キャラクター&ストーリー

  •  剣 美親
  •  揺音 玉姫
  •  クロエ・マクスウェル
  •  五六八 葵
  •  揺音 聖那
  •  アシュリー・ブラッドベリ
  •  ジークハルト・クラウス
  •  当麻芽路子
  •  明日葉 学
  •  オルガ・ブレイクチャイルド
  •  七星 縁
  •  ヴェロニカ・アナンコ
  •  ジゼル・サンダース
  •  ニーナ・アレクサンドロヴナ
  •  リオネス・エリストラートヴァ
  •  京橋万博
  •  橘 弥生
  •  森ヶ谷 夕子
橘 弥生
橘 弥生たちばな やよい
性別 女性
年齢 -
身長/cm 153
体重/kg 43
血液型 A型
生年月日 12月31日
好きなもの ハンバーグ、オムライス
嫌いなもの コーヒー

ピラリ学園1年S組のクラス委員。
生真面目で面倒見がよく、世界に名高い橘財閥の令嬢で、
家にふさわしい者であるための努力を惜しまない。
万博とは幼馴染。口癖は「ですわ!」。

盟約者フォーリナー

  • 七宝

    七宝

    弥生が初めて盟約した使者。若くして武術を極めた功夫の達人で、棒術と酔拳が得意。人間の住む世界に美味しいお酒を求めてやってきた。
    酒の飲み過ぎで倒れていたところを弥生に介抱された。弥生のしっかりものな性格をうざったいと考えるところはあるも、その実直さに心を許す。同じパンダ好きなこともあり、彼女と盟約をすることになる。

    トランス!

     橘 弥生 & 七宝

    弥生 & 七宝

    橘弥生は、焦っていた。
    本人は認めたくはないだろうが、焦っていた。

    「主様~ わっちも盟約の相手が見つかったよ~」
    のんびりと報告をしてくる華恋。
    「そう、良かったですわ」

    「す、すいません主様。うちも、その・・・」
    余計な気を回す華凛。
    「華凛も、お見事ですわ」
    恐縮して小さな背をさらに縮める華凛と、変わらず大きな体をふにゃーと伸ばす華恋。
    二人は幼いころから橘の家、特に弥生に仕えている「忍びの者」だ。
    そして何より、弥生の大切な友人、いや家族、でもある。

    元々弥生は、目標を自分できちんと決めて、そこに向けて努力するのが好きな性分だ。
    自分や華凛・華恋に定理者の素質があることがわかり、来年から定理者育成校・ピラリ学園への入学を勧められた時。最初に弥生がしたのは、自分なりに「定理者とはどういう存在か」
    「彼らが所属するALCAがどういう組織か」などなど調べることだった。華凛にもいろいろ情報収集をさせたものだ。そして決めた。
    「定理者となるからには、その中でも1番の定理者になりましょう。目指すはALCAの長官ですわ!」
    と。
    有言実行。目標を定めた弥生は、それに向かって日々、彼女なりに努力している。

    ・・・しかし。定理者は一人ではどうにもならない。
    異世界の使者と盟約できなければ、宝の持ち腐れになってしまう。
    もちろん、来年入学してから、学校で学びつつゆっくり盟約者を探すこともできるのだが、
    それでは彼女の目標たる「1番の定理者」に後れをとってしまう気がするし、なにより―なにより、華凛・華恋と別のクラスになってしまうではないか。

    「主様、うちの盟約者はジスフィアのニンジャです」
    「わっちの盟約者はサムライだよ~」
    「それぞれ、向こうの世界での人脈もあるようです。
    ・・・差し出がましいようですが・・・」
    華凛・華恋の言いたいことはわかる。彼女たちの盟約者に、故郷の世界・ジスフィアで弥生と盟約しても良いという使者を探してもらおう、というのだ。
    「ありがとう、華凛、華恋。
    でも心配は無用ですわ。わたくしは橘弥生。あなたたちの主です。
    自分の盟約相手は自分で、探してみせますわ」
    そう言い放ち、供を断って一人歩き出したものの・・・
    正直なところ、何か当てがあるわけではない。

    折しも今日は休みの日。あてどもなく歩いていたら、いつの間にかオビヒロの街まで降りて来ていた。
    街の賑やかな様子をみると、少し心が晴れる。
    商店街には、彼女の生家である橘財閥の系列も店を構えている。
    他の商店と足並みを揃えつつ、街を発展させ、住む人々を豊かにする。
    大財閥にして大商人、橘家の家訓は
    「商いで得た利益は人々のために使うべし。世界を豊かにすれば、さらに大儲け!」
    であり、その教えは弥生にもしっかり根付いている。だから街を行き交う人々が笑顔だと、自分と自分の生家が褒められたような気がして嬉しいのだ。
    「この世界を守り、正しく導いていくためにも、わたくしは1番の定理者にならなければいけませんのに―」
    その時。
    「!!」
    平和だった街の中に、物が壊れる音と野太い怒号が響いてきた。
    考えるより先に、そちらへと弥生は走り出している。ほどなくして辿り着いたのは、繁華街の一角。見れば、少女らしき人影が、二人の大柄な男性に絡まれている様だ。酔っぱらった観光客だろうか。見過ごせない。声をあげるか、あるいは警察を呼ぶかと思ったが、

    『おやおやぁ、お二人さん、よくない酒をしているねー
    そういうの、あたしぃ見過ごせないわねぇー』

    言うが早いか。少女の手が左右にするすると伸び―
    いったいいかなる技なのか、くるり体を翻すと男たちは軽々空を舞い、
    近くを流れる用水路に次々落ちていく。
    『水でもかぶって酔いを覚ますといいわよぉ。そしたら一杯、付き合ってあげる。
    そっちのおごりならだけど』
    思わず呆然と見ていた弥生の視線に気づいた少女は、目を合わせるとにやっ と笑い、そのまま―
    ―そのまま、ぐらりと道に倒れ込んだ。
    「ちょっ、だ、大丈夫ですの!?」
    思わず駆け寄り助け起こす弥生。
    『アタタタタ・・・ 急に動いたら回ちゃってぇ~~』
    答える声が、うっ、酒臭い。それもかなり。
    「貴女いったい―」
    『いっや~ こっちの世界の酒も、なかなか美味しいわね~ ヒック!』
    それが、ジスフィアのカンフーマスター、七宝との出会いだった。

    木陰に座り、膝枕をしながら、扇子であおいで風を送る。
    改めて、七宝と名乗った少女の姿を見る。いや、本当に少女だろうか。
    身長は同じぐらいだが、スタイルは圧倒的だ。服の上からでもよくわかる。
    (いや、羨ましくなんかないですわ)
    喋り方からして年上らしいが、確かに流す目つきは通りがかる男の人が立ち止まるぐらい色っぽい。一方、こぼれた笑みは乙女の様でもある。
    『あんまり美味しいから、飲み過ぎちゃったわぁ。
    ・・・あ、そういえばこっちの世界のお金持ってなかったわー
    あんたさ、代わりに払っといてくんない? だめ?』
    「ダメに決まってるでしょう!
    ・・・いえ、ここで放置してはお店の方にご迷惑がかかります」
    弥生の脳裏を、噂好きなマスコミがあることないこと好きに書き立てる様が駆け巡った。
    「わかりました。ここはわたくしが立て替えておきますわ。
    その代わり、私と一緒に学園まで来てもらいます。
    そのうえで、しかるべき身元引受人に来てもらい、酒代をお支払いいただいたうえで、丁重にお帰り願いますわ!」
    『なんだいなんだい細かいねー アタマの可愛いパンダが泣くよ?』
    「細かいのは性分です、ほおって置いてください!
    ・・・でもこのパンダの可愛いらしさに気づいたところは褒めてあげますわ。
    というか、そちらの世界にもパンダいますの?」
    『いるよ~ ただこっちのパンダは可愛いってより――強いけど』
    「強い!?」
    『ヤツら結構鍛えてるからねー。パワーがあって、タフなのよ。
    前に戦ったときは三日三晩ぶっ通し』
    「ごめんなさい、それ以上聞くとわたくしの中のパンダ観が変わりそうです」
    『にしても、驚かないのね。もしかして、お嬢ちゃんが噂の定理者、ってやつ?』
    「お嬢ちゃん、は止めてください!
    ・・・それにまだ、定理者とは言えませんわ。わたくしには、盟約相手がいませんから」
    『ふ~ん、そりゃ大変ねぇ~』

    「ところで貴女の先ほどの技、素晴らしいものでしたわ」
    『わざ~? べつに、あんなの、技って言うほどのもんじゃないよ』
    セプトピアのロジックに適応した使者は、故郷の世界の様々な能力を失って、
    大概はただの人間や動物などになる。にもかかわらず、腰の回転と重心の移動?だけで大の男二人を投げ飛ばした七宝は、
    どれだけその身に超絶の技を宿しているのだろうか。

    「この世界、セプトピアには、何をしにいらしたの?」
    『―お酒』
    「え?」
    『美味しいお酒、呑みにきたの』
    思わず、膝から彼女の頭を落としそうになる。
    「貴方、それだけの技を磨いていながら、今はただの酒飲みですの??」
    弥生も、茶道華道といった習い事をしているし、特に日舞は好きで日々鍛錬を積んでいる。
    だからこそ、この使者がどれだけ自分の体を苛め抜いて鍛えてきたか、推し量れるつもりだ。
    それには相当な決意と覚悟が必要なはずで、およそ何がしかの使命を帯びた人物であろうと思ったのだが―

    『いやいや、酒もバカにしたもんじゃないよ?
    お嬢ちゃんにはまだ早いけどね』
    「だからお嬢ちゃんは止めてください!」
    『その土地のお酒を飲むとね、その土地のこと、その土地に住む人のことが、よくわかるの。
    ・・・ここは、良い世界よね。
    人々がちゃんと努力して、世界を豊かにしてきた、そんなふっくらとした味がする。
    だからわかるよ』
    すい、と一呼吸で身を起こす。
    逆に見下ろす形になった七宝は、弥生の頭に手を伸ばし、ゆっくりなでると、

    『――良く頑張ったわね』

    気が付くと、弥生の頬に熱いものが流れていた。
    涙のしずくがこんもりと盛り上がり、後から後から流れてきた。
    自分でも良く分からない。
    この世界が、この街が褒められて、嬉しかったのかもしれない。
    なのにそれを守るチカラを得られない自分が、悔しかったのかもしれない。
    止め方もわからず、そのまま弥生は泣いた。大泣きした。そしてその激情のまま、叫んでいた。

    「わ、わたくし、わたくし橘弥生は! 橘家の娘として、この世界を守りたい。導きたい。
    もっともっと平和に、もっともっと豊かに、もっともっとみんなが幸せに笑って暮らせる、そんな世界にしたい!
    そのために、そのための、それに必要な力が、チカラが、欲しい!!
    だから七宝さま、わたくしに力を、お貸しください!!」
    そう言い終わるが早いか。
    七宝の腕がついと伸び弥生を捉えると、そのまま豊かな胸にしまい込む様に抱き込んだ。
    『これからは七宝、って呼んでいいわよぉ、弥生』

    「主様、本当によろしいのですか?」
    「主様ぁ、二対一だよ~?」
    合体し武器を構えた華凛・華恋の二人に、弥生はゆっくりその手を向けて、手招きをしてみせた。
    「構わない、と言っているのです。さあ、いきますわよ、七宝!」
    『弥生はやる気満々だねー。ま、その方がらしいけど』
    「『合体!』」
    また一人、頼もしい定理者のひながピラリ学園に現れた。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

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  • 凪

    夏以降に出会い、盟約を結ぶことになるフォーリナー。
    悪の陰謀を防ぐ(という妄想の)ため、セプトピアに調査に来たところ、平和すぎて落胆していた。そんな最中通り過がりのロジカリストだった弥生と出会い、彼女が悪と戦う戦士だと知ったことから盟約した。

    トランス!

     橘 弥生 & 凪

    橘 弥生 & 凪

    『―風が吹いていた。
    良くない風だ― 

    ジスフィアの使者、凪はそう呟くと、隻眼で闇の向こうを見透かす。
    風が運んでくる・・・悪の匂いッ
    しかし安心するがいい。
     いかなる悪の邪智暴虐が世を乱そうとも。
    この悪しき風、俺が止めてやる。
    風が止まると書いて凪と読む。
    そう、この俺の名だ!
    くっくっく・・・・
    はっはっはっはっはーーー!!!!!!』

     ―という、独り言にしては結構大音量のモノローグが、木の上から聞こえてくる。
    「・・・・凪さん。そろそろ、よろしいかしら?」
    『ヌ? 我を呼ぶのは誰か―?』
    「下をごらんなさい。わたくしですわ」
    『ム! そこに見えるは我が輪廻が導きし宿縁の盟約者、橘弥生ではないか。
     だが済まぬ、今ここに悪しき気の流れが―』
    「ではあなた、今夜のご飯はいらないんですのね?」
    『―! い、いります、いります。
     すぐ、すぐに降りるから!』
     と答えると。
     黒ずくめの小柄な姿が木の上からよっこいしょ、どっこいしょと言いながら降りてきた。
    「まったくもう・・・
     そんなに苦労するなら、わざわざ木の上になど登らなければいいでしょうに」
    『くっくっく・・・
     仕方がない。これは、悪の気配をいち早く掴むための日課なのでな・・・
     というか、この前までは鳥に適応していたのだ!空が飛べたのだ!
    高いところから見たいのだ、木登りは仕方ないではないか!』

     フォーリナーカードが実装され、定理者はその力が必要なときにだけ、盟約者である使者を異世界から呼び出すことができるようになった。
    呼び出された使者は、用が済んだ後は自らの世界に速やかに帰るのが普通だ。使者たちにとってはここ、セプトピアこそが『異世界』だ。セプトピアのロジックに適応すると体が変化し、セプトピアに住む人間や獣など、近しい何かに成り代わる。そのため、本来の世界で使えた超自然的な力を振るえなくなってしまう。だから彼らにとってこのセプトピアは、決して過ごしやすい世界ではないはずだ。
     しかし。たまに、呼び出されたあと、これ幸いとなんやかんや理由をつけてはなかなか帰ろうとしない者もいる。
     弥生の二人目の盟約者、このジスフィアの烏天狗・凪もその一人だ。
    「確かに、出会った頃のあなたの適応体は鳥でしたわね」
    『うむ』
    「なんで人間の姿になりましたの?」
    『・・・わからん』
     適応の仕組みについては、ALCAでも研究中だが詳しいことはわかっていない、と聞く。
    つい数年前までは、トランスジャックした使者に対する戦い方だったり逆理病に侵された人を救うことだったりが研究の主体だったのだから、まあ仕方ない。
    『待たせたな我が盟約者よ! では今宵の供物を頂戴に参ろうか!』
    「はいはい、食堂に行く前に、まずちゃんと手を洗うのですよ?」
     凪については学園長の許可を得たので、一晩ぐらいなら寮の自室に泊めることもできるし、食事も用意してくれる。
    『白樺寮の夕餉は実に滋味豊富な天上の果実。
     日頃ジスフィアにて霞を喰らうて生きる俺には、ふっ、過ぎた供物よ・・・』
    「まあ! ジスフィアでは霞を食べているなんて!
     ふふっ 万博さんに教えてあげたら、喜ぶかもしれませんわ。
     他にどんな物を食べているのか実験してみよう!
     とか言いそうですわね」
    『まてまてまて弥生、それはヤダ! それはヤーダー!』
    「安心なさい、本当に実験なんて、させませんですわよ?」
    『いや、うん、それはありがたい。
    そのう、霞というのも、まあ、そういう設定の方がカッコイイかなー、なんて・・・』

    凪は一度呼び出されると、こうして夕方の「日課」を済ませ、弥生や1年Sクラスの少女たちといっしょに食事をとる。その後、しぶしぶと故郷に帰っていく。

    『クククッ 我が輪廻が導きし宿縁の盟約者、橘弥生・・・
     再び悪がこのセプトピアに手を伸ばそうというなら、
     いつでも構わぬ。この俺を呼ぶが良い・・』
    「はいはい、わかりました、ですわ」
    『本当だぞ! 本当の本当に、呼ぶんだぞ!約束だぞ!』
    「ええ、遠慮なく呼びつけますわ」
    『では、サラバだ!』

    「いやー やっちゃんの二人目、凪は面白いっすねー!」
     そう声をかけてきたのは、同じ1年Sクラスのクラスメートで幼馴染の、京橋万博。
     凪と出会って盟約したのも、この幼馴染と一緒の時だった。
     そもそも凪は、自分の方からこのセプトピアに盟約者を探しに来た使者だ。
    あの楽しかった夏祭りのあと。
    白樺寮に帰る道の途中、黒い鳥ががぁがぁ叫びながら皆の回りを飛び回るものだから、さてはカラスが優勝メダルを取り返しにでも来たのかと身構えた。しかしよく見れば様子がカラスとは違うし、何よりまた万博のフォーリナーレーダーが鳴り出すので、まさかと思い学園の盟約室に連れて行ったのだ。
    盟約室で元の世界での姿―元体を現した凪は、居並ぶ少女たちを見て開口一番、言ったものだ。
    『お前たち、この俺と、悪を倒さないか?』
     あまりのセリフにぎょっとする一同の中、それに動じず
    「もちろん、悪はこの橘弥生が許しませんわ!」
     とすかさず返したこの幼馴染は凄い、と万博は思う。
    『くくっ そう言ってくれるのか。有難い。
     では早速だが橘弥生よ。今、この世界には悪の手が忍び寄っている!』
    「なんですって!」
    『闇に潜む巨悪を見つけ、暴き、葬るのが俺の役目だ!』
     この凪のセリフを最初に聞いたときは、一同大騒ぎになったものだ。
    まさかまさか、新たなる異世界からの侵略が!
    ALCAにも報告、至急調査と対策を!
    ―と盛り上がったところで。
    『ま、まてまてまて、おちつけ! 落ち着くんだ!』
    「これが落ち着いていられますか! 凪さん、早速ですが、その「闇に潜む巨悪」とやらについて、知っている限りの情報を教えてください!」
    『い、いや、そのう・・・
     俺もまだ、調査中というか、まだ詳しくはわかってないというか、これから設定するっていうか・・・』
    「わからないからこそ、調査が必要なのです! まずは貴方の知っている情報を―」
     と詰め寄った所で、後ろから弥生をつついたのが万博だった。
    「あー、やっちゃん、やっちゃん、それぐらいにしてあげるっす」
     見れば、凪はなんだか小さく背を丸めると―
    『・・・ゴメンナサイ・・・』
    全てが自分の「妄想」であることを認めた。

    「なんですか「設定」って! まったく、本気にしたわたくしがバカみたいではないですの」
    「まあまあ、良かったじゃないすか。本当じゃなくて。
    あたしもまさか、異世界から来た使者が中二病患者だーなんて、驚いたっすけどね」
    「全く、困った子を任されたものですわ」
    「そうすか? それにしては、やっちゃんも悪い気はしてないように、見えるっす」
     どうかしら、と弥生は肩をすくめてみせた。

    そんなある日。
     授業中の実技訓練で凪を呼び出した後、別れた弥生は、クラス委員の仕事が少し長引いたので、いつもより遅く寮に帰ってきた。
     ほとんど陽も落ち、いつもの「日課」に行っているであろう凪を迎えにいかなければ。そんなことを思いながら寮の門をくぐると、ほとんど同時に、凪も戻ってきたようだ。
     だが、その様子がなにやらおかしい。
     息を切らせて走ってくる。
    『わ、我が盟約者、橘弥生よ!帰ったか!
     く、くくくっ 
     今こそ、今こそ我らの力で正義を執行、闇を払い光をもたらしこの世に正しき風をもたらすのだ!! ふ、ふははははは―がほっげほっ』
    「・・・今度は何の設定なのです?」
    『ち、違う、今度は本当なのだ!』
     改めて話を聞くと。
     遠くの方、森の端に、赤いものが見えた、気がするのだという。
     さらに、風に乗って何か焦げた匂いもすると。
     それを聞いた弥生は―
    「―華凛、華恋」
    「はい、主さま」
    「おそばに~」
    「華凛はすぐに学園に向かい、先生方にこの事を知らせなさい。応援を頼むのです」
    「はっ!」
    「華恋はわたくしと来なさい。力が必要になるかもしれません、フォーリナーカードは持っていますね?」
    「ばっちり~」
    「凪、貴方はわたくしと合体しますわよ。すぐに現場へ向かいます」
    『弥生、その・・・ありが、とう・・・』
    「貴方のことは、盟約者であるこのわたくしが、一番わかっていますわ。
     ―まあ、貴方の勘違いなら、いいのですけれど」

     凪と合体した弥生は、烏天狗の力を得る。
     空を蹴る様に舞い上がると、上空から闇を見通す。
    「凪! 貴方が見たのはどちらの方角です?」
    『あっちだ弥生、見ろ! 火の粉が!』
     強化された感覚が捉えたのは、火の粉が踊る赤い色、生木が焦げる嫌な匂い、そして―
    『「―子供の声!」』
     空を駆けて闇を渡る。一気に近づく。眼下に見えたのは、炎に囲まれた二人の子供の姿だ。泣いている。
     間に合った。まずい。どうしよう。囲まれている。対策は?避難は?どうしてこんなところに子供が?火はどこから?
     弥生の脳裏を様々な思いが駆け巡るが、決断は早い。
    「凪! 貴方の力を!」
    『おお! 使いこなして見せろ!』
    『「ロジックドライブ! 神仙竜巻返しの術!!!!」』
     威力と範囲を絶妙に絞り込まれた竜巻が、子供たちを優しく包むと宙に巻き上げる。
    「華恋!」
    「お~まかせ~!」
     ついてきていた華恋が子供たちをキャッチするのを確かめると、気流を操り延焼が広がらないよう制御する。風を操る力で火を消すのは難しいが、応援が来るまで被害が広がらないよう防ぐことはできる。
     皆が華凛の先導でやってくるのに、時間はほとんどかからなかった。

     合体を解くと、弥生は凪に
    「お手柄ですわ、凪」
     と声をかけたが、その本人は何かを噛み締めたかのように拳を握って呟いている。
    『よ、良かった・・・お、俺も、俺にも正しい事が、正義の味方が、できるんだな・・・』
    「まあ、当たり前ですわ。
     この橘弥生の盟約者ですもの。正しい心で世界の役に立つ。当然の事ですわ」
     凪は何かを感じたかの様に、明るい笑顔を見せたが―
    『い、いや、この程度、お、俺の力をもってすれば容易いこと。
     フ、フハハハハハ―!』
     とまあいつもの調子に戻る。
     それでも、今夜は夕子に頼んで、食後に凪の好きなデザートを出してもらおう、と思う弥生だった。

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