キャラクター&ストーリー

  •  剣 美親
  •  揺音 玉姫
  •  クロエ・マクスウェル
  •  五六八 葵
  •  揺音 聖那
  •  アシュリー・ブラッドベリ
  •  ジークハルト・クラウス
  •  当麻芽路子
  •  明日葉 学
  •  オルガ・ブレイクチャイルド
  •  七星 縁
  •  ヴェロニカ・アナンコ
  •  ジゼル・サンダース
  •  ニーナ・アレクサンドロヴナ
  •  リオネス・エリストラートヴァ
  •  京橋万博
  •  橘 弥生
  •  森ヶ谷 夕子
  •  小湊くらら
当麻芽路子
当麻芽路子とうま めじこ
性別 女性
年齢 -
身長/cm 168
体重/kg 53
血液型 B型
生年月日 7月13日
好きなもの オカルト系サイト閲覧。マイナスパワースポット巡り
嫌いなもの SNS (コミュニケーションツール)

小学生時代、オカルトブームに直面。
ブームは去っても自分は抜けられなかった。
その後、なんとなーく周囲と話題が通じず溶け込めず、
だんだん考えが暗くなっていき、漂うオーラも暗いものに。
(自称)オカルト探索中、ちょっと開いたジスフィアの門から出てきた使者・煌煌と出会い、半ば取り憑かれるように彼女と盟約を結ぶ。

実はALCAには所属していない、異端な存在。
芽路子が身につけているオカルトグッズ(数珠っぽい腕輪)が
ロジグラフの役割をしている。

盟約者フォーリナー

  • 流離の アルベルト

    流離の アルベルト

    モノリウムの豹の獣人で、吟遊詩人。風の噂で友人の月影のロウがセプトピアに渡ったと聞き、興味を持ってやってきた。女性にも優しく紳士的で、モノリウムの基準ではイケメンでイケボイス。しかし芽路子にとってはー?

    トランス!

     当麻 芽路子 & 流離のアルベルト

    当麻 芽路子 & 流離のアルベルト

    ボロロン
    弦楽器の甘い音色が芽路子の耳元をくすぐった。
    そのままにしていると、音色は少しずつ激しくアップテンポなものになり。
    それでも放っていると、少し低音よりの滑らかなイケボイスで歌いだしやがった。
    『らぁらぁら~ 朝が~~ 光を伴い~~ 君の元に~~』
    ・・・くそう
    「―うっさい! 起きてるわよぅ!」
    『やあ芽路子。おはよう。今日もいい天気だ』
    止める間も無くカーテンを開きやがり、くそ太陽のくそ光線が芽路子の脳内にくそ侵入してくる。うあやめろ。
    『さあ朝食にしよう。今朝はトーストに豆のサラダ、目玉焼きは君の注文通りターンオーバーで黄身は半熟。食べごろだ。スープはオニオンコンソメ。さあ、どうぞ』
    「うううううー」
    『オレンジジュースはこちらだ。だが食前に飲み過ぎると胃を荒らす。まずはスープを飲むといいだろう』
    「ぐううううー」
    断固抵抗すべきと思う一方、漂ってきた香ばしいベーコンの匂いに自動的に腹がなる。
    ぐう。
    く、くそうこんな事で私を懐柔できると思うなよちょっと料理が上手くてイケボイスなだけじゃないかちくしょおおおおう
    と、ベッドの端っこで無駄な抵抗を試みていた所、背後から眠ったままのヒュプノスに蹴りだされて床にダイブ。
    しかたなくそのまま、這うようにテーブルまで行きつくと、ぐううう、もう理性で抵抗するのは無理だった。もぐもぐもぐ美味しいぞちくしょう。

    この歌う家政婦に押し掛けられたのは、数日前の事だ。
    独りで(そう、独りで、だ! フォーリナーカードをあえて置いてきた!)いろいろ買い漁ろうと、その筋のショップが集まる街角に出かけた芽路子。
    さてその彼女の容姿だが―
    実はけっこう美少女、というのはご存じだろうか。
    素材はいい。
    だがオカルト趣味が高じすぎて、オシャレに興味ある普通の女子と仲良くなれなかったためその方面に疎く。ちょっと背が高いのを気にしてか、俯きがちで人付き合いの苦手な陰キャ。いろいろな要素が絡まって巡る巡る悪循環。ここに素材の良さを全く活かさない残念美少女当麻芽路子がいたわけだ、が。
    最近はちょっと事情が異なる。
    『ご主人、いくら近所のコンビニとはいえ、スエット上下で出歩かれるのはどうかと…』
    『メジ、もちょい派手に行こうよー けっこうイケてんだかさー!』
    『そだね。じゃあ私が着物仕立てようか? ちゃんと呪いの経文書いてあげるー!』
    『いついかなる時死んでも大丈夫なように、最低限の化粧はしておいた方がいいですね。
    スキンケアも大事ですよ。死に顔は綺麗でないと!』
    『くぅうう・・・ すぴ・・・』
    とまあ、おせっかいな使者たちがぎゃあぎゃあうるさいわけで、ちょっと外に出ようものなら、ああだこうだと数時間かけて強制的におめかししようとしやがるのだ。
    バカヤロウ私は買い物に行くだけだ、即売会の売り子するわけじゃねぇ! とまあ、その筋の方々が聞いたら怒り出しそうなことを思いながら。
    着せ替え人形地獄をなんとか脱出すると、まあ最近は、それなりに見られる(かつ、本人に意識はないが、異世界趣味が混じってるのでちょいエキゾチックで目立つ)少女ができあがるというわけで。・・・これ広義のセクハラなんじゃなかろか。ALCAに訴えてやる。とかブツブツ言いながら歩いていると。
    「お! お嬢さん可愛いじゃん! モデルとか興味ない?」
    なんたることか、最も嫌悪する類の生き物が湧いてでたじゃないか。
    「だまってないで、ちょっとこっち見てヨー!」
    「おっ! 君イケてるねー ヤバくない?」
    さ、3人。増えた。しかも慣れてるのか、微妙にこちらの行く方向をふさぐ。
    「ねぇ彼女~」
    「いいじゃんいいじゃん」
    「さあ、こっち来なよー」
    おのれ。かつてこれほど、フォーリナーカードを置いてきた事を悔いた事があっただろうか。いやない。
    なんかもう、奇声を放って駆け抜けるしかないかと思い極めた所。
    ぼろろん
    『君たち、止めたまえ』
    「!!!」
    芽路子と、取り巻く男たち3人の視線の先に。
    長身を野性的な革のジャケットに包んだ男が、立っている。
    手には弦楽器。芽路子は知らなかったが、形状からしてイタリアのマンドリン、あるいはアラブのウードに似ていた。右の指に指輪、いや金属製の爪の様なものを付け、これで弦をつま弾いている。
    ぼろろん
    『美しい花に惹かれるは、男の悲しいサガ~
    しかし手を掛けては花が枯れてしまう。
    ここはおとなしく身を引きたまえ』
    芽路子の趣味ではなかったが、顔はイケメンといっていいのだろう。
    声もなかなか、イケボイスと評価しても良い。
    それだけに、歌っているのか、妙な抑揚の台詞回しと。
    自分に酔っているのか、妙に傾いて立つポーズがおかしい。何?漫画のポーズ?
    総合的に言うと、あまりにも残念大賞。
    芽路子の脳内でアラートはイエローからレッドにシフト。即時戦略的撤退を命じていた。
    「んだてめー」
    「おいおい調子づいてるかよ」
    「イッパツ逝っとくかこらぁ」
    幸い、男たちの注意がそちらに逸れたので、そろりそろり忍び足。
    ゆっくり後退を・・・
    「あ! お前逃げんじゃねぇ!」
    失敗! 気づかれた!
    伸びてきた手を払いのけ、くるり後ろを向くとダッシュ。逃げる!!
    ぼろろん
    『逃げたまえ可憐な少女よ~』
    「おい、お前のせいで―ぐわっ」
    「ぎゃあっ」
    「ぐはっ」
    背後でなんか、暴力の音が聞こえたような聞こえなかったよおな。
    だが一切振り向くことなく、芽路子は逃走。危地を脱出した。

    ・・・が、真の危機はその後に!
    なんと向こうからやってきたのであった!!

    ぼろろん
    『やあお嬢さん、先日はどうも』
    「うわあああああああああああ」
    驚いた。
    あの逃走劇からしばし後。
    あの楽器を持った変なイケボイス野郎が芽路子のアジトを訪ねて来やがったのである!
    「な、なんでここが・・・」
    ぼろろん
    『そう、風の導き、か・・・?』
    ヤバイ。ここに至っては仕方ない、タナトスと合体し亡き者にするしか! とフォーリナーカードを手探りした時、目の前にぐいと突き出されたものがある。
    『これ、君の物だろう?』
    それは、芽路子がいつも右手首に巻いている数珠のアクセだ。
    これは呪われた逸品で、冥界の怨霊を束ねた闇の力を黒石に。堕ちた天使の力を白石にこめ循環、芽路子の体内に眠る呪力を引き出し強化する力がある。
    ―という設定。
    本当は蚤の市で売っていた怪しげな品々の中で、妙に気を惹いたってだけのものなのだが・・・それだけに愛着がある。
    「・・・拾って、くれたの」
    『良かった、持ち主に返せて嬉しいよ』
    今にして思えば、逃げ出そうと男たちの手を払った時に糸がひっかかって落ちたのだろう。もしかしたら、落ちた石も拾って修理してくれたのかもしれない。
    「・・・ありが、と」
    ぼろろん
    『その表情こそ、最高の報酬だ。報われたよ
    ―しかし、家ではそんな服なのかね』
    「うわあああああああああああ」
    灰色のスウェット上下の芽路子は、この姿を見られたからにはやはりこの残念イケメン、闇に葬るしかないと思った。

    かくして。
    まあ、そうなんじゃないかなー と思っていたら案の定この男、使者だった。
    芽路子としては初の、大野生世界モノリウムの使者。
    元体はというと、つややかな黄色に斑点、毛皮に身を包んだ豹の獣人である。ネコミミ美少女は需要があるが、豹頭の兄貴はどうなんだろうか、と思わないでない。いや業界は広く人の欲望に限りはない、きっとお呼びがかかる事もあるだろう・・・私以外に。
    「だからもう、帰っていいんじゃない・・・?」
    『何を言う。君の生活態度は花の乙女として実に悲しい。
    これを放置するなど、私の美を愛する魂が許さない』
    ぼろろん
    『さあ芽路子。少しは太陽を浴びた方がいい。散歩に行こう。
    大丈夫、私がいれば、暴漢の一人や二人』
    「・・・やだぁ」
    『そうです! 嫌ですよね!
    ほら、ご主人は嫌がってるじゃないですか!
    押し掛け主夫はとっととお帰りください!』
    「・・・お前だって押し掛けだよね」
    『外行くなら、アタシも行く―! ほら見てみて、流行りのスイーツ特集!
    新しい店ができたみたいだぜ!』
    「・・・それ、前の店をアンタが食い潰したからじゃん?」
    『うひひっ どうする? 呪い殺す?』
    「・・・そう言ってすぐ悪霊出すの止めて」
    『全くです。まず死ぬのは芽路子さんですよね? 順番は守りましょ?』
    「・・・だから死にたくないってば」
    『ぐう』
    「・・・この騒ぎでどーしてあんたは寝てられるの」
    というわけで。
    当面は芽路子周辺も平和であるようだ。
    「平和じゃないわよう!!!!」
    平和、であるようだ。
    「うわあああああああああああ」

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

    閉じる
  • ヒュプノス

    ヒュプノス

    テトラヘヴンの眠りの神。可愛らしい顔と眠そうな表情で無口だが、いったん口を開くとかなりの毒舌。ちなみに眠っているところを起こされると、とても不機嫌になる。芽路子の部屋とベッドがお気に入り。

    トランス!

     当麻芽路子 & ヒュプノス

    当麻 芽路子 & ヒュプノス

    帰宅して部屋に戻ると―
    ―知らない少女が寝ていた。

    「・・・これ何てギャルゲ?」

    芽路子は、とりあえず部屋の電気を点けると(同時に端末の電源も立ち上げる)
    椅子に腰を落ち着けて、ゆっくり深呼吸してみた。

    (うん、落ち着いている。さすが私)

    異世界から来たやたら陽気な死体(得意技・呪殺)に憑りつかれて高い所から落ちてみたり。
    異世界から来たやたら面倒見よすぎる蜘蛛型ロボに押し掛けられ高い所から落ちてみたり。
    異世界から来たやたらギャルな鬼娘にズッ友とか懐かれて高い所から落ちてみたり。
    異世界から来たやたら明るい死神に死に方を選びましょ?と高い所から落ちてみたり。

    (フフフ、いまさら幼女の一人や二人で驚かないわ)

    今までのアレやコレやを思い出しては、昏い笑みが浮かぶ芽路子。
    ちなみに彼女は高所恐怖症なのである。

    さて改めてベッドの上を見てみれば。
    小学生ぐらいだろうか。
    赤いくせっ毛をざっくりショートにまとめ、頭にのった青いベレー帽が良く似合っている。
    羊だろうか?ふわふわとしたぬいぐるみをクッションにして抱き込み、
    それはそれは気持ちよさそうに熟睡している。
    白いベッドの中心で、猫の様に体を丸めた姿は、まるで1枚のイラストの様だ。

    ・・・

    そのまましばらく見ていたが、起きる気配は、ない。
    起こした方がいい。お前は誰だ、と問い詰めたい。
    何処から来たの? ってか、どの異世界から来やがったの?
    いやもう、何処から来たんでもいいから、すぐに帰ってほしい。

    (私だって寝たいんだし!)

    お気に入りのベッドなのである。
    以前のアジトを引き払ってこっちに移った時、ついでにベッドを買ったのだ。
    実際の寝心地を試すため、出不精の自分を奮い立たせ、
    寝具店・家具店を回りお節介な店員を眼力で排除。
    ひとつひとつ確かめて選び抜いた、至高の逸品なのである。

    ・・・あ、よだれ。

    可愛らしいものではあるが、流石に我慢ならぬ。
    芽路子は敢然と立ちあがり、少女の肩に手を掛けた。

    「ちょ、ちょっと! あんた、人の部屋で、何寝てんのよ!」
    『・・・』

    返事がない。ただのようじょのようだ。(ムカッ!)

    「うあー もう! 起きろ!起きろっての!!!」
    頭にきた芽路子は、さらに激しく少女をゆすり、大声で起きろと叫ぶ。
    すると流石に。

    『・・・・』
    まぶたを開くと、青色の瞳がきらっと輝く。確かに美少女だ。ほんとゲームみたい。
    「あんた、どこの誰? なんで勝手に私のベッドで寝-むぎゅっ」
    少女は抱きしめていた羊クッションをつかむと、それで芽路子を叩く。叩く。叩く。
    別に痛くはないが、顔を狙ってくるので喋れない。
    「ちょ、ちょっと止めなさい、止めなさいよ!」
    『お前。死ぬか』
    可愛い顔の可愛い唇から、なかなか物騒な台詞が出てきた。
    『人間のブンザイで神の眠りをジャマするとか。死ぬか。死ぬのか。死にたいのか』
    「へ、へぇ、神サマでしたか」
    そう言われても、もはや驚かない芽路子である。神様なら知り合いがいる。
    『そうだ。わかったか。わかったら邪魔するな。オヤスミ』
    と言って再び寝転がろうとする自称神サマを慌てて止める。
    「ちょっと! その神様が、なんで私のベッド占領して寝てるのよ!」
    『先ほどから軽々しく神の体に手をかけおって・・・ 殺すぞ。
     タナトス! ターナートースー!』
    すると、芽路子の懐、フォーリナーカードが震え、勝手に宙に浮きあがると光を放った。
    『はーい、タナトスさんですよ。こんばんわー』
    あたかもスマホの様に、異世界テトラヘヴンにいるはずの死神・タナトスの声が響く。
    「『タナトス。こいつなんとかしろ(して)』」
    面白いことに、芽路子と少女の声がユニゾンした。
    『まあまあヒュプノスちゃん。芽路子さんはただいま、私と共に楽しい終活中なので』
    「してない。終活してない」
    『そのうち死にますから、待っててくださいね?』
    「しばらく死なないから!死ぬ予定ないから!」

    やはりというか、案の定というか。
    芽路子の盟約者のひとりであるタナトスが説明するに、
    この少女も同じくテトラヘヴンの、安眠と微睡みを司る神ヒュプノスだという。
    芽路子と盟約し、この部屋に転がり込んだタナトスが、
    そのベッドの素晴らしさをうっかり茶飲み話で持ち出したのが、きっかけらしい。
    興味を持ったヒュプノスが、わっざわざゲートをこっそり開けてその寝心地を確かめにきた。そして今に至る。

    『お前、寝床を選ぶセンスはいいな。ニンゲンにしては。
     さっきの無礼は許してやる。喜べ。じゃあな。ふわああ』
    と言って再び寝ようとするものだから、
    「ちょっと! 返せ! 返して! 私のベッド!!」
    『うるさい。安眠妨害。黙れ』
    「私どこで寝るのよ!」
    『床ででもどこでも寝るがいい』
    「私のベッドよ!!」
    芽路子は、無理やり自分もベッドにあがって取り返そうとする。
    『お前、やめろ、狭いじゃないか』
    「いやならあなたが出なさいよ」
    『断る』
    「ちょっと、枕返しなさいよ」
    『イヤだ』
    ベッド上で今、神と人との極めてしょうもない争いが始まるところだったが。
    『じゃあ、合体しちゃったら?体がひとつになるから、ちょうどいいんじゃない?』
    タナトスのこの馬鹿な提案を受け
    『なるほど、死神にしては良い案だ』
    「・・・はぁ?!」
    『さ、合体するぞ』

    ALCAに未登録の非合法な定理者とはいえ、
    ここまでしょうもない理由で合体を迫られるのは自分ぐらいだろうな、と芽路子は思った。

    しばしのち。
    大騒ぎしてドタバタやったせいか、すっかり目が冴えてしまった彼女は、
    ウェブにアクセスして日課の巡回を始めていた。
    ちなみにヒュプノスの方は、ちゃっかりベッドで寝ている。
    寝ている姿がホントに可愛らしいのがまた頭にくる。

    と、メーラーが着信を伝えてきた。ビデオメールだ。

    「-またあの子か」

    気が進まないながらも、仕方なく、ビデオメールを再生する。
    ウィンドウの中で、銀髪の美少女が微かに表情をほころばせながらしゃべり始めた。

    「――というわけで、私にも、友達と呼べる人ができました。
     ぜひメジィさんにも紹介したいのです! お願いします。お待ちしています」

    今でも、決して表情豊かというわけではない。
    破顔一笑、という感じではない。
    しかし随分可愛らしい表情をするようになりやがったなー、とは思う。
    あの時は、窮屈そうな軍服みたいなグレーの制服を着ていたが、今は可憐なブレザー姿で胸元の赤いリボンが良く似合っている。
    本人が言うように、学校で、良い友人ができたのだろう。

    「美少女はいいよねー」

    思わず口に出していたらしい。すると。
    『いやいや、メジもけっこイケてっしょ! マジで!』
    テンション高く答える声が響く。
    と同時に、また別のフォーリナーカードが光り、ピンク髪に着崩した風の和服というド派手な少女がそばに現れた。
    彼女の名前は鬼道丸。こう見えて、ジスフィアから来た鬼娘。
    使者で、芽路子の盟約者で、そのうえ
    『ズッ友のアタシがホショーするし?』
    芽路子のズッ友でニコイチだ。ただし自称。
    「・・・・」
    声にならない返事とジト目を送るが、鬼娘は全くそれを理解せず
    『だーいたい、メジにはアタシらがいるじゃーん!
     さびしくナイナイ。うりうり!』
    何を勘違いしたか、背中から絡みついてきた。重い。
    しかも手には、チョコ塗りポテチなる罪深いお菓子を持ちもっしゃもっしゃ食べている
    『ほらほら、メジもポテチ食う?ウマいよ?』
    口の前に突き出されたそれを、悔しいのでぐわっと噛みつかんばかりに食ってやった。
    しょっぱさと甘さが交互に襲ってきて、いつまでも食べ飽きないという恐るべき菓子である。糖分と塩分と油分、ついでにジャガイモのでんぷんとまあ乙女の敵なのだが。
    「――貰ったの私だってのに、勝手に食べやがって」
    画面の向こうの、銀髪の美少女がたまに送ってくれるのだ。
    こっちはろくにメールの返事もしないのに、ちょっと申し訳ない。いやかなり。

    あの連続使者襲来事件のただなか。
    ALCAに逆恨みで復讐してやろうと研究所をハッキングした芽路子は、偶然にもあの少女と出会った。いや映像を介してだが。出会ってしまった。
    行きがかりで彼女の説得に負けて、研究所内の暴走したシステムを回復、復旧への手助けをさせられてしまった。
    その時のことを、彼女は随分恩に感じたらしく、たびたびメールを送ってくる。
    そうそう、最初のころは、ALCAの実働部隊から外されて学校に通わされた、と押し殺した怒りがダダ漏れのメールを貰ったことを覚えている。
    割と適当に、同意と相づちだらけの返事を戻した気がするのだが、向こうはなんか嬉しかったらしい。

    『メジ、ポテチなくなっちゃったよー』
    「そりゃ、食ったらなくなるよね」
    『もっと無いのー?』
    「ここらじゃ売ってない。ホッカイドウの名物なんだよ。お取り寄せって奴だね」

    ほとんど脊髄反射でブラウザをなぞると、通販サイトが商品と料金を表示する。
    ウィンドウの横では、開きっぱなしのメールが添付ファイルの存在を主張する。
    ホッカイドウへのデジタルチケット(宿泊付き!)に、ついでにピラリ学園とやらの体育祭への招待状がついている。

    『へー メジ、ホッカイドウまでポテチ買いに行くの? いいね、たくさん食おう!』
    「はァ? な、なにを」

    思わず変な声出た。

    『ポチっとな。アタシにもわかるよ、へへん、これでチケット受け取りなんだろ?』
    「ば、ばかばか、受けとるなぁ!」

    受け取ったら、受け取ったことが相手に伝わるじゃないか。
    ご招待を受け取ったことが、伝わっちゃうじゃないか。

    『りょっこう、りょっこう、みんなでりょっこう、イエー!』
    「イエー!、じゃないよ!」
    『ホッカイドウで何食べる? 他にどんなデザートある? 楽しみー!』
    『ホッカイドウには、どんな自殺の名所があるんでしょうか。わくわくしますね』
    「わくわくしないよ!ってかタナトス! 出てくんな!」
    『うるさい。寝てられない。ホッカイドウだかなんだか知らないが、とっとと行って』
    「あんたも帰れぇ!」

     どうして私の使者どもは人の話を聞かないやつらばかりなのか。
     不幸だ。
     ちくしょう。
     みんな呪われろ。

     ・・・

    鬼道丸が首根っこにつかまってぐらんぐらん揺らすものだから、止まったままのビデオメールが視界に入る。

    そんなに、友達って、いいもんだろうか。

    画面の向こうで、少女がふわりとほほ笑んだ。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

    閉じる
  • 煌煌

    煌煌

    偶然開いた門を通じ、セプトピアにやってきたキョンシー道士。
    快楽主義者で、面白いことなら周囲を巻き込んで自爆を辞さない困ったちゃん。
    芽路子と出会ってからは彼女と遊ぶのが楽しくなってしまい、今のところ帰る気が無い。

    トランス!

     当麻 芽路子 & 煌煌

    最強の傍観者

    爆発、炎上、混乱する街、人々の悲鳴。
    (……危ない危ない、早めに避難しといて正解正解)
    と、芽路子は騒ぎが起こりはじめた頃から既に安全な場所に避難していた。
    何かあった時に逃げ込む場所は、ずっと前から確保している。
    それは幻の地下鉄の駅。
    工事されて完成していたものの、どういう理由かわからないが、
    使われることのなかった駅だ。
    存在を知る者も、ここにやってくる者もいない。
    芽路子だけが知る秘密のセーフハウスだ。
    避難生活をはじめて3日が過ぎたが、そこは平和そのものだった。
    芽路子が呪いたいと思う人間も、使者も現れない、心穏やかな静かな暮し。
    非常食はたっぷりあるし、パソコンも持ち込んで、ネットもし放題だ。
    (……こんな快適なら、避難ライフとかあと1か月は余裕ッ!)
    などとニヤニヤしていたのも束の間。
    ネットからの情報によると、地上の混乱はやや落ち着き、膠着状態となっているようだ。

    「……え、たったの3日で? ALCA優秀じゃない。どういうこと?」

    情報をチェックする芽路子に、ラルフェが淡々と答えた。

    『ネット上の情報を分析しますに、ALCAは新型のゲートカードを使用したようです』
    「新型のゲートカード……?」
    『異世界からかつての盟約者を自由自在に呼び出させるカードのようです。
    各定理者への配布が着々と進み、
    状況によって適材適所の盟約者との合体を選ぶことによって
    効率よくかつ効果的に戦果をあげているのだと推測します』
    「……やけに詳しいのね」
    『ALCAのコンピュータをハッキングして情報を得ました』
    「その中に、新型ゲートカードのものも含まれていた、と……」
    『はい、抜かりなくデータもコピー済みです』

    と、ラルフェは淡く輝くカードを見せた。
    それを見た途端、芽路子は嫌な予感で顔がひきつる。

    「……はい?」
    『万が一使者が襲ってきた際、
    ご主人も複数の盟約者を使いこなせたほうがよいと判断しました。万全です』

    芽路子に忠誠を誓うラルフェは、ただただ主のことを思いやったのだが、
    これが余計なお世話だったのだ。

    「……ちょっと待って。複数の盟約者って……昔、私と盟約したのって、だって……」

    芽路子が気を動転させていると、カードから閃光が放たれる。

    「眩しッ!!」

    そして、芽路子の前に現れたのはかつての盟約者・煌煌だ。

    『きゃー! 芽路子、ひさしぶり!!』

    キョンシー少女・煌煌は芽路子との再会を喜びピョンピョンと飛び跳ね、

    『パソコンだ! ゲームしようゲーム!』

    と、はしゃいでピョンピョンと飛び跳ね、

    『おでかけしようよ! ねー! ねー!』

    と、駄々をこねてピョンピョンと飛び跳ねた。
    的中する嫌な予感……。
    (わ、私の静かな避難ライフが……)
    呆然とする芽路子と傍に控えるラルフェ。
    その周りをぴょんぴょん跳ね回る煌煌。
    (悪いコトって、一つじゃ終わらないのよね、こういう時は……)
    などと思った途端、壁が崩れ去り使者までも目の前に現れた。

    「!!!」

    実は新ゲートカードの作動を感じた使者が探しに来たのだが、
    そんなことは彼女たちにはわからない。
    次から次へ後を追う様に、わらわらと使者たちが現れ始めた。
    芽路子はやむを得ず煌煌と合体。

    『見て見て! 私ね、帰っている間に超レベル高い呪術覚えたの!』
    「……もう、勝手にやってよ……」

    悪霊、瑞獣などを呼び出し使役させる煌煌の呪術に感動も感心もすることなく、
    芽路子はどうにかこうにか地下のトンネルを抜け出し、地上に辿り着く。

    (おのれ……これもALCAのせいだ!!!
    アイツらが変なゲートカードなんか作るからッ!!!)
    芽路子の気持ちは助かった喜びに浸ることなく、
    ALCAを逆恨みする方向に向かって行った。

    「呪ってやる! 呪ってやる!」

    と、ラルフェのコンピュータを操り、ALCAのコンピュータをハッキング。
    とりあえずウイルスやらボッドやらを仕込みつつ、
    あわよくばゲートカードのデータを消し去ってやることにした。
    ものすごい勢いでキーボードを叩き、
    ALCAの研究所のものらしきサーバーにあともう一歩と迫った時だった。

    「……えッ!?」

    黒い画面に浮かぶ記号の海は消えて画面が乱れると、
    突如現れたのは見知らぬ美少女――ニーナだった。

    「ハッキングしているのは、あなた? 定理者ですか?」

    と、冷静に問いかけるニーナ。
    対する芽路子は気が動転して、しどろもどろ。

    「あ、いや、私は、その、合体はしてるのですが定理者ではなく、何というか……」
    「わかりました。あなたがどなたでも構いません。どうか力をお貸しください」
    「力を貸す……?」
    「この騒動の原因を探り、解決する方法を見つけなければなりません。
    手が足りません、お願いします!」
    「で、でも、わたし、なんか……」
    「ここまで侵入できた貴方は優秀です。素晴らしいです。
    その力をお貸しください。共にこの世界を、守りましょう!」

    端末越しでもわかる、少女のまっすぐな瞳と綺麗すぎる心の輝き。
    人の善意とか勇気とか、とにかくそんなものを信じてやまない子の光だ。

    ……正直、芽路子にはまぶしすぎて直視できない。

    「わ、わかった、わかった、から」
    「ありがとうございます!」

    感謝の言葉と共に、早速指示を飛ばしてくる少女の声を聞きながら、
    (良いけど!手、貸すけど!
    この借りは、必ず、必ず返してもらうからね!)
    そう思っても、口には出せない芽路子であった。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

    閉じる
  • ラルフェ・インセクト012

    ラルフェ・インセクト012

    トリトミーからやってきた、蜘蛛型の自警/交通安全用ロボ。
    一部の上流家庭でも採用されることがあり、
    性格は家庭的で努力型、
    主人に対しては絶対の忠誠で仕えるよう設定されている。
    今日も主人である「芽路子」のため、
    誠心誠意仕えている。

    トランス!

     当麻芽路子 & ラルフェ・インセクト012

    スパイスに惹かれて……

    香ばしいスパイスの匂い

    ――それを嗅いだ瞬間、当麻芽路子のウジウジした悩みは一気に吹き飛んでいった。

    いくらカレーが好きでも行列のできる人気店に行くのは、芽路子のキャラではない。
    人混みも、キャーキャー言いながら友達と行列に並んでいる人を見るのも、芽路子は苦手だった。

    しかし昨夜テレビでこのカレー店が取り上げられたのを観た途端、
    芽路子はそんな苦手すらも度外視したくなった。

    香りの強いスパイス数種類が調合され、
    野菜も原型が無くなるほどドロドロに煮込まれたそのカレーは、
    まさしく芽路子の好みのど真ん中だった。

    『行列は一時間待ちのようです』

    そう言ったのは、芽路子の盟約者ラルフェ・インセクト012だ。
    芽路子は来なくていいと言ったのに、半ば強引についてきいた。
    盟約してからというのものラルフェは、芽路子を「主人」と慕い、
    まるでSPや執事のように絶えず彼女の周囲を警戒し、ついてまわった。
    芽路子はそんなラルフェを時折鬱陶しく感じるのだが、強くは拒めないでいた。

    2人が行列に並んで30分ほど経過した時のことだ。

    芽路子の前に並んでいた女子大生風の若い女性が「あ!ここ、ここ!」と明るい声を上げた。
    見ると、彼女の友達らしき若い女性たちが明るい笑顔で駆け寄ってくる。
    そして、なんと彼女たちは行列の中へと割り込んだのだ。その数は、5人!
    その瞬間、芽路子に怒りのスイッチが入った。

    芽路子は苦手な行列を30分も我慢し、やっと中ほどで辿り着いたというのに目の前の女たちは何の努力もせずに自分の前にいる

    ――それが許せなくてたまらなかった。

    と言っても、芽路子は彼女たちに直接怒りをぶつけるわけではない。
    芽路子にできることは、誰にも聞こえないような小さな声で彼女たちを呪うことだけであった。

    ――なんでもいい……なんでもいいから、この人たちが不幸になりますように……。

    そしてその願いは叶った。

    彼女たちが入店直前、カレーソースが底をつき、店は急遽閉店となったのだ。
    「えー」と不満の声を上げる若い女たち。
    芽路子はそれを見て、ニヤリと笑った。

    だが、同時に重大な事実に気づく……
    売り切れでは芽路子もカレーが食べられない!

    我慢して行列に並んでいた1時間は何だったのか……。
    芽路子は落胆し、ガックリと道端にひざまずいた。
    そんな芽路子に手を差し伸べたのは、ラルフェだ。

    『諦めるには早いです。まだ別の手があります!』

    ラルフェは、こんなこともあろうかとこの人気カレー店に2号店があることを調べ上げていた。
    それがあるのは、この店から数キロ離れた高層ビルの最上階。
    だが、一つ問題があった。2号店もあと数分で閉店時間を迎えるのだ。

    「……それ無理ゲーじゃない」

    芽路子は絶望感丸出しの溜息を吐いて、トボトボと帰ろうとした。
    だが、ラルフェは諦める気配がまるでない。
    芽路子は、ラルフェのしつこさにとうとう折れてトランスに合意する。
    仰々しい機械に包まれたトランスユニオンと化すと芽路子は憂鬱な溜息を吐く。
    はっきり言って芽路子はこの姿が好きではなかった。

    「……トランスまでして何をする気なの? とっとと済ませてよね」
    『すぐに終わらせます。絶対にあなたにカレーを食べさせますから……』

    それを聞いて芽路子は嫌な予感がした。
    ラルフェは使命に燃えると、時たま暴走してしまう傾向にあった。
    嫌な予感は的中し、芽路子の身体は、猛スピードで道を越え、雑居ビルを越え、一直線に高層ビルへと突き進む。
    そして気がつけば、芽路子は高層ビルの壁を蜘蛛のように這い上がっていた。
    カレー店に着く頃、高所恐怖症の芽路子が恐怖のあまり失神していたのは言うまでもない。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

    閉じる
  • 鬼道丸

    鬼道丸

    ジスフィアから甘味を求めてやってきた鬼の使者。
    派手な格好にくわえ、口を開けば若者言葉と、とてもギャル。
    本人曰く、芽路子はニコイチでズッ友。

    トランス!

     当麻 芽路子 & 鬼道丸

    当麻 芽路子 & 鬼道丸

    「はぁ………」

    芽路子は今日も、ひとり日差しのもとを歩いていた。
    しかし、いつもとは異なり口から出るのは独り言ではなく溜息ばかり。

    先日、盟約を交わしたテトラヘヴンの死神・タナトスは、とにかく明るく死を説いた。
    威圧的ではなく、まるで教師のように、死とはどんなにすばらしいものであるかを説いていくのだ。

    さすがにそんな話をいつまでも聞かされ続けては芽路子でさえも嫌になる。
    とっさに出した使者カードでタナトスをテトラヘヴンに強制送還したのだ。
    それがつい10分ほど前の話である。

    「もう嫌…死神なんて……結局理想なのよ……」
    「じゃあ鬼はどうよ?メッチャ強いよ~」
    「鬼なんてどうせ退治されるじゃない…」
    「それは童話とかの話っしょ?アタシは違うけどな~」
    「ていうかアンタ誰よ!!」

    陽気な声に振り向けば、そこには着物のような和服を着た、ピンク髪の派手な少女が芽路子の隣を歩いていた。

    ピンク髪…眼帯……DQN…厨二病……ヤバイ…

    あまりにも派手過ぎるその少女に、芽路子はもはや言葉も出なかった。

    「ねぇねぇ、アンタ、定理者っしょ?」
    「……な、なんの話?」
    「隠さなくていーって!私も使者なんだけど、さっき、使者を門カード??で送り返してるの見ちゃったんだから!」

    まさかあれを見られていたなんて…!
    芽路子には嫌な予感しかなかった。

    「ところでさ、こっちには、うまかわな甘味があるんしょ?アタシ、それ食べたいんだよね!案内してよ!」
    「なん、なんで私が…!」
    「こっちでアタシがひとりうろついてたら怪しさMAXじゃね?でも、定理者が近くにいるなら別っしょ。だからヨロ!」
    「はあ?私になんの得もないじゃない…」
    「甘味ご馳走してあげるからさ!んね、んね!?」

    キラキラとした片目をこちらに向け、いつまでも食い下がる少女。
    通りすがりの人の視線も後を絶たず、芽路子は今日一番の盛大な溜息を吐いた。

    「わかったわよ……食べたらとっとと帰りなさいよ」
    「マジ!?あざお~!あ、ところで名前なに??アタシ、鬼道丸!」
    「……芽路子」
    「芽路子ね!りょりょ、早くいこーよ!」

    「ま、待ちなさいよ…!」

    芽路子の手を取り、鬼道丸は飛び跳ねる勢いで駆け出した。
    行く店は決まってんの、方向わかってんの、と問う暇もなく、鬼道丸に引き摺られないよう、
    芽路子も必死で足を動かした。

    「芽路子、ゴチ!」
    「……わ、私のお金が…リア充デザートになってしまった…」

    結局、鬼道丸の行きたい店は決まっていたらしく、芽路子は流れるように入店した。
    そこで注文したデザートは季節のフルーツもふんだんに使用し、甘さも控えめで確かにおいしかった。
    しかし、鬼道丸はこの世界で使用できるお金を持っていなかった。
    カウンターにお金ではないものを堂々と並べた鬼道丸を見る店員の目が芽路子に向き、芽路子は慌てて自分の財布からお金を支払ったのだ。

    「こっちのお金ないの忘れてたんだって~!めんごめんご!」
    「それなのにどうして食べたいとかいうのよ…!」
    「ねぇ芽路子……アタシらってさ、もうニコイチじゃね?」
    「…は?」

    あまりに唐突な意味不明発言に、芽路子はビタリと立ち止まった。
    鬼道丸は立ち止まった芽路子より一歩前に出て、片足でくるん、と振り向く。

    「こーやってエンカして、一緒に甘味食べて、帰るってさ……ニコイチじゃん?」
    「いや、全然…」
    「まー聞いてって!芽路子と一緒に甘味食べたの、テラ楽しかった。
    芽路子、アタシと盟約して、ズッ友になろう!」
    「私は別に……意味わかんないし辞めて」
    「え~!そんなこと言わないでさ~」

    これ以上付きまとわれても困る、というのが芽路子の正直な考えだ。
    だが鬼道丸はきっとなんだかんだ言ってこの後も芽路子の傍に居座ろうとするだろう。
    どうにかして鬼道丸を他の定理者のところに追いやりたいが、芽路子のことがALCAにバレても面倒くさくなるのが事実。
    そんな芽路子に不安をいだき、鬼道丸は自分の力をアピールし始めた。

    「ねね、アタシ、めちゃんこ強いから!超怪力だよ??おっきー刀も振り回せるし、岩だって人間だって一握りでバラバラになっちゃうんだから!」
    「…人間も?」
    「え、ソコ?ソコ突っ込んじゃう系??まーいいけど…」
    「人間も懲らしめられるの?」
    「モッチ!芽路子、私の怪力、ナめてない??もう、こう……ぎゅってしたら粉々だかんね!」
    「い、いいわね…フフフ…!」

    芽路子は考えた。
    もしその怪力を私の力にできるなら、それは大いにアリではないか?と。
    その怪力を以てして、握りつぶすまではいかなくても、脅したり、懲らしめたりと、
    芽路子にとっての利点が多そうだ。

    「盟約してあげてもいいわ。その代わり、私が力を揮いたいときは迷わず貸しなさい。
    そうしたら、月1回までならリア充デザートも食べさせてあげる」
    「本当に!?さっすが芽路子~~!」
    「”ニコイチ”にも”ズッ友”にもなってあげるから、約束は守りなさいよ」
    「あったりまえじゃーーん!」

    フフ……勝った!オカルトの力と使者の力で、私に逆らうリア充はいなくなるのよ!

    鬼道丸はニコニコと芽路子の手を取り、その手を高く掲げた。

    「芽路子!今日からアタシ達、ニコイチでズッ友だかんね!」
    「そ、そうね、アンタと私は”ニコイチ”で”ズッ友”よ!」

    ………ところで”ニコイチ”と”ズッ友”ってなに?

    その後、芽路子は「ニコイチ」「ズッ友」の意味を調べ、丸5日間自室に籠った。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

    閉じる
  • タナトス

    タナトス

    テトラヘヴンの死神。死神とは言えない明るい性格の持ち主で、死について授業のように語る。
    一際暗い芽路子の性格を面白がり、セプトピアに来て観察していたが、ある事をきっかけに盟約することになった。

    トランス!

     当麻 芽路子 & タナトス

    当麻 芽路子 & タナトス

    「まーた暗い顔してる!この子、本当にかわいい…!」

    テトラヘヴンの死神であるタナトスは、セプトピアで人の波に紛れながら
    暗い顔で道行く人を睨みつつ歩く少女……芽路子を観察していた。

    事の発端は、数か月前。
    セプトピアの様子が分かる鏡を覗いていたところ、アストライアーに諫められた。
    その時、つい売り言葉に買い言葉で、セプトピアに行くことを宣言してしまったのだ。

    「まあ最初はどうなるかと思ってたんですけど…来てよかったです」

    だってセプトピアは飽きることがないし、なによりあの子が本当に面白い!

    タナトスが芽路子の観察を始めて1週間ほどだが、彼女は本当にタナトスを飽きさせなかった。

    常に下を向き、周囲を睨みながら歩く。
    (悪いことはしていないし、噂されてもいないのに!)
    街中でカップルを見つけたらぼそぼそとつぶやく。
    (何を言っているか分らないけど、すっごい声低くなるんですね!どこから出てるんですか?)
    自室で黒い魔女帽子にマントを羽織り、不思議な色の鍋を混ぜる…
    (魔女になりたいのでしょうか?変な人!)
    (どうやって覗いたかなんて、秘密です!)

    「どうせなら、ヒトコト死にたいって言ってくれればすぐ魂を地獄に運ぶのにな…」

    はあ、と軽い溜息を吐いたとき、タナトスはなおも芽路子の後を追った。

    芽路子はふと、悪寒を感じた。

    何これ…なんか、寒い!

    今日も道行く人々に(心の中で)恨みつらみを呟いていた芽路子だったが、
    突如襲った強烈な寒気に、思わず路地裏に一歩逸れた。しかし、それは間違いだったようだ。

    「あん?姉ちゃん、ココ今通れねぇぞ」

    金髪で、目つきが悪く、サングラスに着崩した服…
    芽路子の中で最悪に入る部類の男たちが、数人道をふさいでいた。

    最悪!なんでこんな典型的な路地裏にいるのよ!馬鹿なの!?

    芽路子は心の中で考えられる限りの罵倒で男たちを罵るも、実際口から出てくるのは吐息だけ。
    男たちが一歩も動かない芽路子に近寄ろうとしたとき、ヌッと芽路子の背後から青髪の美女が現れた。

    「あら?こんな暗いところで何をしているんですか?死にたいんですか?」
    「な、なんだてめぇは!」
    「なんだとはなんですか、私はタナトス、死神です」

    ………

    目が、点になった。

    「お前、大丈夫か…?」
    「失敬ですね。私は本当のことを言ったまでです。それとも、そんなに死にたいんですか?
    極楽浄土は無理ですが、地獄になら連れて行ってあげますよ」
    タナトスはとびきりの怪しい笑顔を、男たちに送った。

    「おい、ずらかるぞ!こいつ、やべぇヤツだ!!!」

    男たちは見てはいけないものを見る目でタナトスを見ながら、芽路子とタナトに背を向けさらに路地の奥深くへと走り、次第にその姿は見えなくなった。

    「やばいヤツと言われてしまいました…」
    「……ところでアンタ、」
    「そうでした、芽路子さん、大丈夫でしたか?」
    「別に……アンタ、使者でしょ」
    「わかりますか?」

    芽路子に話しかけられたタナトスは、嬉しそうに肯定の言葉を返した。

    「さっきの言葉も本当ですよ。私はテトラヘヴンの死神、タナトスといいます」
    「……私は芽路子。ねえ、タナトス、私と盟約しなさい」

    芽路子は極めて冷静にタナトスに語りかけたが、内心では感情が爆発していた。

    ついに出会ったー!これこそ私の求めていたTHE・死神!
    コイツと盟約すれば、私も念願の死を操る力を手に入れる…!
    そうしたらちょっと痛いものを見る目をよこすリア充をこの手で懲らしめてやる…!

    一瞬、小さな違和感を感じたが、それよりも念願の使者に出会えた興奮の方が大きい。
    必死に顔に出ないよう取り繕うが、芽路子の口元は怪しく歪んでいた。

    「ま、まずは合体してみない?」
    「ええ、構いませんよ」

    タナトスと芽路子がそれぞれ手を重ね合わせると、まばゆい光が2人を包み、
    芽路子の身にまとう色が赤へと変わった。
    赤と青を基調とした大きな刃の鎌は、芽路子を一層興奮させた。

    『芽路子さん、どうですか?』
    「ふ、ふふふ…!問題ないわ!これこそ私の求めていた力!」
    『それは良かったです。私も芽路子さんと合体できるなんて…フフ、夢のようです』

    そうして2人は合体を解除し、改めて向き直り、盟約を交わした。

    「改めて、これからよろしく、タナトス」
    「はい、よろしくお願いします。ところで、芽路子さんって、どんな死に方を考えてるんですか?」

    「……は?」
    「いっつもいっつも暗い顔してるし、人とほとんど話すこともなかったから、もう秒読みかなってここ数日観察してたんですよ!
    あ、でも楽に死にたいからってクスリはダメですよ?」

    さっきまでの落ち着いた死神らしい雰囲気はどこへやら、明るく微笑むタナトスに芽路子はきょとんとする。
    いや、それよりも語りかけられた言葉に驚愕した。

    「何言ってんの…?え、しかも観察…??」
    「え、芽路子さんこそ、死にたいんじゃないんですか?」
    「死ぬのは他のヤツ!私は死神の力を揮いたいの」
    「そんな、いきなりは難しいですよ~!死神の鎌で刺したり、冥府の使いの召喚はできますけど、
    合体していても死を操るのは、直接の死の経験がないと難しいんです。
    そしてその経験を積むには死んで地獄に行くのが一番!だから芽路子さん、まずは一度、元気に死んでみませんか!?きっと性格も明るくなりますよ!」

    「余計なお世話よ!それに、死んだら合体できないじゃない!」
    「んん……?確かにそうですねぇ…。
    あ、でも、その時は私が地獄まで行って芽路子さんの魂を迎えに行きます!
    もとから芽路子さんの魂を地獄に送りたいなって思ってたので!タナトスの送迎は安心安全が第一なんです!」
    「なんで私が地獄に行かなきゃならないの!」

    ヤバイ!!この死神、だめな死神だ!

    そしてあの盟約から数日たつ今も、タナトスは今日も死への言葉を芽路子に贈るのだった。

    「芽路子さん、どんな死に方がご希望ですか?」
    「むしろアンタはなんで私が死ぬと思っているの?」

    がっかりとした表情で問いかけてくるタナトスに、芽路子は睨みつけながら質問を返す。

    「だって芽路子さん、相変わらず死にたそうな表情をしているじゃないですか。初めてちゃんと会った時も、とっても表情が暗かったし、私が死神だとわかると笑ったから、死神に会いたかったんだな、って…」
    「…そりゃ、死にたいときもあるけど、本当に死にたいわけじゃ……」
    「そうだったんですか…?芽路子さんみたいに暗い人、私、初めて見たので…。手には数珠持ってるし…死神に会って嬉しがるなんて、死ぬ準備万端の人に見えるじゃないですかぁ…」
    「………」
    「芽路子さん、大丈夫ですよ。悲しむ人なら私がいます!またお迎えに行くまで芽路子さんに会えなくて、私は悲しいです!なので、まずは終活!死んでみませんか!?」
    「だからなんで私が地獄に行かなきゃならないのよ!」

    また厄介な使者と盟約してしまった………

    芽路子は、今日も激しく後悔した。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

    閉じる
  • side_anime
  • side_wataraku2
  • side_comic
  • side_column
  • side_movie
  • side_radio