キャラクター&ストーリー

  •  剣 美親
  •  揺音 玉姫
  •  クロエ・マクスウェル
  •  五六八 葵
  •  揺音 聖那
  •  アシュリー・ブラッドベリ
  •  ジークハルト・クラウス
  •  当麻芽路子
  •  明日葉 学
  •  オルガ・ブレイクチャイルド
  •  七星 縁
  •  ヴェロニカ・アナンコ
  •  ジゼル・サンダース
  •  ニーナ・アレクサンドロヴナ
  •  リオネス・エリストラートヴァ
  •  京橋万博
  •  橘 弥生
  •  森ヶ谷 夕子
  •  小湊くらら
ジークハルト・クラウス
ジークハルト・クラウスじーくはると・くらうす
性別 男性
年齢 -
身長/cm 138
体重/kg 33
血液型 A型
生年月日 5月5日
好きなもの チーズケーキ
嫌いなもの 毛虫

良家の子息。3人の姉の下に、待望の男子として誕生。
大いに期待され、大いに甘やかされている。
が、幸いまともな教育とまともな倫理観のもと育てられたので、
少年らしい正義感と未来への希望にあふれている。
早く大人になって、みんなを守ってあげられる強い男になるのが夢。

盟約者フォーリナー

  • 燕黒のルシア

    燕黒のルシア

    故郷の空を飛んでいるうちに、空に開いた門をくぐってしまい、セプトピアにやってきた。
    セプトピアのロジックの影響で、セプトピアにいるときは単独で空を飛ぶことは出来ない為、
    意気消沈していたが、ジークとトランスすることで再び空を飛べることが分かり立ち直った。

    トランス!

     ジークハルト・クラウス & 燕黒のルシア

    ジークハルト・クラウス & 燕黒のルシア

    『やれやれ、紫車の姉御も金錆の兄貴も、ヤキが回っちまったんじゃないですかね?』
    何処とも知れぬ部屋の中で。
    第5世界、財貨のロジックが支配する、歯車と蒸気に彩られしペンタクルスから来た3人の使者が密談を交わしていた。
    円卓に座り、端末を開き目を落としている一人は、中年のビジネスマン然とした冴えない風貌の男。オルガ・ブレイクチャイルドの前に現れた、金錆ギゼ。
    もう一人、上座に座り、ネイビーのスーツを着こなした秘書かマネージャーかといったシャープな女性。こちらはヴェロニカ局長の前に現れた、紫車リィス。
    そして最後の一人は、扉の近くに立ち、口にタバコか何かを咥えたままの大柄な男性。
    『量産品の兵隊2体はまあご愛敬としても、貴重な身代わり人形を1体。更に高価な特注機構の人形を1体。それだけ使って、姉御は交渉決裂、兄貴は仕入れに失敗。
    おっと、もう「兄貴」呼びは失礼でしたかね?』
    慇懃無礼な態度を隠そうともしない。彼の名は鉛鎚ラハン。
    『いえいえラハン。私の評価額は下がりましたから、その態度は正当です』
    ギゼがおとなしい口調でそう返すと、ラハンはフンと鼻を鳴らす。
    『まあいいや、姉御、じゃあ俺は俺の商売をさせてもらいますぜ』
    『ええよ。はなからそういう約束やし。好きにしたらええ。
    ・・・まあ、せいぜい気張りや』

    リィスの明らかに気の入らない送り出しを受けて、当てつけにドアをわざと音を立てて閉めてやる。
    『リィスめ、見てろ。この仕事が上首尾におわりゃあ、俺の評価額は2倍、いや3倍だって狙える。手前ぇの地位も奪ってやるぜ―』
    言いつつ、左右の暗がりに向け手をやると、中から更に何人かの男たちが現れた。
    彼らは蒸気人形ではない。
    同じペンタクルスの使者であり、ラハンよりも桁下の評価値で、個人的に雇った部下たちだ。リィスやギゼに無断で、ゲートを開いて招き入れた。
    『いいかお前ら。この仕入れ、しくるんじゃねぇぞ!』

    一方。
    ギゼの工作やリィスの交渉を経て、未確認世界である「ペンタクルス」の使者侵入を確認したALCAは、トリトミーの使者の協力の下、改めて「キョウト風雷事件」前後の異世界ゲート記録を子細にチェック。
    それにより、未確認の波長をもつゲートが確かに数度開閉されていたことを確認したのである。
    この事実は、現在ALCA上層部および世界政府間でのトップシークレットとして扱われ、その対応に今も議論が重ねられている所だ。
    武断派の主張としては、新たな世界の出現を世界の危機と捉え、直ちに凍結されている
    「世界統一自衛法」を復活、いわば戦時体制に戻すべき、という意見。
    これには、各国軍部出身のALCA高官、特に平和になった現在その発言力の低下を嘆く者たちが同調している。
    一方の穏健派としては、今回のデータにより今後は対ペンタクルスのゲート開閉も監視できる事を軸に、現在の体制を保ちつつ事件の解決、今後の事件の予防に努めるという意見を主張している。
    前ALCA長官であり「ルシフェル事変」でも活躍し、現在は政治家として腕を振るうヤルノ現乃氏を主導に、こちらも多くのALCA職員が賛同している。
    ナイエン支局よりもたらされた、彼らのロジックが「財貨」である、という貴重な情報が鍵だ。彼らの目的がいわば「金儲け」であるなら、セプトピアを武力侵攻する可能性は低いのではないか。何故なら、ロジックの違うセプトピアを彼らが侵略して奪う価値は低い。
    であるなら、膨大な消費行動である戦争は、勘定に合わないと判断するのではないか。
    これを希望的な楽観と非難する声と、火のない所に煙をたてるがごとき事大主義だと非難する声が、今日もALCA本部の議事堂を埋め尽くしている。

    「というわけだよヴェロニカ君。すまないね~ これは簡単に方針は決まらないよ」
    モニターの向こうのヤルノは、いつもと変わらない飄々とした姿勢を崩さない。
    が、言葉の端々に疲れが見える。
    「いえ。長官、いえヤルノさんのご尽力には感謝しています」
    そう答えるのはALCAナイエン支局のヴェロニカ。
    すると、向こうのヤルノが柔らかく笑うのが見えた。
    「? 何か?」
    「いやいや~ 君も変わったなと、思ってね。
     昔の君なら、一も二も無く武断派に同調していただろうに」
    「そう言わないでください。
    私も、あれからいろいろ学びました。
    今の世界は、結構気に入っているんです。
    ―だから」
    ヴェロニカは体を翻すと、作戦室に集まった定理者たち、そしてナイエン支局の全スタッフに向けて檄を飛ばした。
    「いいか、必ずペンタクルスの使者の足取りを掴め。
    そして、彼らが更に事件を起こすのを、決して許すな。
    未然に防ぐんだ。必ず!」
    「頼むよ、諸君」
    了解、と返す声が作戦室に響いた。

    今も支局に詰める縁の占術を元に、支局スタッフたちは各地に飛んだ。
    今回、まだALCAや世界政府の方針が固まっていない以上、動かせるのはナイエン支局のメンバーと、一部個人的に協力してくれた他の支局のメンバーだけだ。
    そして。
    オルガ・ブレイクチャイルドと剣美親、そしてジークハルト・クラウスの3名は、ここホッカイドウはオビヒロに来ていた。
    「悪いなジーク、今回は俺たちに付き合ってもらって」
    「いえ! 剣先輩とオルガ先輩の力になれて、光栄です!」
    「剣はそうかもしれないが、俺はそんなんじゃないだろう。何せ俺はルシフェル事変の―」
    「とんでもありません!」
    食い気味に答えるジークに、オルガも少し気圧される。
    「ちょっと生意気かもしれませんが、いいでしょうか。
    オルガ先輩は、確かに過ちを犯したかもしれません。
    でも、その後の活躍で、多くの人を救っています。
    過ちを犯したことは消せないかもしれませんが、だからといって、今の行為を過去の過ちで否定するのは正しいことではないと思います!」
    真正面からそう言われたオルガは、視線を逸らしながらジークの頭に手をやると、その綺麗な灰金色の髪をぐしゃぐしゃとかきまぜた。
    「へへっ、ありがとうな、後輩!」
    「うわ、ちょっと、や、やめてください~~~!」

    彼らがオビヒロに来たのは、ペンタクルスの使者が、定理者養成校であるピラリ学園への侵入、
    生徒への悪しき勧誘、最悪誘拐などの暴挙に及ぶことを懸念してのことだ。
    「彼らの目的が、セプトピアをハブにした異世界間密貿易だとするなら」
    「ハブ、ですか?」
    「あー、つまり、セプトピアを仲介して、モノリウム、ジスフィア、テトラヘヴン、トリトミーそしてペンタクルスとの異世界間貿易をするなら」
    「その中心となる世界は、このセプトピアだ。セプトピア人の協力者が絶対に必要になる」
    「金を積まれれば、協力するセプトピアの人間はいくらでもいるだろう」
    「そんな!」
    「ジーク。この世には、ヤクザとかマフィアとか、その手の仕事の方々がいるだろ?」
    「しかし、彼らをたぶらかして協力させたとしても、わざわざゲートを開くなんて派手な事をしていれば、いずれは発覚しALCAが鎮圧に動く。
    仮に協力者たちをトランスジャックしたとしても、今のALCAなら、撃退できる」
    「でも協力させるのが、定理者だったら?」
    「それも、まだ若くて、知識や正義感の幼い子供だったら?」
    「誘拐したうえで、何かをネタに脅迫、協力しなければ家には帰してやらないぞ―」
    「ひ、卑劣です! 許せない!!!」
    「まあ、本当にあのギゼやらリィスやらがそう考えているかどうかは、わからないが―」
    「ピラリ学園の子たちが、彼らにとって宝の山である可能性は高いね」
    おりしもこの週末、ピラリ学園は学外のゲストも呼び体育祭を実施していると聞く。
    ゲストに紛れ、ペンタクルスの使者が侵入するかもしれない。
    既に、元々正式なゲストとして招待されていたヴェロニカが学園に向かい、学園長をはじめごく一部の教職員には事件の可能性を伝えているはずだ。
    「それを水際で防ぐ。できれば、学園には事件が起きた事すら気づかせずに片付ける」
    「まあ、空振りならそれはそれでいいんだけどね」
    「わかりました! 上空からの監視は、お任せください!」
    「頼むぜ」
    あたかもピクニックに行くような風体で、ピラリ学園の周囲をパトロールして回る3人。
    定期的にジークがルシアと合体し、怪しい動きが無いか、上空から周囲を偵察している。
    「―で、どうだ?」
    「はい! 今のところ、怪しい動きはありません!」
    「・・・見てきたのは、それだけか?」
    「・・・はい?」
    「あの森の向こうには、乙女の花園たるピラリ学園。
    そして今、麗しき乙女たちが集い競う体育祭が行われている―
    俺のロジックが聞こえる。
    お前が思わずその目を奪われた確率は、ひゃ」
    「ぜ、ゼロ、ゼロパーセントです!!!」
    顔を真っ赤にして抗議するジークを、まあまあと美親がなだめる。
    「だ、だいたい、僕が空を飛んでいる時は、ルシアと合体しているんですから!
    そんな、他の女の子を見てるなんて、するわけないじゃないですか!」
    「ほぉう。ルシアってのは、お前の盟約者の―」
    「モノリウムの、燕の獣人の女の子だったね」
    「はい! ルシアは、その―」
    と、自分の盟約者について説明しようとした時。
    ジークはふと気づき、いつもポーチにしまっているフォーリナーカードを、改めてポーチごとタオルにぐるぐると包み、背負ったザックの底にぎゅっと押し込んだ。
    これからの会話は、聞かれたくない。
    「・・・剣先輩、大事な相談があります」
    「なんだい?」
    「ふ、俺たち歴戦の定理者に相談とは。いかなる難事か想像がつくな」
    「剣先輩、剣先輩は、テトラヘヴンの女神アテナと、その、お、お付き合いされてるんですよね!」
    「は?」
    思いもよらぬ言葉に、先輩二人が目を丸くする。
    「先輩、教えてください! どうやったら、その、僕も使者の子と、その、あの、特別な関係に、なれ、ますか?」
    「・・・・あー。つまり君の相談というのは・・・・」
    「恋の相談、ということか」
    更に顔を赤くする少年を前に、美親とオルガはだいたいの事情を悟った。

    定理者と、盟約した異世界の使者との、恋愛。
    もちろん、過去に例が無かったわけではない。
    だが大抵は悲劇に終わり、しょせん住む世界が違う者、結ばれることはない、というのが定説だ。
    しかし一方。完全にセプトピアに適応し人の身体を得た使者ならば、もはや物理的な垣根はない。
    神話などに登場する人と神との恋愛沙汰は、過去にあった定理者と使者の恋愛が人伝えに形を変えて伝説になったのだ、と主張する学者もいる。

    「そりゃあまあ、何というか、お互いの気持ちを尊重して、っていうか・・・」
    「―よくわかりません」
    「ふっ 男なら正々堂々正面突破。
    俺のロジックが聞こえる。
    お前の告白が成功する確率は―」
    「―オルガ先輩には聞いてません」
    男3人、ああでもないこうでもないと、話し出す。
    そもそも、実はこの3人、確かに女性と接することは多いものの、別に恋愛に達者なわけではなく。口々に出てくるのは、実に他愛無い、それこそ男子中高生の休み時間と変わらない会話だった。

    『・・・美親、ちょっと良いですか』
    少し硬い声でフォーリナーカードから現れたのは、剣美親の盟約者テトラヘヴンのアテナ。
    そのままジークの手をぐいとつかむと、つかつか歩き出し、美親とオルガから距離を取る。
    引きずられていくジークの無事を祈る二人である。

    『―ふう、ここらへんでいいかしら』
    声が届かないぐらいに離れると、アテナは掴んでいた手を放す。
    「あ、アテナさん、あのう・・・」
    憧れの先輩定理者の、その盟約者。
    テトラヘヴンに名高い女神アテナを前に、流石のジークも緊張していた。
    ジークは女系家族の中で特に可愛がられて育ったうえ、配属されたALCA支局でも女性職員たちにはいろいろあれこれ騒がれてきた。だから特に女性の前で緊張するということは無いのだが―これは格が違う。
    光に透ける金の髪をさらりと流し、振り向いたアテナは、まず一言。
    『ジークハルトさん。貴方、意外と意気地がないんですね』
    うっ、と思わず声が詰まるジーク。
    『私はテトラヘヴンの勝利の女神として、多くの戦士たちと共に戦い、祝福を与えてきた者です。
    でも今の貴方には、祝福を与えることはできません。
    戦いに赴く前に、怯えて立てない様ではないですか。
    そもそも剣を握ることすらできないのでは、願う勝利など掴めません』
    「すいません・・・」
    『仮に貴方が女の子だったとして、そんな様子の男の子を好きになりますか?』
    アテナの口調はいつもの様に穏やかで、優しげですらある。
    いっそ厳しく叱責されるならまだいい。
    まさしく「女神」の様な綺麗で素敵な大人の女性から、こうして諭されるのは、正直辛い。
    ・・・そんな気持ちが表情に出ていたのだろうか。
    俯いていたジークに、
    『顔を上げなさい、ジークハルト・クラウス』
    その言葉には、背筋を少し伸ばさせる魔法の力があった。
    『ごめんなさい。私も神とはいえ女、ですから。どうせならあの娘にも幸せになってほしくて、ちょっとおせっかいをしてしまいました』
    顔を上げた少年の額を、揃えた指先でちょっとつつく。
    『ではジークさん、この勝利の女神アテナが、今回だけは特別に、貴方にひとかけら勇気を差し上げましょう』
    そのまま腰を折るようにかがんで、そっと耳に囁く。
    『-キライな人と、合体なんて、できないでしょう?』
    その言葉が、ジークハルトの勝利への祝福となった。

    「オルガ先輩、次は左から3体、早いです!
    剣先輩、そちらには5体!」
    「ふっ、任せろ! 銀影、全て斬り伏せる!」
    『承知だ』
    「アテナ、ロジックドライブで行こう」
    『ええ!』
    「『ロジックドライブ、リフレクション!』」

    戦闘は、極めて唐突に、かつ雑な形で始まった。
    明らかに不審な様子の集団―どう見ても、観光客でも、学園の関係者や父兄でもない、チンピラヤクザの様な風体の数人に率いられる、表情すら変えない人形の様な、いや本当に人形の一団。
    ずらずらと列を揃え、堂々山道を登ってくるのをジークが発見。
    オルガの誰何の声に、答えたのは何らかの銃器による射撃だったのだ。
    『ちっ この完璧な変装が見破られちゃあしょうがねえ。
    お前ら、相手はたったの3人だ、潰して通れ!』
    鉛鎚ラハン、評価額8200万GD。その得意商売は、強盗まがいの仕入れと押し売りだ。手荒い仕事を数撃ちゃ当たるでこなしてきた。
    今回も、量産品の戦闘専門の蒸気人形100体を揃え、更に手下を潜ませ、金でたぶらかした人間をさらっておき、
    『へへっ、トランスジャックってえんだろ!』
    噴き出す蒸気。
    うなりを上げる歯車とピストン。
    それが彼らの元体なのか、身体を奇怪なパワードスーツに潜め、襲い掛かる。

    しかし。

    『オルガ。この者たちは、私をこの世界に呼び戻した痴れ者の仲間の様だな』
    「ああ。―罰を、与えたいか?」
    『当然だ。行いには報いを。それが神と人との関わりだからね』
    「いいだろう。トランスチェンジ!」
    湧き上がる黒い神気。
    二又の魔杖が唸りを上げ、暗黒をたたえた星を呼ぶ。
    『神罰を受けよ―』
    「セブンスター!!!」
    七つの流星が、数多の人形を巻き込み砕いていく。

    「アテナ、ここは誰一人、通さない」
    『はい、美親』
    オルガの派手な攻撃を前に置き、美親は後衛に。
    討ち漏らし横を抜けようとする者を、空を舞う盾が打ち砕く。
    『ええい、何してる! しかたねぇ、これでもくらえや!』
    背負った筒は大きな大砲だったらしい。
    前に倒すと、ひときわ大きな蒸気の漏れる音とともに、巨大な何かが唸りをあげて飛んでくる。巻き込まれて壊れる人形も無視し、連射、連射。
    「オルガ!」
    「剣!」
    ひと呼吸で位置を変える。
    飛来する砲弾、それを受け止めるのはもちろん美親の盾だ。
    そのままロジックドライブで相手に返す。
    巨大砲弾の往復が、相手の布陣をずたずたに崩した。
    「剣先輩、オルガ先輩、今です!!」
    「いくぞ剣!」
    「ああ、オルガ!!」
    白と黒の流星が、混乱する敵陣へと飛び込んでいった。

    *******

    さて今回は特別に、時計の針を少し先に進めたい。
    今回の騒動の後の、もう一つの戦いの、話だ。

    彼をかまいたがる各種のお姉さんたちを撒いて、ルシアと二人きりの時間を作るのに成功したジーク。
    二人だけで歩く秋の公園の夕暮れはとても綺麗で、これならムード満点だ!と心中で勝利を確信する。
    大丈夫、大丈夫。
    いけ、行くんだ、ジークハルト・クラウス!
    自分で自分を叱咤して、横を楽しそうに歩くルシアの手を、ぎゅっと握る。
    『ん? ジーク、どうしたの?』
    「あ、あのね、ルシア。
    君に、君に伝えたいことが、あるんだ」
    『何?』
    ルシアはいつも、ジークの話なら顔をまっすぐ見て聞いてくれる。
    赤い空の色に照らされて、ルシアは『重くて暗くて嫌い』というけど彼はとても似合っていると思うその黒髪が映え、いつも以上に可愛く見えた。
    「ルシア、君が、君が、好きだよ」
    『!』
    「出会った時からずっと、盟約してからもずっと、君のことが、大好きだ。
    君のことを思って合体するといつも、心がふわっとして、胸の奥がぎゅっと熱くなる。
    だから僕と、これからもずっと、いっしょにいて欲しい!」
    『-』
    しかしルシアは、大きな目をもっと大きく開いたかと思うと―
    ぎゅっと下を向いて、黙ってしまった。
    「あ、あれ?」
    なんてことだろう。
    このシチュエーションなら、このタイミングなら、ええと、うまく行くと思ったのに!
    「だ、だめ、なの、か、な・・・」
    思わず声が小さくなっていく。
    湧き上がっていた期待と幸せの未来のプランが、空気の抜けた風船の様にしぼんでいく。
    ああ、やっぱり僕はまだまだダメなのか。
    『-ばか。
    ばかばかばか。ジークのばか。
    ジークはあんなに勉強もトレーニングもやってるのに、ほんっとにばかなんだね!』
    「え、ええええ!」
    勇気を振り絞ったにもかかわらず、この返答。
    先輩たちのアドバイス(というより、女神の一言)に背中を押され、自分なりには自信が持てたのに、このザマはどうしたことか。
    ・・・でも、顔を上げたルシアの、この表情は何だろう。
    口調とは裏腹に、怒っているわけでも、もちろん嫌がっているわけでもなさそうだ。
    というより、泣いているし・・・笑っている?
    『ジークは忘れちゃった?
    最初に合体の説明をいっしょに受けたとき、言われたよね。
    合体していると、お互いのロジックを与え合う。だから、お互いの記憶や感情が交じり合うことがある、って』
    「うん」
    『合体すると、こころがふわっとして、胸の奥がぎゅっと熱くなるんだよね』
    「うん」
    『そんなの、私も同じに決まってるじゃん!』
    「!」
    『ジークはそんなこともわからない、ばかだから。
    私が見ていないと、ほんとダメなんだから。
    だから・・・ 
    だからこれからも、いっしょにいてあげる!』

    ルシアは今も覚えている。忘れることなんてできない。
    「ねえ、ルシア。
    使者はね、合体することで、本来の力をセプトピアでも使う事ができるんだって」
    あの日、あの時、彼がそう言ってくれて。
    彼と盟約することで、また空を飛ぶことができるようになった。
    セプトピアの空の素晴らしさを知ることができた。
    この空とこの翼は、ジークからルシアへの贈り物だ。
    彼から私だけに贈られた、大切な宝物だ。

    (いつもいっしょにいてね、私の王子様)

    今は言えないこの気持ちも、ジークと合体している限り、いつかはきっと、彼にばれてしまうだろう。
    でも早くばれてしまわないかな、とも思っている。
    その日が楽しみでもある。

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  • メガル・ポリスロイド461

    メガル・ポリスロイド461

    トリトミーの治安を守る、警備用アンドロイド。
    セプトピアには使者の護送のためやってきた。
    ルールや法律を守ることを大切に考えており、
    マナーにもうるさいのでちょっと煙たがられることも。
    交通違反から立てこもり凶悪犯の鎮圧まで、警察業務のすべてに対応できるよう様々な装備を使いこなす。

    トランス!

     ジークハルト・クラウス & メガル・ポリスロイド461

    いい子じゃなくて……

    ある日、司令部に呼び出されたジークハルト。

    「ほかでもない。最近の君の活躍を評価していると伝えたくてね」

    そう言って上司は笑顔でジークハルトを迎えた。
    個性的なロジカリストや盟約者が揃うALCAの中で、
    ジークハルトの功績はまさに優等生、と言えるべきものだった。
    市民をパラドクスゾーンの被害に巻き込むことなく、
    戦闘で建造物や街の公共物を破壊することもほとんどない。
    そのスマートな解決に、ALCA上層部の評価も絶大。
    市民から感謝の声も多く寄せられていた。
    ところが、ジークハルトはそれに喜ぶことなく、淡々と受け入れている様子だった。

    「嬉しくないのか?」

    と上司。

    「嬉しくないことはないですが……」

    ジークハルトの理想は高かった。
    いくら評価をされても満足することはない。
    一人でどんな敵でも立ち向かえるようなカッコいいロジカリストにならなきゃ
    ――常に、そんな思いを秘めていた。
    やがて司令部を後にして、自由時間に街を散策するジークハルト。
    その時、目に飛び込んできたのが、盟約者のメガル・ポリスロイド461だった。

    「メガル! 何をしてるの?」
    『交通安全ヲ呼ビカケテマス』

    トリトミーの治安を守る警備用アンドロイドだったメガルは、
    セプトピアの世界に来ても自主的にパトロールやちょっとした治安維持活動をしていた。

    『ココハ事故ガ多イ場所ナノデ……』
    「そうか。確かにここは車が通る量も、歩行者の数も多いからね。」

    ジークハルトは周囲を見渡すと、ふつふつと正義の気持ちがわき立った。

    (街の人を交通事故から守らなきゃ!)
    「僕も手伝うよ」

    そう言ってジークハルトは、横断歩道を挟んで、メガルと反対側の歩道に立った。
    ジークハルトなりに鋭い眼光で、道行く人が危険な目に遭わないか監視する。
    危うく車に轢かれそうな子供を身を呈して救う
    ――いつでもそんなヒーローのような行動がとれる心の準備をしていたが、

    「信号は青になってから渡ってね」
    「車が飛び出してくるからも知れないので、よく注意してくださいね」

    優しく気が利く性格のため、人々が危険な目に遭う前に、ジークハルトは声をかけ事故を未然に防いでいく。
    なので、ヒーロー的な行動をとる場面はいつまでも訪れなかった。
    一生懸命になればなるほど、ジークハルトの行動は「ヒーロー」というよりますます「優等生」になっていく。
    お年寄りがやってくると手を引いたり、背負って横断歩道を渡るのを手伝った。

    「そんな悪いわよ」

    遠慮するお婆ちゃんに、ジークハルトは首を振って笑顔で答える。
    「横断歩道を渡っている途中に信号が変わって事故になることもあるんです。
    遠慮なさらないでください」

    そんなかいがいしいジークハルトの姿をメガルは熱い視線で見つめていた。
    やがて日も暮れた頃、ジークハルトはメガルに、

    「そろそろ帰ろうよ」

    と、呼びかける。
    ジークハルトに近づいてくるメガル。
    ところが、メガルは無言のままジークハルトを見つめている。
    その視線はなんだか熱っぽい。

    「? ど……どうしたの……?」

    もしやと思って訊ねると、メガルは優しくジークハルトの頭を撫でてきた。

    「あ! ちょっと!」
    『ジーク、トテモイイコ、トテモカワイイ……』
    「う、うん、わかったから……」

    と、言っても頭を撫でるのをやめてくれないメガル。

    (僕なりに街の人を守ろうとがんばったのに……なんでこうなるんだろ)

    けれども、ついやってしまう行動はお行儀のよい優等生。
    ジークハルトは溜息をついた。
    いつになったら、「カワイイ」じゃなくて「カッコいい」と言われるようになるんだろうか――と。

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