キャラクター&ストーリー

  •  剣 美親
  •  揺音 玉姫
  •  クロエ・マクスウェル
  •  五六八 葵
  •  揺音 聖那
  •  アシュリー・ブラッドベリ
  •  ジークハルト・クラウス
  •  当麻芽路子
  •  明日葉 学
  •  オルガ・ブレイクチャイルド
  •  七星 縁
  •  ヴェロニカ・アナンコ
  •  ジゼル・サンダース
  •  ニーナ・アレクサンドロヴナ
  •  リオネス・エリストラートヴァ
  •  京橋万博
  •  橘 弥生
  •  森ヶ谷 夕子
  •  小湊くらら
アシュリー・ブラッドベリ
アシュリー・ブラッドベリあしゅりー・ぶらっどべり
性別 女性
年齢 -
身長/cm 149
体重/kg 36
血液型 AB型
生年月日 4月9日
好きなもの 読書、空想
嫌いなもの 尾頭付きの生魚

小柄で読書好きな女の子。
おとなしくて恥ずかしがり屋、恐がり屋。
夢見がちで、異世界についての様々な資料を読み漁っては空想にふけっていた。
定理者の才能が芽生え、喜んで招集を受け、イケメン使者と恋しちゃったり、合体してナイスバディになったりと憧れていたが……
初めての盟約者はトカゲ、そして合体するときぐるみ状態…というわけで、一時期かなり落ち込んだ。
だが、一定の線を越えると、ものすごい度胸を発揮する。

盟約者フォーリナー

  • アストライアー

    アストライアー

    星を司り、占いによって人の未来を予知する能力を持つ。ただし、自分自身の未来を占うことはできない。公平さを重んじる「星の女神」。好奇心が強く、面倒見がよい。ふとした理由で人間に興味を持ちセプトピアにやってくる。

    トランス!

     アシュリー・ブラッドベリ & アストライアー

    アシュリー・ブラッドベリ & アストライアー

    『やっぱり、あの子が来たわね。占うまでも無かったわ』
    「そうですね。私も、そう思っていましたわ」
    ピラリ学園生徒会副会長。5年Sクラス、アシュリー・ブラッドベリ。
    小柄な彼女だが、実はけっこう着痩せするタイプ。定理者として最前線で活躍していたときは、そのプロポーションと一生懸命な様子、そして(彼女自身は気にしているが)鼻の上のそばかすがチャーミングで、ALCA職員の間でも人気だった。
    彼女の横にいる、こちらも小柄な眼鏡の少女。アシュリーと盟約したテトラヘヴンの使者で、善悪を司る天秤を持つ星乙女のアストライアー。ちなみに彼女の元体は、プラネタリウムに行けば「乙女座」の姿で見ることができるだろう。
    彼女たちの視線の先にいるのは、2年Sクラス、ニーナ・アレクサンドロヴナ。エキジビションマッチ・低学年の部の優勝者だ。

    実は、アシュリーとニーナの経歴は似通っている。
    もともと図書館に一日中籠もっていたい文学少女だったアシュリーも、ある時、定理者の資質に目覚め、当時の法律に従い強制招集を受けた。幸い、何人もの使者との盟約に恵まれ、様々な事件の解決に尽力することができた。
    ニーナも同様に、資質に目覚め、強制招集を受け、数々の修羅場を超えてきたと聞いている。
    そんな二人が今、同じ様にこのピラリ学園に通っている。

    アシュリーとニーナは学年が違うものの、実は図書館でよく出会っていた。
    アシュリーが主に読んでいるのは西洋文学、特にファンタジー小説、あるいはその元になる背景世界を教えてくれる歴史や教養本だったが、ニーナの方は主に理系、天文や物理の難しい専門書の棚に用事があったようだ。だから出会うと言ってもすれ違いばかりだったが、彼女が本を探していた時、図書館中の棚を把握していたアシュリーが手伝ったこともある。一方アシュリーがアストライアーにせがまれて天体望遠鏡の据えられた天文室に赴いたときは、ニーナに案内してもらい、星を見せてもらった。
    ニーナがこの学園に来てからのあれこれは、昨年卒業していった森ヶ谷夕子先輩から少し聞いている。傍目にもALCAに戻りたくて仕方ない様子が見えたが、良い友達に恵まれたのだろう、今はこうして学園に残ることを決めたらしい。
    一方のアシュリーは、この学園に編入された当初から学生生活を楽しんでいたから、そこはちょっと違う。でもそれ以外は、確かに似ているかもしれない。
    「でも、私はこれでも3年先輩、お姉さんですから」
    『自信があるの?』
    「さあ、どうでしょう。アストライアー、貴女の占いではどう出ていますの?」
    『自分のことはわかりません。わかっていて聞いているでしょう』
    「ふふっ」
    アストライアーは、星の運行から人の運命を読み取る力を持つ。とはいえ、それは本来の世界・テトラヘヴンでのこと。このセプトピアの星空は故郷と全く違うし、そもそもこの世界に適応した身では、人を超えた力は使えない。
    『でも、この戦いもアシュリー、あなたとあの子、ニーナにとって大事なものになる。星がそう言っている気がするわ』
    「なら、がんばらなくちゃね」

    体育祭は、いよいよ最後の競技を迎えていた。
    ここまで、紅組と白組は点差が大きく開くことも無く、鍔ぜり合いを繰り広げてきた。
    午後の目玉であった「大・騎馬戦」では、2年生ながらSクラスの橘弥生が軍師に就任。エースとも目されたニーナ・アレクサンドロヴナをあえて出場させず温存。しかしその他の騎馬たちを巧みに運用。どこから持ってきたのか軍配を右に左に振って巧みな作戦指揮を執れば、対する紅組は桐谷華凛率いる「くの一騎馬隊」が遠方から弥生の指揮を盗み見ていち早く対策を打つ情報戦を展開。非常に見どころのある戦いとして、来賓一同からも高く評価され、映像ソフト化の要望も高いと聞く。
    そして今。
    森や川、池なども見え隠れする「特別訓練場」に、二人の生徒が進み出ていた。

    「いよいよ! エキジビションマッチ最終戦が始まります!
    この戦いは、高学年より使用される、より実戦に近い地形を反映する特別訓練場にて実施されます。低学年のニーナ選手にとっては、アウェーの環境となりますが、大丈夫なのでしょうか。解説の神楽先生?」
    「まー だいじょうぶだろー」
    「はい、いつもの適当なコメント、ありがとうございます!」

    エキサイトする実況と共に、特別訓練場に設置されたカメラが二人を捉える。
    だが今回のカメラワーク・スイッチワークも生徒がやっているためか、ちょっと切り替えが遅く、観たい絵が見えてこない。
    「もう! もっとニーナちゃんの表情を映して!」
    紅組も白組もごちゃまぜで集合した2年Sクラス一同応援席。みな、かたずをのんで画面に見入っている。
    「へっへーん そんなこともあろうかとー。合体!」
    一同の中にいた、京橋万博が盟約者のセレン・リサーチャー013と合体する。
    「ちょっと万博さん! 何する気ですの?」
    「あたしもこの一年、何も進歩しなかったわけじゃあないっすよ。
    なんと! 驚け! 遂に!
    爆発しないタダの探査プローブが出せるようになったっす!」
    「ええー!」「万博ちゃん凄い!」「まーちゃんやるう!」「それは驚きましたわ!」
    「えっへん!」
    『私としては、これで驚かれる状況に忸怩たるものを感じます』
    盟約者の嘆きをよそに、爆発しないタダの探査プローブ、つまり偵察ドローンは空に舞い上がり、ニーナの戦いの一部始終を追う位置に就いた。

    「それではッ エキジビションマッチ最終戦!! 
    高学年の部優勝、紅組5年Sクラス、アシュリー・ブラッドベリ選手!
    VS
    低学年の部優勝、白組2年Sクラス、ニーナ・アレクサンドロヴナ選手!
    いざ尋常に、始め!!!!」
    妙に時代がかったアナウンスの合図が終わるか終わらぬか、二人の少女はお互いに携えたフォーリナーカードを高く掲げ、叫ぶ。

    「「ゲートアクセス・テトラヘヴン!!!」」

    奇しくも二人が選んだのは同じ神聖世界・テトラヘヴンの盟約者だった。
    黄緑のアカデミック・ドレス、所々を飾る星のアクセサリー。被った帽子は角帽に似て、その姿はあたかも星の世界の可憐な研究者。
    アシュリーと、星乙女アストライアーの合理体である。
    「アストライアー、星詠みを!」
    そう。確かにこの世界に適応している間は、アストライアーも超常の力を使う事は出来ない。だがアシュリーと合体した今なら違う。この世界の星を読み取り、人の宿命を写し取る。戦いにおいて、相手の動きが事前にわかる事の有利さは、言うまでもない。
    「―そう来ると、思っていました!」
    星詠みに備え、周囲に星型のアドバイザー・星の子を呼び出したアシュリーが見たのは。
    天使騎士団団長ミカエルと合体、光の六枚羽根を輝かせ、こちらに向かって一直線に、最速の踏み込みでレイピアを突きこんでくるニーナの姿だった。
    『名誉挽回、私のレイピアの冴え、今度こそ!』
    鋭い鋭い連続攻撃。
    思わずたたらを踏むアシュリー。かわせているのが自分でも不思議なぐらいで、とてもとても星詠みをしている暇など、ない。
    『星乙女が未来を読むというのなら―』
    「―その間を与えなければいい!」

    凄いな、と思う。
    もう疲れているだろうに、しんどいだろうに、そんな事は表情のどこにも見せず、ひたすらに鋭く剣をふるう。彼女はなぜ、ここまで戦えるのだろう?
    単純にそんな、興味が湧いた。

    「トランスチェンジ」
    星の子たちを束ね、ニーナの目の前に出し囮にして一瞬。
    ニーナが再び突きこんだレイピアの切っ先は、
    「えっ!?」
    盾のような、緑のブ厚い何かに反らされ空を斬った。
    かわいい、と何処かで誰かが叫んだ気がする。
    トランスチェンジを経て、モノリウムの使者・巌のジェイドと合体したアシュリーは、緑の着ぐるみを被った様な姿になっていた。彼女の頭の上に、半開きの大きな目がユーモラスなぬいぐるみの頭が乗り、まるでぬいぐるみの怪獣に食べられたみたいな様子だ。
    全体的にずんぐりむっくりで、とても戦いに向く姿には思えない。
    (でも・・・ モフモフ・・・ いけないいけない)
    散りそうな気持ちをしっかり束ねなおして細剣を握る。しかし。
    『くっ・・・これではっ』
    アシュリーの要所要所を装甲が守り、くるりとした曲線がレイピアを逸らしてしまう。さらに。
    「ええーい!」
    アシュリーが力任せにふるうのは、これまた巨大なハンマーだ。ジェイドの元体は大きなトカゲだが、その前脚を模した、太く重い一撃。
    ミカエルと合体したニーナにとって、この大振りのハンマーをかわすことは難しいことではない。
    しかし掠めただけでもその威力と重さを風圧が伝えてくる。危険な攻撃だ。ミカエルの大楯で受け止めても、そのまま身体ごと持っていかれてしまうだろう。
    ならば。
    「トランスチェンジ!」
    『まっかせて!にゃあ』
    今度はニーナから。午前中同様に、大振りの攻撃をかわすと同時にモノリウムの使者・闘舞のアイシャにチェンジ。得意の超近接戦に持ち込む。こう言っては失礼だが、
    『さっきの相手に比べたら、楽な相手にゃあ』
    弥生の如意棒に比べ、威力は上だが振りは大きく、スピードと回転力に欠ける。隙は見えている。
    「はっ!!!」
    空いた脇腹に掌底を叩き込む。が。
    ぶにゅっ
    「『え!?』」
    不思議な手ごたえが伝わる。
    「ニーナさん、それはあんまり効かないですわ」
    と、アシュリーが笑みで答える。そう。アイシャ自慢の大掌底、そこから伝わる浸透勁も、ふわふわ~もこもこ~の着ぐるみボディが吸収、拡散してしまい、効果的な一撃にならないのだ。
    「それならっ!」
    アイシャの舞闘術はそれだけではない。素早く切り替えると、今度は足元を狙い鋭い蹴り。更に回って旋風脚。繋げて腕の金鎖分銅を使い、敵の攻撃を封じつつ、相手のバランスを崩すことを狙う。投げ技が決まれば相手の重そうな身体がそのまま攻撃になるし、いっそ金鎖による締め技だって選択肢だ。これならふわふわもこもこも関係ない。
    巻き付いた金鎖をアシュリーが掴み返す。力で抵抗。鎖がぴん!と伸び、一瞬の静止。
    「トランスチェンジ!」
    え、と思った次の瞬間。
    今度はアシュリーがトランスチェンジ。見せる姿は豪奢な和装。これを大胆に着崩し肩から胸元をはだけさせ、頭上に深紅の角をきらめかせる。ジスフィアの鬼女・艶鬼との合体だ。
    「ええいっ!」
    そのまま、掴んだ鎖をぎゅいと引く。ジェイド以上のパワーに、抵抗すらできず引きずられるニーナ。そのまま背中からアシュリーの胸元に抱き込まれてしまう。
    『まぁ、かあいらしい子猫ちゃんやね。ふふ、頭から食べてしまおか』
    本気かウソかよくわからない艶鬼に苦笑しながら、アシュリーはそのままニーナをぐいぐい絞り上げる。技も何もない、鬼の膂力に任せたベアハッグもどきだったが、その力をもってすれば十分な脅威。
    「まだ・・・まだっ!」
    ニーナは柔らかい体を前に折り、次にぐいっと後ろに勢いよく反らす。
    「うわあ」
    彼女の後頭部が鼻にぶつかりそうで、思わず首をそらしたアシュリー。とっさのことで少し腕が緩む。もちろんそれを逃すニーナではない。
    「はあっ!!!」
    緩んだ腕をつかみ、鉄棒の要領で上体を持ち上げ身体を抜く。そして今度は、畳んだ足を勢いよく後ろに叩きつけるカンガルーキック。見事脱出に成功する。
    『あらら、逃がしてしもうた』
    「いいえ、逃がしません!」
    キックの反動で地面に転がるのを、あえてそのままにして距離を取る。間合いを取ってくるり振り向くニーナの目の前に、突然現れたのは―
    『うー!』『やー!』『たー!』
    薄青の小鬼たち。
    「行きなさい!」
    アシュリーがぐいと腕を突き出せば、背後の何もない空間から、あれよあれよと湧いて出る。
    『だだだだだー!!!!』
    「こ、これはっ」
    艶鬼の力は、その鬼の剛力だけではない。魑魅魍魎たちをジスフィアから呼び出し使役する、鬼道もまたこなすのである。
    まるっこい外見にまんまるおめめ、これまた可愛らしい外見の小鬼たちだが、
    『うわー!』『わー!』『わわわわー!!』
    力が強い。そして数が多い。後から後からひっきりなしに湧いてくる。さらに。こちらの攻撃が当たっても。ふわり。拳が突き抜けてしまう!
    『な、なんにゃー!!!!』
    これには合体しているアイシャが恐れおののいた
    『なにこれなにこれなにこれ怖い!おばけー!!!!』
    「落ち着きなさい!」
    合体している相手の精神が乱れてしまえば、力も半減してしまう。でもニーナは諦めていない。

    『これはー 勝負ありましたわいなあ』
    「いいえ、そんなはずはありませんわ」
    小鬼たちに埋もれたニーナを、油断なくみすえるアシュリー。するとその期待に応えるごとく、光があふれた―!

    「アモル、あなたの力を見せて」
    『うん、ニーナちゃん!!』

    ぎゅっと握った手と手。
    次の瞬間、テトラヘヴンのキューピッド、アモルとトランスチェンジしたニーナは、白い天使の翼を広げ、まとわりつく小鬼たちを跳ねのけふわりと宙に浮かぶ。そして。更に 足元を掴もうとする魍魎たちを見下ろすと―
    『や、闇からあふれし、ち、魑魅魍魎たち! わ、私の愛の矢で、元いた場所に帰ってください!!』
    「―ロジックドライブ」
    降り注ぐキューピッドの矢。
    貫かれた小鬼たちは次々と、不思議に満ち足りた幸せそうな笑顔を浮かべ、塵になって消えていく。
    『こら、あきまへんわぁ。相性がわるすぎやん』
    もちろん、その矢が狙うのは小鬼たちだけではない。あらかたの掃除を終えた後、鋭く狙うは、無論アシュリー。
    「行きます!」
    こうなると今度はアシュリーの分が悪い。艶鬼のパワーが届かない空中から、苦手な聖なる矢をつるべ撃ちにしてくる。それなら。
    「それで手はありますわ。―トランスチェンジ!」
    今度は金色の光がアシュリーを包む。
    光の中に現れるのは、上品な貴婦人のシルエット。いやその姿は、金色の装甲に包まれた流麗なる機体。トリトミーに数多ある自律戦闘機械群、同型の機体が秒単位で大量生産される合理の世界にあって、それらを指揮する目的でワンオフで作られた高級機。
    『アシュリー、では戦闘指揮を』
    「はい、やりましょう!」
    ルカ・キャンドル237とトランスチェンジ。金の鎧に身を包んだアシュリーは、慣性コントロールを起動、ふわり体を浮かせ、ニーナと対峙する。
    「さあ行きなさい! シューティングビット! ストライクビット!」
    ルカの主な武器は、多様な戦闘用ドローン、ビットたちだ。
    シューティングビットは小口径ながらレーザーカノンを備え、敵を包囲し様々な方向から光弾を浴びせる。ストライクビットは空飛ぶナイフといった武器で、死角からそのまま猛スピードで突進、体当たりする。
    これらの攻撃を、ニーナはあえて低空飛行、森の木々を盾に、細かく鋭い機動でかわしながら次々弓矢で迎撃、さらに機を見てはアシュリー自身にも放ってくる。
    それを防御用に展開したバリアビットで受け止めつつ。
    『敵機の機動・攻撃速度は当初の予測を超えています。―しかし』
    「ええ、わかります」
    しばしの攻撃の応酬は、トリトミーの指揮官機たるルカに十分な分析の時間を与えていた。木々を見下ろす高空に占位しながら、ルカが呟く。
    『本来、未来とは我らトリトミーの代名詞。
    予知ではなく予測、データの蓄積こそが産む高度な計算による未来予測を、ご覧いただきましょう―
    ノクターンビット01、02、起動』
    「さあニーナさん、これはいかが?」
    ノクターンビットは静粛性・隠密性に優れたステルス機能を持つ攻撃ドローン。相手の未来位置と姿勢を予測し、予め死角に潜む。その場で定められた攻撃のチャンスを待つ。そしていざという時、獲物に向け鋭く光刃を放つのだ。
    「くっ!」
    突然死角から現れたビットの攻撃を、すんでのところでかわすニーナ。しかしそのため、大きく体勢が崩れるのが観客の目から見ても明らかだった!

    「ニーナちゃん!!」

    悲鳴の様な声が観客たちから上がる中、アシュリーはさらなる一手を放つ。手持ちの武器、レーザーナイフを変形、指揮棒のようなタクトへ。鋭く前へと振り下ろす。
    『「ロジックドライブ」』
    「トライコンセントレート!!!」
    全てのビットたちが十重二十重にニーナを取り囲むと、あらゆる角度から彼女を狙い、定め、撃ちこんだ。

    「こりゃあ・・・ダメっす・・・」
    「ニーナさん・・・」
    2年Sクラスの皆が宙を見上げ、モニターを見つめ、手元のタブレットに目を落としながら呆然とする中、しかしリオンは、指をぐいっと突き出した。
    「見て!!!! ニーナちゃんは、負けてない!!!!!」

    目を疑ったのは、まず攻撃を繰り出したアシュリーだった。
    攻撃の余波、宙に漂う煙が晴れた時、そこには黒と銀のスーツに身を包み、光の鍵盤を周囲に漂わせたニーナがいた。健在だ。
    「ニーナさん・・・!」
    『そんな! 私のビットの制御が、奪われた!?』
    すこしばかり煤のついた、しかし誇りに輝く顔をついと上げて、ニーナは微かに笑みを浮かべた。
    「今度は私の演奏を、聞いてください」
    じゃあん、流れる旋律が見えない糸となり、ルカのビットたちを絡めとる。
    『さあ、奏でよう! 即興だが私の新曲だ。聞き惚れるといい!』
    新たにニーナとトランスチェンジしていたのは、ルカと同じくトリトミー出身の使者、エメラダ・シンフォニー076。
    その正体は、意識をもった自律電子楽器の集合体だ。

    弥生が午後の競技全てからニーナを外したのは、体力の回復を図るため、だけではない。
    相手がアシュリーと分かったその時から、ALCAの広報局にアクセス。
    公開されている使者襲来時代のアシュリーの戦闘記録を把握、分析、その傾向を掴み対策を立てる時間に充てたのだ。
    特に、ルカとの合体により多彩なビットを操る戦術はやっかいで、隙が無い。一人で軍勢を相手にするようなものだ。
    『ならば、私の音楽をこの子機たちにも聞かせてやろう』
    それに対抗する手段を、ニーナの盟約者であるエメラダが有していたのはまさに僥倖と言えた。
    もともとビットは、周囲の状況を確認するセンサーと、探査情報と命令情報を母機とやりとりするための通信回線を、いずれも有している。
    そこに、エメラダからそのコントロールを奪うためのハッキング命令を音情報、つまり彼女の曲として流す。無論ルカのビットもハッキング対策は備えていたが、まさか音情報を解釈する過程でAIに誤作動をさせられるなど、想定にない事態だった。

    「凄いな、ニーナちゃん」
    ぽつり、改めて、アシュリーからそんな言葉がこぼれた。
    去年のニーナは、ALCAに一日でも早く戻るため、その実力を証明しようと明らかに焦り、あがいているところがあった。
    だが今、ALCAに戻ることを考えていない今、ここまで彼女を突き動かす、その力の源は、なんなのだろう。

    『素敵な曲―! ウフフ、アイドルとしては、この挑戦、逃げるわけにはいかないよー!』
    「トランスチェンジ!」
    ルカのビットたちが消え失せる。
    代わりにアシュリーの姿が再び輝くと、今度は大きな蝶の羽が広がる。
    『オッケー! 今日のサプライズセッション、行ってみよう!
    燃え上がれ、バーニングハート! ときめけ! ダズリングハート!』

    「わったしのココロは、バーニング! あなたの視線で、燃え上がるうー!」

    『私の即興曲に、歌詞を即興で付けて歌いだしただと!』

    「あなったのココロは、ダズリング! わったしの気持ちを、うっけとめってー!!!」

    アシュリーが今度トランスチェンジした盟約者は、同じくトリトミーのアイドルアンドロイド、シュガー・ディーバロイド741。
    ピンクを基調にしたアイドル衣装に身を包み、七色に輝く蝶の羽で歌い、舞う。
    「っ!!」
    ビットをハッキングできなくなったニーナは、このままエメラダの力を使って音響攻撃をするつもりだった。しかし驚いたことに、今度はアシュリーの方が曲を乗っ取ってしまう。エメラダの即興曲はまるで流行りのアイドルソングに。戦いはあたかも、アシュリーのライブ会場に変えられてしまったかのようだ。

    そんな中、間奏のタイミングでアシュリーがニーナにマイクを向ける。
    「ねえ、ニーナさん。私、知りたいことがありますの」
    「―何でしょう」
    「ニーナさん、あなたは何故、ここまで頑張れるの?」
    突然の問い。
    でも、ニーナに躊躇はなかった。
    「実力を、証明するためです」
    「誰に? ALCAに? それとも先生たちに?」
    「いいえ、いいえ」
    かぶりを振って、強く相手を見据えて答える。
    「私の― 私の大切な、大切な友達であり、ライバルである皆のために!
    私は、私の力を証明します!!」

    ニーナ自身はその力を、こういった競技めいた勝負の場で使うのは、ちょっと卑怯なのではないか、とも思っていた。使わずに済めばいい、と心のどこかで思っていた。
    ―でもそれは甘えだと、驕りだと今思い知った。
    持てる力の全て、全てを使わないと、この先輩には勝てない。
    そして私は、勝ちたい―

    「行きます」
    決意を視線に込めて、ニーナはフォーリナーカードを掲げる。
    「トランスチェンジ、リリアナ!」
    『ええ、ニーナ、存分に』
    超自然世界・モノリウムへのゲートが開き、ニーナの盟約者、貴純のリリアナを呼ぶ。
    たちまち合体。
    黄色と緑が花びらの様に折り重なったドレス。修道女にも似たベールが頭を飾り、しとやかな印象を強調する。が、大きく開いた背中にはあやしい色香すら漂わせ、見た目通りの手折られるを待つ道端の花ではないことを匂わせる。
    間を置かず、ニーナは花弁でできた杖を掲げ、高らかに宣言する。
    「遥かな未来への希望、輝く明日への祈りを、ここに」
    「『ロジックドライブ』」
    「花園の祝福!!!!!」

    その技に、刃はない。その技に、破壊はない。
    ただただ、静かなる安らぎがあるのみ―

    舞い踊る花びらに包まれたアシュリーは、身体から心から、力が抜けていくのを感じていた。戦う気持ち、抗う気持ち、激しい気持ち、脅える気持ち。何もかもが、優しい何かに包まれて溶けていく。
    『あー・・・ なんか、しゃーわせー・・・』
    この台詞が、本来ココロを持たないトリトミーのアンドロイドの口から洩れるという奇跡。自然、アシュリーの心もひたすら静かに穏やかに、眠りにも近い何かに落ちていく。

    これがニーナのまさに必殺技、「花園の祝福」。
    貴純のリリアナはモノリウムの百合の花の獣人だが、かの世界で彼女が有する癒しの力は貴重なもので、その身柄を狙われることも多かったという。身を護るために彼女が編み出した技。彼女が求める平和な世界を、強制的にでも叶える技。それが、一面に放出する花粉を吸引することによる薬効と、展開する花びらの色彩と花杖の動作による視覚から思考に割り込みをかける強制暗示で完成する、この技だ。
    この技の効果範囲に入った者は、害意・悪意・猛々しい心を鎮められ、戦意を放棄してしまうのだ。

    戦う力を喪ったアシュリーの身体は、そのまま下へ― 池の中へと落ちていく。
    そして、水柱を上げて着水。
    アシュリー・ブラッドベリは、墜落した。
     
    「これは決まったかぁー! ニーナ選手の大技が炸・裂!
    今入りました情報によりますと、この技は花園の祝福と言い、かの無差別襲来事件の際もニーナ選手が使用し事件を解決に導いたことで有名に―」

    だがニーナは、騒ぎ立てる実況の声を聴いていなかった。
    まだ審判から決着の声は出ていない。
    リリアナとの合理体は飛ぶ力は持っていないので、そのままニーナも地面に着地。
    ゆっくり、池に近づいていく。
    ・・・
    そして、アシュリーの姿がぷかり、と水面に浮かんだ。
    シュガーとの合体は解除され、黒い上下の下着か水着という姿。見る限り、気を失っているのか、目をつむったまま力ない様子で漂っている。
     
    「後は、トドメさして決着っすねー!」
    「流石はニーナさん! 大金星ですわ!」
    上空の偵察ドローンの映像を、押し合いへし合いしながらタブレットで見守る2年Sクラスの面々。もう皆お祭り騒ぎだ。
    だがそんな中、一人だけ、じっ とただ画面を見ていた者がいる。
    リオンだ。
    そして叫んだ。
    「ニーナちゃん! 危ない!!!」

    ニーナも、気をつけては、いた。
    だが、連続したトランスチェンジの負荷、大技である花園の祝福の反動、いやそれ以上に、事前に立てておいた策がはまった事の安心感が、あと一歩の詰めのため、足を急がせたとして誰が責められよう。
    池の浅瀬に水音を立てて入り、横たわるアシュリーに花杖を突きつけようとしたその瞬間。アシュリーの目がすっ と開き。彼女はこう、言った。
    「ニーナさん、ごめんなさいね」
    次の瞬間、ニーナの全身に電撃のような痛みが走り、痺れ、手も足も動かせなくなった。
    「!!!」
    力を失い崩れ落ちる身体。それをきゅっと引き寄せて支えたのは、ニーナの足首に巻き付いていた、半透明の触手。今の今まで見えていなかったそれを、わずかに動く瞳で改めてよく見れば。触手はアシュリーの身体から。彼女を包む、同じく半透明のベビードールの様な衣装から生えている。
    そう、アシュリーは合体をただ解いた、のではない。
    ふわふわと波間を漂う、クラゲ。
    アシュリーはモノリウムのクラゲの獣人、泡沫のシェリーとトランスチェンジしていた。そしてその姿や、主な攻撃手段である電撃を放つ触手を透明化。
    ニーナが近寄って来るのを、待っていたのだ。
    「そ、ん、な・・・」
    「ごめんねニーナさん。この娘、シェリーと盟約したのは、ピラリ学園に来るちょっと前だったから、ALCAの広報資料には載っていないんですわ」

    「決着ゥー! ただいま審判が下りました! エキジビションマッチ決勝戦は、アシュリー・ブラッドベリ選手の逆転勝利です!!」

    「だ…ま…さ…」
    腕の中で力なく、しかし目力を込めて見上げるニーナと一緒に池から上がりながら、アシュリーは言った。
    「ニーナさんも、たまにはファンタジー小説とか、ライトノベルとか、読むと面白いとおもいますわ。いっそ、バトルものの漫画でもいいかも。
    ふふっ。この程度の『騙し』は、初歩の初歩、です!」

    しばし後。
    エキジビションマッチ優勝の表彰式にて、万雷の拍手で迎えられたアシュリー。
    壇上を降りると、痺れの抜けたニーナから、改めて「負けました」と頭を下げられた。
    「でも、次は負けません。必ず」
    その強い瞳に、
    「うん、そうだね。受けて立ちますわ。・・・ちょっと、怖いけど」
    と返した。
    去り際、ニーナはひとつ、アシュリーに問いかけをした。
    「先輩、先輩はどうして…」
    ニーナにしては珍しく、言葉が尻つぼみになっていく。
    どうして戦うのか、とか、どうしてそんなに強いのか、とか。
    あるいはもっと直截に、どうして勝てたのか? とか?
    でもそんな事を聞くのは失礼と思ったのかもしれない。そこを最後まで言わせず、アシュリーは自分から切り出した。
    「ニーナさん、私にも、夢ができましたの。
    将来どうしようか― ALCAに戻るか、それともまた、別の仕事に就くか。
    いろいろ、考えてました。
    私は元々本の虫で、一日ずっと、夢わくわくの、胸ドキドキの、物語の世界に浸っていられれば幸せな子でした。
    でも定理者に目覚めて、異世界の皆さんと盟約して、戦ったり、助けたり。
    それはそれはタイヘンな日々でしたけど、でも楽しかったですわ。
    おかげさまで、普通の子じゃ体験できないような、いろんな体験を。
    それこそ、私が小さい頃に胸をときめかせて読んだお話の中にしかないような体験を、いくつも、たくさんたくさん、させていただきました。
    だから今度は私が、この私の体験を、みんなに伝えたいな、って。
    そう、思うようになりましたの
    ・・・
    私、作家になろうと、思います」
    そう言ってアシュリーは、ふわりとニーナに笑いかけ、
    「だから私、もっともっとたくさんの、もっともっといろんな体験をしなければなりませんし、いろんな機会は逃さず、全力で、体験してみようと思いますの」
    「・・・じゃあ、今日は・・・」
    「とっても強い後輩から、全力で挑まれるなんて、なかなかできない体験でした。
    だから私も、全力で、がんばっちゃいました。
    それだけ、です!」

    果たして未来。
    アシュリー・ブラッドベリが本当に作家になり、その様々な体験を元に、夢わくわくの、胸ドキドキの、素敵な物語をいくつも紡いでいく、のかどうか。
    アストライアーの星占いもルカ・キャンドル237の未来予測も答えを出すことはできない。
    何故ならそれは、ひとえに、アシュリーの心ひとつに掛っているからだ。
    でもアストライアーもルカも、それにジェイドも艶鬼もシュガーもシェリーも知っている事がある。
    たとえ彼女がどんな道を選ぼうと、みな、それを支え手助けすることは確かだ、ということ。

    さて何年か後。
    ニーナ・アレクサンドロヴナは本屋に立ち寄る際、以前なら通り過ぎる小説の新刊が飾られた平台、その著名にはちょっとだけ、目をやるように、なった。
     

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  • シュガ-・ディーバロイド741

    シュガ-・ディーバロイド741

    トリトミーからやってきた、アイドルアンドロイド。
    スタンドマイク、スピーカーポッドを装備している。
    セプトピアには、次元を超えたアイドルとして活動を広げるためにやってきた。
    可愛いは正義で、楽しいことが大好き。
    戦闘任務も、彼女にとってはアイドル活動の一部に他ならない。

    トランス!

     アシュリー・ブラッドベリ & シュガ-・ディーバロイド741

    地下室のメロディ

    『「魍魎大行進!!!」』

    艶鬼と合体したアシュリーがロジックドライブを放った。
    その瞬間、研究所の壁、床、天井に現れる無数の渦巻き――鬼道だ。
    やがてその中から魑魅魍魎、子鬼たちが現れ、
    アシュリーを取り囲んでいた敵たちを一斉に襲う。
    アシュリーは、凄まじい威力を持った艶鬼のロジックドライブに感心しつつも、
    (……地獄の幼稚園みたい……)
    と、可愛らしくも狂暴で元気な魍魎と子鬼たちの姿に、やや引き気味だ。
    ともあれ、このロジックドライブのおかげでこのフロアの使者たちは掃討できた。

    「艶鬼、そろそろ合体を解除しましょう」
    『いけずやわぁ、 もう、ちぃーとだけええですやろ?』
    「ダメです。トランスリミットに近づいてますし……」

    こうして、艶鬼との合体を解除して、アシュリーはシュガーを呼び出す。

    『作戦終了? だったら成功記念コンサートを』
    「まだです!!」

    アシュリーとルカが、使者大量襲来の元凶であったゲートカードの暴走を止めて1時間。
    通信で確認すると、研究所内を含め、
    各地での混乱は収束に向かいつつあるようだったが、まだまだ予断は許されない。
    敵がこれ以上増える恐れはないが、
    この世界にまだどんな手強い敵が残されているのかわからないのだ。

    「シュガーを呼んだのは、まだまだどんな危険が潜んでいるかわからないからですわ」

    少しガッカリなシュガー。

    『戦いかぁ……コンサートがよかったなぁ……』

    その時、艶鬼が異変に気づいた。

    『はてなぁ?』
    「え?」
    『なんか・・・妙な音が・・・聞こえへん?』

    耳を澄ますアシュリー。
    ドンドン……ドンドン……。
    研究所内のどこからか、何かを叩くような音が聞こえた。
    おもむろにシュガーが口を開いた。

    『……ドラムの練習?』
    「こんな時にそんなことをする人はいません!」

    と、つっこむアシュリー。

    『まぁ、敵やろな……』

    艶鬼に頷くと、アシュリーはシュガーと合体し、
    その音に導かれるように階段を下りていく。
    どうやら研究所の地下から響いているようだ。
    ドンドン! ドンドンドン!!
    さらに音はハッキリと聞こえる。
    地下の突き当りにドアが見えた。音はその中から聞こえているらしい。
    アシュリーたちは息を呑んで、そのドアを開けた。

    「……え?」

    中にいたのは、一般市民だった。
    ゲートカードの暴走が起きた時、逃げ遅れた人々だ。

    「助かった……このドアは中から開けられないんだ」

    ALCAの通信を傍受して、作戦の成功を知り、
    意を決して助けを呼んだのだと人々は話す。
    この地下シュルターには、耐パラドクスゾーンの対策が施されており、
    逆理病の心配はなかったが、さすがに肉体的にも精神的にも疲労困憊の様子だ。

    「もう安心です。さあ、私たちと一緒に逃げましょう」

    手を差し伸べるアシュリー。
    その時、外から爆発音が聞こえた。

    「いやあ! 怖い!!」
    「!!」

    中にいた子どもの怯えた声だ。
    研究所の家族もこのシュルターに避難しており、子どももたくさんいた。

    「大丈夫。外ではまだ戦闘が続いているところもあるけど、私たちが守るから」

    アシュリーは優しくなだめるが、全員、シェルターから出ることを怖がり、
    なかなか出ようとしない。
    すると、突然、地下室にメロディが響き渡った。
    合体しているシュガーが、装備を使って曲を流し始めたのだ。
    (え!?)
    戸惑うアシュリー。

    『ここを出る前に、みんなをちょっと元気にしてあげようよ、アシュリー』

    ハッとして見ると、子どもたちは泣くのをやめて、アシュリーを見つめている。
    (……ここは、シュガーの言う通りかもしれない)
    まずは子供を落ち着かせるよう、柔らかく童謡を歌う。
    子供たちの表情が明るくなるのを見て取ったアシュリーは、能力を全開。
    一気にコンサートモードに突入した。
    心に染み入るバラード、軽快なポップス、激しいロック……
    いつの間にか持ち歌を増やしていたアシュリーとシュガーは、
    メドレー形式で、疲れきった人々に笑顔を届けようと必死に歌い踊る。
    その思いは人々に伝わっていった。
    苦しかった日々を忘れるかのように、
    大人たちも、子どもたちも笑顔の花を咲かせていく。
    (ああ……よかった)
    人々の顔を見渡し、心から嬉しく思うアシュリー。
    だが、その中に目がハートになっている艶鬼の姿が。
    キュートに歌い踊るアシュリーにときめいてしまったらしい。
    その艶鬼の目に、イヤな予感を覚えるアシュリー。
    やがてメドレーは、ダンサブルなナンバーに突入。

    「アシュリーはん、やっぱり最高やわあ!!」

    イヤな予感は的中。
    艶鬼は周りの人々を巻き込んでアシュリーに声援を送り出す。
    (艶鬼のためにやってるんじゃないんですけど……ま、いいか)
    そんな艶鬼を苦笑いで許すアシュリー。
    地下シェルターを埋めていた不安や恐怖の空気は消え、みな明るい笑顔になっていた―

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  • 巌のジェイド

    巌のジェイド

    お酒が大好きな気のいい蜥蜴。
    温かい岩場で寝転がって熟睡していたら、気がついたらセプトピアにいた。
    セプトピアはセプトピアで面白いし、美味しいものもあるので慌てて戻る予定もない。

    トランス!

     アシュリー・ブラッドベリ & 巌のジェイド

    読書好きの夢想少女が出会ったのは、大きなトカゲ! デコボコ合体の二人

    人生の目的を見つけた……そういう事なのかもしれない。
    大柄な男はそう考えていた。
    いや、よくよく見ればそれは男……というか人間とは呼べない代物だった。

    三メートルを超す巨大な体躯、
    そして臀部から伸びる太く長いそれは尻尾だった。
    いわゆるコモドドラゴンと呼ばれる生物に属する姿だが、
    身体の大きさは生物学的にはありえない程だ。

    それはセプトピアの夜の繁華街をゆっくりと歩いていた。

    ほろよいの彼の名は、ジェイドと言う。

    無論使者の彼はモノリウムからやってきたトカゲの戦士だった。

    彼は先程までトックリを片手に考えていた。
    モノリウムにいた頃、
    世界の法則に基づき戦いの日々を送っていたが、
    正直なところ彼にとってそれは生来の習慣であり
    目的意識などまるで無かった。

    周囲がやるように彼も戦い、
    そして戦士としての生き方を矜持と思い込んできたのだ。

    だがセプトピアに来て彼が出会った定理者、
    つまり彼と盟約した相手は戦いとはかけ離れた世界で生きる、
    か弱く小さな少女だった。

    読書に明け暮れ、幻想と恋物語に焦がれる
    年相応の女性アシュリー・ブラッドベリだった。

    彼女は当初合体する相手がジェイドだったことに
    それなりにショックを受けていたようだった。

    たとえ言葉を介すことができなくても、
    さすがのジェイドも彼女の表情を見ていればそれくらいは理解できる。

    彼にとって読書を通じて彼女が読み解き巡らせる空想の世界が、
    どれほどのものかは知るよしもない。
    だが繊細かつ可愛らしい思考の旅なのだと察することくらいはできる。

    そんな彼女にとって、自分のように戦いしか知らず、
    しかも見た目も無骨で滑った皮の異形の者が盟約者となったことは、
    甚だ遺憾に違いないのだろうと察しはついていた。
    会話は交わさずともこちらへの心象は理解しているつもりだった。

    でもそんなアシュリーと言う少女は
    ALCAと呼ばれる戦いに身を置く組織に召集され、
    自らに与えられた任務をこなそうと必死に頑張っている。

    本来このような仕事場は彼女の気質に合わないのは誰もが知るところ。

    それでも必死に皆の役に立とうとする小さな背中に、
    ジェイドの心はこれまでモノリウムで味わったことのない感覚に芽生えていた。

    その背中を少しでも押してあげられたら。

    彼女を見ていてそう感じた。
    これまで無味乾燥に戦いを続け、
    それを自分に与えられた充足感と錯覚していた日々。

    それとは違う誰かのために戦う……柔らかな満足感。
    それをアシュリーとの合体によってジェイドは感じていたのだ。

    少し酔ってしまったのかもしれない、とジェイドはふと思った。
    ちょっとおセンチな気分に浸っていたことに、
    我がことながら自分らしくもないと考えていた。

    事実セプトピアの酒は旨い。

    酒だけではなく料理全般がモノリウムのそれらとは
    比較できないほどに美味だと言わざるを得ない。

    セプトピアの生活から感じる充足感も、
    アシュリーに対するそんな感情を
    湧き立たせたのかもしれない、そう思った。

    その時周囲から警告音が鳴り響く。
    これは近隣で使者による襲撃が始まったという知らせである。
    今頃アシュリーはベッドから飛び起きて、
    パタパタと小走りしている頃だろう。

    この戦いを前にした高揚感、これも忘れられない。
    彼は舌舐めずりをする。
    セプトピアの安穏な生活で
    戦意という名の爪を砥ぐことを忘れたわけではない。

    酔い覚ましにはちょうどいいだろうと、
    ジェイドは飲み屋街を千鳥足で歩く人間達の波を
    掻き分けながら走り出した。

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  • 艶鬼

    艶鬼

    ジスフィアからやってきた、鬼のお姉さん。
    遊女の様な鮮やかな衣装を好み、大胆に着崩しながら
    色っぽいしぐさで男を迷わす魔性の女性。
    一方的にアシュリーを気に入って盟約者になり、
    日々彼女を着せ替えては楽しんでいる。

    トランス!

     アシュリー・ブラッドベリ & 艶鬼

    艶鬼の異常な愛情

    サロンでいつものように読書に耽っているアシュリー・ブラッドベリは、突如黒い影に覆われた。
    ハッとして見上げると、アシュリーの盟約者・艶鬼が笑みを浮かべていた。

    『これから、お暇?』

    艶鬼はアシュリーに顔を近づけてきた。

    アシュリーは艶鬼の大きく盛り上がった胸元にドギマギしながら、コクリと小さく頷いた。

    それを見て、艶鬼は更に笑顔を弾けさせた。

    『ほんま? めっちゃ嬉しい!
    ほんなら、うちらの部屋にもどってきて。
    10分後。待ってるから』

    艶鬼がウキウキとした足取りで去っていくのを見届けると、アシュリーは再び本に目を移した。
    しかし、頭の中にまるで内容が入ってこない。
    アシュリーの脳裏に嫌な予感が渦巻いていた。

    ――艶鬼、一体なにを企んでらっしゃるの!?

    アシュリーと艶鬼はまだ引き合わされたばかり。
    実際にトランスするのもまだだった。

    だが、アシュリーは自分が憧れていた盟約者とは「何かが違う!」と感じていた。

    対する艶鬼は、微妙なリアクションをするアシュリーのことなどお構いなしにアシュリーへの愛情を一方的に深めていくばかりだった。

    ファンタジー趣味のアシュリーが『鬼』も趣味の範囲と艶鬼は思い込み、それが嬉しくてたまらないのだ。
    アシュリーは不安を感じながら、約束の10分後に本を閉じると、自分と艶鬼の部屋へと向かって歩き始めた。
    やがて、部屋の前までやってくるとアシュリーは緊張気味にノックにした。

    『アシュリー? ええから入って』

    中から陽気な艶鬼の声が聞こえ、アシュリーは一度深呼吸をしてドアノブを回し、扉を開いた。

    『おかえりやっしゃ』

    部屋に入るなり、艶鬼はアシュリーに抱きつき、そのままお姫様抱っこをした。

    アシュリーは唖然としたまま室内を見回す。

    ――なんですの!? このお部屋! 朝までは普通のお部屋だったのに!

    壁は朱色に塗られ、あちこちの置かれた行燈が淡く輝いている。

    ALCAの施設内にある部屋とは思えない、あまりにも遊郭チックな内装だった。
    どうやらアシュリーが読書に耽っている間に、艶鬼が勝手に模様替えしてまったらしい。
    「これから何をなさるおつもりなの!?」

    アシュリーは動転し、思わず声を上擦らせた。

    『街で可愛い着物、見つけたの。アシュリーに似合いはると思うて』
    「困りますー! はしたないそんな! 恥ずかしい!」

    アシュリーは抵抗するものの、艶鬼の怪力の前では無意味であった。
    あっという間に身ぐるみを剥がされ、手際よく着物を着つけていく。

    『さあ、おめかししまひょね』

    艶鬼はアシュリーが嫌がっていると気づくことなく、鼻歌さえも歌っていた。
    アシュリーは諦め、されるがままに身をゆだね、気がつくと鏡の前には艶やかな花魁姿の自分がいた。

    おまけに胸元がざっくりと開き、露出度が高い。
    アシュリーはあまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして、下を向いた。

    『いやあ、かわええなあ。一緒に花魁道中をしたいぐらいやわあ……』

    ――そこまでなさるおつもりなの!?

    アシュリーは目を白黒させながら、艶鬼を見上げた。
    だが、目に飛び込んだ艶鬼は目を細め、今までアシュリーが見たことないほど幸せそうな表情を浮かべていた。

    『うち、ほんま嬉しい。アシュリーみたいに『鬼』の好きな子と盟約できることになって……』

    そんな艶鬼を見ているとアシュリーは何も言えなくなった。

    ――外に出るのはご遠慮願いたいけどこの部屋の中だったら……。

    アシュリーはそう自分に言い聞かせ艶鬼に向かって小さく笑った。

    「こんな素敵なお部屋にしたんだから、お外に出るのはもったないですわ。
    何かジスフィアにいた頃お話を聞かせてくださらない?」
    『ええよ。とっておきの話があんねん。あんな……』

    艶鬼は目を輝かせて語り始め、アシュリーは微笑んでその話を聞き入った。

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  • ルカ・キャンドル237

    ルカ・キャンドル237

    トリトミーの介入によって生じた混乱を収拾すべく、
    自らセプトピアにやって来た女性機体。
    タクト、ナイフ、レイピアにモードチェンジする近接装備と、
    これによってコントロールされる多数のファンネルビットを装備。
    調和のとれた、秩序ある世界を理想としており、悪人もまずは説得から試みる優しい性格。

    トランス!

     アシュリー・ブラッドベリ & ルカ・キャンドル237

    炸裂トライコンセントレート!!

    その日、アシュリーはよく鼻歌を歌っていた。
    それにスキップしてしまいたいほど軽やかな足取り。
    定理者に目覚めてからこれほど楽しい気分になったのは初めてではないだろうか――
    と、アシュリーは思っていた。

    その理由はすべて、アシュリーの少し後ろを歩くルカの存在だ。
    金髪でしとやかなその姿――
    まるで名作文学の世界から抜け出してきたかのような、ルカの適応体。
    しかして元の世界での姿は、同型機の多いトリトミーの使者たちの中でも1体しかいないワンオフの高級機。
    黄金に輝く優美なドレスを思わせる姿に、
    アシュリーは遂に自分の理想たる「異世界の使者さま」が訪れた!と舞い上がってしまった。
    ルカと盟約を結ぶのは自分しかいないと、すぐさま盟約者に立候補したのである。

    一方のルカはアシュリーとは対照的に、足取りが重そうに見える。
    機嫌が悪いわけではなく―そもそもトリトミーの使者である彼女にそんな『ココロ』はない―、
    来たばかりのセプトピアの世界、まだ情報が不足しているので、周囲を探りながら歩いているためだ。

    「もう遅いですわよ」

    そんなわけだから油断するとすぐにアシュリーはルカを置いて行ってしまう。

    『私のことは気にせず。先に行っても構いませんよ』

    本来であればルカは一人で街を散策するつもりだった。
    まだ見知らぬものが多いセプトピアの世界を勉強するためだった。
    しかし、それを知ったアシュリーが「私がご案内しますわ!」と言ってついてきたのだ。

    「やっぱり、ご迷惑でしたか……」

    声のトーンを落とすアシュリー。ルカの言い方が冷たく突き放すように聞こえたためだ。

    『いや、そうではないのですが……』

    言葉を濁すルカ。
    (……この世界の者への対応は難しい)
    ココロというものが、まだ理解できないルカ。
    浮き沈みの激しいアシュリーのココロに戸惑うばかりだった。
    その時、「あああ!」と子供の悲鳴が聞こえた。
    手に持っていた風船をうっかり離してしまい、舞い上がった風船は高い木の枝にひっかかっている。

    「かわいそうに……ルカ、助けてあげることはできませんか?」
    『? 木に登るんですか?』

    問い返すルカ。風船がひっかかった木に登るのは、大人でもかなり苦労しそうだからだ。

    「その・・・例えば合体、してみるとか、どう、でしょう・・・?」
    『合体……?』
    「そうすれば、あの風船をとることも簡単にできると思います!」

    再びアシュリーのココロは浮かれ上がり、ルカに向かってニッコリと笑う。
    アシュリーは、ルカと合体した自分の姿をとても気に入っていて、何かにつけてすぐに合体したがる傾向があった。

    『ですが……』

    (今後の行動結果が悪化されると予測される……)
    つまりルカは、人間で言うならだんだんと「不安を感じ」始めていた。
    混乱を収拾するためこの世界にやってきたのに、アシュリーが盟約者で目的が果たせるのだろうか――と。
    そんなルカの迷いを試すように、使者の出現を告げる警報が鳴り響いた。
    司令部からの通信によれば、現場はルカとアシュリーがいる場所に近い。

    『行きましょうアシュリー』
    「はい!」

    子供と傍の親にすぐに避難するよう伝えると、二人は直ちに現場へと直行した。
    (この戦いによっては盟約相手を再検討しよう……)
    今やルカはそんな判断に至っていた。
    現場で暴れ回っていたのは、モノリウムの使者。
    象の獣人で、アシュリーの数倍の巨大さだ。
    それを見て、すぐさま合体したアシュリーとルカ。

    「いきます!」

    ルカは勢いよく相手との距離を詰める。

    『アシュリー、いけません。不用意に相手に近づいては――』

    注意を促そうとした矢先、敵が目の前から消えた。

    「!」

    敵は見かけとは裏腹に軽快なスピードで、あっという間にアシュリーの背後へ回っていた。
    そして、不意を突いて先制攻撃を仕掛ける。

    『危ない!』

    敵の拳がアシュリーに迫る。ルカは避けきれないと計算した。が―

    「バリアビット!」

    アシュリーが叫ぶと、ファンネルが宙を舞いフォースフィールドを発生。
    敵の攻撃を間一髪防ぐ。
    そして、息つく間もなく再びアシュリーが叫んだ。

    「ノクターンビット!」

    いつ間にか、敵の背後に不可視化されたファンネルが配置されていた。
    見事に敵の裏を書き、奇襲を浴びせる。
    のたうち回る敵を見て、ルカの「再検討」が中断する。

    『見事です……』

    バリアビットは、先日の出撃でルカが操り敵の攻撃を防いでみせた装備だ。
    一度使った装備だから、アシュリーでも使いこなせるのはまだわかる。
    しかしノクターンビットは、まだアシュリーには詳しく教えていない装備だ。
    合体していると、お互いの知識や記憶はある程度共有される。
    そうだとしても彼女がノクターンビットを、しかも完璧なタイミングで使いこなすとは、正直ルカの「計算外」だった。

    「そんな……お褒めいただき光栄ですが、
    私はただルカの盟約者になれたのですから、一生懸命やってるだけですわ……」
    『一生懸命……?』
    「つまり……好きな方にはがんばって尽くしたいってこと……でしょうか」

    アシュリーはそう言ってはにかんだ。

    「合体させていただいたとき、ルカには様々な能力があることが、わかりましたわ。
    私が至らないせいで、その素晴らしい力を発揮できないなんて、とても辛いこと・・・悲しいことですわ・・・
    なので、合体するたびに知ったこと、教えていただいたことをメモにまとめて、
    昨日よりも今日、今日よりも明日、もっともっとルカの本当の力を使いこなせるよう、自分なりに復習しているのです」

    視線を上げると、アシュリーは胸を張って答えた。

    「―これが私の、一生懸命、ですわ!」

    その瞬間、ルカは自分の判断が間違っていた、と結論する。
    今もココロは理解できないが、アシュリーをここまで突き動かすものならば、
    ココロとはきっと自分の計算を超えた何か、に違いない――と。
    敵はまだ倒れたわけではない。
    力を振り絞り、殺気立った目で再攻撃を仕掛けようとしていた。

    『貴方なら、私の本当の能力も使いこなせるでしょう』

    アシュリーの持っていた武器が、ナイフからタクトにモードチェンジする。

    「これって……」
    『全てのファンネルたちを指揮するのです。思うままに、このタクトで。
    貴方ならきっと計算以上の威力を発揮できると確信しています。
    アシュリーは「一生懸命」、なのですから……』

    アシュリーに、それ以上に嬉しい言葉はない。
    最高潮に盛り上がった気持ちで声を弾ませた。

    「その期待、裏切りません!!!」
    アシュリーがタクトをふるうと、数多のファンネルたちは規則正しい配列で敵の周囲を取り囲む。

    『「ロジックドライブ! トライコンセントレート!!!」』

    その叫び声とともに、一斉にファンネルから放たれる光。
    あらゆる角度から、正確に、敵に向かって一直線に光の粒子が伸びる。
    それはやがて、一点を射抜く集中砲火となった。

    『グアアアアアッ!!! ウオオオオオッ!!!』

    それまでアシュリーの攻撃に耐えていた敵も、その凄まじい攻撃を防ぎようがなかった。断末魔の声ととも、ついに敵は倒れた。
    トライコンセントレートはまさに祝砲
    ――アシュリーの歓喜を祝うド派手な花火のようだった。

    そして戦いが終わったとき。
    1機のファンネルが木の上の風船を優しく捉えると、何処かへと運んでいくのが見えたという―

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  • 泡沫のシェリー

    泡沫のシェリー

    おしとやかなクラゲ娘。争う事が得意ではなく水中散歩や海底探索を好む。セプトピアの浜辺を歩いていたところをALCAの使者探知機にかかり、データーベースに登録される。その後、クロエの機転で海への憧れを契機に同じ思いに共鳴したアシュリーと盟約を結んだ

    トランス!

     アシュリー・ブラッドベリ & 泡沫のシェリー

    アシュリー & シェリー

    アシュリーがピラリ学園に来ることになる、数か月前のこと。

    アシュリーはクロエに誘われ水族館に来ていた。
    いつも図書館にこもりがちなアシュリーを、クロエが半ば強引に連れ出したのである。

    「すっごーい! 何アレ!」
    「ほら、クロエさん。あちらもご覧になってください。」
    「何アレ!見たことない魚!超おっきいね!リルリルと合体したときにも見たことないよー!!」
    リルリルはクロエの盟約者の一人、シャチの使者フィリルのことだ。
    「海に入れるとこんな景色が見られるんですね。うらやましいですわ。」
    そんなアシュリーの一言がクロエを本気にさせるとはその時、思ってもみなかった。

    数日後、ALCAの盟約室にヴェロニカ、クロエ、アシュリーの姿があった。
    「アシュリー、詳細はクロエから聞いた。水中戦闘可能な使者との合体を認めよう。」
    ――あれ……?私、そんなこと言ったかしら。
    「シュリリンが海に強い思いがあるって局長に伝えた甲斐があったよー!」
    ――クロエさん……。こないだの水族館の時に言ったこと、覚えてくださっていたんですね。
    とても、うれしいですわ!
    「ヴェロニカ局長。クロエさん!本当にありがとうございます!合体して海の探索をしたいですわ。是非、盟約者となっていただける方がいらっしゃるのであれば盟約したいです!でも、合体してくれる方がいらっしゃるかしら?」
    「大丈夫!リルリルに頼んどいてあげたからー!」

    そういってクロエはフォーリナーカードでフィリルにコンタクトを取る。
    「リルリルー?例の件で、盟約室に今いるのー!シェリーっちに声かけてあげてくれないかな?
    データベースに入ってるみたいだからこっちからもコンタクト入れるから!」
    『かしこまりました。今お呼びします。シェリーも楽しみにしていましたわ。』

    ほどなくして、クラゲの使者の少女が現れ、盟約室はたちまちモノリウムの海の底、
    大小さまざまな魚が大海原を行き交う様子に変化する。

    ゆらゆらとアシュリーに向き合った白髪の少女はとても神秘的なドレスをまとっており、
    思わず息をのむアシュリー。
    「私は、、、私はアシュリーと言います!あなたのお名前は?」
    少しうつむいて、恥ずかしそうに下を向く少女。はかなくも可憐な姿。

    今までのアシュリーの盟約者は癖の強いメンバーばかり。
    振り回されるばかりの毎日がつらくもあり、楽しくもあった。
    そんな彼らとは全く異なる雰囲気の使者に、アシュリーは、相手が女の子という事も忘れ、恋に近い感情を抱いていた。
    「お名前を知りたいの。教えてほしいですわ。」
    『私は……、シェリー……。』
    ぽつりとつぶやく。
    『あなたは……、とても暖かい……やさしい声……。』
    アシュリーは、声をほめられて顔を赤らめながらもうれしさを隠しきれない。
    「ありがとう、ですわ。」

    アシュリーとシェリーの二人の会話は、ぽつりぽつりと口数は多くなかったが、
    お互いの言葉が共鳴しているかのように、盟約室が光り輝き始める。
    『セプトピア……って…どんな場所……?きらきらしてる……?』
    「セプトピアはとても美しい世界ですわ。」
    なにか、特別な会話をしているわけでもない、
    しかし、お互いに相手がなにを言おうとしているかが手に取るようにわかる。
    そんな感覚が二人を包んでいた。

    『もっと知りたい……、アシュリーの世界……。』
    「……もちろんですわ」

    「盟約完了だな。では、さっそく、アシュリーにはしばらく海浜警備全般を担当してもらう。
    今回の配備は毎日早朝3時からの勤務となるから注意するように。
    クロエに担当してもらおうと思っていたが、アシュリーに任せよう!」
    そう言い残し部屋を出ていくヴェロニカ。

    「クロエさん。海浜警備ってどういうことですの!?しかも早朝3時って、早すぎますわ!」
    「シュリリン、海に入りたそうだったしー、盟約者も見つかったしよかったじゃん!」
    ――きっと、朝早く起きたくなかっただけですわ!
    「海浜警備なんて言ってないですよ!クーローエーさーん!!!!」
    「いいじゃんいいじゃん!今度一緒に海遊びに行こうよー!」
    まったくこの人は!そう思いながらも思わず微笑むアシュリーの手元でフォーリナーカードが応えるようにきらきら光っていた。

    定理者のカード 使者のカード 合理体のカード

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