び相手のために作られた愛玩ロボットだとは言え、
    たくさんの子供を見ると一緒に遊ばずにはいられない性分は困ったものだ、
    と葵はやや途方に暮れていた。

    「ねえ、ピノ。そろそろ行きましょう」

    葵は子供たちの中心にいるピノに声をかけた。

    『モウチョットダケ、イイダロウ?』

    まるで母親に逆らう子供のように答えるピノに、葵は溜息。

    「遊びたい気持ちはわかるけど、私たち任務の途中なのよ」

    この近辺で、トランスジャックを繰り返す使者がいるとの情報があり
    二人はパトロールに来たのだ。
    いつまでも同じ場所に留まっているわけにはいかない。
    けれども、ピノにはそんな事件よりも子供と遊ぶほうが大事。
    それがピノの仕事であるからだ。
    なんとか遊び続けようと知恵を絞る。

    『ナラバ、葵モイッショニ、アソンデクレタラ、シゴトニモドル!』
    「……どうしてそういう話になるんです?」
    『イイカライイカラ!』

    このままじゃ埒が明かない――と、葵は仕方なさそうに頷く。
    葵の心中も知らず、子供たちは仲間が増えて楽しそうだ。

    「こんなに人がいっぱいいるなら『ケイドロ』やろうよ!!」
    「いいねいいね!!」

    と、大盛り上がりだ。

    「……『ケイドロ』とは何でしょうか?」

    ところが、葵はその遊びを知らずキョトンである。
    名家に生まれ、幼い頃から厳しく躾けられた葵は
    同年代の子供と遊んだことがまるでなかったためだ。

    『オシエテヤロウ!』

    ピノはクスッと笑いながら葵に耳打ちする。
    セプトピアに来て間もないのに、すでにこの世界の子供の遊びに精通してるのはさすがだ。
    ピノから説明を受け、警察と泥棒に分かれてやる鬼ごっこの一種らしいと
    葵はすぐに理解すると、すぐさまゲーム開始だ。
    一斉に駆け出す子供たちとピノ。葵は警官だ。
    必死に追いかけ子供たちを捕まえていく。

    「よし捕まえましたよ! あれ???」

    葵の想像を超えてすばしっこい子供たち。
    葵が捕まえようとしてもするりと逃げていく。

    (これなら使者を相手にしているほうが楽です……)
    ようやく全員捕まえた頃には、葵はもうヘトヘトだ。

    『ヨシ! コンドハ ボクガ 警官ヲヤル!』

    ところがピノはまだまだ元気。

    「え……一回やったら仕事に戻るんじゃなかったんですか??」

    葵が異を唱えると子供たちからブーイング。
    まだまだ葵とピノと一緒に遊びたいようだ。
    子供たちの熱意の前に、葵も強く言えず、どうしようかと迷い始めた。

    その突然、公園に緊急警報が鳴り響いた。
    同時に、司令部から通信。
    どうやら近くに出現した使者がこの公園まで逃げ込んだらしい。

    「ピノ、早く子供たちを避難させなきゃ!」
    『……モウ、オソイ』

    葵たちの目の前に、その使者が現れた。
    怯えて泣き出す子供たちをピノは励ました。

    『ダイジョウブダ コンナヤツ、ボクト、アオイデ、ブッツブス!』
    「ほんと?」

    ピノの言葉に子供たちは泣き止んだ。

    『デキルヨナ、アオイ?』

    そこにはさっきまで遊びたいと駄々をこねていたピノはいない。
    大切な子供たちを守るためなら何だってやる、子供たちのヒーローそのものだった。
    葵は力強く頷いた。

    「……もちろんです。やっつけちゃいましょう」

    そして合体する二人。
    その姿を見て、子供たちから歓声が上がる。

    「がんばれお姉さーん!!!」

    その声を背に葵はいっそう思いを強くする――
    任せてください、私とピノが君たちを絶対に守るから、と。

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  • ブリュンヒルデ

    ブリュンヒルデ

    テトラヘヴンからやってきた、戦いを好まないおしとやかな使者。どうしても戦わなければならない時には、ニーベルングリングを使う。彼女が葵の元へやってきた理由は、大切な人を“守る”ためである。

    トランス!

     五六八 葵 & ブリュンヒルデ

    五六八 葵 & ブリュンヒルデ

    「ここで仕留めるわ!」

    葵の声が宵闇に響き渡る。
    使者の襲来が激減したとはいえ、それでも完全に途絶えたわけではない。

    『戦うことでしか、分かり合うことが出来ないのですね……』
    ブリュンヒルデが哀しそうに呟く。
    「大切な人を。平和を守るために。戦いましょう。」

    トールと盟約した少し後、ALCAの盟約室に葵は再び呼び出されていた。
    またしても、葵と盟約をしたいという使者が現れたという。
    (なんだか人気者になった気分だわ…)
    そんなことを考えていると、
    「あなたが葵さん・・・ですね。伺っていた印象とぴったりです。
    私と盟約してくださいませんか?」
    いきなり名前を呼ばれてハッとする。
    室内はテトラヘヴンの風景に変わっていた。
    目の前にいたのは、綺麗なでおしとやかな女性であった。
    紫色の髪をなびかせて、憂いを帯びた表情に、思わず見とれてしまう。
    「葵さん…?」
    返答がない葵に、ブリュンヒルデは再度問いかけた。
    見とれていた、と言うわけにもいかず、少し焦る。
    「ごめんなさい…!でもなぜ盟約を?」
    いきなり盟約をしようと持ち掛けられる理由が全く見当たらなかった。
    トールの時と同じ流れだな、と思いながらも問いかける。
    「トールが、葵さんと盟約をしたと聞きました。」
    ちょうど今考えていた名前が、目の前の女性の口から出てきたことに驚く。
    「なぜご存知なんですか?」
    「同じテトラヘヴンにおりますから。“闘い”と“強さ”を求め、強く、凛とした定理者と盟約をしたと聞いて、その定理者の方を探していたのです。」
    葵の目を見つめながら、話を続けるブリュンヒルデ。

    「私は、戦いを好みません。トールにもできるだけ戦いをさせたくないのです。
    それが出来るのは、葵さんのそばにいることだと感じました。」
    戦いをさせたくないから、盟約をしたいとは、今までに聞いたことがない理由であった。
    「私も出来ることなら戦いたくはないわ。
    でも平和のために“強さ”は必要だと思ったからトールと盟約したの。“強さ”を求めているのはトールも私も同じよ?」
    「私とトールは幼馴染なんです。」

    いきなりの告白に動揺する。
    「トールは、小さいころから、戦いから帰るたびに、私に楽しそうに戦いの様子を話してくれていました。戦神として名を知られるようになってからは、もっと目を輝かせて。
    トールが楽しそうにしているのを見るのは私もとっても嬉しかったです。」
    「それなら、戦いをさせたくないなんて…」
    葵の言葉を遮るように、ブリュンヒルデは言葉を続けた。
    「それでも…楽しそうに話す彼女の身体は、いつも傷だらけでした。
    私は、彼女にこれ以上傷ついてほしくないのです!」
    ブリュンヒルデの、強い想いが葵の心を動かす。
    「・・・。あなたの、トールを守りたいという気持ちはよくわかったわ。」
    「それでは・・・!」
    ブリュンヒルデの顔が明るくなる。

    「私は平和を守りたい。必要があれば、戦うこともあるし、
    ブリュンヒルデにも一緒に戦ってもらうわ。それでもいいかしら?」
    「私がトールを守りたいのと同じように、葵さんは平和を守りたいのですね。
    平和のために戦うというのであれば…お手伝い致します。」
    “守りたい”という共通の気持ちが、盟約の決め手となった。

    「なぜブリュンヒルデが!?」
    ブリュンヒルデを見たトールが驚きの声を上げる。
    「私も葵さんと盟約をしたんですよ。」
    微笑みながら答える。
    驚きながら、トールも嬉しそうな表情をしている。
    二人のやり取りを見ていると、本当に仲が良いことが伝わってくる。
    その様子を見ながら、
    (私にも、あんな仲間がたくさんできたらいいな)
    と葵は考えていた。

    ―これは、アシュリーと共にピラリ学園に転入して、大切な仲間がたくさん出来る、
    数か月前の出来事である。

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